フリーター、魔王候補の集まる女子寮の大家になる

椎名 富比路

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第六章 フリーター、地球人魔王と文化祭を満喫する

第37話 ガングロ褐色ギャル化したシノブ

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「なんだあれは?」

 オレは、ミニスカガングロギャルとなったシノブを指差す。

「シノブちゃんは、接客を免除しているんです。代わりに、プリクラのモデルをやってもらっています」

 フィーラの、いうとおりかも。

 シノブに接客は、不可能に近い。シルヴィアの屋台でも、応対は結局ロボ任せで、自分はずっと裏方に回っていた。皿洗いの鬼になっていたな。

「お手伝いする気はあるんですけど、やはり見ず知らずの方への応対は難しいみたいで」

 ならばと、「ギャルっぽい格好で立っておけ」となったのだという。プリクラ同伴してもらうと。

 ちなみにプリクラマシンは、シノブの自作らしい。プリクラまで作れるのかよ。

「しかし、驚くほど似合っているな」

 ギャルにするにせよ、シノブはどちらかというと「白ギャル」だろ。あんなガングロになると、東南アジア系の顔になるんだな。なんか、背徳感が増す。

「もうすぐ、シノブちゃんは休憩に入るんです。相席しますか?」

「え、男と一緒に座ってて、いいのかよ?」

「いいんです。ナンパよけになるので。それに、どうせ回るなら、地球人同士がいいかなって」

「そうか。じゃあ、遠慮しない」

「シノブちゃーん。休憩してきて」

 フィーラがシノブを呼ぶ。

 シノブが「うむ」と、オレの隣に座った。

「今日は来てくれてありがと」

「お、おう」

 注文していた品物が来る。

 オレはさっそく、ナポリタンをいただく。

「おお、しっかりした味だな。食ってみろ」

 なんとなしに、オレはフォークでナポリタンを巻き付け、シノブに差し出した。

「え!?」

 目を泳がせて、シノブがアワアワする。

「あきらめろ、シノブ。カズヤはそういう男なのだ」

「そうだった。こ、このたらし。たらしカズヤ」

 自分に言い聞かせるように、シノブがまたジト目に戻った。

「あーん。ぱく」

 シノブは、ナポリタンを口にする。すぐに目を輝かせて、喜んだ。

「うまいか。じゃオレも」

 オレは自分のフォークに、ナポリタンを巻きつける。

 だが、シノブが食べてしまった。

「あの、さすがに自重なさってください。カズヤさん」

 フィーラに、替えのフォークまで用意される。

「あっ! すまん。寮でのクセが」

 気が利かなかった。寮では、いつもシノブはオレの分をねだるのだ。病的なまでに痩せているくせに、食い意地だけは張っている。

「え、ちょっと。聞いた? ヒソヒソ」

「殿方と、いつも食べさせ合ってるってわけ? ヒソヒソ」

 おいおい。なんだか、雲行きが怪しくなってきたぜ。

「よろしければ、お二人で文化祭を見て回っては?」

「そうだな。ドナ、文化祭巡りを続けるか」

 オレが聞くと、ドナは首を振った。

「シノブと行ってこい。わたしは、文化祭を私的に探索する。未来の魔王たちの動向を、見ておきたいのだ」

「でも、オレもシノブも生身の地球人だぜ?」

「心配には及ばん。お前たちに手を出した者は、大魔王ドナ・ドゥークーの財産に手を出したと同様だ。そう、周りも理解している」

 たしかに、誰もドナには近づこうとしない。それだけ、ドナは尊敬と畏怖を集める存在なのだろう。

「じゃあ、行くか。シノブ」

「う、うん」

 オレは、シノブとヴィル女の文化祭を回ることになった。
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