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第五章 フリーター、大魔王からJKのダンジョンを守る ~親娘対決編~

第35話 折衷案

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 翌日、道の駅が様変わりしていた。

 シルヴィアが運営しているはずなのに、肝心のシルヴィアがいない。

「あれ、どこいったんだ?」

「カズヤ、あそこだ」

 当のシルヴィアは、屋台で接客をしている。道の駅すみっこで。

「あーよう来たねえ。まあ座って待っといて」

 シルヴィアが、こちらに気づいた。ブヒートくんも、元気そうである。

「今からつくるよってに」

 六人分の焼きラーメンを、シルヴィアが作り始めた。

「お手伝いします」

 頼まれたわけでもなく、フィーラが率先して動く。

「ありがとうな、フィーラちゃん」

 焼きラーメンを調理する間、フィーラが客をさばいていった。

 オレたちは、焼きラーメンをいただく。

 人数分の焼きラーメンが、出来上がる。

「うん、シルヴィアの焼きラーメンは、やっぱりうめえ」

「そうじゃろ? 道の駅のメニューとは年季が違うんじゃけん」

 屋台の客をさばきつつ、シルヴィアはオレたちの相手もこなす。

 気がつけば、フィーラ以外の寮生全員が、シルヴィアを手伝う。

 ドロリィスが呼び込み、アンネローゼは接客、シノブはロボットで、子供の相手をする。

 一段落して、シルヴィアから事情を聞く。

「なにがあった? 親父さんとは、仲直りしたのか?」

「しとらん。だが、折衷案として、道の駅の権利は譲ったんよ」

「そうなのか。ケンカにならなかったのか?」

「元々、人にやってもらうつもりじゃったけん」

 シルヴィアだけでは、道の駅までは立ち行かない。ヴィル女に掛け合って、人を雇おうとしていたところだったという。そこで、実家の若い衆に店を任せることにしたそうだ。

 ちなみに、ダンジョンの構造も、シルヴィアガ担当する場所だけスゴロクに変更したという。ボスも本人のアバターではなく、若い衆を配置した。これによって、シルヴィアはより商売に専念できるように。

「今回のスゴロクで、ものには適材適所があるっていうのはわかったけん。やっぱりアーシは、魔王業なんか興味がないんじゃ。身近に接客しとる方が、アーシの性に合ってるんじゃ」

 あくまでも、シルヴィアは客に対して直に相手をする方が好きなようだ。

「魔王業は、好きなやつがやればええんじゃ」

 ダンジョンを見ながら、シルヴィアはしみじみと答える。

「オヤジのメンツも保てるけん、ええじゃろうと」

「いい判断だ。もちろん、土地の権利までは譲渡していないだろうな?」

「ぬかりはないけん。ちゃんと土地を貸して、みかじめ料をもろうとりますけん」

 ドナとシルヴィアが、すっごい悪い顔になった。

「決めた。あたしも動く」

 ん? 珍しく、シノブの闘志に火がついたらしい。

(第五章 完)
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