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第五章 フリーター、大魔王からJKのダンジョンを守る ~親娘対決編~
第31話 シルヴィアと父
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図面武闘会開催の予定を交わし、ドゥーさんは帰っていった。
「シルヴィア、少しはおじさんの話も聞いてやったほうがいいんじゃ?」
「カズヤさんは、やっぱりオヤジの味方なんか?」
「そうじゃねえって。あの親父さんからは、あんま悪意的なものは感じなかったんだよ」
シルヴィアのキレっぷりから、かなり聞き分けのない父親なのだろうと思っていたが。
案外、茶目っ気のある人物に見えたのである。
「私も同意見だ。ふたりとも、意固地になっているだけのような気がしたぞ」
オレとドナだけじゃない。
「なんだか、想像していた以上に普通でしたね」
「見た目はオトナだけど、中身はガキンチョ」
フィーラとシノブまで、オヤジさんの印象が変わっている。
「どうしてまた、シルヴィアは父親とモメているんだ?」
「早い話が、跡継ぎ問題だ」
ドロリィスが、詳しい事情を聞かせてくれた。
「単にシルヴィアが一人娘だから、早く婿が欲しいってわけだ。そこに、彼女の意思など関係ない」
「うーん。わかりやすいっ」
単純であるがゆえに、複雑な事情だ。オレたちが口を挟んでいい問題なのかどうか。
「だから、シルヴィアは独り立ちがしたいんだな?」
「それだけじゃねえっての。前にも言うたが、アーシは切った張ったは好かん。オヤジみたいな拳で全部解決するような単細胞は嫌いなんじゃ」
男性のとして、父親のようなタイプは気に食わないという。
「魔王の夫なんか、いらん! アーシは自立したいんじゃ。できれば、魔王業なんかじゃなく!」
「では、スゴロク場になることは、特に問題視していないと言うわけだな?」
ドナが、シルヴィアに詰め寄った。
「そこはまあ、ええじゃろ。じゃが、オヤジの介入があるのが好かん!」
「なるほどな。カズヤ、コイツはファザコンだ」
「ファザコンじゃと!? あんた、もっぺん言ってみいよ!」
シルヴィアが、ドナの胸ぐらをつかむ。
「待て待て! ドナに当たってもしょうがねえだろうが! 落ち着けってシルヴィア!」
オレは、ドナとシルヴィアの間に割って入った。
「アーシは、オヤジと違うんじゃ」
ドナを離し、シルヴィアはそっぽを向く。
似た者同士のような気が、するんだけどなあ。
「話し合うより、拳で語り合うしかないですね」
「だよなあ」
この手のタイプは、口で言ってもわからない。河原で殴り合いするくらいじゃないと、相手を理解できないだろう。
「シルヴィア先輩の本気なんて、一年のときは見られませんでしたわ」
アンネローゼが、去年のシルヴィアの様子を教えてくれた。当時からギャルファッションで、周囲でも浮いた存在だったという。
「一年のとき、風紀委員だったユーニャさんに睨まれて、それでもご自身のスタイルを曲げることはありませんでしたわ」
周りに噛みつくことも多かったそうだ。
しかし、地球への修学旅行で、彼女は変わった。
「地球の屋台で感化されたらしく、わたくしもよく試食役を任されましたわ。最初はしょっぱかったり薄味だったりと、試行錯誤の連続でございました」
「ワタシも食わされたな。あれはひどかった」
アンとドロリィスが、腕を組む。
そこまで、料理が下手くそだったとは。今の腕前からは、考えられない。
「そこから奮起なさって、シルヴィア先輩は料理を研究なさり、ようやく今の境地にたどり着きましたの。たしか、文化祭が決め手でしたわ」
そういえば、文化祭で好評だったと言っていたな。
「あれ以来、シルヴィア先輩は人に料理を振る舞うことが快感になったようですの」
「けど、オヤジからしたら『カタギの仕事じゃねえか』と指摘されてのう」
裏社会で名を轟かせていた『ギンヤンマのドゥー』さんからすれば、シルヴィアの屋台は軟弱に見えたのだろう。
「アーシは、屋台でやっていきたいんじゃ。天下とか、それ以前の問題なんじゃ。まず、目の前の人を笑顔にしたい」
「わかったよ。じゃあ、戦うしかねえよな」
「じゃけん、応援してください、カズヤさん」
「おう」
「シルヴィア、少しはおじさんの話も聞いてやったほうがいいんじゃ?」
「カズヤさんは、やっぱりオヤジの味方なんか?」
「そうじゃねえって。あの親父さんからは、あんま悪意的なものは感じなかったんだよ」
シルヴィアのキレっぷりから、かなり聞き分けのない父親なのだろうと思っていたが。
案外、茶目っ気のある人物に見えたのである。
「私も同意見だ。ふたりとも、意固地になっているだけのような気がしたぞ」
オレとドナだけじゃない。
「なんだか、想像していた以上に普通でしたね」
「見た目はオトナだけど、中身はガキンチョ」
フィーラとシノブまで、オヤジさんの印象が変わっている。
「どうしてまた、シルヴィアは父親とモメているんだ?」
「早い話が、跡継ぎ問題だ」
ドロリィスが、詳しい事情を聞かせてくれた。
「単にシルヴィアが一人娘だから、早く婿が欲しいってわけだ。そこに、彼女の意思など関係ない」
「うーん。わかりやすいっ」
単純であるがゆえに、複雑な事情だ。オレたちが口を挟んでいい問題なのかどうか。
「だから、シルヴィアは独り立ちがしたいんだな?」
「それだけじゃねえっての。前にも言うたが、アーシは切った張ったは好かん。オヤジみたいな拳で全部解決するような単細胞は嫌いなんじゃ」
男性のとして、父親のようなタイプは気に食わないという。
「魔王の夫なんか、いらん! アーシは自立したいんじゃ。できれば、魔王業なんかじゃなく!」
「では、スゴロク場になることは、特に問題視していないと言うわけだな?」
ドナが、シルヴィアに詰め寄った。
「そこはまあ、ええじゃろ。じゃが、オヤジの介入があるのが好かん!」
「なるほどな。カズヤ、コイツはファザコンだ」
「ファザコンじゃと!? あんた、もっぺん言ってみいよ!」
シルヴィアが、ドナの胸ぐらをつかむ。
「待て待て! ドナに当たってもしょうがねえだろうが! 落ち着けってシルヴィア!」
オレは、ドナとシルヴィアの間に割って入った。
「アーシは、オヤジと違うんじゃ」
ドナを離し、シルヴィアはそっぽを向く。
似た者同士のような気が、するんだけどなあ。
「話し合うより、拳で語り合うしかないですね」
「だよなあ」
この手のタイプは、口で言ってもわからない。河原で殴り合いするくらいじゃないと、相手を理解できないだろう。
「シルヴィア先輩の本気なんて、一年のときは見られませんでしたわ」
アンネローゼが、去年のシルヴィアの様子を教えてくれた。当時からギャルファッションで、周囲でも浮いた存在だったという。
「一年のとき、風紀委員だったユーニャさんに睨まれて、それでもご自身のスタイルを曲げることはありませんでしたわ」
周りに噛みつくことも多かったそうだ。
しかし、地球への修学旅行で、彼女は変わった。
「地球の屋台で感化されたらしく、わたくしもよく試食役を任されましたわ。最初はしょっぱかったり薄味だったりと、試行錯誤の連続でございました」
「ワタシも食わされたな。あれはひどかった」
アンとドロリィスが、腕を組む。
そこまで、料理が下手くそだったとは。今の腕前からは、考えられない。
「そこから奮起なさって、シルヴィア先輩は料理を研究なさり、ようやく今の境地にたどり着きましたの。たしか、文化祭が決め手でしたわ」
そういえば、文化祭で好評だったと言っていたな。
「あれ以来、シルヴィア先輩は人に料理を振る舞うことが快感になったようですの」
「けど、オヤジからしたら『カタギの仕事じゃねえか』と指摘されてのう」
裏社会で名を轟かせていた『ギンヤンマのドゥー』さんからすれば、シルヴィアの屋台は軟弱に見えたのだろう。
「アーシは、屋台でやっていきたいんじゃ。天下とか、それ以前の問題なんじゃ。まず、目の前の人を笑顔にしたい」
「わかったよ。じゃあ、戦うしかねえよな」
「じゃけん、応援してください、カズヤさん」
「おう」
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