フリーター、魔王候補の集まる女子寮の大家になる

椎名 富比路

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第五章 フリーター、大魔王からJKのダンジョンを守る ~親娘対決編~

第30話 父娘ケンカ

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「んなんじゃあ、くそオヤジがぁ!」

 腰に手を当てて、シルヴィアが初老の男性に怒鳴り散らす。

「黙れや小娘が!」

 対する男性も、腕を組んでわめいていた。初老の男性は袴を着ていて、胸からは入れ墨が見える。東洋の色のついたものではなく、外国のマフィアが彫っているようなラテン語だ。異国のヤクザを思わせる。

「何事なんだ、シルヴィア?」

「ああ、コイツはアーシのオヤジなんじゃが」

 父親だという人物を、シルヴィアは親指で差す。明らかに父を紹介する仕草ではなかった。

「親を指差す娘がおるかい!」

 また、初老の男性が怒った口調で叫んだ。

「久しいな、ギンヤンマのドゥー。何年ぶりか?」

「ワシをそう呼ぶのは、あんたドナ・ドゥークーかえ? あのおチビちゃんが、こんな大きゅうなって」

 さっきまで鬼のような形相だった男が、急に大人しくなる。

「あの、オレはカズヤといいます。事情を説明願えますか?」

 なんとか、状況を把握しておきたい。

「おうおう。ワシはシルヴェリオ・ドゥーイエラ。シルヴィアの父親じゃ」

「なんとお呼びすれば」

「ドナと同じように呼んだらええ」

 シルヴィアと同じ「シルバー」の名を冠しているため、オレはドナと同じように「ドゥー」さんと呼ぶことにする。

「ツボを振る手さばきと、敵を俊足で倒す神速の姿から、『ギンヤンマのドゥー』と呼ばれている」

 ドナが、ドゥーさんを説明してくれた。

「そのドゥーさんが、シルヴィアとなにを揉めているんです?」

「どないもこないもねえわ! ワシがビジネスしようとしていたときに!」

 どうもドゥーさんは、シルヴィアがユーニャさんに領地を分け与えたのが気に食わないらしい。

「よりにもよって、商売敵にテリトリーを預けおって! 勇者相手じゃったら、手が出せん!」

「そないされる思うて、先手を取ったんじゃ」

「テーマパークにして大儲けしようという計画が、台無しじゃ!」

「闇カジノのなにがテーマパークじゃ!」

「オトナのテーマパークじゃろうが、賭場は!」

 まるでギャンブル狂の発言だなあ……。

「あのーその賭場というのは」

「よう聞いてくれた」

 ドゥーさんは、話す気満々だ。

 対するシルヴィアは、「聞かんでええよ」とオレに耳打ちしてくる。

「賭場っちゅうんは、スゴロクじゃ。あんたも地球人なら、あのゲームのスゴロクいうたらわかるんじゃろ?」

「……あーっ。スゴ、あーっ」

 オレは、某有名なRPGのスゴロクを思い出した。ドはまりしたのが、懐かしい。

「わかります。あれ、移植版では実装されていないんですよね?」

「そうじゃ! あのRPGいうたら、アレじゃろうが! ワシはあれが実装されてない現状に切れ散らかして、リアルで作っちゃることにしたんじゃ」

 それが、賭場だと。

 たしかあれは、カジノのアトラクションじゃないのだが。

「そのスゴロクフロアを、今ユーニャちゃんが占領している場所に作ろうとしたんじゃ」

「うーん。そりゃあ怒るかな」

「カズヤさんっ、あんたはくそオヤジの味方するんか!?」

 シルヴィアが、オレに凄んできた。

「違うっての。ただ、あのスゴロクはそれだけ魔力があるんだよっ」

 後継機の移植版で実装されていないだけで、クソ移植呼ばわりされるほどに。

「とにかく、すぐに図面武闘会じゃ。あの領地を巡って!」

「望むところじゃジジイ!」
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