フリーター、魔王候補の集まる女子寮の大家になる

椎名 富比路

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第四章 フリーター、JKのケンカを仲裁する ~図面武闘会 激闘編~

第28話 カズヤからの提案

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「シルヴィアは道の駅の管理が大変で、魔王業務まで手が回らない。そこで、ダンジョンの管理はユーニャに任せたいと言ってきたのだ」

 ドナが、オレに代わってユーニャさんに説明をする。

「別に構わないわ。けれど、それではペナルティになりません!」

「いや。ペナルティだ。お前に選択権はないからな」

「私に、ダンジョンを探すな、と?」

「そういうことになる」

 魔王にとって、ダンジョン選びは一つのステータスだ。しかし、ユーニャさんは出来合いのダンジョンを管理させられる。

 これは、魔王としてはあまり褒められたものではない。自分の意思で侵略しているわけじゃないからだ。

「けれど、ケンカを売ってしまった以上は仕方ないわね……」

「そうじゃ。誰を敵に回したんか、考えてもらわんと」

「人間相手に、こんな目に遭わされるなんて」

「カズヤさんはそれだけ、アーシらにとって大切な存在なんじゃ。それを邪険にされたら、アーシでも怒るけんね」

 珍しく、シルヴィアが腹を立てていた。シルヴィアは普段、人に怒った顔など見せない。

「あなたたちの考え方を、そこまで変えてしまうなんて」

「いや。あの道の駅が買い取ってもらえんと言われたとき、カズヤさんがちょっとさみしげな顔をしたんよ。それが、気になっとっただけじゃ」

 オレ、そんな顔したっけ?

「でも、物件がこのまま寂れていくってのは寂しいなって思ったな」

「その優しいところが、みんなを引っ張っとるんよ」

「そうか」

 こうして、物件の話はまとまるかに思えた。

「でも、私とあなたは、敵対しているのよ? いいの? 私にダンジョンを任せても」

「敵対しているってのは?」

「彼女の家は、長年勇者と対立している、超弩級の魔王一家よ? 対して私は、そんな魔王一家と常に睨み合いを続けてきた、最強の勇者部隊の一角なのよ」

 そんな二人が、同じ敷地内をシェアし合うのだ。

「まともじゃないわ。部下に示しがつかないんじゃなくて?」

「はんっ。そんなチンケな悩みで、アーシとの契約を反故にしようとしとるんか?」

「チンケって! 大事な話よ!」

「アーシにしてみれば、チンケじゃ。今は令和ぞ? なにをしょーもない派閥争いで揉めとるか。今は、そんなんで勇者が務まる時代じゃと思うとるんか?」

 ユーニャさんの瞳からは、迷いの色が見える。

 対して、シルヴィアは強気だ。

「あんた、それで生徒会長なんか? しょーもな」

「しょうもないですって!?」

「くだらんわ。勢力争いごときで、アーシの屋台骨が揺らぐとでも考えとるんかいな」

「くっ……」

「決まりじゃ。あんたに選択権なんてないんじゃ。後は、アーシがなんとかするけん」

 こうして、正式にユーニャさんがシルヴィアのダンジョンを管理することとなった。

「そうだ。いっそツィナーとドロリィスも、シェアし合えばいいじゃないか」

「ワタシが、ツィナーと?」

「そうだ。二人はどうせしのぎを削り合うんだろ?」

 だったら、もういっそ二人で住んでしまえばいい。

 上下にダンジョンを分けて、どっちでも。

「じゃあ、それで」

「いいのか、ドロリィス?」

「おう」


 

 だが、後日大変なことに。

 また、図面武闘会が開かれることとなったのだ。

 しかも、シルヴィアと、彼女の親が戦う。

(第四章 完)
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