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第二章 魔法科学校に入ったら、女子生徒全員がリバースしたぞ
第11話 一人で冒険に行こうとする許嫁と、一緒に旅をするZO★
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チチェロの私室へ行くと、チチェロが旅支度をしていた。
オールシーズン使えそうな、外套を羽織っている。下は白いシャツと、ショートパンツタイプのサロペットジーンズ。腰には魔法装飾の施された剣を携え、足にはナイフをベルトでくくりつけている。
リュックには、数日分の食料まで詰めていた。
本格的に、出ていくつもりだ。
同居人のフゥヤは、もういない。
卒業とともに荷造りを済ませ、出ていった。国に帰るという。
「どこへ行く?」
オレは、チチェロに声をかけた。
「父を探しに行きます」
「待て。魔王の軍勢相手に、一人では危険だ」
「一人ではありません。姫騎士クッコ様の調査隊に同行するのです」
聞いた話によると、チチェロの父親は伝説の勇者だったらしい。連絡すらよこさない父を、チチェロは探しに行きたいのだという。
「オレが許可を出していないのに、ゆくのか?」
「国王様からは、おいとまの許可をいただいております。この件に関しては、ジュライ王子のお手間を取らせません」
「チチェロ!」
「お世話になりました」
オレは、去ろうとするチチェロの腕を掴む。
「どうしても、行くんだな?」
「はい。まだ止めなさりますか?」
「いや。オレも一緒に行く」
「ジュライ様!」
「夫であるオレが同行するなら、ムチャはするまい」
「いけません! あなたは、国王様をサポートすべき存在。わたしは、すぐに戻ってまいります。この一件を終えましたら、処罰なり、許嫁なり、なんなりとお申し付けください。ただ、このワガママだけは聞いていただきたく……」
「そう言って、魔王討伐も行うのだろう?」
チチェロは、沈黙する。それが、答えか。
「オレの許可なく、死ぬことは許さぬ」
「使用人ごときに、そこまで思い入れをなされては」
「キミは、ただの使用人ではない。オレの妻になる存在なのだ。命を粗末にしてはならぬ」
オレはチチェロを連れて、王の間に向かう。
「父上、話がある」
「なんだよ?」
「オレは、王室の称号を放棄する」
「マジ?」
「ただの冒険者となって、チチェロの旅に同行したい」
父親の顔は、驚きが半分と、予想通りといった様子が半分あった。
「それで、王子の称号が邪魔だと?」
「そうだ。オレが王子でなければ、魔王討伐だろうとなんだろうと、出陣して問題はあるまい。ましてオレは第九王子。死んでも国にダメージは入らぬ」
「いやあ。ぶっちゃけ、お前みたいな規格外の術師を野に放つ方が、国家としてはヤバイんだけどな」
「今は、そんなことを言っている場合ではない」
「姫騎士のクッコ殿まで、出陣なさるのだ。お前が焦って、行くことはあるまいて」
「魔物の軍勢との戦いは激化していると聞く。王族の我々が、戦わずしてどうする?」
「わかったよ」
父王が、配下を呼びつけた。オレのために、装備品一式を用意させる。オレが出ていくと、見越していたのだろう。
持たされた武器は、細剣である。魔法銀でできており、装飾も複雑である。
「我が王族が戦争になった場合のために用意された、サーベルだ。魔法を撃ち出す杖としても、使用可能である」
服には、王族の腕章まで。といっても、「自分は王族だ」といった偉そうな出で立ちではない。
「これでは、いかにも王族ではないか」
「称号剥奪までは、する必要はなかろう。こちらからも、討伐隊を出した体にしておく」
王族から、数名の兵士を連れて行っていいとも言われた。
「父上の守りも、必要だ。兵隊をゾロゾロと、連れていくわけにはいかんぞ」
「心配するな。とっておきのいい人材を、用意してある」
外に出てみろというので、王城から出てみた。
「うっス」
「フゥヤ!」
出ていったと思われたフゥヤが、スケルトンを引き連れて待機しているではないか。
「ミケルセン王から伝達があったときは、なんか粗相をしたのかって思ったっスよぉ」
「なにかしらの因果か、運命を感じるな。しかし、いいのか? 魔王討伐は、大変だぞ」
「どのみち、行かないといけないんスよ。ウチは魔王の領土とご近所なので」
たしかにな。
オレたちは、クッコ姫のいる騎士詰め所へ。
「お、王子も同行してくださるのか。心強いな」
クッコ姫は、兵士たちに稽古をつけていた。
なぜ王室にいらっしゃらないのかと思ったが、身体が鈍るのを嫌ったようだ。
騎士団は、男女含めて数名である。少数精鋭という感じか。
「たいした手伝いはできんが、よろしく頼む」
「ご謙遜を。王子が一番、頼りになるんだが?」
「そうですかな? クッコパイセンに敵う騎士は、男でも見当たらないと聞きますぞ」
「それは、女性を褒める言葉ではありませんよ。ワハハ!」
クッコ姫が、腰に手を当てる。
隊列はクッコ姫とオレが先頭だが、戦いになったらオレは後衛に回ってサポート役だろうな。フィジカルは明らかに、チチェロの方が強いから。
それにしても、今まで出会った人々と、一同に介するとは。
しかも、目的は同じ。
これはデスティニーなのではないか?
「チチェロ、人を引き寄せる力も、キミに備わったパウワなのかもしれないZO☆」
「う、おおえええええええ!」
虹色のキラキラを、三人して吐き出す。
出発の門出に虹が咲くとは、幸先がいいな。
(第二章 完)
オールシーズン使えそうな、外套を羽織っている。下は白いシャツと、ショートパンツタイプのサロペットジーンズ。腰には魔法装飾の施された剣を携え、足にはナイフをベルトでくくりつけている。
リュックには、数日分の食料まで詰めていた。
本格的に、出ていくつもりだ。
同居人のフゥヤは、もういない。
卒業とともに荷造りを済ませ、出ていった。国に帰るという。
「どこへ行く?」
オレは、チチェロに声をかけた。
「父を探しに行きます」
「待て。魔王の軍勢相手に、一人では危険だ」
「一人ではありません。姫騎士クッコ様の調査隊に同行するのです」
聞いた話によると、チチェロの父親は伝説の勇者だったらしい。連絡すらよこさない父を、チチェロは探しに行きたいのだという。
「オレが許可を出していないのに、ゆくのか?」
「国王様からは、おいとまの許可をいただいております。この件に関しては、ジュライ王子のお手間を取らせません」
「チチェロ!」
「お世話になりました」
オレは、去ろうとするチチェロの腕を掴む。
「どうしても、行くんだな?」
「はい。まだ止めなさりますか?」
「いや。オレも一緒に行く」
「ジュライ様!」
「夫であるオレが同行するなら、ムチャはするまい」
「いけません! あなたは、国王様をサポートすべき存在。わたしは、すぐに戻ってまいります。この一件を終えましたら、処罰なり、許嫁なり、なんなりとお申し付けください。ただ、このワガママだけは聞いていただきたく……」
「そう言って、魔王討伐も行うのだろう?」
チチェロは、沈黙する。それが、答えか。
「オレの許可なく、死ぬことは許さぬ」
「使用人ごときに、そこまで思い入れをなされては」
「キミは、ただの使用人ではない。オレの妻になる存在なのだ。命を粗末にしてはならぬ」
オレはチチェロを連れて、王の間に向かう。
「父上、話がある」
「なんだよ?」
「オレは、王室の称号を放棄する」
「マジ?」
「ただの冒険者となって、チチェロの旅に同行したい」
父親の顔は、驚きが半分と、予想通りといった様子が半分あった。
「それで、王子の称号が邪魔だと?」
「そうだ。オレが王子でなければ、魔王討伐だろうとなんだろうと、出陣して問題はあるまい。ましてオレは第九王子。死んでも国にダメージは入らぬ」
「いやあ。ぶっちゃけ、お前みたいな規格外の術師を野に放つ方が、国家としてはヤバイんだけどな」
「今は、そんなことを言っている場合ではない」
「姫騎士のクッコ殿まで、出陣なさるのだ。お前が焦って、行くことはあるまいて」
「魔物の軍勢との戦いは激化していると聞く。王族の我々が、戦わずしてどうする?」
「わかったよ」
父王が、配下を呼びつけた。オレのために、装備品一式を用意させる。オレが出ていくと、見越していたのだろう。
持たされた武器は、細剣である。魔法銀でできており、装飾も複雑である。
「我が王族が戦争になった場合のために用意された、サーベルだ。魔法を撃ち出す杖としても、使用可能である」
服には、王族の腕章まで。といっても、「自分は王族だ」といった偉そうな出で立ちではない。
「これでは、いかにも王族ではないか」
「称号剥奪までは、する必要はなかろう。こちらからも、討伐隊を出した体にしておく」
王族から、数名の兵士を連れて行っていいとも言われた。
「父上の守りも、必要だ。兵隊をゾロゾロと、連れていくわけにはいかんぞ」
「心配するな。とっておきのいい人材を、用意してある」
外に出てみろというので、王城から出てみた。
「うっス」
「フゥヤ!」
出ていったと思われたフゥヤが、スケルトンを引き連れて待機しているではないか。
「ミケルセン王から伝達があったときは、なんか粗相をしたのかって思ったっスよぉ」
「なにかしらの因果か、運命を感じるな。しかし、いいのか? 魔王討伐は、大変だぞ」
「どのみち、行かないといけないんスよ。ウチは魔王の領土とご近所なので」
たしかにな。
オレたちは、クッコ姫のいる騎士詰め所へ。
「お、王子も同行してくださるのか。心強いな」
クッコ姫は、兵士たちに稽古をつけていた。
なぜ王室にいらっしゃらないのかと思ったが、身体が鈍るのを嫌ったようだ。
騎士団は、男女含めて数名である。少数精鋭という感じか。
「たいした手伝いはできんが、よろしく頼む」
「ご謙遜を。王子が一番、頼りになるんだが?」
「そうですかな? クッコパイセンに敵う騎士は、男でも見当たらないと聞きますぞ」
「それは、女性を褒める言葉ではありませんよ。ワハハ!」
クッコ姫が、腰に手を当てる。
隊列はクッコ姫とオレが先頭だが、戦いになったらオレは後衛に回ってサポート役だろうな。フィジカルは明らかに、チチェロの方が強いから。
それにしても、今まで出会った人々と、一同に介するとは。
しかも、目的は同じ。
これはデスティニーなのではないか?
「チチェロ、人を引き寄せる力も、キミに備わったパウワなのかもしれないZO☆」
「う、おおえええええええ!」
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(第二章 完)
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