イケメン王子に転生したけど、常時発動スキル【おじさん構文】でヒロイン全員リバースしたZO☆ でも悪い気を取り除くだけだから安心だね❤

椎名 富比路

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第二章 魔法科学校に入ったら、女子生徒全員がリバースしたぞ

第8話 同行していた姫騎士パイセンをお姫様抱っこしたら、リバースされた。NAZEDA?

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「ジュライ王子、なんという才能なんだ……」

 オレの奇行に、クッコ姫も唖然としていた。

「こんな魔法使いは、初めて見る。魔法が発動する前に、魔力で相手を攻撃するなんて」

「ま、まあ、遠足自体は先輩が同行してくださるでしょうから、不測の事態になればなんとかなるでしょう。ではみなさん、しゅっぱーつ」

 近くの山まで、速歩きで向かう。

 これも、ちゃんとしたトレーニングなのだ。
 足に魔力を集中させて、速力を上げて目的地に向かうのである。
 冒険者には必須の、スキルなのだ。
 今でこそフルパワーで全力疾走だが、熟練者となると二分の力で倍のスピードを出せる。

 眼の前にいる、姫騎士先輩のように。

「どうした? だらしないぞ。女の私に負けて、悔しくないのか?」

 いや、他の先輩もヒイヒイいいながら走っていますので。
 そこまでレベルが高いのは、あなただけです。
 
「では、とうちゃーく」

 まったく息一つ切らさず、ヒリング先生がダンジョンの前に立つ。

 生徒たちは、みんな息が上がっている。

 先生が、生徒たちを整列させた。数人ずつで、パーティをクマせる。

「それでは、王子の班は、チチェロさんとフゥヤさんでお願いします。引率は、クッコ姫にお願いしますね」
 
「お安い御用です。このクッコ・ローゼンハイム。ミケルセンの王子には傷一つ付けませぬ」

 大剣を掲げて、クッコ先輩が腰に手を当てた。
 
 頼もしい。
 
 山にできた亀裂が、ダンジョンの入口である。

「乗り込むぞ」

 しんがりのクッコ姫が、オレたちを促す。

 自然発生した瘴気が山に切れ目を作り、ダンジョンになるという。人工的に作られるダンジョンもあるが、こちらは人の手は入っていない。

 一番後ろに陣取っているが、クッコ姫はダンジョンの全体を見回していた。オレたちがどう動いてもいいように、常に臨戦態勢を取っている。

「危なくなったり失敗したりでもいい。そうやって学ぶものだ。とはいえ、警戒は怠るな」

「は、はいっ」

 クッコ姫から声をかけられて、チチェロは声が裏返った。
 チチェロは、緊張しているようだ。

「ところでチチェロくんは、どうして魔法を習おうと思ったのだ?」

 姫先輩が、チチェロに質問をする。
 
「えっと、自分の魔力を制御できるようになって、もっと王子のお役に立とうと」

「それにしては、本格的すぎるな。人を守るための魔法にしては、威力が若干高い気がした」

 うわ。やっぱり先輩だ。ちゃんと見ているんだな。
 オレが密かに覚えていた違和感を、先輩はひと目見て異常だと感じ取ったのか。

「……本当は、父を探す旅に出たいんですが」
 
「お父上は、どういう仕事を?」

「冒険者です。ミケルセンの王様から、腕を買われて」

 そんな実力者だったのか。チチェロのおじさんってのは。
 これは、ごあいさつに行かなければ。「どうも、未来の夫です」ってね❤

 小鬼族が、行く手を遮る。
 
「来るぞ! ゴブリン共だ!」

 油断すると身ぐるみ剥がされるので、「初心者キラー」としても知られているそうな。

 まあ、こんな奴らにスキを見せる姫騎士様ではない。
 指示すら出さず、すべてオレたちに任せる。信頼してくれているのか。
 自分に迫ってくる相手にだけ対処をして、他にトラップなどがないかを確認している。オレたちだけでは、見落とす可能性があるからだろう。
 
「動くんじゃねえギャ! こいつらがどうなってもいいのギャ?」

 クラスメイト全員が、拘束されている。

「バカな!? 引率の奴らはどうした!?」

 指導員である先輩たちは、真っ先に闇討ちをかけられて昏倒していた。

「腕利きの戦士たちが、どうして……なっ!?」

 ゴブリンたちを率いていたのは、猪の頭を持つ大男である。
 
「オークキングだと!? 上位種がなぜこんなダンジョンに!?」

「姫が来ると聞いて。出待ち」

 オークキングは、やたらメタい発言をした。

「つまり、狙いはクッコ姫ただ一人だったわけか?」

 オレが聞くと、オークキングは「そそ」と短く答える。

「姫たんさえくれたら、安全に帰す。でも抵抗するなら、全員始末するしかない」
 
「くっ! なんという!」

 クッコ姫が、剣を地面に突き刺した。その場に、あぐらをかく。

 リアル「くっころ」だ。

「よきかな。一歩でも動いたら、やっちゃうよ」

 オークキングは、勝ち誇ったように言う。
 姫の眼の前にしゃがみこんで、ハアハアしはじめた。

 クッコ姫は、不快感をあらわにする。

「フン。こんなしょうもないトラップに、オレたちが屈すると思うか?」

 オレは、ゴブリンやオークを挑発する。

「は?」

「お前ごときに、姫様はもったいない。もっと高貴な王族こそ、姫の相手にふさわしい。お前もキングなら、こんな姑息なマネなどせずにアタックできるはずだ」

 言葉を発しただけで、オレはゴブリンの向けるナイフを溶かす。

「クッコ姫、こんなところであなたの純潔を散らすわけにはいかぬ。見ているがいい。身の程をわきまえる必要性を、このブタに思い知らせる」

「なんだと!?」

 顔を真っ赤にして、オークキングがブチギレる。

「お前ごとき、オレの言霊の力なんぞ必要ない。力で解決がお望みなら、その通りにしてやろう。【ファイアボール】!」

 オレは、クッコ姫の剣に向けて、ファイアボールを唱えた。
 
 投げキッスによって繰り出された火球が、クッコ姫の剣に当たる。

 ハート型の火球は剣に跳ね返り、オークの鼻の穴を直撃した。

「うげえええ! きめえええええ! ブッパ!」

 オークキングの頭が、吹っ飛ぶ。

「さあみんな、目覚めのコーヒーの時間だ。朝のひとときを、オレと楽しもうではないか」

 オレは、気絶している生徒全員に言霊を発した。

「おえええええええええええ!」

 生徒たちが、寝●ロによって目を覚ます。

「ギャギャギャ! こんな覚醒方法があったなんて!」

 強い個体を失ったゴブリンたちが、屈強の魔法科学生なんかに勝てるはずもなく。

 ゴブリン殲滅と、生徒全員の逃走を確認して、オレは姫に手を差し伸べた。

「さて、クッコ姫、逃げましょう」

「足が、まだすくんで」

 格下の魔物によってオモチャにされそうになったためか、恐怖で起き上がれないらしい。

「おまかせを。ひょいっと」

「うわっ、なにをする!?」

 オレは、クッコ姫を文字通り「お姫様抱っこ」した。

 背後には、大量のゴブリン共が。オレたちを追ってきている。
 それにしても、すごい数だ。まだ、あんなにも潜んでいたのか。

「やめんか、ジュライ殿! 自分の足で立てるから!」
 
「やめるわけないでしょう。大切なパイセンを、傷物にはさせられないZE」

「うっぐ!」

 クッコ姫が、口を両手で抑える。

 これは、やばいか。

 オレは、クッコ姫を後ろに向けさせた。
 
「ぼええええええ!」
 
 胃の許容量をはるかに超える量のキラキラが、ゴブリンに降り注ぐ。
 ゴブリンどころかダンジョンすべてが、虹色のキラキラによって水没していく。


「たしかに、オークキングの戦利品ですねえ」

 帰宅後、ヒリング先生によってダンジョンは浄化された。ニオイもすっかり、消えてなくなっている。

「お恥ずかしい」

「いえ。クッコさんが恥じることは、なにひとつありませ~ん。ダンジョンにオークキングがいることを把握していなかった、学校側の責任です~」

 ダンジョンを適当にチェックした職員は、処分されるらしい。
 
「それにしても、ジュライ王子の力は、凄まじかったですね」

「ですよねえ。あなたが吐き出したのは、体内の魔力ですから~」

「だから、あんな量の……アレを吐き出したのですね。自分でも不思議でした」

 え、オレ、大活躍だったの?
 
 ぶっちゃけ、まったく自覚がないんだけど?
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