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第一章 転生した身体は、木でできていた
第7話 冒険者登録
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「ふう。危なかったね」
ボクは、ツタを体内に収める。
ガルバは、呆然としていた。
「おお、感謝するぞ。コーキ。そのスキル、すげえな。【シャーマン】の、トップクラスみたいだ」
「いやあ、偶然だよ」
羽音が聞こえてきたから、動いたまでである。
「それでもありがたい。素材は、お前さんにあげるぜ」
「いえいえどうぞ。それは、持っていてください」
ガルバが自分の獲物まで分けてくれそうだったので、慌てて遠慮した。
ようやく森を抜けて、街道へ。
しばらく歩いていると、小さな都市が見えてくる。
「ほら、あれが『ツリーイェン』の街だよ」
この街は、ミノクス地方の『ツリーイェン』だと教わった。
「どんな街?」
「とにかく、賑やかだね。ワインの名産地だから、お酒や屋台が多いよ」
「ボクの作るお酒より、おいしいのかな?」
「コーキの作るワインは、独特の味だよね。さっぱりしていて甘くて。コーキの性格を表した、優しい味だよ」
パロンは、ボクの身体から作ったワインをおいしいという。
「たしかに、ここはワインが名産だ。少し酸味が強いが、いけるぜ」
「お父さんは、飲み過ぎなの。ほどほどにしないと、お金が貯まらないよ」
「むむむ……」
ガレリアが、アザレアに諭される。
ミノクス領、ツリーイェンという街に到着した。
木製の家や店が立ち並ぶ、緑の香りがかぐわしい街である。
果樹園が近くにあり、お酒の生成が盛んな土地のようだ。
ブドウなどを植えてきて、よかったかも? 森に植樹しておけば、ボア族やクマに果樹園を荒らされたりしないよね。
日本だって、果物がなる広葉樹を植えてクマから街や畑を守っているっていうし。
「まいど」と、やる気のなさそうなメイドさんが受け答えする。
「やあ、ギンコ。相変わらず、無愛想だね」
パロンが、カウンターにいるメイドさん風の女性にあいさつをした。
「フフッ、あんたら冒険者にくれてやる愛想なんて、あたしにはないのさ」
「キミは普段から、愛想を振りまくタイプじゃないじゃん」
「これでも、ギルドマスターだからな」
ええ……ギンコさんってこの姿で、ギルドマスターなんだ。
「気にしないでね、コーキ。彼女の服は、趣味だから」
ボクが驚いていると、パロンが解説してくれる。
「先に、こっちをやらせてくれ。ガルバ、アザレア。薬草の依頼だったな」
「はい。どうぞ」
アザレアが、薬草をギンコさんに渡した。
「たしかに、受け取った。あんたはいい仕事をするから、街のやつらも助かっているよ」
「そのアザレアが、彼らに助けてもらった。礼がしたいんだが、受け取ってもらえない」
ギンコさんが、ガルバの用意したオウルベアとウルフの素材も受け取る。
「大したもんだね。こんなきれいな魔物の素材は、めったに見ないよ」
「ああ、いえ」
ボクは自分の手際がどんなものか、よく把握していない。すごいのかな?
「あと、これが魔法石だ」
「たしかに」
ギンコさんが、血の色をした宝石を受け取った。
魔物は、倒すと魔法石という石を落とす。オウルベアが落とした魔法石は、親指くらいある。ウルフの落としたものは、それより小さい。小石くらいだ。
「ガルバたちの用事は、終わったよ。で、パロン。今日はどうした?」
「彼の、冒険者登録がしたい」
パロンが、紙を受け取った。
「じゃあこの用紙に、必要事項を書きな。あとはこっちで、適当に処理するから」
ぶっきらぼうだが、教え方は親切丁寧だ。
「顔の写真とかは、必要ですか?」
一応、この世界には写真技術があるみたい。賞金首の一覧表などが、写真で表示されている。
「血液だけをちょうだい。あとはこっちでやるから」
うーん、血液かぁ。
「パロン、ボクって血って出るのかな?」
ウッドゴーレムだよ、ボク?
「樹液なら出るじゃん。それを垂らせば血とみなされるよ。なんでもいいんだ」
「アバウトだなあ」
「冒険者なんて、そんなもんだよ」
犯罪に手を染めさえしなければ、冒険者はとくに咎められないという。
クエストを達成してもらえば、税金も払わなくていいというし。
「そうなんだ」
「クエストの報酬はどれも、キミたちの世界でいう『源泉徴収済み』なんだ」
なるほど。クエストをこなせば、自然と納税しているのか。だからクエストをしないと、普通に働いて税金を収めなければならないんだね。
冒険者登録は、とどこおりなく終わった。
パロンの指導で、サインも冒険者カード受領も問題なし。
「冒険者のカードって、ドッグタグなんだねぇ」
「そうだよ。特殊な製法で、金属を加工するんだ。名前が刻まれているだろ?」
「うん。冒険者になったーって、気分がするよ」
タグに付いた星の数で、冒険者のランクが決まるみたいだ。クエストをこなすと、星も増えていくみたい。
「星を増やすと、受けられるクエストも増えるぞ」
クエストの内容が書いてある張り紙も、星ごとにボードで分けてある。
ボードの前には、大量の冒険者が立っていた。仕事を探しているんだろう。星の数が多いボードほど、強そうな人が集まっている。
「色々と、ありがとうございます。ギンコさん」
「そのタグで、今のレベルやステータスを確認できるよ。やってみな」
ボクは、ツタを体内に収める。
ガルバは、呆然としていた。
「おお、感謝するぞ。コーキ。そのスキル、すげえな。【シャーマン】の、トップクラスみたいだ」
「いやあ、偶然だよ」
羽音が聞こえてきたから、動いたまでである。
「それでもありがたい。素材は、お前さんにあげるぜ」
「いえいえどうぞ。それは、持っていてください」
ガルバが自分の獲物まで分けてくれそうだったので、慌てて遠慮した。
ようやく森を抜けて、街道へ。
しばらく歩いていると、小さな都市が見えてくる。
「ほら、あれが『ツリーイェン』の街だよ」
この街は、ミノクス地方の『ツリーイェン』だと教わった。
「どんな街?」
「とにかく、賑やかだね。ワインの名産地だから、お酒や屋台が多いよ」
「ボクの作るお酒より、おいしいのかな?」
「コーキの作るワインは、独特の味だよね。さっぱりしていて甘くて。コーキの性格を表した、優しい味だよ」
パロンは、ボクの身体から作ったワインをおいしいという。
「たしかに、ここはワインが名産だ。少し酸味が強いが、いけるぜ」
「お父さんは、飲み過ぎなの。ほどほどにしないと、お金が貯まらないよ」
「むむむ……」
ガレリアが、アザレアに諭される。
ミノクス領、ツリーイェンという街に到着した。
木製の家や店が立ち並ぶ、緑の香りがかぐわしい街である。
果樹園が近くにあり、お酒の生成が盛んな土地のようだ。
ブドウなどを植えてきて、よかったかも? 森に植樹しておけば、ボア族やクマに果樹園を荒らされたりしないよね。
日本だって、果物がなる広葉樹を植えてクマから街や畑を守っているっていうし。
「まいど」と、やる気のなさそうなメイドさんが受け答えする。
「やあ、ギンコ。相変わらず、無愛想だね」
パロンが、カウンターにいるメイドさん風の女性にあいさつをした。
「フフッ、あんたら冒険者にくれてやる愛想なんて、あたしにはないのさ」
「キミは普段から、愛想を振りまくタイプじゃないじゃん」
「これでも、ギルドマスターだからな」
ええ……ギンコさんってこの姿で、ギルドマスターなんだ。
「気にしないでね、コーキ。彼女の服は、趣味だから」
ボクが驚いていると、パロンが解説してくれる。
「先に、こっちをやらせてくれ。ガルバ、アザレア。薬草の依頼だったな」
「はい。どうぞ」
アザレアが、薬草をギンコさんに渡した。
「たしかに、受け取った。あんたはいい仕事をするから、街のやつらも助かっているよ」
「そのアザレアが、彼らに助けてもらった。礼がしたいんだが、受け取ってもらえない」
ギンコさんが、ガルバの用意したオウルベアとウルフの素材も受け取る。
「大したもんだね。こんなきれいな魔物の素材は、めったに見ないよ」
「ああ、いえ」
ボクは自分の手際がどんなものか、よく把握していない。すごいのかな?
「あと、これが魔法石だ」
「たしかに」
ギンコさんが、血の色をした宝石を受け取った。
魔物は、倒すと魔法石という石を落とす。オウルベアが落とした魔法石は、親指くらいある。ウルフの落としたものは、それより小さい。小石くらいだ。
「ガルバたちの用事は、終わったよ。で、パロン。今日はどうした?」
「彼の、冒険者登録がしたい」
パロンが、紙を受け取った。
「じゃあこの用紙に、必要事項を書きな。あとはこっちで、適当に処理するから」
ぶっきらぼうだが、教え方は親切丁寧だ。
「顔の写真とかは、必要ですか?」
一応、この世界には写真技術があるみたい。賞金首の一覧表などが、写真で表示されている。
「血液だけをちょうだい。あとはこっちでやるから」
うーん、血液かぁ。
「パロン、ボクって血って出るのかな?」
ウッドゴーレムだよ、ボク?
「樹液なら出るじゃん。それを垂らせば血とみなされるよ。なんでもいいんだ」
「アバウトだなあ」
「冒険者なんて、そんなもんだよ」
犯罪に手を染めさえしなければ、冒険者はとくに咎められないという。
クエストを達成してもらえば、税金も払わなくていいというし。
「そうなんだ」
「クエストの報酬はどれも、キミたちの世界でいう『源泉徴収済み』なんだ」
なるほど。クエストをこなせば、自然と納税しているのか。だからクエストをしないと、普通に働いて税金を収めなければならないんだね。
冒険者登録は、とどこおりなく終わった。
パロンの指導で、サインも冒険者カード受領も問題なし。
「冒険者のカードって、ドッグタグなんだねぇ」
「そうだよ。特殊な製法で、金属を加工するんだ。名前が刻まれているだろ?」
「うん。冒険者になったーって、気分がするよ」
タグに付いた星の数で、冒険者のランクが決まるみたいだ。クエストをこなすと、星も増えていくみたい。
「星を増やすと、受けられるクエストも増えるぞ」
クエストの内容が書いてある張り紙も、星ごとにボードで分けてある。
ボードの前には、大量の冒険者が立っていた。仕事を探しているんだろう。星の数が多いボードほど、強そうな人が集まっている。
「色々と、ありがとうございます。ギンコさん」
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