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第7話 最終話 つれないメイドさんと、『ニュー・シネマ・パラダイス』

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 大学教授の男性と恋に落ちて、わたしたちは結婚をした。

 御祝儀のお返しをしに、主人のご両親に顔を出す。のだが……。

「ちょっと映子えいこさん!」

泰菜やすなお嬢様、今の私は、あなたの義母ですよ。ちゃんとお義母さんと呼んでいただかないと」

「映子さんは映子さんだよ!」

 そこには、つれない顔をしたメイドさんがいた。

 わたしは「城島 泰菜」となったのである。

 つまりここは、わたしの家だ。

 映子さんは住み込みで働いているから、必然的にわたしは父のお屋敷に帰ることになる。

 父は最初、婚約者を用意しようとしていたが、「映子さんの息子さんなら」と、承諾してくれた。

「ちょっと、ご祝儀ってこれ!?」

 わたしは、「秘蔵DVD」と書かれたパッケージを見せる。

「なによ、このDVD! ベッドシーンばっかじゃん!」

 収録されている中身は、ありとあらゆる映画の濡れ場ばかり集めた内容だった。『マルサの女2』、『桜の樹の下で』、『ターミネーター』、『蛇にピアス』など。

「アニメ作品の『ヘヴィー・メタル』なんて、探すの大変だったんですから」

「どうでもいい! 子ども作れっていうあてつけか!」

「知らないのですか? ニュー・シネマ・パラダイスでは、キスシーンがカットされる時代が重要なワードとなってくるじゃないですか」

「どういうオマージュだっての!?」

「ちなみに『ファイト・クラブ』の濡れ場は、合成映像らしいので除外しました」

 そんな豆知識いらんねん。
 
 まあ、妊娠の報告をしにきたわたしもわたしだが。

「そうだ映子さん! この間『シェフ』が泣けるっていうから見たんだけど、あれコメディだったよ? あんな映画で泣くの?」

「泰菜お嬢様、それはジャン・レノ主演の『シェフ!  ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~』でしょ。私がオススメしたのは、『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』の方ですよ」

 映子さんは、「はあ」とため息をつく。

 何年経っても、やっぱり映子さんは、つれないや。

(FIN)
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