家庭菜園物語

コンビニ

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5章

決戦②

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★モモ視点

 強面のおじさん達が軍の配置なんか、喋っていく。
 軍隊についての知識も少しはあるので、少しは話していることはわかる。人数としてはこちらの方が多いから、定石で攻める方向の話になって入る。
 さくらさんは話も聞かずに、私の肩に頭を乗せて寝息を立てている。

「それでは話はある程度まとまりましたね。エリゼさん、さくら様を起こしてもらうことは可能ですか?」

 ハルが気をつかってか、お姉ちゃん経由で起こそうとするので、肩から頭の支えを外してあげると、さくらさんが椅子から転げ落ちる。
 周りの強面のおじさん達が慌てる姿は少し面白い。

「いてて、モモ、もう少し歳上を敬ってはどうだ?」
「ずっと寝てる人を敬えと言われましても」
「話が終わったのか?」

 お偉方がやる気に満ち溢れた表情で首を縦に振る。

「そうか。それではお前らは基本待機を命じる」

 これまで真剣に話して、作戦まで立てたので、流石に何人かは声を上げるけど、さくらさんは意に返さない。

「お前らはあくまでも最終手段で、威圧するためだけに存在している。それに神と名乗る、黒い男が出てくれば足手まといにしかならない」
「兵士を集めるのだってタダではないんですけどね」

 ハルが珍しく文句を言う。それに反応して将軍があわあわしていた。
 でもハルの言うことは正しい。文句の一つだって言いたくはなるだろう。ここは私も頷いておこう。

「そう怒るな。黒い男が現れたことで、お前らはまたまとまって動くことができただろう。一つの目的に対して共通の敵を撃つために一致団結できた、この効果は大きい。兵士たちも種族関係なく、同じ釜の飯を食べ、仲良くできている。これはお前達にとっても大きな一歩となる。私はせっかく団結でき始めている、お前達を危険に晒したくはない」

 珍しく、さくらさんも真剣だ。彼女にとっては彼らは子供も同然なんだもんね。

「さてさて、これからが本当の作戦会議だ。パスル、説明を」
「かしこまりました!」
 
 パスル、いたんだね。
 何故か私の側に駆け寄ってきて、後ろに立つと話を始める。時々、鼻先が髪の毛に当たるんだけど、わざとだよね?
 お姉ちゃんになんとかしてと、視線を送ってみたけど、目を逸らされてしまった。

「調べた内容ですが、敵は一枚岩ではなく、やる気なのは一部の兵士と上層部の人間だけで、殆どの平民や兵士は既に森の賢者様が掌握しております!」

 周りからは、流石! とか騒いでいるけど、お父さんがそんなことまで考えて行動をしているんだろうか。

「また、男女別に隔離されており、それぞれを人質の扱いにして、言うことを聞かせている。恐怖で押さえつけている状態なので、神と名乗る不届きものや、一部の人間を抑えてしまえば賢者様の計略が発動するはずです」
「その不届き者を押さえ込むのが難しい。私達が直接、攻め込むと分かれば肉壁なり、非道な作戦で遅延させつつ、また姿を消す可能性がある。奇襲で奴だけを押さえ込みたいが、作がある者はいるか?」
「この木刀を使えば一度限りですけど、好きな場所に飛ぶことができます。好きなタイミングで奇襲をかけれますよ」

 サイゼ様からもらった。いえ、たまたま拾った木刀には、そう使ってねと言わんばかりの機能が付いていた。

「それをどこで……まぁいい。それがあれば被害は極端に少なくできるはずだ。明日、配置通りに軍隊には動いてもらうが、包囲するだけでいい。攻撃をする必要はない。本丸には私とエリゼ、カレン、レイチェルで向かう。モモは先行して、あいつを抑え込め。倒してしまってもかまわん」
「力が弱ってると言っても押さえ込むのがやっとです。ちゃんと援護しにきてくださいね」
「できる限り急ぐさ。レイチェルは森の賢者の捜査と保護、エリゼは男の、カレンは女達のリーダーに接触して、解放に動け。私は酒蔵を確保した後にモモの支援に向かう」
「殴りますよ?」

 さくらさんに向かって、笑顔で拳を形だけ、振り上げてみる。

「じょ、冗談だろ」

 冗談に聞こえなかったんですけど。

「私もモモの支援に向かってはダメでしょうか? 解放に向けて動くなら私よりもパスルの方が適任です」
「それだったら、私だって暴れる方に回りたいぞ! パスル、こっちもお前が頼む!」

 エリゼは私のことを心配してだと思うけど、カレンさんは完全に楽しみたいだけだと思う。

「お二方とも、私は1人しかいないんですけど。わかりました、協力者と接触してその辺は上手くやります。配下を何人か連れて行きますけどよろしいですね?」
「よし。話は決まった。それでは決戦に向けて今日は飲むとしよう! 酒を持て!」

 おじさん連中や、さくらさんが宴会を始めてしまうので、そっとその場を離れる。
 ついでにお酒を飲もうとしていた、エリゼも引っ張り出す。

「少しくらいいいだろうに」
「ダメ、私の目の届くとこでは、20になるまで許さないから」

 会議室を出て、エリゼと城の一番高い所に登る。
 お父さんがいるであろう方向を見ても、流石に光などは見えない。でもあっちの方向にいるんだと思うと、早く会いたくなってくる。

「戦争って聞くと緊張するな」
「うん。お父さんが責任を感じないように少しでも被害を抑えたい」
「そもそも、ユウさんが責任を感じることはない。悪いのは元カレとそれを祭り上げている権力者だろ」
「そうだけど、お父さんはきっと思い詰めちゃうから」
「そうだな。あの人ならそうかもしれない、だからこそ明日で決着をつけよう」
「うん」

 エリゼが手を握ってくれたので、それを強く握り返す。
 待ってて、お父さん。

 

 








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