174 / 180
5章
決戦②
しおりを挟む
★モモ視点
強面のおじさん達が軍の配置なんか、喋っていく。
軍隊についての知識も少しはあるので、少しは話していることはわかる。人数としてはこちらの方が多いから、定石で攻める方向の話になって入る。
さくらさんは話も聞かずに、私の肩に頭を乗せて寝息を立てている。
「それでは話はある程度まとまりましたね。エリゼさん、さくら様を起こしてもらうことは可能ですか?」
ハルが気をつかってか、お姉ちゃん経由で起こそうとするので、肩から頭の支えを外してあげると、さくらさんが椅子から転げ落ちる。
周りの強面のおじさん達が慌てる姿は少し面白い。
「いてて、モモ、もう少し歳上を敬ってはどうだ?」
「ずっと寝てる人を敬えと言われましても」
「話が終わったのか?」
お偉方がやる気に満ち溢れた表情で首を縦に振る。
「そうか。それではお前らは基本待機を命じる」
これまで真剣に話して、作戦まで立てたので、流石に何人かは声を上げるけど、さくらさんは意に返さない。
「お前らはあくまでも最終手段で、威圧するためだけに存在している。それに神と名乗る、黒い男が出てくれば足手まといにしかならない」
「兵士を集めるのだってタダではないんですけどね」
ハルが珍しく文句を言う。それに反応して将軍があわあわしていた。
でもハルの言うことは正しい。文句の一つだって言いたくはなるだろう。ここは私も頷いておこう。
「そう怒るな。黒い男が現れたことで、お前らはまたまとまって動くことができただろう。一つの目的に対して共通の敵を撃つために一致団結できた、この効果は大きい。兵士たちも種族関係なく、同じ釜の飯を食べ、仲良くできている。これはお前達にとっても大きな一歩となる。私はせっかく団結でき始めている、お前達を危険に晒したくはない」
珍しく、さくらさんも真剣だ。彼女にとっては彼らは子供も同然なんだもんね。
「さてさて、これからが本当の作戦会議だ。パスル、説明を」
「かしこまりました!」
パスル、いたんだね。
何故か私の側に駆け寄ってきて、後ろに立つと話を始める。時々、鼻先が髪の毛に当たるんだけど、わざとだよね?
お姉ちゃんになんとかしてと、視線を送ってみたけど、目を逸らされてしまった。
「調べた内容ですが、敵は一枚岩ではなく、やる気なのは一部の兵士と上層部の人間だけで、殆どの平民や兵士は既に森の賢者様が掌握しております!」
周りからは、流石! とか騒いでいるけど、お父さんがそんなことまで考えて行動をしているんだろうか。
「また、男女別に隔離されており、それぞれを人質の扱いにして、言うことを聞かせている。恐怖で押さえつけている状態なので、神と名乗る不届きものや、一部の人間を抑えてしまえば賢者様の計略が発動するはずです」
「その不届き者を押さえ込むのが難しい。私達が直接、攻め込むと分かれば肉壁なり、非道な作戦で遅延させつつ、また姿を消す可能性がある。奇襲で奴だけを押さえ込みたいが、作がある者はいるか?」
「この木刀を使えば一度限りですけど、好きな場所に飛ぶことができます。好きなタイミングで奇襲をかけれますよ」
サイゼ様からもらった。いえ、たまたま拾った木刀には、そう使ってねと言わんばかりの機能が付いていた。
「それをどこで……まぁいい。それがあれば被害は極端に少なくできるはずだ。明日、配置通りに軍隊には動いてもらうが、包囲するだけでいい。攻撃をする必要はない。本丸には私とエリゼ、カレン、レイチェルで向かう。モモは先行して、あいつを抑え込め。倒してしまってもかまわん」
「力が弱ってると言っても押さえ込むのがやっとです。ちゃんと援護しにきてくださいね」
「できる限り急ぐさ。レイチェルは森の賢者の捜査と保護、エリゼは男の、カレンは女達のリーダーに接触して、解放に動け。私は酒蔵を確保した後にモモの支援に向かう」
「殴りますよ?」
さくらさんに向かって、笑顔で拳を形だけ、振り上げてみる。
「じょ、冗談だろ」
冗談に聞こえなかったんですけど。
「私もモモの支援に向かってはダメでしょうか? 解放に向けて動くなら私よりもパスルの方が適任です」
「それだったら、私だって暴れる方に回りたいぞ! パスル、こっちもお前が頼む!」
エリゼは私のことを心配してだと思うけど、カレンさんは完全に楽しみたいだけだと思う。
「お二方とも、私は1人しかいないんですけど。わかりました、協力者と接触してその辺は上手くやります。配下を何人か連れて行きますけどよろしいですね?」
「よし。話は決まった。それでは決戦に向けて今日は飲むとしよう! 酒を持て!」
おじさん連中や、さくらさんが宴会を始めてしまうので、そっとその場を離れる。
ついでにお酒を飲もうとしていた、エリゼも引っ張り出す。
「少しくらいいいだろうに」
「ダメ、私の目の届くとこでは、20になるまで許さないから」
会議室を出て、エリゼと城の一番高い所に登る。
お父さんがいるであろう方向を見ても、流石に光などは見えない。でもあっちの方向にいるんだと思うと、早く会いたくなってくる。
「戦争って聞くと緊張するな」
「うん。お父さんが責任を感じないように少しでも被害を抑えたい」
「そもそも、ユウさんが責任を感じることはない。悪いのは元カレとそれを祭り上げている権力者だろ」
「そうだけど、お父さんはきっと思い詰めちゃうから」
「そうだな。あの人ならそうかもしれない、だからこそ明日で決着をつけよう」
「うん」
エリゼが手を握ってくれたので、それを強く握り返す。
待ってて、お父さん。
強面のおじさん達が軍の配置なんか、喋っていく。
軍隊についての知識も少しはあるので、少しは話していることはわかる。人数としてはこちらの方が多いから、定石で攻める方向の話になって入る。
さくらさんは話も聞かずに、私の肩に頭を乗せて寝息を立てている。
「それでは話はある程度まとまりましたね。エリゼさん、さくら様を起こしてもらうことは可能ですか?」
ハルが気をつかってか、お姉ちゃん経由で起こそうとするので、肩から頭の支えを外してあげると、さくらさんが椅子から転げ落ちる。
周りの強面のおじさん達が慌てる姿は少し面白い。
「いてて、モモ、もう少し歳上を敬ってはどうだ?」
「ずっと寝てる人を敬えと言われましても」
「話が終わったのか?」
お偉方がやる気に満ち溢れた表情で首を縦に振る。
「そうか。それではお前らは基本待機を命じる」
これまで真剣に話して、作戦まで立てたので、流石に何人かは声を上げるけど、さくらさんは意に返さない。
「お前らはあくまでも最終手段で、威圧するためだけに存在している。それに神と名乗る、黒い男が出てくれば足手まといにしかならない」
「兵士を集めるのだってタダではないんですけどね」
ハルが珍しく文句を言う。それに反応して将軍があわあわしていた。
でもハルの言うことは正しい。文句の一つだって言いたくはなるだろう。ここは私も頷いておこう。
「そう怒るな。黒い男が現れたことで、お前らはまたまとまって動くことができただろう。一つの目的に対して共通の敵を撃つために一致団結できた、この効果は大きい。兵士たちも種族関係なく、同じ釜の飯を食べ、仲良くできている。これはお前達にとっても大きな一歩となる。私はせっかく団結でき始めている、お前達を危険に晒したくはない」
珍しく、さくらさんも真剣だ。彼女にとっては彼らは子供も同然なんだもんね。
「さてさて、これからが本当の作戦会議だ。パスル、説明を」
「かしこまりました!」
パスル、いたんだね。
何故か私の側に駆け寄ってきて、後ろに立つと話を始める。時々、鼻先が髪の毛に当たるんだけど、わざとだよね?
お姉ちゃんになんとかしてと、視線を送ってみたけど、目を逸らされてしまった。
「調べた内容ですが、敵は一枚岩ではなく、やる気なのは一部の兵士と上層部の人間だけで、殆どの平民や兵士は既に森の賢者様が掌握しております!」
周りからは、流石! とか騒いでいるけど、お父さんがそんなことまで考えて行動をしているんだろうか。
「また、男女別に隔離されており、それぞれを人質の扱いにして、言うことを聞かせている。恐怖で押さえつけている状態なので、神と名乗る不届きものや、一部の人間を抑えてしまえば賢者様の計略が発動するはずです」
「その不届き者を押さえ込むのが難しい。私達が直接、攻め込むと分かれば肉壁なり、非道な作戦で遅延させつつ、また姿を消す可能性がある。奇襲で奴だけを押さえ込みたいが、作がある者はいるか?」
「この木刀を使えば一度限りですけど、好きな場所に飛ぶことができます。好きなタイミングで奇襲をかけれますよ」
サイゼ様からもらった。いえ、たまたま拾った木刀には、そう使ってねと言わんばかりの機能が付いていた。
「それをどこで……まぁいい。それがあれば被害は極端に少なくできるはずだ。明日、配置通りに軍隊には動いてもらうが、包囲するだけでいい。攻撃をする必要はない。本丸には私とエリゼ、カレン、レイチェルで向かう。モモは先行して、あいつを抑え込め。倒してしまってもかまわん」
「力が弱ってると言っても押さえ込むのがやっとです。ちゃんと援護しにきてくださいね」
「できる限り急ぐさ。レイチェルは森の賢者の捜査と保護、エリゼは男の、カレンは女達のリーダーに接触して、解放に動け。私は酒蔵を確保した後にモモの支援に向かう」
「殴りますよ?」
さくらさんに向かって、笑顔で拳を形だけ、振り上げてみる。
「じょ、冗談だろ」
冗談に聞こえなかったんですけど。
「私もモモの支援に向かってはダメでしょうか? 解放に向けて動くなら私よりもパスルの方が適任です」
「それだったら、私だって暴れる方に回りたいぞ! パスル、こっちもお前が頼む!」
エリゼは私のことを心配してだと思うけど、カレンさんは完全に楽しみたいだけだと思う。
「お二方とも、私は1人しかいないんですけど。わかりました、協力者と接触してその辺は上手くやります。配下を何人か連れて行きますけどよろしいですね?」
「よし。話は決まった。それでは決戦に向けて今日は飲むとしよう! 酒を持て!」
おじさん連中や、さくらさんが宴会を始めてしまうので、そっとその場を離れる。
ついでにお酒を飲もうとしていた、エリゼも引っ張り出す。
「少しくらいいいだろうに」
「ダメ、私の目の届くとこでは、20になるまで許さないから」
会議室を出て、エリゼと城の一番高い所に登る。
お父さんがいるであろう方向を見ても、流石に光などは見えない。でもあっちの方向にいるんだと思うと、早く会いたくなってくる。
「戦争って聞くと緊張するな」
「うん。お父さんが責任を感じないように少しでも被害を抑えたい」
「そもそも、ユウさんが責任を感じることはない。悪いのは元カレとそれを祭り上げている権力者だろ」
「そうだけど、お父さんはきっと思い詰めちゃうから」
「そうだな。あの人ならそうかもしれない、だからこそ明日で決着をつけよう」
「うん」
エリゼが手を握ってくれたので、それを強く握り返す。
待ってて、お父さん。
70
お気に入りに追加
1,118
あなたにおすすめの小説
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【創造魔法】を覚えて、万能で最強になりました。 クラスから追放した奴らは、そこらへんの草でも食ってろ!
久乃川あずき(桑野和明)
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ『面白スキル賞』受賞しました。
2022年9月20日より、コミカライズ連載開始です(アルファポリスのサイトで読めます)
単行本は現在2巻まで出ています。
高校二年の水沢優樹は、不思議な地震に巻き込まれ、クラスメイト三十五人といっしょに異世界に転移してしまう。
三ヶ月後、ケガをした優樹は、クラスメイトから役立たずと言われて追放される。
絶望的な状況だったが、ふとしたきっかけで、【創造魔法】が使えるようになる。
【創造魔法】は素材さえあれば、どんなものでも作ることができる究極の魔法で、優樹は幼馴染みの由那と快適な暮らしを始める。
一方、優樹を追放したクラスメイトたちは、木の実や野草を食べて、ぎりぎりの生活をしていた。優樹が元の世界の食べ物を魔法で作れることを知り、追放を撤回しようとするが、その判断は遅かった。
優樹は自分を追放したクラスメイトたちを助ける気などなくなっていた。
あいつらは、そこらへんの草でも食ってればいいんだ。
異世界で活躍する優樹と悲惨な展開になるクラスメイトたちの物語です。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる