家庭菜園物語

コンビニ

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4章

エリゼ隊

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★エリゼ視点

 宿屋を引き払い、本格的に家に戻ることとなった。
 元いたパーティーメンバーは護衛としてそのまま私の手元に残れることになり、イライヤさんも私専属のメイド兼教育係として復帰できることになった。

 食事などは家族一緒に摂ることはなく、パーティーメンバーやイライヤさん達だけで食べることがほとんどだった。
 たまにリリアやルルイゼと食事をすることはあったが、父上やルークとは最初に話して以来、会ってはいない。

 数日して落ち着いたタイミングを見計らってくれたのか、副団長から訓練場に来るように通達があった。
 やっとなにか仕事を回してもらえるのだろうか。
 レオンとパスルを伴って訓練場に向かうと、私のことを知っている人間もいるためかかなり注目を集めてしまった。
 副団長同様に過去の出来事を知っている人間もいるんだと思う。

「エリゼ様」
「副団長、私は貴方預かりで部下だ。様はやめてほしい」
「命の恩人でもあり、私よりも強い、私にもプライドはありますから、せめてエリゼ様と呼ばせてください」

 前回の出来事後、副団長は私に信頼を置いてくれているようだ。

「今日から訓練に参加をしてもらいます」
「丁度、体を動かしたいと思っていたとこです」

 他の団員と一緒に外周を走り、剣の型の確認をする。基礎的な内容で少し物足りない。
 
「姉御……」
「レオン、だいぶ息が上がっているな、訛ってるんじゃないのか? 他の団員のメニューが終わるまで組み手でもするか。パスルもいるから、死なない程度に怪我はしていいぞ」

 
 レオンを負かすこと10回、副団長や団員の一部がやっと戻ってきた。

「流石はエリゼ様、早いですね」
「そうか? 少し物足りなかったのでレオンと組み手をしていた」

 副団長の笑顔ややや引き攣っていたので、私のペースは少し早かったらしい。
 モモやさくらさんに訓練をしてもらっていたので、感覚がおかしくなってるのかもしれない。

 暫くして全員が集められると、改めて私の紹介を全員にしてくれた。

「この方はエリゼ・ソード様。ルーク様の姉君だ。お前達も様々な悪い噂、良い噂を聞いているだろうが、邪神を打ち倒した英雄に違いはない。今日から本格的に訓練や仕事にも参加してもらうのでよろしく頼む。エリゼ様からも挨拶をお願いします」
「エリゼです。悪い噂についてはほとんどが本当のことだ、それを踏まえた上で前に進み変わりたいと思っている。これから同僚としてよろしくお願いする。あとは次期当主や継承権については正式に放棄している、ルークの座を狙っているということはないので認識をしておいてほしい」

 拍手はまばらで誰もが不満そうな目で見てくる。
 騎士団の人にも新しい土地の開拓には協力してもらいたいので、良い仕事をして認めてもらえるように頑張ろう。
 パスルがルルイゼがなぜ協力してくれたのかは不明だが、味方を作るために騎士団への参加を副団長に根回ししてくれたんだろうと言っていた。
 
 集められた人員が散り散りになったが、副団長の号令で私の元に20名ほどの、たぶん新兵が集められた。動きがぎこちないし、何よりも全員が他の団員と違って若い。

「エリゼ様は冒険者としても高ランクで、小隊規模の運用は問題がないでしょうから、少しずつ人員を増やして改めて軍の運用を学んでいただきます。お前達、今日から彼女が隊長となる」
「私は新兵ですけど、いきなり隊長をやれと言うんですか?」
「経験がある者、実力がある者にはどんどん任せる方針なので、私よりも遥かに強い方が新兵の下働きからするとでもお思いですか?」

 確かにそうか。そうなんだけど、周りの反発はありそうだなぁ。でもさっき向けられて視線とは少し違う、好奇心というか、こいつが噂の? 的な興味を向けられてる気がする。
 さっきいた面々はきっと私が知らないだけで、私の悪行を直接見たり聞いたりしている世代なのかもしれない。その反面、ピカピカの新兵だから、悪い噂は聞いているものの、そこまでの不満を感じないんだろう。これも副団長やルルイゼの差配か。

「副団長! この女の下で働くというのは不満です! 少しくらい走れるだけで、女じゃないですか」

 20名の中には女性の騎士も3名ほどいる。発言した青年に対して厳しい視線を送っている。
 後先考えずに発言するあたり、少し頭が緩いのかもしれない。

「威勢が良くて結構だな。それではエリゼ様、あとはお願いします」

 面倒な跳ねっ返りの新兵を押しつけられただけじゃないよね。

「色々と私も混乱はしているが、私が隊長だそうだ。それで不満があるんだったな?」
「お、おう!」
「まずは口の聞き方から修正をしてやろうか。手っ取り早く模擬戦をするか」
「望む所だ!」
「1人でなくてもいいぞ、不満があるやつは全員でかかってこい」

 舐めやがって、馬鹿にしてるのか、女相手に本気を出せるかなど、反応は様々だ。

「私に一撃でも入れられたら、叶えられる範囲なら願いを叶えてやるぞ。たとえばお金が欲しいとかな」
「うぉおおおお! キスや添い寝はありですか!」

 パスルが何故か混ざっている。

「面白い。添い寝くらいならいいだろう」
「やるぞ野郎ども!」

 一番やる気を出しているこいつは誰なんだ? みたいな雰囲気にはなっているが、やる気を出してくれた人間も何人かいてくれたようで、自分も女として捨てたものではないなと、少しだけ自信がついた。
 私もモモのように素敵な男性との出会いとかあるかなぁ。

「隙ありぃいいい!」

 突っ込んできたパスルを蹴飛ばす。お前は回復要因なんだから、隅っこで寝ていなさい。

「さぁ、次は誰がくる? 一斉にかかってきてもいいんだぞ」

 最初こそ1人ずつだったが、木刀で弾き飛ばすごとに、パスルが回復して一度に向かってくる人数が増えてくる。
 最終的には20名、全員が一斉に向かってきたが、技術もなにもない、腕力だけで弾き飛ばしてやった。
 夕暮れ時にはパスルの魔力も枯渇して、死屍累々の20名の人の山が出来上がっていた。

「どうだ、これで私を隊長と認めたか?」
「はい……隊長殿」

 最初に啖呵を切ってきた青年も私のことを隊長と認めてくれたようで何よりだ。

「他の連中ももういいのか?」
「「……」」

 反応もないし、いいようだ。
 これで部隊としても、まともに命令を聞いてくれるだろう。
 次は副団長からお仕事をもらってこよう。





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