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4章
お葬式?
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★悠視点
黒い煙が出た後に大福が吠えると、火の鶏がやってきて、飛んで行ってしまった。やっぱりなにかがあったのだろう。
翌日には火の鶏が戻ってきて、大福に方向をしていた。
それを聞いていたイールが「すごーい」とか「エーねかっこいい」とか合いの手を入れていた。
「姉さん、イール達はどんな話てるんですかね?」
「にゃーん」
うえええ! そんな危ないことがあったんですか? 大福よ、フィルターの役割はどうしたんだよ。
また悪意がある第三者の仕業もあったのだろうか。なんにしてもエリゼが死にかけただなんて、無事でよかったよ。
「にゃーん」
「天叢雲剣で必殺技がエクスカリバーってどうなってるんですかね」
その剣もジャスティス王であり、さくらさんの旦那の持ち物だったんだろうけど、晩年はどんな気持ちでいたのかな? 最後まで厨二心を忘れなかったのか、悶々とした生活をしていたのか、当時の彼に少し会って茶化してやりたいとは思うね。
助けてくれたお礼もさくらさんにしないとな。まぁ葡萄とワインが完成する頃には勝手にやってくるかもしれない。
火の鶏が戻ってきて数日、本格的に秋の気配が近寄ってきていたが、そんな中で世界が悲しみに包まれている。親愛なる隣人が命を落としてしまったからだ。
イールは大粒の涙を流し、レイヴィもつられて大泣きをしている。
鶏たちが整然と並び、リーダーである火の鳥も涙を流しながら、大きく叫んだ。
「コケー!」
今では20匹ほどになっているが、最初に迎え入れた鶏が亡くなってしまったのだ。
イールも短い間だが熱心に世話をしているので泣くのはわかる。でもレイヴィがそこまで泣くはなんでなの?
「うぉーん、わおーぉおん」
大福が叫んでるわけではない、レイヴィの泣き声なのだ。独特だね。
俺以上に絡みがない人間が悲しんでいるものなので、なんだか悲しむことができず、少し引いてしまっている。ハルも俺と同様の状況だ。
「シルバーウルフが死んじゃった」
「独特な名前にしてたんだな」
モモかエリゼが考えたんだろうか? でも名前なんて呼んでなかった気がするんだよなぁ。
イールが独自に考えたんだろうか。
「イール、シルバーウルフとはお別れして、お墓でも作ってあげようか」
「え? どうして?」
「コケー!」
火の鶏は怒っているし、イールも心底不思議そうにしている。
「死んじゃったから土に埋めてあげないと」
「でも死んじゃったら食べて欲しいって言ってたよ」
「コケー」
可愛がっていた友人を食べるの? それが当たり前ですけどみたいな顔してるしいいのかな。
「焼いて食べるのか!」
さっきまで泣いていたレイヴィも涎を拭きながら、跳びは跳ねている。
お、お前らはそれでいいのか! なんかこうもっと悲しんで食べれないよ……みたいな展開じゃないの?
「悠さん、本人達がいいと言っているみたいですし」
「コケー」
火の鶏も是非、食べてやってくれと言ってるのだろうか。
ご遺体の羽をむしるのも、鶏全員で手伝ってくれた。でもさぁ、年老いた鶏って美味しいのかな? 若鶏の方が美味いって聞くけど。
イールやレイヴィも一緒になって羽をむしり、俺もハルも促されて、大福や姉さんを含めて家族全員で羽をむしる。これが彼らなりの弔いとなるのだろうか。
魔物や大型の動物で解体は慣れていたので、むしった後はサクッと解体は完了した。
さて、問題は何を作るかだけど。
親子丼は流石に可哀想だよな。
ここは皆んな大好き鳥の照り焼きにするか。余ったのは酒のつまみに焼き鳥にしてしまおう。
醤油、酒、みりん、砂糖でタレを作り、片栗粉を塗して焼いた鶏肉にタレを入れてさらに煮詰めてしまえば完成。実に簡単だね。
別にサラダと味噌汁を作って、ついてでつまみ用の焼き鳥は串に刺してした準備だけしておく。
「完成したぞー」
風呂上がりで髪を乾かしていたレイヴィとイールを待って、全員が席に着いたタイミングで姉さんがいただきますの号令がかかる。
「にゃーん」
皆んなが肉にかぶりつくと幸せそうな声をあげる。年老いた鶏の肉も予想よりも美味いのかな?
ずっと火の鶏が涙を流しながら見てるのに、よく気にせずに食べられるよな。
「コケー」
なんでお前は食べないんだと、机を突かれてしまった。食べるよ、食べますよ。
口に入れて噛むと肉がとろける。何これ? 鶏肉? めちゃくちゃ美味いだけど!
タレをよく絡ませて、白米にバウンドさせてかっこむ。最高だ。
「火の鶏、めちゃくちゃ美味いよ。これまで食ったどんな鶏肉よりも美味い」
「コケー」
大きな声で鳴くと、外にいた鶏達も呼応して鳴き始める。夜なので違和感はるけど、コイツらなりに追悼をしているんだろう。
年を重ねればまた死んでしまう鶏も出てしまうだろうな。少し楽しみだとは口にしないでおこう。だって美味いんだもん。
子供らが寝静まれば大人の時間だ。
レイヴィと姉さんが縁側に座り、俺は庭に出て七輪で焼き鳥を焼く。味付けはシンプルに塩だで、酒はやっぱりビールだろう。
「ほれ、焼けたぞ」
「すまないな」
「焦がされても困るしな」
レイヴィは不満そうな顔をするが、鳥を口に入れると満面の笑みに変わった。
姉さんには串から外した肉を出す。どれどれ俺も焼きながらいただくとするか。
あっち、でも美味い! くぅううう、ビールが沁みるぜ。
涼しい秋風を浴びながら外で飲むビールと焼きたての焼き鳥。風情があるなぁ。
「平和だな、ここは」
「そうだろ。帰ってもさ、たまには遊びに来いよ」
「ハル様が皇帝になれば、そう簡単にはこれないと思うが……ああ、また来たい」
レイヴィの戦う姿は見たことがないが、月を眺めるその横顔は少しマッチョな普通の女の子だと思った。
黒い煙が出た後に大福が吠えると、火の鶏がやってきて、飛んで行ってしまった。やっぱりなにかがあったのだろう。
翌日には火の鶏が戻ってきて、大福に方向をしていた。
それを聞いていたイールが「すごーい」とか「エーねかっこいい」とか合いの手を入れていた。
「姉さん、イール達はどんな話てるんですかね?」
「にゃーん」
うえええ! そんな危ないことがあったんですか? 大福よ、フィルターの役割はどうしたんだよ。
また悪意がある第三者の仕業もあったのだろうか。なんにしてもエリゼが死にかけただなんて、無事でよかったよ。
「にゃーん」
「天叢雲剣で必殺技がエクスカリバーってどうなってるんですかね」
その剣もジャスティス王であり、さくらさんの旦那の持ち物だったんだろうけど、晩年はどんな気持ちでいたのかな? 最後まで厨二心を忘れなかったのか、悶々とした生活をしていたのか、当時の彼に少し会って茶化してやりたいとは思うね。
助けてくれたお礼もさくらさんにしないとな。まぁ葡萄とワインが完成する頃には勝手にやってくるかもしれない。
火の鶏が戻ってきて数日、本格的に秋の気配が近寄ってきていたが、そんな中で世界が悲しみに包まれている。親愛なる隣人が命を落としてしまったからだ。
イールは大粒の涙を流し、レイヴィもつられて大泣きをしている。
鶏たちが整然と並び、リーダーである火の鳥も涙を流しながら、大きく叫んだ。
「コケー!」
今では20匹ほどになっているが、最初に迎え入れた鶏が亡くなってしまったのだ。
イールも短い間だが熱心に世話をしているので泣くのはわかる。でもレイヴィがそこまで泣くはなんでなの?
「うぉーん、わおーぉおん」
大福が叫んでるわけではない、レイヴィの泣き声なのだ。独特だね。
俺以上に絡みがない人間が悲しんでいるものなので、なんだか悲しむことができず、少し引いてしまっている。ハルも俺と同様の状況だ。
「シルバーウルフが死んじゃった」
「独特な名前にしてたんだな」
モモかエリゼが考えたんだろうか? でも名前なんて呼んでなかった気がするんだよなぁ。
イールが独自に考えたんだろうか。
「イール、シルバーウルフとはお別れして、お墓でも作ってあげようか」
「え? どうして?」
「コケー!」
火の鶏は怒っているし、イールも心底不思議そうにしている。
「死んじゃったから土に埋めてあげないと」
「でも死んじゃったら食べて欲しいって言ってたよ」
「コケー」
可愛がっていた友人を食べるの? それが当たり前ですけどみたいな顔してるしいいのかな。
「焼いて食べるのか!」
さっきまで泣いていたレイヴィも涎を拭きながら、跳びは跳ねている。
お、お前らはそれでいいのか! なんかこうもっと悲しんで食べれないよ……みたいな展開じゃないの?
「悠さん、本人達がいいと言っているみたいですし」
「コケー」
火の鶏も是非、食べてやってくれと言ってるのだろうか。
ご遺体の羽をむしるのも、鶏全員で手伝ってくれた。でもさぁ、年老いた鶏って美味しいのかな? 若鶏の方が美味いって聞くけど。
イールやレイヴィも一緒になって羽をむしり、俺もハルも促されて、大福や姉さんを含めて家族全員で羽をむしる。これが彼らなりの弔いとなるのだろうか。
魔物や大型の動物で解体は慣れていたので、むしった後はサクッと解体は完了した。
さて、問題は何を作るかだけど。
親子丼は流石に可哀想だよな。
ここは皆んな大好き鳥の照り焼きにするか。余ったのは酒のつまみに焼き鳥にしてしまおう。
醤油、酒、みりん、砂糖でタレを作り、片栗粉を塗して焼いた鶏肉にタレを入れてさらに煮詰めてしまえば完成。実に簡単だね。
別にサラダと味噌汁を作って、ついてでつまみ用の焼き鳥は串に刺してした準備だけしておく。
「完成したぞー」
風呂上がりで髪を乾かしていたレイヴィとイールを待って、全員が席に着いたタイミングで姉さんがいただきますの号令がかかる。
「にゃーん」
皆んなが肉にかぶりつくと幸せそうな声をあげる。年老いた鶏の肉も予想よりも美味いのかな?
ずっと火の鶏が涙を流しながら見てるのに、よく気にせずに食べられるよな。
「コケー」
なんでお前は食べないんだと、机を突かれてしまった。食べるよ、食べますよ。
口に入れて噛むと肉がとろける。何これ? 鶏肉? めちゃくちゃ美味いだけど!
タレをよく絡ませて、白米にバウンドさせてかっこむ。最高だ。
「火の鶏、めちゃくちゃ美味いよ。これまで食ったどんな鶏肉よりも美味い」
「コケー」
大きな声で鳴くと、外にいた鶏達も呼応して鳴き始める。夜なので違和感はるけど、コイツらなりに追悼をしているんだろう。
年を重ねればまた死んでしまう鶏も出てしまうだろうな。少し楽しみだとは口にしないでおこう。だって美味いんだもん。
子供らが寝静まれば大人の時間だ。
レイヴィと姉さんが縁側に座り、俺は庭に出て七輪で焼き鳥を焼く。味付けはシンプルに塩だで、酒はやっぱりビールだろう。
「ほれ、焼けたぞ」
「すまないな」
「焦がされても困るしな」
レイヴィは不満そうな顔をするが、鳥を口に入れると満面の笑みに変わった。
姉さんには串から外した肉を出す。どれどれ俺も焼きながらいただくとするか。
あっち、でも美味い! くぅううう、ビールが沁みるぜ。
涼しい秋風を浴びながら外で飲むビールと焼きたての焼き鳥。風情があるなぁ。
「平和だな、ここは」
「そうだろ。帰ってもさ、たまには遊びに来いよ」
「ハル様が皇帝になれば、そう簡単にはこれないと思うが……ああ、また来たい」
レイヴィの戦う姿は見たことがないが、月を眺めるその横顔は少しマッチョな普通の女の子だと思った。
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