家庭菜園物語

コンビニ

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4章

プロローグ

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 夏が終わり、実りの秋を迎えるが9月なのでまだまだ暑い。来月から田植えに麦に始まる。
 それに加えて畑に家畜に果樹園に、範囲が広がればやることも必然的に多くなる。
 自分、1人だけだったらと考える心が折れそうにもなるが、イールがいることで、親としてサボってはいけないという自制心が働く。

「父! きゅうりでかい!」
「でかいの取れたなー」

 最近では家畜の世話だけでなく収穫も手伝ってくれるようになった。
 イールが来た時を誕生日にすることにしたので、今は6歳、今年で7歳になる。
 徐々にお姉さんとしての意識が芽生えてきてるのか、動物達のお世話をお姉さん風にしている。

 畑関連だけではなく別のことにもチャレンジをしている、例えば料理だ。
 素材を入れてパンを焼き、ソーセージを焼き、卵焼きにも焦げてはいるが焼けるようになっている。
 今は俺と一緒に作っているが、そのうち朝食はイールお姉さんに任せて問題ないだろう。
 
 午前中にはできる範囲のことをイールとやって、午後にはイールはお勉強タイムに入る。
 さくらのおばあちゃんの部下が作った教材を通信教育という形で課題をやって、まとめて火の鶏に運んでもらう。勉強はそこまで好きではないようで、たまにサボったりもしているが姉さんが締めるとこは締めて、緩めるとこは緩めて、飴と鞭を使ってしっかりと監視してくれている。

 モモよりはエリゼに似てきているようで、勉強よりは体を動かす方が好きみたいだ。
 森の中には入らないものの、まぁ入って行けないと言ってるのもあるが、勉強が早く終わればおやつがわりに川で魚を取ったり大福と駆け回ったりと、そんな遊びをしていることが多い。獣人としての狩猟本能が騒ぐのだろうか。

「わん!」

 大福が小さい兎を狩ってきた。大物ではないのは珍しいな。

「にゃーん」
「イールに解体を教えるんですか?」

 なるほど、そのための教材か。6歳の子供にそんな血生臭いことを教えるのはちょっととは思うが、魚も普通に捌いてるし、イールがこれから生きていくには必要なことか。

「イール、ついてきなさい」
「はい!」

 大福が咥えている兎を見て察したのか、解体小屋に大人しくついてきてくれる。
 
「これから兎の捌き方を教えます。この小屋には危険な刃物もあるので、決して遊んだりはしないこと」
「はい!」

 良い返事だ。イールが見えるように台座をクラフトして、魔物の皮から作ってもらったエプロンもつけてやる。
 まずは実際に捌いて見せながら、注意点や要点を教える。その後に簡単な箇所をイールの手を握って、捌き方を教えていく。正直、今は食糧の備蓄や収穫量もあるので、この森の妖精さん達に食糧という名のお金を払って任せてしまった方が簡単だし、確実ではるが、これも勉強の一環だろう。

「できた!」
「上手かったな。それじゃあ、今日はこのお肉を使ってシチューを作ろうか」
「シチュー!」

 捌いたばかりの肉を持って台所に行く。
 ルーを買ってもいいけど、今日はルーなしでの本格的な作り方をイールに伝授する。
 イールがワクワクと、台所で使う自分専用の台座とエプロン、小さめの包丁を持ってくる。

「まずは野菜を切ろうか。何が必要かわかるかな?」
「玉ねぎ、じゃがいも、ブロッコリーにお肉!」

 あれれー? 忘れ物があるぞー。
 イールが持ってきた野菜にプラスで細長いあいつを持ってくる。

「イール、ニンジン忘れてるぞ。このお茶目さんめ」
「わ、ワスレテター」

 野菜や肉を慎重にそこそこの大きさに切っていく。野菜はゴロゴロしている方が美味しいもんな。

「イール、ニンジンを切り忘れてるぞ。このお茶目さんめ」
「わ、ワスレテター」

 既に確信犯である。ニンジン、苦手だもんな。
 切り終えた野菜を見ると、にんじんだけがやたら小さくて細かい。いいんだけどさ。

 調味料を加えて肉や野菜を炒め、バター、牛乳、小麦粉を入れて味などを整えていく。隠し味に醤油なども入れる。
 個人的には完成してすぐよりも少し寝かせた方が好みなので、イールとお風呂に入ることにする。

 今ではクラゲも飽きてしまい、お風呂で遊ぶことは少なくなってしまった。
 髪も自分で洗えるようになったし、あとどのくらいパパとお風呂に入ってくれるのだろうか。
 イールと背中を流しっこした後に、湯船に浸かる。至福だ。

 この家を改築した時にアンロックされた物がる。その名も【露天風呂】、温泉なのかな? 値段が100万もしてしまうが、これもいずれは購入したい。
 イールと湯船でまったりとして、風呂上がりには自家製のりんごから作ったリンゴジュースを飲んで夕食にする。

 皿にご飯を盛って、その上からシチューをかける。邪道? 我が家ではこのスタイルなんだよ。
 少し濃いめに、ご飯と合うように作るのがポイントだ。
 イールが早く食べようとぴょんぴょんと飛び跳ねるので、注意しつつ、大福が帰っていないが、姉さんの号令で食事を開始する。

「父、これ美味しいー」
「うん、イールが切った野菜美味しいよ」
「えへへ」
「ほら、イール、あーん」

 イールが露骨に嫌そうな顔をする。当然、俺が嫌いだからなどでは断じてない。
 これは大きな謎なんだが、イールの皿には細かく切れたオレンジ色のあいつが一切入っていなかったので、楽しんでいただけるようににんじんを多めにスプーンに入れて差し上げたのだ。

「わん!」
「だ、大福様が帰ってきた!」
「イール! 大福よりもにんじんを食べなさい!」

 玄関に駆けていったイールを追いかけると、大福をモフモフするイールとは別に2人の人が立っていた。
 灰色の髪の可愛らしげな少年? 青年とピッチャーとバッターを二刀流でこなしそうな大柄の女、太いわけではないが、筋肉が凄く、ショートの黒髪は日本人をイメージさせる。

 また新しい客人か。
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