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2章
チャレンジ
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汚れたエリゼちゃんをモモに引っ張って行ってもらい、裏口からお風呂場へ案内する。
なんで靴を脱がないといけないとか、この家の作りはなんだとか、案の定、騒がしかったけど、モモが無言で腕を掴みお風呂へと連れていく。
「これがお風呂? 随分狭いのね」
「黙っててください。使い方を説明します」
モモがあーだーこーだと説明をする声だけが聞こえる。脱ぎ捨てられたドレスを掴んで、材質を確認してみるが、手触りはいいし、シルク系なのだろうか。どうやって洗えばいいのかな、とりあえずは外で手洗いをしてみるか。
「何よこの設備! 私の家にも欲しいわ!」
「少しは黙ってください! それと体は髪も自分で洗ってください!」
「どうやって洗うのよ!」
モモ、大変なことを任せすまん。もう少し幼い子なら俺が入れてやるんだが、中学生くらいの子を入れてやるわけにはいかないからな。
木の桶にドレスを入れて、外にある井戸まで持っていく。ドレス自体もボロボロだけど、せめて汚れくらいは落としておいて保管をしておいた方がいいだろう。
水をいっぱいに溜めて、液体洗剤を少し入れてもみ洗いをしてみるが、水があっという間に真っ黒になっていく。
思った以上に汚れていたようだ、あの子は何日くらい森で彷徨っていたのかな。
「わん!」
「大福、遊んでるんじゃないの。洗ってるんだから、桶に飛び込まないでくれよ」
「わん」
少しテンションは下がってしまったようだけど理解してくれてよかった。
何回か水を交換して、ある程度綺麗になったタイミングで、追加でテントの中にあった寝袋も軽く洗って綺麗にして、ほうきでテントの中も綺麗にして、どちらも水から出し、裏口にある物干しにかけておく。
物干しが風呂のすぐ側ということもあって、お風呂場でギャーギャーと騒ぐ声がまだ聞こえてくる。
もう少し、お風呂の時間は続きそうだな。
お粥もあっという間に食べていたし、まだお腹空いているだろう。
俺達の昼飯もこれからだったので合わせて、用意をしていく。
初期こそ手が出なかった、製麺機に小麦を入れてうどんを選択すると、うどんがニュルニュルと出てくる。それをお湯に潜らせてる間に簡単にスープも作成する。
醤油、みりん、砂糖、塩に最後に和風だしを入れる。手抜き? そんなことはない、数年料理をして思ったが、一から出汁とかを作る大変さが身に沁みた。日本の企業は改めて凄いよ。最後にはシンプルにネギに卵を落とす。
「騒がないでください!」
「煩いわね!」
やんや、やんやと喧嘩しながら出てきた2人がリビングに入ってくる。
エリゼちゃんは薄汚れた姿から一変して、綺麗なお嬢さんにジョブチェンジしていた。青い瞳に長いブロンドの髪、これぞ外国人って風貌ではあるが、モモから貸してもらったTシャツと短パン姿が少しシュールだ。
「モモ、お疲れ様。ありがとう。お昼にしようか」
「うん!」
「エリゼちゃんも自分のご飯は自分で持って行こうか」
「なんで私が!」
「じゃあ、ご飯いらないのかな?」
モモがルンルンとお盆をリビングに持っていくと、それを見てエリゼちゃんが渋々といった様子でお盆を持ってリビングへ行くが、リビングとキッチンの間にある引き戸の段差に足が引っかかってしまう。
お盆くらいなら問題ないかと思ったが不器用な子だったのか。
「にゃーん」
火傷はないかと心配して姉さんが声を一番にかけてくれるが、エリゼちゃんは、姉さんに怒られると思ったのか、起き上がって直ぐに後退りする。
モモが急いで雑巾をキッチンから引っ張り出してくれるので、器は俺が片付ける。木の器だったので割れる心配はなかったけど、エリゼちゃんは大丈夫だろうか。
「昨日はあんなに怒ってたのに! こんな嫌がらせまでしてなんなのよ!」
「にゃーん」
「姉さんも俺もモモも、大福も、エリゼちゃんが嫌いで何かしてるわけではないよ。ご飯については持って行けないと想わなくて。姉さんの言う通り汁物を持たせたのは俺のミスだよ。ごめんね」
エリゼちゃんが素直に謝罪されたことに、少し困惑している。
「にゃーん」
わざと、こぼしたのであれば殴りつけるところだが、わざとでないのであれば怒るほどのことではない。
次は注意しなさいと姉さんが問いかける。
「にゃーん」
「もう一回ですか? 俺が持って行きます」
「にゃーん」
姉さんがもう一杯持ってこいというので言うとおりに、もう一杯のうどんを用意する。
エリゼちゃんが姉さんに言われるがまま、もう一度お盆を受け取る。
また溢さないか? 俺が後ろから、前はモモが身構える。さっきつまずいた、段差は無事クリア、畳に足を取られる様子はなく、ゆっくりとテーブルの上にお盆を下ろす。
ふぅー、無事成功だ。緊張感のある配膳だった。
「にゃーん」
姉さんがエリゼちゃんの肩に乗って、よくやったと褒めている。少しなら触ってもいいぞと、体を触らせてあげる。飴と鞭かな?
「にゃーん」
「悪くない」
お前が言う獣の毛並みも悪くないであろうと意地悪なことを言いながら、モフモフさせてあげる。モモがそれを見てブラッシング用の櫛を持ってウズウズしている。
「姉さんもモモもご飯が先だよ」
姉さんや大福の分のお椀と、うどんだけでは足りないだろうと、漬物やおにぎり、卵焼きなんかもテーブルに並べていくと、どんどん増えていく品数にエリゼちゃんが少し困惑していた。
なんで靴を脱がないといけないとか、この家の作りはなんだとか、案の定、騒がしかったけど、モモが無言で腕を掴みお風呂へと連れていく。
「これがお風呂? 随分狭いのね」
「黙っててください。使い方を説明します」
モモがあーだーこーだと説明をする声だけが聞こえる。脱ぎ捨てられたドレスを掴んで、材質を確認してみるが、手触りはいいし、シルク系なのだろうか。どうやって洗えばいいのかな、とりあえずは外で手洗いをしてみるか。
「何よこの設備! 私の家にも欲しいわ!」
「少しは黙ってください! それと体は髪も自分で洗ってください!」
「どうやって洗うのよ!」
モモ、大変なことを任せすまん。もう少し幼い子なら俺が入れてやるんだが、中学生くらいの子を入れてやるわけにはいかないからな。
木の桶にドレスを入れて、外にある井戸まで持っていく。ドレス自体もボロボロだけど、せめて汚れくらいは落としておいて保管をしておいた方がいいだろう。
水をいっぱいに溜めて、液体洗剤を少し入れてもみ洗いをしてみるが、水があっという間に真っ黒になっていく。
思った以上に汚れていたようだ、あの子は何日くらい森で彷徨っていたのかな。
「わん!」
「大福、遊んでるんじゃないの。洗ってるんだから、桶に飛び込まないでくれよ」
「わん」
少しテンションは下がってしまったようだけど理解してくれてよかった。
何回か水を交換して、ある程度綺麗になったタイミングで、追加でテントの中にあった寝袋も軽く洗って綺麗にして、ほうきでテントの中も綺麗にして、どちらも水から出し、裏口にある物干しにかけておく。
物干しが風呂のすぐ側ということもあって、お風呂場でギャーギャーと騒ぐ声がまだ聞こえてくる。
もう少し、お風呂の時間は続きそうだな。
お粥もあっという間に食べていたし、まだお腹空いているだろう。
俺達の昼飯もこれからだったので合わせて、用意をしていく。
初期こそ手が出なかった、製麺機に小麦を入れてうどんを選択すると、うどんがニュルニュルと出てくる。それをお湯に潜らせてる間に簡単にスープも作成する。
醤油、みりん、砂糖、塩に最後に和風だしを入れる。手抜き? そんなことはない、数年料理をして思ったが、一から出汁とかを作る大変さが身に沁みた。日本の企業は改めて凄いよ。最後にはシンプルにネギに卵を落とす。
「騒がないでください!」
「煩いわね!」
やんや、やんやと喧嘩しながら出てきた2人がリビングに入ってくる。
エリゼちゃんは薄汚れた姿から一変して、綺麗なお嬢さんにジョブチェンジしていた。青い瞳に長いブロンドの髪、これぞ外国人って風貌ではあるが、モモから貸してもらったTシャツと短パン姿が少しシュールだ。
「モモ、お疲れ様。ありがとう。お昼にしようか」
「うん!」
「エリゼちゃんも自分のご飯は自分で持って行こうか」
「なんで私が!」
「じゃあ、ご飯いらないのかな?」
モモがルンルンとお盆をリビングに持っていくと、それを見てエリゼちゃんが渋々といった様子でお盆を持ってリビングへ行くが、リビングとキッチンの間にある引き戸の段差に足が引っかかってしまう。
お盆くらいなら問題ないかと思ったが不器用な子だったのか。
「にゃーん」
火傷はないかと心配して姉さんが声を一番にかけてくれるが、エリゼちゃんは、姉さんに怒られると思ったのか、起き上がって直ぐに後退りする。
モモが急いで雑巾をキッチンから引っ張り出してくれるので、器は俺が片付ける。木の器だったので割れる心配はなかったけど、エリゼちゃんは大丈夫だろうか。
「昨日はあんなに怒ってたのに! こんな嫌がらせまでしてなんなのよ!」
「にゃーん」
「姉さんも俺もモモも、大福も、エリゼちゃんが嫌いで何かしてるわけではないよ。ご飯については持って行けないと想わなくて。姉さんの言う通り汁物を持たせたのは俺のミスだよ。ごめんね」
エリゼちゃんが素直に謝罪されたことに、少し困惑している。
「にゃーん」
わざと、こぼしたのであれば殴りつけるところだが、わざとでないのであれば怒るほどのことではない。
次は注意しなさいと姉さんが問いかける。
「にゃーん」
「もう一回ですか? 俺が持って行きます」
「にゃーん」
姉さんがもう一杯持ってこいというので言うとおりに、もう一杯のうどんを用意する。
エリゼちゃんが姉さんに言われるがまま、もう一度お盆を受け取る。
また溢さないか? 俺が後ろから、前はモモが身構える。さっきつまずいた、段差は無事クリア、畳に足を取られる様子はなく、ゆっくりとテーブルの上にお盆を下ろす。
ふぅー、無事成功だ。緊張感のある配膳だった。
「にゃーん」
姉さんがエリゼちゃんの肩に乗って、よくやったと褒めている。少しなら触ってもいいぞと、体を触らせてあげる。飴と鞭かな?
「にゃーん」
「悪くない」
お前が言う獣の毛並みも悪くないであろうと意地悪なことを言いながら、モフモフさせてあげる。モモがそれを見てブラッシング用の櫛を持ってウズウズしている。
「姉さんもモモもご飯が先だよ」
姉さんや大福の分のお椀と、うどんだけでは足りないだろうと、漬物やおにぎり、卵焼きなんかもテーブルに並べていくと、どんどん増えていく品数にエリゼちゃんが少し困惑していた。
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