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2章
アホか
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翌朝、いつも通りの日が昇るタイミングで起きると、モモは朝食の用意を含めて日課を完了させていた。
大福が乱暴な子を連れてきてごめんねと、申し訳なさそうに昨日からしていたが今日は元気にそうにご飯を食べていたので安心した。
モモの朝食を食べて、畑仕事と動物達のお世話をして一息つくが、エリゼちゃんは起きてくる気配はない。
どのくらい森を彷徨っていたのかはわからないけど、水だけ飲むと倒れるように寝てしまったので、疲れてはいるんだろう。
「お父さん、あの子どうするつもり?」
「うーん、少しの間は一緒に生活することになると思うよう。モモも腑に落ちないことはあるかもしれないけど協力してくれないかな」
「あの子はお父さんに手を上げようとしたんだよ」
「結果的にはモモや姉さんのおかげで無事ったわけだし。まずはエリゼちゃんと今後のことを含めて、改めて話してみよう。あの子はモモと同じくまだ子供だし、育ってきた環境や常識も違うんだ。どうしても理解し合えない時には、その時また対応を考えよう」
モモは納得できないと、頬を膨らませていてリスのようで可愛い。
「にゃーん」
獣だって、見知らぬ土地で見知らぬ獣と出会えば、牽制し、殴り合いにも発展することはある。今回はこちらの力を示したし、少しは大人しくなるだろうって、人間の女の子相手に獣って表現はどうなんだろうか。
なんかモモも納得しちゃってるし。
モモとの思い出の品であるミルク粥を用意して、テントに近づいてみる。声をかけてみても反応がないので、テントを開けてみると、寝袋の上で丸まって寝ている。夏だからいいけど冬なら風邪をひくぞ。
「エリゼちゃん」
モモにお粥を預けて、肩を揺らして何度か声をかけると目を静かに開き、起き上がってキョロキョロと周りを見渡す。
「エリゼちゃん、おはよう」
俺の顔を見た後で、自分の格好を確認し、前回同様に拳を振り上げようとしたタイミングで姉さんが声をかける。
前回も気になったけど、その念話みたいな魔法はいつの間に使えるようになったのだろうか。いや、元々使えたのかな? ソーズさんはなんとなくコミニュケーションをしていたけど、それ以外の人は基本的には言葉理解してたもんな。
「にゃーん」
姉さんがまた殴られたいのかと問いかけると、エリゼちゃんはぐぬぬと拳を握りしめて震える。
「好きにしなさいよ、この獣!」
「ちょっと、うちの姉さんに向かって獣という発言は看過できないよ」
「違うわよ! あんたに言ったのよ」
「俺のどこが獣なのかな? あれ、もしかして臭い? いやいや、ボロボロのエリゼちゃん方が臭いと思うけど」
キーっと、今にも暴れ出しそうな、エリゼちゃん。騒がしい子だ、モモと違って悪い意味で感情が豊かだな。
「誰が臭いですって! 私のことを手篭めにしようとして、来たんでしょ!」
手篭め? 難しい言葉を知っている。面白いことを言うので、ついつい、鼻で笑ってしまった。
「何がおかしいのよ!」
「俺はね、大人の女性にしか興味はないの。起こしたのはご飯を持ってきたんだよ」
「私はどこからどう見ても大人の女性でしょ! 成人だって先月迎えたんだから!」
モモよりも1つ年上か。同い年か、少ししたかと思ったけど。モモはやっぱり同年代の子と比べても身長高いよな。
「そうですか、お嬢さん。それは失礼しました。でも俺はご飯を持ってきただけなんだよ。いらないなら持って帰るけど」
「いらないとは言ってないわ。よこしなさい」
「にゃーん」
「ぐっ……ください!」
姉さんの言うことはしっかり聞くな。弱肉強食を本能で理解しているあたり、姉さんが言った獣という表現もあながち間違ってはないのかもしれない。
縁側に移動して、座らせてからミルク粥を渡すと、がっついて食べるかと思ったら、匙を使って食べる姿はまさにお嬢様で俺達の食べ方が汚いとは言わないけど、姿勢からして所作が美しい。
がっつかず、急いでる様子はなかったが、お粥があっという間に消えてしまった。
「まぁまぁの食事ね。私のために特別に用意したことは褒めてあげるわ」
「特別に用意はしてないですし、うちの料理の中では質素な方です」
モモの返答にエリゼちゃんはいまいち納得していない。モモの発言について俺へと目線を移し、どういうことか目が訴えてくる。
「話しているのは私です」
「私は農奴と、ましては亜人と話す口は持っていないわ」
モモになんてことを言うのだろうか。当の本人である、モモは毅然とした態度でエリゼちゃんのことを見ている。
「にゃーん」
姉さんがまた低いトーンで怒りを露わにする。昨日のことを思い出したのか、エリゼちゃんが少し狼狽した。
「姉さんの言う通り、ここにはここのルールがあるんだ。俺達は農奴でもないし、モモは俺の娘だなんだ。亜人のこととか色々言いたいことはあるけど、ここにいる以上はモモとも会話をしてもらうし、さっきのことはちゃんとごめんなさいしようか」
「わ、私にだってプライドはあるわ!」
姉さんには力で負けたせいか、従順ではあるけど、いまいちモモの件については同年代ということもあるせいか頑なだな。
「エリゼちゃん。同じ立場の友人に貴女とは話をしないって言ったら傷つかないかな?」
「殴ってやるわ!」
「殴るのはどうだろうね……でも悲しい気持ちにはなるでしょ?」
「当然よ!」
「俺やモモも同じように悲しい気持ちになるんだよ」
うーん、でもと、まだ謝ることに対して躊躇しているが、話せばわからないわけではないようだ。この子はこの世界ではそれなりの地位にいるのであれば、しっかりとした教育を受けて然るべきだと思うのだけど。
これまでどんな環境でどういう教育を受けてきたのだろうか。
「悪かったわ」
「謝罪を受け入れます」
絞り出すような小さいな謝罪だけど、モモが受け入れた以上はこれでよしとするか。
「お父さんにも昨日のこと謝ってください」
「悪かったわね!」
半ばヤケクソな謝罪だな。
「はいはい、それじゃあ、エリゼちゃんは汚れてるし、お風呂に入ろうか」
「やっぱり、私の体狙いなのね!」
アホなことを言い続けるので、思わずチョップをしてしまった。
大福が乱暴な子を連れてきてごめんねと、申し訳なさそうに昨日からしていたが今日は元気にそうにご飯を食べていたので安心した。
モモの朝食を食べて、畑仕事と動物達のお世話をして一息つくが、エリゼちゃんは起きてくる気配はない。
どのくらい森を彷徨っていたのかはわからないけど、水だけ飲むと倒れるように寝てしまったので、疲れてはいるんだろう。
「お父さん、あの子どうするつもり?」
「うーん、少しの間は一緒に生活することになると思うよう。モモも腑に落ちないことはあるかもしれないけど協力してくれないかな」
「あの子はお父さんに手を上げようとしたんだよ」
「結果的にはモモや姉さんのおかげで無事ったわけだし。まずはエリゼちゃんと今後のことを含めて、改めて話してみよう。あの子はモモと同じくまだ子供だし、育ってきた環境や常識も違うんだ。どうしても理解し合えない時には、その時また対応を考えよう」
モモは納得できないと、頬を膨らませていてリスのようで可愛い。
「にゃーん」
獣だって、見知らぬ土地で見知らぬ獣と出会えば、牽制し、殴り合いにも発展することはある。今回はこちらの力を示したし、少しは大人しくなるだろうって、人間の女の子相手に獣って表現はどうなんだろうか。
なんかモモも納得しちゃってるし。
モモとの思い出の品であるミルク粥を用意して、テントに近づいてみる。声をかけてみても反応がないので、テントを開けてみると、寝袋の上で丸まって寝ている。夏だからいいけど冬なら風邪をひくぞ。
「エリゼちゃん」
モモにお粥を預けて、肩を揺らして何度か声をかけると目を静かに開き、起き上がってキョロキョロと周りを見渡す。
「エリゼちゃん、おはよう」
俺の顔を見た後で、自分の格好を確認し、前回同様に拳を振り上げようとしたタイミングで姉さんが声をかける。
前回も気になったけど、その念話みたいな魔法はいつの間に使えるようになったのだろうか。いや、元々使えたのかな? ソーズさんはなんとなくコミニュケーションをしていたけど、それ以外の人は基本的には言葉理解してたもんな。
「にゃーん」
姉さんがまた殴られたいのかと問いかけると、エリゼちゃんはぐぬぬと拳を握りしめて震える。
「好きにしなさいよ、この獣!」
「ちょっと、うちの姉さんに向かって獣という発言は看過できないよ」
「違うわよ! あんたに言ったのよ」
「俺のどこが獣なのかな? あれ、もしかして臭い? いやいや、ボロボロのエリゼちゃん方が臭いと思うけど」
キーっと、今にも暴れ出しそうな、エリゼちゃん。騒がしい子だ、モモと違って悪い意味で感情が豊かだな。
「誰が臭いですって! 私のことを手篭めにしようとして、来たんでしょ!」
手篭め? 難しい言葉を知っている。面白いことを言うので、ついつい、鼻で笑ってしまった。
「何がおかしいのよ!」
「俺はね、大人の女性にしか興味はないの。起こしたのはご飯を持ってきたんだよ」
「私はどこからどう見ても大人の女性でしょ! 成人だって先月迎えたんだから!」
モモよりも1つ年上か。同い年か、少ししたかと思ったけど。モモはやっぱり同年代の子と比べても身長高いよな。
「そうですか、お嬢さん。それは失礼しました。でも俺はご飯を持ってきただけなんだよ。いらないなら持って帰るけど」
「いらないとは言ってないわ。よこしなさい」
「にゃーん」
「ぐっ……ください!」
姉さんの言うことはしっかり聞くな。弱肉強食を本能で理解しているあたり、姉さんが言った獣という表現もあながち間違ってはないのかもしれない。
縁側に移動して、座らせてからミルク粥を渡すと、がっついて食べるかと思ったら、匙を使って食べる姿はまさにお嬢様で俺達の食べ方が汚いとは言わないけど、姿勢からして所作が美しい。
がっつかず、急いでる様子はなかったが、お粥があっという間に消えてしまった。
「まぁまぁの食事ね。私のために特別に用意したことは褒めてあげるわ」
「特別に用意はしてないですし、うちの料理の中では質素な方です」
モモの返答にエリゼちゃんはいまいち納得していない。モモの発言について俺へと目線を移し、どういうことか目が訴えてくる。
「話しているのは私です」
「私は農奴と、ましては亜人と話す口は持っていないわ」
モモになんてことを言うのだろうか。当の本人である、モモは毅然とした態度でエリゼちゃんのことを見ている。
「にゃーん」
姉さんがまた低いトーンで怒りを露わにする。昨日のことを思い出したのか、エリゼちゃんが少し狼狽した。
「姉さんの言う通り、ここにはここのルールがあるんだ。俺達は農奴でもないし、モモは俺の娘だなんだ。亜人のこととか色々言いたいことはあるけど、ここにいる以上はモモとも会話をしてもらうし、さっきのことはちゃんとごめんなさいしようか」
「わ、私にだってプライドはあるわ!」
姉さんには力で負けたせいか、従順ではあるけど、いまいちモモの件については同年代ということもあるせいか頑なだな。
「エリゼちゃん。同じ立場の友人に貴女とは話をしないって言ったら傷つかないかな?」
「殴ってやるわ!」
「殴るのはどうだろうね……でも悲しい気持ちにはなるでしょ?」
「当然よ!」
「俺やモモも同じように悲しい気持ちになるんだよ」
うーん、でもと、まだ謝ることに対して躊躇しているが、話せばわからないわけではないようだ。この子はこの世界ではそれなりの地位にいるのであれば、しっかりとした教育を受けて然るべきだと思うのだけど。
これまでどんな環境でどういう教育を受けてきたのだろうか。
「悪かったわ」
「謝罪を受け入れます」
絞り出すような小さいな謝罪だけど、モモが受け入れた以上はこれでよしとするか。
「お父さんにも昨日のこと謝ってください」
「悪かったわね!」
半ばヤケクソな謝罪だな。
「はいはい、それじゃあ、エリゼちゃんは汚れてるし、お風呂に入ろうか」
「やっぱり、私の体狙いなのね!」
アホなことを言い続けるので、思わずチョップをしてしまった。
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