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2章
圧倒的
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「にゃーん」
いつの間にか姉さんが俺の膝の上に座っていた。モモにその手を離すように声をかけている。
「お姉ちゃん! でも」
「にゃーん」
姉さんが凄く怒っている。いつもよりは2つは低い低音で声を出す。
モモは渋々といった様子で手を離すと、そのまま少女はモモに殴りかかろうとする。
「にゃーん」
「--っこの猫、脳内に直接、ファミチキってなんなのよ!」
姉さん、ふざける余裕はあるんですね。
「にゃーん」
「はぁ? 獣風情が相手をするですって? 少しばかり知能があるからって舐めないでよね」
少女がモモから姉さんへと標的を変える。姉さんも俺の膝がから降りると、そのまま乱暴な少女へと優雅に歩み寄っていく。
少女の蹴りが空を蹴り、姉さんが残像だと言わんばかりに、肩に乗るとそのまま猫パンチを繰り出す。
よろける少女、反撃にと拳を振り回すが当たることはなく、猫パンチ、猫キック、と可愛らしかった顔が苦痛に歪み、地面を転げ回れば服が更に汚れていく。
10回ほど地面をころころさせられる姿をみて少し可哀想になってくる。
「姉さん、流石にそろそろいいんではないですか?」
「お父さんに本当に当たっていたら、怪我では済まなかったんです。まだ足りないくらいです」
「にゃーん」
2人とも怖い。それに少女もガッツだけはあるのか、息切れをしながらも何度でも立ち上がってくる。
仕方ないと、姉さんと女の子の間に割って入って、止める。少女はもう立ち上がることもできないのか、支えながら抱き上げてあげる。
「お父さん!」
「にゃーん」
「ここまでです。もう十分この子も反省したでしょうし、暴力だけの解決というのは好きではないんです」
「にゃーん」
姉さんがある程度手加減してくれてるおかげもあって、殴られていた割には腫れてはいるけど大きな傷跡はない。
モモの殴られた頬も直前に魔法で防御したとのことで大きな怪我とはなってなかった。
姉さんと、モモの監視の元、少女をゴザの上に寝かして泥だらけになった顔を拭いてあげる。
「痛いじゃない」
「悪いけど我慢してくれよ。自業自得ってやつだよ」
「わん」
「大福様は悪くないですよ」
反省する大福を、モモが優しくモフモフしてあげる。大福はボロボロになった女の子を助けただけなんだからむしろ偉いよ。今夜はご褒美に大福のご飯を豪華にしてあげよう。
この子の服もボロボロだし、着替えさせてあげたいけど、チラッとモモと姉さんをみると断固拒否という視線を向けてくる。
「俺は悠って言うだけど、君の名前は?」
「田舎者は私のことも知らないようね。ソード辺境伯領の次期当主エリゼ・ソードよ」
ソード辺境伯……皆んな、知ってるか?
「にゃーん」
「私は把握はしています。ジャスティス王国の国境付近を守る盾であり王家の剣と言われる貴族のことです」
「偉いとこの娘さんってことか。それでそんなお嬢様がどうしてまたこんな森に?」
「私のことを理解できたのであれば、もう少し敬いなさいよ。従者に裏切り者がいて薬を守られて殺しかけられたのよ」
「そりゃ、大変だったね。俺は王国の領民でもないし、敬意とはいうのは地位に対してではなく、人に対して払うものだと思うよ」
「だったら尚更よ。私にように崇高な人間には敬意を払いなさい」
傍若無人な子だな。背景は可哀想だと思うけど、いまいち同情をしにく。
これがこの世界の貴族の子供というものなのだろうか。選民意識が強いなぁ、この辺は環境とかも影響があるから全てこの子の責任とも言えないのかもしれない。迷子だというなら家に無事帰れるように出来る範囲のことをするか。
「うーん、とりあえずは迷子ということならこの森を無事出れるように力を貸すから」
「当然よ!」
「お父さん、そろそろ怒ってもいい?」
「にゃーん」
モモと姉さんがイライラし始めている。なんとか方向をずらさないと……。
「私への無礼は許してあげるから、まずは謝りなさい!」
「悪いけどそれはできないよ。先に手を出したのは君だからね。もし姉さんがやり過ぎたとしても謝るのはまずは君が最初」
「どうしてよ!」
ダメだ。会話になりそうにない、根気強く対応するよりもそれぞれに関わり過ぎないのが幸せなのかもしれない。
ショッピングサイトでテントと寝袋を購入する。幸いに夏だしそこまで冷えないから大丈夫だろう、家に入れるとかになれば2人が激怒しそうだ。
「モモ、悪いけど手伝ってくれるかな」
「お父さん、でも……」
「モモ、頼むよ」
渋々と言った様子でモモがテントの設営を手伝ってくれる。
「エリゼちゃん、このテントを使ってもらっていいかな。中には寝袋もあるから好きに使って」
「私に天幕に入れと言うの! 無礼にも程があるわ!」
「にゃーん」
姉さんが嫌なら今すぐに追い出してもいいと凄むと、エリゼちゃんもなんとか了承してくれた、了承するしかなかったという方が正しいかもしれない。
とりあえずは火の鶏に速達で依頼をして、さくらさん経由で家に帰れるように依頼してみよう。
いつの間にか姉さんが俺の膝の上に座っていた。モモにその手を離すように声をかけている。
「お姉ちゃん! でも」
「にゃーん」
姉さんが凄く怒っている。いつもよりは2つは低い低音で声を出す。
モモは渋々といった様子で手を離すと、そのまま少女はモモに殴りかかろうとする。
「にゃーん」
「--っこの猫、脳内に直接、ファミチキってなんなのよ!」
姉さん、ふざける余裕はあるんですね。
「にゃーん」
「はぁ? 獣風情が相手をするですって? 少しばかり知能があるからって舐めないでよね」
少女がモモから姉さんへと標的を変える。姉さんも俺の膝がから降りると、そのまま乱暴な少女へと優雅に歩み寄っていく。
少女の蹴りが空を蹴り、姉さんが残像だと言わんばかりに、肩に乗るとそのまま猫パンチを繰り出す。
よろける少女、反撃にと拳を振り回すが当たることはなく、猫パンチ、猫キック、と可愛らしかった顔が苦痛に歪み、地面を転げ回れば服が更に汚れていく。
10回ほど地面をころころさせられる姿をみて少し可哀想になってくる。
「姉さん、流石にそろそろいいんではないですか?」
「お父さんに本当に当たっていたら、怪我では済まなかったんです。まだ足りないくらいです」
「にゃーん」
2人とも怖い。それに少女もガッツだけはあるのか、息切れをしながらも何度でも立ち上がってくる。
仕方ないと、姉さんと女の子の間に割って入って、止める。少女はもう立ち上がることもできないのか、支えながら抱き上げてあげる。
「お父さん!」
「にゃーん」
「ここまでです。もう十分この子も反省したでしょうし、暴力だけの解決というのは好きではないんです」
「にゃーん」
姉さんがある程度手加減してくれてるおかげもあって、殴られていた割には腫れてはいるけど大きな傷跡はない。
モモの殴られた頬も直前に魔法で防御したとのことで大きな怪我とはなってなかった。
姉さんと、モモの監視の元、少女をゴザの上に寝かして泥だらけになった顔を拭いてあげる。
「痛いじゃない」
「悪いけど我慢してくれよ。自業自得ってやつだよ」
「わん」
「大福様は悪くないですよ」
反省する大福を、モモが優しくモフモフしてあげる。大福はボロボロになった女の子を助けただけなんだからむしろ偉いよ。今夜はご褒美に大福のご飯を豪華にしてあげよう。
この子の服もボロボロだし、着替えさせてあげたいけど、チラッとモモと姉さんをみると断固拒否という視線を向けてくる。
「俺は悠って言うだけど、君の名前は?」
「田舎者は私のことも知らないようね。ソード辺境伯領の次期当主エリゼ・ソードよ」
ソード辺境伯……皆んな、知ってるか?
「にゃーん」
「私は把握はしています。ジャスティス王国の国境付近を守る盾であり王家の剣と言われる貴族のことです」
「偉いとこの娘さんってことか。それでそんなお嬢様がどうしてまたこんな森に?」
「私のことを理解できたのであれば、もう少し敬いなさいよ。従者に裏切り者がいて薬を守られて殺しかけられたのよ」
「そりゃ、大変だったね。俺は王国の領民でもないし、敬意とはいうのは地位に対してではなく、人に対して払うものだと思うよ」
「だったら尚更よ。私にように崇高な人間には敬意を払いなさい」
傍若無人な子だな。背景は可哀想だと思うけど、いまいち同情をしにく。
これがこの世界の貴族の子供というものなのだろうか。選民意識が強いなぁ、この辺は環境とかも影響があるから全てこの子の責任とも言えないのかもしれない。迷子だというなら家に無事帰れるように出来る範囲のことをするか。
「うーん、とりあえずは迷子ということならこの森を無事出れるように力を貸すから」
「当然よ!」
「お父さん、そろそろ怒ってもいい?」
「にゃーん」
モモと姉さんがイライラし始めている。なんとか方向をずらさないと……。
「私への無礼は許してあげるから、まずは謝りなさい!」
「悪いけどそれはできないよ。先に手を出したのは君だからね。もし姉さんがやり過ぎたとしても謝るのはまずは君が最初」
「どうしてよ!」
ダメだ。会話になりそうにない、根気強く対応するよりもそれぞれに関わり過ぎないのが幸せなのかもしれない。
ショッピングサイトでテントと寝袋を購入する。幸いに夏だしそこまで冷えないから大丈夫だろう、家に入れるとかになれば2人が激怒しそうだ。
「モモ、悪いけど手伝ってくれるかな」
「お父さん、でも……」
「モモ、頼むよ」
渋々と言った様子でモモがテントの設営を手伝ってくれる。
「エリゼちゃん、このテントを使ってもらっていいかな。中には寝袋もあるから好きに使って」
「私に天幕に入れと言うの! 無礼にも程があるわ!」
「にゃーん」
姉さんが嫌なら今すぐに追い出してもいいと凄むと、エリゼちゃんもなんとか了承してくれた、了承するしかなかったという方が正しいかもしれない。
とりあえずは火の鶏に速達で依頼をして、さくらさん経由で家に帰れるように依頼してみよう。
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