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第一章
牛肉戦士
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扉の奥はジメジメしていた。
気温は低い。
どこからか、ねっとりとした視線のようなものを感じる。
嫌な感じだ。
正直さっさと帰りたい。
さっきまでいたCランクのダンジョンは洞窟だったが、この隠しダンジョンはある程度整備された地下迷宮って感じの空間だった。
周囲を警戒しながらしばらく歩くと、ランとリサを発見することができた。
どうやら無事なようだ。
なにやらキャッキャと騒いでいる。
「宝箱だ!」
ランがひと際大きな声で叫んだ。
「すごいわね。実物は初めて見たわ」
リサも若干興奮した様子で、声の調子から喜びがひしひしと伝わってきた。
俺とリーダーは二人に駆け寄った。
「宝箱見つけたのか。ラッキーだったな。じゃ、いい加減帰るぞ」
二人は信じられないといった顔で俺を見た。
ランがため息をついた。
「まだ入ったばかりじゃない。それにモンスターだって一体も見かけないし、きっとここは安全な隠しダンジョンなのよ」
「おい! フラグを立てるな! いい加減にしろって」
俺が注意してもランは肩をすくめるばかりで聞こうともしない。
リサが思春期の娘のような態度で鬱陶しそうに言った。
「邪魔しないでくださいよ。私たちだって危なくなったら逃げますし。あなたがいたってどうせ何もしてくれないんですから、もうどっか行っててくださいよ。えーっと? 確かマナアレルギー? なんですよねぇ? だったら危険なのでもう帰っていいですよ」
明らかに小馬鹿にした言い方にイラっときたが、ここでキレてもいいことはない。
「あんたのパーティーだろ。なんとかしてくれ」
リーダーに助けを求めてそう言ったが、返事がなかったので振り返ってみると、リーダーはじっと宝箱を見つめていた。
「どうした?」
「……シラネさん。もう少しだけ探索してから帰りませんか?」
「ハァ……。そんなに金が欲しいのか? 死んだらそんなもんなんの意味もないぞ?」
「だ、だって。モンスターもいないみたいですし。ちょっとくらい……」
「モンスターってどこからともなく湧いて出るもんじゃん。それにな、俺の経験からしてここの雰囲気は結構やばい。ランク付けされたら多分S寄りのAとかになると思うぞ」
「は? 何を根拠にそんなこと言ってるんですか?」
リサが相変わらず挑発的に訊いてきた。
「だから経験則だって」
「全然信用できませんね。もうこれ以上は本当に迷惑なので黙っててくだ」
その時、リサの言葉を遮るように獣の咆哮が聞こえてきた。
「……あーあ。ちんたらしてるからモンスターが来ちゃったじゃん」
俺はうんざりしながら振り返った。
よだれを垂らしながら俺たちのことをじっと見つめているそのモンスターは、Sランクのダンジョンによくいるやつだった。
人間みたいな体に牛の頭を持っている、ケンタウロスの逆バージョンの牛バージョンみたいな感じの槍を持ったモンスターだ。
立派な角と洒落たマントがトレードマークの、通称牛肉戦士。
こいつがいるってことは、多分ここはSランクのダンジョンだ。
A寄りのSって感じかも。
早く帰りたい。
気温は低い。
どこからか、ねっとりとした視線のようなものを感じる。
嫌な感じだ。
正直さっさと帰りたい。
さっきまでいたCランクのダンジョンは洞窟だったが、この隠しダンジョンはある程度整備された地下迷宮って感じの空間だった。
周囲を警戒しながらしばらく歩くと、ランとリサを発見することができた。
どうやら無事なようだ。
なにやらキャッキャと騒いでいる。
「宝箱だ!」
ランがひと際大きな声で叫んだ。
「すごいわね。実物は初めて見たわ」
リサも若干興奮した様子で、声の調子から喜びがひしひしと伝わってきた。
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二人は信じられないといった顔で俺を見た。
ランがため息をついた。
「まだ入ったばかりじゃない。それにモンスターだって一体も見かけないし、きっとここは安全な隠しダンジョンなのよ」
「おい! フラグを立てるな! いい加減にしろって」
俺が注意してもランは肩をすくめるばかりで聞こうともしない。
リサが思春期の娘のような態度で鬱陶しそうに言った。
「邪魔しないでくださいよ。私たちだって危なくなったら逃げますし。あなたがいたってどうせ何もしてくれないんですから、もうどっか行っててくださいよ。えーっと? 確かマナアレルギー? なんですよねぇ? だったら危険なのでもう帰っていいですよ」
明らかに小馬鹿にした言い方にイラっときたが、ここでキレてもいいことはない。
「あんたのパーティーだろ。なんとかしてくれ」
リーダーに助けを求めてそう言ったが、返事がなかったので振り返ってみると、リーダーはじっと宝箱を見つめていた。
「どうした?」
「……シラネさん。もう少しだけ探索してから帰りませんか?」
「ハァ……。そんなに金が欲しいのか? 死んだらそんなもんなんの意味もないぞ?」
「だ、だって。モンスターもいないみたいですし。ちょっとくらい……」
「モンスターってどこからともなく湧いて出るもんじゃん。それにな、俺の経験からしてここの雰囲気は結構やばい。ランク付けされたら多分S寄りのAとかになると思うぞ」
「は? 何を根拠にそんなこと言ってるんですか?」
リサが相変わらず挑発的に訊いてきた。
「だから経験則だって」
「全然信用できませんね。もうこれ以上は本当に迷惑なので黙っててくだ」
その時、リサの言葉を遮るように獣の咆哮が聞こえてきた。
「……あーあ。ちんたらしてるからモンスターが来ちゃったじゃん」
俺はうんざりしながら振り返った。
よだれを垂らしながら俺たちのことをじっと見つめているそのモンスターは、Sランクのダンジョンによくいるやつだった。
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A寄りのSって感じかも。
早く帰りたい。
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