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第一章
ユブメ
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ギルド長室を後にした俺は、さっそく新しいパーティーを探すことにした。
ギルド内で暇そうにしてる人を見つけては、片っ端から声を掛けてみた。
俺のことを知っている人は十中八九受け入れてくれないだろうから、顔を見たことない奴を中心に狙った。
しかし、夜まで粘って収穫ゼロ。
どうやら俺の悪評はかなり広まっているらしい。
こっちが知らない奴からも認識されている。
まったく嬉しくない事態だ。
さてどうしたものか。
貯金はまあまああるし、今すぐに仕事がないとどうにかなってしまうというわけではないが、マーヤさんにもあんなこと言っちゃったからなぁ。
まぁ今日のところはこのくらいにしておこう。
冷静に考えれば、昨日の今日で頑張った方だろう。
家に帰ろうとギルドを後にしてすぐに、誰かが追いかけてくる気配を感じた。
ストーカーか? と一瞬思ったが、どうやら違うらしい。
普通に追いついて話しかけてきた。
「あ、あの! シラネさん!」
「ん? なに?」
俺は振り返って話しかけてきた人物の顔を見た。
なんとなく見覚えのある顔だが、すぐには思い出せなかった。
「えっと。私、ユブメです。ウタメの妹の」
「……え、マジで?」
「はい。お久しぶりです」
ユブメは控えめに微笑んだ。
ウタメっていうのは、俺の元パーティーメンバーのことだ。
そして目の前にいるのはその妹、ユブメ。
面識はあるけど、あんまり絡んだ覚えもない。
俺の印象では気の弱い奴ってくらいのもので、他に思うことは特にない。
それに元同僚の妹とか正直どう接していいかわからん。
「最後に会ったのっていつだっけ? なんかめっちゃ背伸びてるな」
慎重に言葉を選んだ結果、親戚のおっさんみたいなセリフが飛び出した。
でも本当に背が伸びてる。
そのせいで一瞬誰か分からなかったのだ。
相変わらず痩せてるけど。
「二年前です」
「二年でよくそんな伸びたなぁ。流石成長期。で、えーっと。なんの用?」
「シラネさんがお姉ちゃんたちのパーティーから抜けたとお聞きしたので、何があったんだろうと思って」
「あー。別に。素行の悪さからクビになったってだけだよ」
「素行の悪さ、ですか? シラネさんが? 私には信じられませんが……」
「前から思ってたんだけどさ、君は多分俺のこといい人だと思ってるだろ?」
「もちろんです。シラネさんはいい人です。間違いありません」
「違うよ。俺は悪いこともする。いいこともするけど。善人ではないよ」
「謙虚で素敵です」
「いや、謙遜してるわけじゃなくて。え、俺の悪い噂とか耳にしない?」
「噂は噂ですよ」
「ってことは俺の噂聞いたことはあるってことだよな? それなのになんでそんな感じなの?」
「そんな感じとは?」
「いや、なんていうか……勘違いじゃなければ、結構好意的に接してくれてると思うんだけど」
「勘違いじゃないですよ。私があなたに好意的に接するのは、あなたが私にしてくれたことを考えれば当然のことだと思いますけど」
「……なんかしたっけ? そもそも俺たちあんま話したこともないと思うんだけど。君が俺のこと覚えてたこともびっくりしたくらいだもん」
「……え? 覚えてないんですか?」
「マジでなんのこと?」
ユブメは口を開けて固まった。
「え、なに。どうしたの。大丈夫?」
「……あ、はい。あの、ごめんなさい。今日のところは失礼します」
「ん? うん。わかった」
ユブメは複雑な表情を浮かべながらどこかに去っていった。
なんだったんだ。
ギルド内で暇そうにしてる人を見つけては、片っ端から声を掛けてみた。
俺のことを知っている人は十中八九受け入れてくれないだろうから、顔を見たことない奴を中心に狙った。
しかし、夜まで粘って収穫ゼロ。
どうやら俺の悪評はかなり広まっているらしい。
こっちが知らない奴からも認識されている。
まったく嬉しくない事態だ。
さてどうしたものか。
貯金はまあまああるし、今すぐに仕事がないとどうにかなってしまうというわけではないが、マーヤさんにもあんなこと言っちゃったからなぁ。
まぁ今日のところはこのくらいにしておこう。
冷静に考えれば、昨日の今日で頑張った方だろう。
家に帰ろうとギルドを後にしてすぐに、誰かが追いかけてくる気配を感じた。
ストーカーか? と一瞬思ったが、どうやら違うらしい。
普通に追いついて話しかけてきた。
「あ、あの! シラネさん!」
「ん? なに?」
俺は振り返って話しかけてきた人物の顔を見た。
なんとなく見覚えのある顔だが、すぐには思い出せなかった。
「えっと。私、ユブメです。ウタメの妹の」
「……え、マジで?」
「はい。お久しぶりです」
ユブメは控えめに微笑んだ。
ウタメっていうのは、俺の元パーティーメンバーのことだ。
そして目の前にいるのはその妹、ユブメ。
面識はあるけど、あんまり絡んだ覚えもない。
俺の印象では気の弱い奴ってくらいのもので、他に思うことは特にない。
それに元同僚の妹とか正直どう接していいかわからん。
「最後に会ったのっていつだっけ? なんかめっちゃ背伸びてるな」
慎重に言葉を選んだ結果、親戚のおっさんみたいなセリフが飛び出した。
でも本当に背が伸びてる。
そのせいで一瞬誰か分からなかったのだ。
相変わらず痩せてるけど。
「二年前です」
「二年でよくそんな伸びたなぁ。流石成長期。で、えーっと。なんの用?」
「シラネさんがお姉ちゃんたちのパーティーから抜けたとお聞きしたので、何があったんだろうと思って」
「あー。別に。素行の悪さからクビになったってだけだよ」
「素行の悪さ、ですか? シラネさんが? 私には信じられませんが……」
「前から思ってたんだけどさ、君は多分俺のこといい人だと思ってるだろ?」
「もちろんです。シラネさんはいい人です。間違いありません」
「違うよ。俺は悪いこともする。いいこともするけど。善人ではないよ」
「謙虚で素敵です」
「いや、謙遜してるわけじゃなくて。え、俺の悪い噂とか耳にしない?」
「噂は噂ですよ」
「ってことは俺の噂聞いたことはあるってことだよな? それなのになんでそんな感じなの?」
「そんな感じとは?」
「いや、なんていうか……勘違いじゃなければ、結構好意的に接してくれてると思うんだけど」
「勘違いじゃないですよ。私があなたに好意的に接するのは、あなたが私にしてくれたことを考えれば当然のことだと思いますけど」
「……なんかしたっけ? そもそも俺たちあんま話したこともないと思うんだけど。君が俺のこと覚えてたこともびっくりしたくらいだもん」
「……え? 覚えてないんですか?」
「マジでなんのこと?」
ユブメは口を開けて固まった。
「え、なに。どうしたの。大丈夫?」
「……あ、はい。あの、ごめんなさい。今日のところは失礼します」
「ん? うん。わかった」
ユブメは複雑な表情を浮かべながらどこかに去っていった。
なんだったんだ。
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