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第一章
迷子2
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二人でキョロキョロしながら歩いていると、突然手を引かれた。
ソーヤが立ち止まったようだ。
「どうした?」
ソーヤの方を見てみると、心奪われた様子でソフトクリームの屋台を見つめていた。
「食べたいのか?」
「……」
ソーヤは控えめに頷いた。
俺はポケットの中身を確認した。
買い取り屋で貰った5ゴールドはもう無い。
しかし小銭がちょっとだけあった。
通行人からくすねたやつだ。
当たり前だが買い取り屋では小銭を買い取ってもらおうなんてことはしていない。
小銭は全部で50コメカあった。
コメカってのはお金の単位で、100コメカで1ゴールドだ。
ソフトクリームは1ゴールド半。
俺も食いたいから必要なのは3ゴールド。
そして俺は今日財布を持ってきてない。
「ちょっと待ってろ。買ってくるから」
「うん」
俺は道を歩いている人々を観察した。
すると不用心にも肩にかけたカバンが半開きになっている男を発見した。
俺は素早くその男の背後に接近した。
それから持っていたヒユネリの花をベルトに差し込んで両手を使える状態にした。
そして右手で男の肩を叩くと同時に、左手でカバンから財布を抜き取って開き、3ゴールド頂戴して、それをめちゃくちゃ高くコイントスしてから財布を閉じる、というのを男が振り向くまでの一瞬で済ませた。
それから俺の方に振り向いて
「なにか?」
と首を傾げる男に財布を差し出して
「これ、落とされましたよ」
そう言って微笑みかけた。
「ああ! 御親切にどうもありがとうございます!」
男は照れたような笑顔を見せる。
俺は男に対して
「余計なお世話かもしれませんが、きちんと閉じておかないとまた中身を落としてしまわれますよ」
と忠告した。
「確かにその通りですね」
男は財布をカバンに仕舞い込んで、しっかりとカバンの口を閉じた。
「では、ありがとうございました」
最後にもう一度感謝の言葉を口にしてから男は去っていった。
男が背中を見せたちょうどそのタイミングでコイントスしていた3ゴールドが降ってきた。
俺はそれをキャッチするとソフトクリームを買いに行った。
二人分購入してソーヤの元に戻った。
「ほれ」
俺がソフトクリームを差し出すと、ソーヤはニッコリと笑って受け取った。
「ありがとう!」
そう言ってペロペロ舐め始めたソーヤを見て、俺も食べ始めた。
うむ。
なかなか美味い。
しばらく俺たちは黙ってソフトクリームを食べていたのだが、先に食べ終わったソーヤが俺の顔を見て言った。
「おいしかった。色々ありがとうね」
「別にいいさ」
「ごめんね。なんか迷惑かけてるよね?」
「ガキなんて人に迷惑かけてなんぼみたいなとこあるからな。気にすんな」
「……僕ね、いつもお母さんに言われてるんだ。人に何かしてもらったら必ずお返しをしなさいって。おじさんにも何かお礼をしなくちゃ」
「おじさんって……。俺まだ21なんだけど。まぁいいけどさ。それにしても律儀だなぁ。そんな面倒なことしなくていいのに」
「だめだよ。お母さんに怒られちゃう」
「えーダルいなぁ。んじゃお前の母親に謝礼を請求するわ。それでいいだろ」
「んー。おじさんがそれでいいならいいけど……」
「……シラネ。気にしないでおこうと思ったけど、やっぱ気になる。俺の名前はシラネだ。おじさんって言うな」
「そっか。分かったよシラネさん」
ソーヤは元気よく頷いた。
「素直なガキは結構好きだ」
俺はソーヤの頭をくしゃくしゃと撫でた。
ソーヤはくすぐったそうに首を引っ込める。
「さて、そんじゃそろそろ母親探しを再開するか」
「そうだね。……ん? あ! いた! お母さんだ!」
ソーヤは突然叫んでから、今にも泣き出しそうな顔でキョロキョロと周りを見ている女性に向かって走った。
見つかったみたいだ。
良かった良かった。
それじゃあズラかるとしよう。
俺は感謝されるの結構好きだけど、今はなんかそんな気分でもないから逃げることにしたのだ。
さらばソーヤ。
すくすく育つんだぞー。
「あれ? シラネさん? どこに行ったの? おーい!」
俺の姿を探すソーヤの大きな声を無視してギルドに向かった。
到着する頃にはいい感じの時間になっているだろう。
ソーヤが立ち止まったようだ。
「どうした?」
ソーヤの方を見てみると、心奪われた様子でソフトクリームの屋台を見つめていた。
「食べたいのか?」
「……」
ソーヤは控えめに頷いた。
俺はポケットの中身を確認した。
買い取り屋で貰った5ゴールドはもう無い。
しかし小銭がちょっとだけあった。
通行人からくすねたやつだ。
当たり前だが買い取り屋では小銭を買い取ってもらおうなんてことはしていない。
小銭は全部で50コメカあった。
コメカってのはお金の単位で、100コメカで1ゴールドだ。
ソフトクリームは1ゴールド半。
俺も食いたいから必要なのは3ゴールド。
そして俺は今日財布を持ってきてない。
「ちょっと待ってろ。買ってくるから」
「うん」
俺は道を歩いている人々を観察した。
すると不用心にも肩にかけたカバンが半開きになっている男を発見した。
俺は素早くその男の背後に接近した。
それから持っていたヒユネリの花をベルトに差し込んで両手を使える状態にした。
そして右手で男の肩を叩くと同時に、左手でカバンから財布を抜き取って開き、3ゴールド頂戴して、それをめちゃくちゃ高くコイントスしてから財布を閉じる、というのを男が振り向くまでの一瞬で済ませた。
それから俺の方に振り向いて
「なにか?」
と首を傾げる男に財布を差し出して
「これ、落とされましたよ」
そう言って微笑みかけた。
「ああ! 御親切にどうもありがとうございます!」
男は照れたような笑顔を見せる。
俺は男に対して
「余計なお世話かもしれませんが、きちんと閉じておかないとまた中身を落としてしまわれますよ」
と忠告した。
「確かにその通りですね」
男は財布をカバンに仕舞い込んで、しっかりとカバンの口を閉じた。
「では、ありがとうございました」
最後にもう一度感謝の言葉を口にしてから男は去っていった。
男が背中を見せたちょうどそのタイミングでコイントスしていた3ゴールドが降ってきた。
俺はそれをキャッチするとソフトクリームを買いに行った。
二人分購入してソーヤの元に戻った。
「ほれ」
俺がソフトクリームを差し出すと、ソーヤはニッコリと笑って受け取った。
「ありがとう!」
そう言ってペロペロ舐め始めたソーヤを見て、俺も食べ始めた。
うむ。
なかなか美味い。
しばらく俺たちは黙ってソフトクリームを食べていたのだが、先に食べ終わったソーヤが俺の顔を見て言った。
「おいしかった。色々ありがとうね」
「別にいいさ」
「ごめんね。なんか迷惑かけてるよね?」
「ガキなんて人に迷惑かけてなんぼみたいなとこあるからな。気にすんな」
「……僕ね、いつもお母さんに言われてるんだ。人に何かしてもらったら必ずお返しをしなさいって。おじさんにも何かお礼をしなくちゃ」
「おじさんって……。俺まだ21なんだけど。まぁいいけどさ。それにしても律儀だなぁ。そんな面倒なことしなくていいのに」
「だめだよ。お母さんに怒られちゃう」
「えーダルいなぁ。んじゃお前の母親に謝礼を請求するわ。それでいいだろ」
「んー。おじさんがそれでいいならいいけど……」
「……シラネ。気にしないでおこうと思ったけど、やっぱ気になる。俺の名前はシラネだ。おじさんって言うな」
「そっか。分かったよシラネさん」
ソーヤは元気よく頷いた。
「素直なガキは結構好きだ」
俺はソーヤの頭をくしゃくしゃと撫でた。
ソーヤはくすぐったそうに首を引っ込める。
「さて、そんじゃそろそろ母親探しを再開するか」
「そうだね。……ん? あ! いた! お母さんだ!」
ソーヤは突然叫んでから、今にも泣き出しそうな顔でキョロキョロと周りを見ている女性に向かって走った。
見つかったみたいだ。
良かった良かった。
それじゃあズラかるとしよう。
俺は感謝されるの結構好きだけど、今はなんかそんな気分でもないから逃げることにしたのだ。
さらばソーヤ。
すくすく育つんだぞー。
「あれ? シラネさん? どこに行ったの? おーい!」
俺の姿を探すソーヤの大きな声を無視してギルドに向かった。
到着する頃にはいい感じの時間になっているだろう。
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