11 / 21
ひよこ鑑定士になりたい
脱走2
しおりを挟む
夜になりました。
空は綺麗に晴れ渡っています。
いよいよです。
私の部屋は窓から裏口の門が見える位置にあります。そして先ほどロミさんが周囲を警戒しながら門に近づき、こっそりと鍵を開けているのを確認しました。
ロミさんはその後、この部屋を一瞬見上げて軽く一礼してからそそくさとその場を立ち去りました。
私はそれを見て感謝で胸がいっぱいになりました。
それと同時にここから去ることが急激に寂しくなりました。
慣れ親しんだ場所から離れることが、というよりもロミさんと会えなくなることがとても寂しいです。
そんな私の気持ちを察したのか、バウワウがにゃーにゃー鳴きながら足に擦り寄ってきました。
私はしゃがんでバウワウの頭を撫でながらなるべく落ち着いた口調になるように心掛けながら言いました。
「準備はできたの?」
「僕には準備するものなんかないから。アルマは随分とたくさん荷物を持っていくんだね。人間って大変なんだねぇ」
「他人事ね。この中には当分の間のあなたのご飯も含まれてるのよ。もっと感謝してもいいんじゃない?」
「アルマ様万歳。よっ、この国一の美女。肌綺麗。笑顔が素敵。意気地なし。優しい。飯がマズい。そんなアルマに僕は日頃から感謝してるよー。いつもありがとー」
「あら、素敵な感謝の仕方ねこの野郎」
「あ、こら! やめろアルマ! 僕のヒゲを弄ぶな! にゃああ!」
前足をバタバタさせて抵抗するバウワウの姿を見ていたらなんだか気持ちが楽になりました。
「ふふ。長い旅になるかもしれないけど、これからよろしくね」
私はヒゲを指先でくるくるするのを止め、改めて相棒にそう伝えました。
「こちらこそ。それじゃ、遊んでないでそろそろ出発しようか」
バウワウはドアの方に歩いて行きながら答えました。
私は真剣な顔で頷くと、荷物を詰め込んだリュックを背負いました。
それから何事もなく裏口の門まで辿り着くことができました。
夜中に外に出ることなんて何年振りでしょうか。
私は高揚感で体が熱くなるのを感じました。
周囲に人の気配はありません。
チャンスです。
私は音を立てないようにゆっくりと門を押しました。
そしてふと鍵のところに紙が紐で巻き付けてあることに気づきました。
紐をほどいて紙を確認してみると、そこには旅をする上でのアドバイスなど、今後役立ちそうな情報が色々書かれていました。
きっとロミさんです。
私はそれを大切にリュックの中に仕舞い込むと、一度教会の方を振り返りました。
そして勝手に出て行くことについての謝罪と今までの感謝の気持ちを込めて深く深く頭を下げました。
空は綺麗に晴れ渡っています。
いよいよです。
私の部屋は窓から裏口の門が見える位置にあります。そして先ほどロミさんが周囲を警戒しながら門に近づき、こっそりと鍵を開けているのを確認しました。
ロミさんはその後、この部屋を一瞬見上げて軽く一礼してからそそくさとその場を立ち去りました。
私はそれを見て感謝で胸がいっぱいになりました。
それと同時にここから去ることが急激に寂しくなりました。
慣れ親しんだ場所から離れることが、というよりもロミさんと会えなくなることがとても寂しいです。
そんな私の気持ちを察したのか、バウワウがにゃーにゃー鳴きながら足に擦り寄ってきました。
私はしゃがんでバウワウの頭を撫でながらなるべく落ち着いた口調になるように心掛けながら言いました。
「準備はできたの?」
「僕には準備するものなんかないから。アルマは随分とたくさん荷物を持っていくんだね。人間って大変なんだねぇ」
「他人事ね。この中には当分の間のあなたのご飯も含まれてるのよ。もっと感謝してもいいんじゃない?」
「アルマ様万歳。よっ、この国一の美女。肌綺麗。笑顔が素敵。意気地なし。優しい。飯がマズい。そんなアルマに僕は日頃から感謝してるよー。いつもありがとー」
「あら、素敵な感謝の仕方ねこの野郎」
「あ、こら! やめろアルマ! 僕のヒゲを弄ぶな! にゃああ!」
前足をバタバタさせて抵抗するバウワウの姿を見ていたらなんだか気持ちが楽になりました。
「ふふ。長い旅になるかもしれないけど、これからよろしくね」
私はヒゲを指先でくるくるするのを止め、改めて相棒にそう伝えました。
「こちらこそ。それじゃ、遊んでないでそろそろ出発しようか」
バウワウはドアの方に歩いて行きながら答えました。
私は真剣な顔で頷くと、荷物を詰め込んだリュックを背負いました。
それから何事もなく裏口の門まで辿り着くことができました。
夜中に外に出ることなんて何年振りでしょうか。
私は高揚感で体が熱くなるのを感じました。
周囲に人の気配はありません。
チャンスです。
私は音を立てないようにゆっくりと門を押しました。
そしてふと鍵のところに紙が紐で巻き付けてあることに気づきました。
紐をほどいて紙を確認してみると、そこには旅をする上でのアドバイスなど、今後役立ちそうな情報が色々書かれていました。
きっとロミさんです。
私はそれを大切にリュックの中に仕舞い込むと、一度教会の方を振り返りました。
そして勝手に出て行くことについての謝罪と今までの感謝の気持ちを込めて深く深く頭を下げました。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説


【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

【完結】慈愛の聖女様は、告げました。
BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう?
2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は?
3.私は誓い、祈りましょう。
ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。
しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。
後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。

聖女なんて御免です
章槻雅希
ファンタジー
「聖女様」
「聖女ではありません! 回復術師ですわ!!」
辺境の地ではそんな会話が繰り返されている。治癒・回復術師のアルセリナは聖女と呼ばれるたびに否定し訂正する。そう、何度も何十度も何百度も何千度も。
聖女断罪ものを読んでて思いついた小ネタ。
軽度のざまぁというか、自業自得の没落があります。
『小説家になろう』様・『Pixiv』様に重複投稿。

愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる