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ひよこ鑑定士になりたい

きっかけ

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「美味しい……」
私は声に出してそう言っていました。

さっき食べたばかりなのにどんどん箸が進みます。

あれ?
そういえばそうでした。
よく考えたら私はさっきご飯を食べたばかりでした。

それなのに、これを目の前にした途端にお腹が空いていると錯覚してしまったのです。

この親子丼にはそれほどまでに食欲をそそる何かがあったのでした。

私は無我夢中で食べました。
ポはそんな私を見てゆっくりと頷いていました。

「どうです? 美味しいでしょう?」
ポが訊いてきました。

「……」
私は返事をすることも忘れて食べ進めました。

私はその時に決めたのです。
無事に釈放された暁にはこの料理のことについて誰よりも詳しく調べてみよう、と。

その後、釈放され自由を手に入れた私は親子丼についてあらゆる資料を漁り、調べ尽くしました。

その過程でひよこ鑑定士という職業を知ったのです。


 私が語り終えると、バウワウは眉をひそめました。
「いや、肝心なところすっ飛ばして語ったね。結局どうやって誤解を解いたのさ」

「あぁ。それについては本当にしょうもないことだったのよ。お会計の時にレジカウンターのところで私はバッグの中を探したけど財布が見つからなかったと言ったでしょう? 実は一個一個中身を取り出して確認している時にバッグから落ちてしまったみたいで、レジの下の隙間のところに滑り込んじゃってたみたいなの。あとになってそれに気づいた店員さんが連絡をくれたおかげで誤解が解けて釈放してもらえたのよ」

「ふーん。しょうもな」
バウワウは心の中でそう言って目を瞑りました。

そして目を閉じたまま言いました。
「ていうか、おいしい親子丼食べたことがきっかけでひよこ鑑定士になろうと思ったのってどうなのさ。サイコパスかな」
「聖女です」

「まぁ猫にバウワウって名付けるような奴がまともなわけないか」
バウワウは大きく欠伸をしました。
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