新世界で… 妖精少女は、ロボットを夢見る

チキンとり

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外伝 とある新人生産プレイヤーは…… 気付いたら、神の子供(双子)の専属メカニックになってました!?

試運転で空賊と遭遇戦!! モナは…… 新型機神の開発を決意する!?

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 セシルの眉が上がり、彼が私に怒っていると言う事に気が付いた。

「セシル?もしかして…私の事怒っているの?私、何か貴方を怒らせるような事をしてしまったのかしら?」

折角、今回のフィリップとの結婚でセシルとの距離も少しは近づけたと思っていたのに。それは私の独りよがりだったのだろうか?

彼は怒気を含んだ声で私に言った。

「ああ、あるね。エルザは今、非常に俺を苛立たせる発言をした。一体どういうつもりで今の発言をしたんだ?」

「どういうつもりって…あ、もしかして特にする事もなかったから…と言った事に対して苛立っているの?」

それしか心当たりが無い。

「そうだ。よく分っているじゃないか。特にする事も無かった?それはあり得ないだろう?あれだけ俺が反対してもエルザはこの家に嫁いで来たんだ。だとしたら男爵家の妻として、色々やらなければならない事があるはずだろう?」

「そ、それは…」

私だって考えていた事だ。男爵家に嫁いで来たのだから、領地の事だって色々教えて貰わなければ分らないことだらけだ。

「第一、何故離れに閉じこもったきりで、両親に挨拶に来ないんだ?そんなにエルザは俺達と交流するのが嫌なのか?」

何も事情を知らないセシルは苛立ちを隠す事も無く、問い詰めて来る。

「あ…そ、それは…」

彼の言う事は尤もだと言うのは良く分っている。
けれど私はフィリップから勝手に本館へ行く事を禁じられているし、会話だってまともに交わす事が出来ない状態だ。

それどころか、結婚したその日のうちに離婚届を手渡されたのだから。

 けれど…自分の置かれた状況をセシルには説明する気にはなれなかった。そんな事を言えば、彼の事だ。
<ほら、だから俺は2人の結婚に反対だったんだ>
そう言うに決まっている。

「何だ?図星を差されて何も言い返せないのか?」

彼は腕組みをすると上から見下ろして来た。

「あ、あの…今朝フィリップが本宅へ行ったでしょう?」

恐る恐る尋ねてみた。

「本宅?何だよ?その言い方は…。まぁ、別にいいけどな」

セシルは呆れた顔を見せると、言葉を続けた。

「兄さんなら昨日も今朝も1人で両親と俺に挨拶をしにきた。両親はエルザがいなかったから兄さんに理由を尋ねたんだよ」

「そうなのね?フィリップは何と説明したの?」

「君は…気分が優れないから、暫くは誰とも関わりたくないので放っておいて欲しいと兄から伝えてもらうように頼んだそうじゃないか?」

「え?!」

そんな…フィリップは私に正式な妻ではないのだから、勝手に本館へは行かないようにと言ったのに?

「それなのに…何だ?特にする事もなかったから刺繍をしていたって…」

セシルは私が刺繍していたハンカチを忌々し気に見た。

「あ、あの…それは…」

どうしよう?本当の事を言うべきなのだろうか?けれど、言えば絶対にフィリップの耳に入ってしまう。それ以前にセシルは私の話を恐らく信じてはくれないだろう。

「どうした?言いたい事があれば言ってみろよ?」

彼に詰め寄られたその時―

「あ、ここにいたのかい?セシル」

不意に声が聞こえ、驚いて振り向くと扉近くにフィリップが立っていた。

「あ…兄さん」

「セシルが離れに来ていると使用人から聞いたから、もしやと思って来てみたけど…やっぱりここに来ていたんだね?」

フィリップは部屋に入って来るとセシルに声をかけた。

「ああ、そうだよ。エルザに何故挨拶に来ないか、直接話を聞く為にね」

セシルは私を睨みつけている。

フィリップ…お願い、貴方から本当の事を説明して頂戴。

私は祈るような気持ちでフィリップを見たのだが…。

「エルザには理由を尋ねておくよ。それより僕の部屋に来ないか?美味しい茶葉があるんだ」

フィリップは笑顔でセシルに言う。

「分ったよ…なら、エルザも一緒に…」

セシルは私の方をチラリと見た。

「ああ、エルザはいいんだよ。昨日から食欲もないから、きっとお茶を飲むのも無理だと思うから」

「え…?わ、分ったよ」

セシルは一瞬怪訝そうな顔を見せたけれどもすぐに頷いた。

「良かった、ならすぐに行こう」

そしてフィリップは一度も私に声を掛ける事も…視線を合わす事も無く、セシルを連れて部屋から出て行った。



バタン…


扉は閉ざされ、私はまた1人きりになってしまった。

「…セシルには笑顔を向けるのね…。それに…私はフィリップの部屋に行った事も無ければ、場所も知らないと言うのに…」

その時、再び胃がズキリと痛んだ。

「う…」

私は椅子に座ると、目を閉じ…痛みが引いて行くのをじっと待った―。




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