新世界で… 妖精少女は、ロボットを夢見る

チキンとり

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外伝 とある新人生産プレイヤーは…… 気付いたら、神の子供(双子)の専属メカニックになってました!?

春の機神祭!! それ行け! パンブレッドV!?…… 機神メーカー【W.R】の噂?

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『レンチンゴー!!』

5個のパン型のメカがV字の編隊飛行から、Y字編隊飛行に移行して…… 合体を開始した!

『パンブレッドV!!』

クロワッサンを頭、食パンが胴体で中央に餡パン、そこから伸びたパンの耳の先には二つに分かれたクリームパンの手とメロンパンの足……

『こい! カレーパンフライヤー! フライングサンドゴー!!』

そこに飛んで来たカレーパンが…… 背中に食パンで挟む様にドッキング!?

『完成! パンブレッドフライヤーⅥ!!!』

「え~っと……」

「なんです…… アレは?」

「アレか? 春の機神祭名物【パンブレッドフライヤーⅥ】だ。機神祭実行委員会の非公式マスコット機神だったんだが、最近は模擬戦の対戦相手として人気だな」

『白いボール皿バリア!』バリーン!!

カノン達の疑問にエミリーが答えていると、パンブレッドフライヤーⅥが白い食器の様なバリアで相手の攻撃を防ぐが…… 見事に割れて砕け散った。

「ちなみに、パンブレッドの武装は公式戦パーツとして、春の機神祭で限定販売してるからな」

「非公式マスコット機神なのに?」

『フッハハハ、行くぞ! バターナイフブレード!!』

巨大なバターナイフを振り回してパンブレッドフライヤーⅥが飛ぶ……

その姿は、とても非公式とは思えない堂々とした姿だった。

 ・
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「おっ!〝W.R〟だ…… ちぇ、今年も限定カラーだけかよ」

「最近、W.Rの新型出ないよなぁ~」

「俺、W.Rのアウトローな感じが好きなんだけど」

「ああ、だけど今はやめとけ」

「あの噂かぁ…… マジなの?」

「こないだ、また有名な盗賊クランが襲われたってよ」

「例の〝W.R狩りの継ぎ接ぎ機神〟か?」

「ああ、襲撃現場からW.Rの機神とパーツだけ消えてたらしい」

「邪神機じゃないのか?」

「いや、犯人は複数の目撃証言から、マーカーが緑人のパイロットが乗ってる機神だってよ」

「それって…… W.Rは緑人達と敵対してるって事か? ヤバくない?」

「継ぎ接ぎのパイロットが個人なのか…… それても、緑人達の組織なのか…… どっちか解るまでは、下手にW.R製の機神やパーツは買わない方が無難だな」

「だな…… おっ、あっちにコラボ機神の新型があるぜ」

コラボ機神の新型を見つけたプレイヤーが去った後……

「チッ!」

W.Rの出店スペースに〝舌打ち〟の音が響く。

舌打ちをしたのは、出店スペースで店番をしていた人物だった。

「糞がぁ…… あの発明馬鹿供がまともな物を作らないから……」

【機神メーカー〝W.R〟】

ダブル.アール】とは…… 西部劇の様な武骨でスチームパンク的なアウトロー感が人気な、新世界で起業して5年の機神メーカーである。

その母体クランの開発者のほとんどは、他の機神開発クラン等でも異端視されていた者達が集まった集団であった。

そんな彼等が起業して機神メーカーになれたのには……

その異端武装やパーツを、プレイヤー達が振り回して遊べる素体機神を組む〝二人とサポートユニット〟がいたからであった。

「チィ…… まさか〝アレ〟が中心だったとは…… しかも、設定を弄ってサポートにデータ管理させるなんて」

W.Rの責任者が、苦虫を潰した様な顔を浮かべて項垂れた後……

「まあ…… それも後少しだ。サポートがこのイベントにいる事は間違いない…… それに、奴はそろそろ〝限界〟でしょうから…… 後は、それを餌にして……」

W.Rの責任者が嗤う…… その顔は…… とても人に見せられない邪悪な笑みだった。

 ・
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 ・

「居たか?」

「いや…… 糞がぁ! 手間をかけやがって!」

「落ち着けよ…… 整備がままならないサイボーグのガキが一人、直ぐに見つかるだろう?」

いかにもな感じのならず者達が…… 春の機神祭の会場で走り回っていた。

「おい、あっちにサイボーグのガキが居たってよ!」

「よし、行くぞ!」

「ああ、逃がさねぇぜ!」

ならず者達が走り出す! その姿を棚の下で見ていた者が居た。

(ますたー…… わたしは約束を……〝あの子〟をかならず止めてます…… だから……)

ピシッ……

(ま、まだです…… わたしはまだ……)

棚の下に姿を隠した者は……

剥き出しになった電子回路が放電して煙を上げると、そのまま機能停止してしまうのだった。

 ・
 ・
 ・

「!?」

遠い地の寒い雨が激しく降る深い森で…… 一人の緑人が振り返る。

「まさかねぇ……」

激しい雨に打たれながら…… 足下の盗賊達が乗っていた機神を睨み付ける。

「あの人が居ないのに……〝W.R〟の名を使うなんて、許さない…… そうでしょ?〝S1〟」

緑人が見上げる先には…… カラーリングやサイズがチグハグで、まるで〝継ぎ接ぎ〟をした様な機神が佇む……

激しい雨に打たれるその機神の頭部は、まるで泣いている様に雨が流れては落ちた。

その左胸部には、傷付いた〝W.R〟のエンブレムマークが鈍く光っていた……

「私は、今のW.Rを…… 絶対に潰して見せる……」

足下のW.R製の機神を睨み付ける……

その顔を冷たい雨が流れていたが……

その姿は…… 迷子で泣きじゃくる子供の様な背中をしていたのだった。

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