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夢忘れ編
メイビー様 御立腹!
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【アレクス城大広間】
次期魔王メイビーとその臣下たち。更にデメテール城やベイ城からの使者達がその部屋に【最古の魔女】シャオシュウ・シーシアスを、その両腕でお姫様抱っこしながら舞い降りてくる吸血鬼の真祖ディー・アモン伯爵
「賑やかな場への突然の来訪どぉか、ゆ~るしてくださいね~♪」
魔族側の各地の城主や専属魔女たちといった豪華な猛者たちが集まっている中に、全く緊張感の欠片もない表情とトークで舞い降りたディー・アモン
「お久しぶりねディー。ザッド様の死去と同時に、私にさえひと言も無しに姿を消していた貴方が、今になってこの場に現れるなんてね…」
「おやおやおや~。これはこれは、わが輩と2人でザッド様の両翼と謳(うた)われた【渇望の魔女】フュール様では、あ~りませんか。あの時とお変わりなくお美しいですなぁ♪」
フュールはディー・アモンに対して、明らかに不機嫌そうな顔を浮かべていた。それもそうだろう。元魔王の右翼と左翼と呼ばれた間柄であったのに、主のザッドが死んだ途端に勝手に行方不明になったのだから
「そりゃどーも。まさか、有栖が言っていた1人暇そうなヤツにアテがあるってコイツの事なの?…にしても貴女って、コイツとそんなに親しかったかしら?」
「ま、まーね。ザッド様からの呼び出しを受けて参上した時に偶然会ったりしてたからね…」
「ふぅーん…ま、何やら色々ありそうね。ま、良いわ…」
自分こそがザッドに最も近い立場であったフュールからすれば、対を成して彼を守護していたもう1人のディー・アモンの行方を、自分が知らなかったのに有栖が知っていた事が腑に落ちない様子だ
「のぅディー・アモンよ…」
「んぅ~。何でしょうか?同志シャオシュウ」
「良い加減に降ろしてくれんかのぅ!年寄りがこんな大勢の前で、姫様抱っこされている姿を魅せるのは恥ずかし過ぎるわい!」
「クハハハハ♪そうでしたなぁ。貴女があまりにも軽いもので~抱いていた事を失念していましたね~(笑)」
ディー・アモンは口調こそふざけているが、まるで紳士のように丁重に彼女を地に降ろした
「すまぬが皆の者よ。出来れば先までのワシの姿は忘れてくれ、早々に…」
【老化減衰(ヴァーライト・ドゥーン)】の効果で20歳過ぎに見えているシャオシュウだが、実年齢は700を超えているので顔から火が出そうなほどに恥ずかしがっていた
「ふむ。シャオシュウ様はコイツとヨリを戻されたのですか?」
「違うわい!!」
「んぅ~、久しぶりの楽しい深夜の飛行デートでしたねぇ♪それにしても、この3人が揃うのは随分と久しぶりですねぇ♪」
「そうね…ザッド様が亡くなられてるのが残念ですけど…」
シャオシュウをディー・アモンが連れて現れたことにより、前魔王が生きていた時の昔話に花が咲いていたのだが…
「おい!貴様らいい加減にせんかっ!」
声を張り上げたのは、幼き次期魔王のメイビーだった。半笑いしていたディーや、他の者たちも表情が引き締まる
「確かにザッド叔父様は、偉大なる前魔王ではあったが…今の魔王はこのワラワだぞ!よもや忘れてはいないだろうなっ!?」
「…!?」
「ひいっ!?」
「あぁ…」
部屋内の実力者たちの世話を焼いていた衛生兵たちが、5歳児とは言え次なる魔王から吹き出した魔の波動に脅え恐怖した。もちろん実力者たちも、不用意にメイビー様の機嫌を損ねた事に表情を曇らせた
「まーまーまぁ…落ち着いてくださいよメイビー様。衛生兵たちが死にそうなくらい怖がってますよ?」
「また貴様か、暗殺者(アサシン)の女…ミクイとか言ったな?」
アレクスやフュール、ディー・アモンらも言葉を発せなかったこの雰囲気の中、ミクイがメイビーをなだめようと切り込んだが…
「広い懐ですよ?メイビー様…」
表面上は笑顔を浮かべているが、先程は彼女を手玉に取ったミクイだが…それはメイビーが彼女を舐めていたし、全力を出していなかったからの勝利だった。ソレを知っているミクイは、今度は生命を掛けている覚悟の目をしていた
「すー、はー…ふっ、良かろうミクイ。貴様のその覚悟受け取ったぞ。ワラワは寛大にならねばならんな…」
「流石メイビー様です。このアレクス感服致しまし…」
「勘違いするでないぞ。今回はタダでは飲み込んでやらん。誰でも良い…この場に居る者の中で誰かワラワを笑わせて見せろ!!」
悩んだ末にメイビーは、人の上に立つ者の器量というモノと自分の不快感を天秤に掛け、自分に妥協させる何かをせよ!と命令する事にしたようだが…
「おいおい。どうするんだ有栖?あんなに怒っているメイビー様を笑顔にさせるなんて出来るのかな?」
「やれやれ…ディーめ困ったヤツね。ザッド様はヤツの性格を知っているから何でも笑って許してたけど、メイビー様はそうはいかないわよね…どうしたものかしら?」
少し離れた位置から、これまでのやり取りを眺めていた優輝と有栖も頭を悩ませている
「それにさ、昼食は食べたけど夕飯前から俺を追いかけ回して、その後に人の入れ替わりが続いて腹も減って気も立っているだろうから、かなり難しいんじゃないか?」
解決策を模索して毅然と立っている有栖の横で、最悪の事態になってしまうんじゃ?と怯えている優輝だが…
「空腹で気が立っている?…偉いわ優輝。流石は私の旦那様ね。良い着眼点よ♪」
旦那である優輝の言葉の中から、何か解決策を思いついた有栖は、ゆっくりとメイビーに歩み寄り提案を始めた
「込み入っているところ申し訳ありませんメイビー様。この消去の魔女から1つ提案があるのですが…聞いて頂けますか?」
「何だ有栖?…まさか、ワラワのイライラまでも消去する事が出来るとでも言うのか?」
数時間前に、自分が切望していた成長した肉体を授けてくれた有栖からの提案に、少し冷静さを取り戻して話を聞くメイビー
「昼食から随分と時間が経過しております。空腹状態では余計にイライラしてしまうというもの。ここはひとまず、ディナーにするというのはどうでしょうか?」
「何だと?飯でワラワを釣ろうと言うのか?」
「流石はメイビー様、お見事です。よく私の考えを見抜かれましたね(笑)」
怒りが収まらない次期魔王メイビーに、飯で釣るのか?という問いにアッサリ「イエス」と言い放つ有栖
「ぬぬぬぬぬ…舐めておるのかーっ!!先程、肉体を成長させてくれた礼に、貴様の意見ならば冷静に聞いてやろうと思ったが…貴様までもがワラワを舐める気かっ!!」
彼女のその返事に当然、怒ってしまうメイビーだが…
「いえいえメイビー様、そうではありませんよ。私は、この星で生まれた者ではないことはご存知ですよね?」
「はぁはぁ…フュールから聞いておるが?」
「私の生まれた星では、食事のメニューというものが凄く発展しておりました。そこで、メイビー様も思わず笑顔にしてしまう程の地球の料理を振る舞わせてもらうというのは、どうでしょうか?」
「そ、それは名案だよ!メイビー様、有栖は魔法と同じくらいに料理も良い腕をしているんです。以前俺も、彼女の料理を食べさせてもらって感動したんですよ?」
自分のやる気をアピールする為に、有栖は既にエプロンを装着していた。更に旦那である優輝も、彼女の料理は素晴らしいと伝える為にフォローの言葉を添えた
「なるほどな…異国どころか、別惑星の料理か?…ワラワも興味を覚えるな……しかし有栖よ、今のワラワでも笑みが零れるほどの料理が作れるのか?」
「メイビー様。実はメイビー様がお産まれになる前、有栖がこの城に来た時に気まぐれで作った料理が、衛生兵や兵士たちにも大人気で、彼女の料理を食べたいと長蛇の列が何度も出来ておりました!」
自分(フュール)とディー・アモンの空気の悪さから始まった会話で、メイビーの機嫌を損ねたことに責任を感じていたフュールは、優輝と同様に有栖をフォローする言葉を添えた
「なるほどな…」
「それにシャオシュウ様もお疲れでしょう?是非、私の料理を食べてくださいな」
「ワシも良いのか?」
大先輩の魔女であるシャオシュウへの配慮を魅せた有栖。そんな気を遣う彼女の姿を見せられ、そこまで皆から賞賛される有栖の日本料理に、次第に興味が湧いてきたメイビー。ソコへ
「メイビー様。私が納めるデメテール領は、魔族の食糧を支える地でありますのでここは、彼女の料理と私たちの料理対決にして、場を盛り上げさせてはもらえませんでしょうか?」
「なるほどな。料理対決とは一興よな。ドチラの料理がワラワを満足させられるか?皆も見てみたいよな?」
……………………………………………
【厨房】
「デメテール…せっかく話が上手く纏まりかけてたのに、貴女まで割り込んできたのよ?」
「ふん。我が領土は農作物に海産物まで豊富で、食糧で魔族側に貢献しているのだぞ。メイビー様に料理を献上すると聞いて黙ってられるかよ!」
「はぁ…また、イキガリ始めちゃって…その割には何でモルガーナが調理しているのよ?」
料理だからヤル気が出たからか?再びデメテールはイキリモードになっていた
「すみませんね消去の魔女。我が主フォレスティア様は、農作への政策にチカラを入れていますが…料理は下手っぴなのです。包丁で自分の指を切り落とした事があるくらいにね…」
「ちょっと~、ソレは内緒にしといてよ~」
モルガーナに恥ずかしい過去の失敗を暴露されたデメテールは、そのショックから普段のチキンな口調に戻っていた
「やれやれ、そんな腕でよく私と勝負するなんて言えたわねw」
「最初から私をアテにしていたのでしょ?…しかしですね、魔法に関してもそうですが…料理であっても我は貴女に負ける気などサラサラありませんからね?」
「そうね。魔法での勝負はひとまず保留にするとして、まずは料理で貴女を打ち負かしてアドバンテージを取ってやろうかしらね(笑)」
フュールとは魔女同士で仲の良い有栖だが、どうやら彼女とモルガーナは犬猿の仲のようだ
【大広間】
「ひぃー!有栖、早めに料理終わらせてくれよぉ!!」
「飯が出来るまでの退屈しのぎじゃ!それまでワラワの馬として相手をせんかぁ!」
気合いの入った料理をするからには、それなりの時間は必要になる。それまでの間、優輝はメイビー様の機嫌を取るために馬役に徹する気のようだ
「す、すまんな優輝。貴様にメイビー様の相手をさせてしまって…」
「だったらアレクス様が変わってくださいよぉ!」
「い、いやソレは…昼間の訓練でちょいと腰を痛めてしまってな…本当に申し訳ないな…」
これまでに何度もメイビーの遊び相手をして、散々ツライ思いをしたアレクスは、優輝の申し出を断るのだった
続く
次期魔王メイビーとその臣下たち。更にデメテール城やベイ城からの使者達がその部屋に【最古の魔女】シャオシュウ・シーシアスを、その両腕でお姫様抱っこしながら舞い降りてくる吸血鬼の真祖ディー・アモン伯爵
「賑やかな場への突然の来訪どぉか、ゆ~るしてくださいね~♪」
魔族側の各地の城主や専属魔女たちといった豪華な猛者たちが集まっている中に、全く緊張感の欠片もない表情とトークで舞い降りたディー・アモン
「お久しぶりねディー。ザッド様の死去と同時に、私にさえひと言も無しに姿を消していた貴方が、今になってこの場に現れるなんてね…」
「おやおやおや~。これはこれは、わが輩と2人でザッド様の両翼と謳(うた)われた【渇望の魔女】フュール様では、あ~りませんか。あの時とお変わりなくお美しいですなぁ♪」
フュールはディー・アモンに対して、明らかに不機嫌そうな顔を浮かべていた。それもそうだろう。元魔王の右翼と左翼と呼ばれた間柄であったのに、主のザッドが死んだ途端に勝手に行方不明になったのだから
「そりゃどーも。まさか、有栖が言っていた1人暇そうなヤツにアテがあるってコイツの事なの?…にしても貴女って、コイツとそんなに親しかったかしら?」
「ま、まーね。ザッド様からの呼び出しを受けて参上した時に偶然会ったりしてたからね…」
「ふぅーん…ま、何やら色々ありそうね。ま、良いわ…」
自分こそがザッドに最も近い立場であったフュールからすれば、対を成して彼を守護していたもう1人のディー・アモンの行方を、自分が知らなかったのに有栖が知っていた事が腑に落ちない様子だ
「のぅディー・アモンよ…」
「んぅ~。何でしょうか?同志シャオシュウ」
「良い加減に降ろしてくれんかのぅ!年寄りがこんな大勢の前で、姫様抱っこされている姿を魅せるのは恥ずかし過ぎるわい!」
「クハハハハ♪そうでしたなぁ。貴女があまりにも軽いもので~抱いていた事を失念していましたね~(笑)」
ディー・アモンは口調こそふざけているが、まるで紳士のように丁重に彼女を地に降ろした
「すまぬが皆の者よ。出来れば先までのワシの姿は忘れてくれ、早々に…」
【老化減衰(ヴァーライト・ドゥーン)】の効果で20歳過ぎに見えているシャオシュウだが、実年齢は700を超えているので顔から火が出そうなほどに恥ずかしがっていた
「ふむ。シャオシュウ様はコイツとヨリを戻されたのですか?」
「違うわい!!」
「んぅ~、久しぶりの楽しい深夜の飛行デートでしたねぇ♪それにしても、この3人が揃うのは随分と久しぶりですねぇ♪」
「そうね…ザッド様が亡くなられてるのが残念ですけど…」
シャオシュウをディー・アモンが連れて現れたことにより、前魔王が生きていた時の昔話に花が咲いていたのだが…
「おい!貴様らいい加減にせんかっ!」
声を張り上げたのは、幼き次期魔王のメイビーだった。半笑いしていたディーや、他の者たちも表情が引き締まる
「確かにザッド叔父様は、偉大なる前魔王ではあったが…今の魔王はこのワラワだぞ!よもや忘れてはいないだろうなっ!?」
「…!?」
「ひいっ!?」
「あぁ…」
部屋内の実力者たちの世話を焼いていた衛生兵たちが、5歳児とは言え次なる魔王から吹き出した魔の波動に脅え恐怖した。もちろん実力者たちも、不用意にメイビー様の機嫌を損ねた事に表情を曇らせた
「まーまーまぁ…落ち着いてくださいよメイビー様。衛生兵たちが死にそうなくらい怖がってますよ?」
「また貴様か、暗殺者(アサシン)の女…ミクイとか言ったな?」
アレクスやフュール、ディー・アモンらも言葉を発せなかったこの雰囲気の中、ミクイがメイビーをなだめようと切り込んだが…
「広い懐ですよ?メイビー様…」
表面上は笑顔を浮かべているが、先程は彼女を手玉に取ったミクイだが…それはメイビーが彼女を舐めていたし、全力を出していなかったからの勝利だった。ソレを知っているミクイは、今度は生命を掛けている覚悟の目をしていた
「すー、はー…ふっ、良かろうミクイ。貴様のその覚悟受け取ったぞ。ワラワは寛大にならねばならんな…」
「流石メイビー様です。このアレクス感服致しまし…」
「勘違いするでないぞ。今回はタダでは飲み込んでやらん。誰でも良い…この場に居る者の中で誰かワラワを笑わせて見せろ!!」
悩んだ末にメイビーは、人の上に立つ者の器量というモノと自分の不快感を天秤に掛け、自分に妥協させる何かをせよ!と命令する事にしたようだが…
「おいおい。どうするんだ有栖?あんなに怒っているメイビー様を笑顔にさせるなんて出来るのかな?」
「やれやれ…ディーめ困ったヤツね。ザッド様はヤツの性格を知っているから何でも笑って許してたけど、メイビー様はそうはいかないわよね…どうしたものかしら?」
少し離れた位置から、これまでのやり取りを眺めていた優輝と有栖も頭を悩ませている
「それにさ、昼食は食べたけど夕飯前から俺を追いかけ回して、その後に人の入れ替わりが続いて腹も減って気も立っているだろうから、かなり難しいんじゃないか?」
解決策を模索して毅然と立っている有栖の横で、最悪の事態になってしまうんじゃ?と怯えている優輝だが…
「空腹で気が立っている?…偉いわ優輝。流石は私の旦那様ね。良い着眼点よ♪」
旦那である優輝の言葉の中から、何か解決策を思いついた有栖は、ゆっくりとメイビーに歩み寄り提案を始めた
「込み入っているところ申し訳ありませんメイビー様。この消去の魔女から1つ提案があるのですが…聞いて頂けますか?」
「何だ有栖?…まさか、ワラワのイライラまでも消去する事が出来るとでも言うのか?」
数時間前に、自分が切望していた成長した肉体を授けてくれた有栖からの提案に、少し冷静さを取り戻して話を聞くメイビー
「昼食から随分と時間が経過しております。空腹状態では余計にイライラしてしまうというもの。ここはひとまず、ディナーにするというのはどうでしょうか?」
「何だと?飯でワラワを釣ろうと言うのか?」
「流石はメイビー様、お見事です。よく私の考えを見抜かれましたね(笑)」
怒りが収まらない次期魔王メイビーに、飯で釣るのか?という問いにアッサリ「イエス」と言い放つ有栖
「ぬぬぬぬぬ…舐めておるのかーっ!!先程、肉体を成長させてくれた礼に、貴様の意見ならば冷静に聞いてやろうと思ったが…貴様までもがワラワを舐める気かっ!!」
彼女のその返事に当然、怒ってしまうメイビーだが…
「いえいえメイビー様、そうではありませんよ。私は、この星で生まれた者ではないことはご存知ですよね?」
「はぁはぁ…フュールから聞いておるが?」
「私の生まれた星では、食事のメニューというものが凄く発展しておりました。そこで、メイビー様も思わず笑顔にしてしまう程の地球の料理を振る舞わせてもらうというのは、どうでしょうか?」
「そ、それは名案だよ!メイビー様、有栖は魔法と同じくらいに料理も良い腕をしているんです。以前俺も、彼女の料理を食べさせてもらって感動したんですよ?」
自分のやる気をアピールする為に、有栖は既にエプロンを装着していた。更に旦那である優輝も、彼女の料理は素晴らしいと伝える為にフォローの言葉を添えた
「なるほどな…異国どころか、別惑星の料理か?…ワラワも興味を覚えるな……しかし有栖よ、今のワラワでも笑みが零れるほどの料理が作れるのか?」
「メイビー様。実はメイビー様がお産まれになる前、有栖がこの城に来た時に気まぐれで作った料理が、衛生兵や兵士たちにも大人気で、彼女の料理を食べたいと長蛇の列が何度も出来ておりました!」
自分(フュール)とディー・アモンの空気の悪さから始まった会話で、メイビーの機嫌を損ねたことに責任を感じていたフュールは、優輝と同様に有栖をフォローする言葉を添えた
「なるほどな…」
「それにシャオシュウ様もお疲れでしょう?是非、私の料理を食べてくださいな」
「ワシも良いのか?」
大先輩の魔女であるシャオシュウへの配慮を魅せた有栖。そんな気を遣う彼女の姿を見せられ、そこまで皆から賞賛される有栖の日本料理に、次第に興味が湧いてきたメイビー。ソコへ
「メイビー様。私が納めるデメテール領は、魔族の食糧を支える地でありますのでここは、彼女の料理と私たちの料理対決にして、場を盛り上げさせてはもらえませんでしょうか?」
「なるほどな。料理対決とは一興よな。ドチラの料理がワラワを満足させられるか?皆も見てみたいよな?」
……………………………………………
【厨房】
「デメテール…せっかく話が上手く纏まりかけてたのに、貴女まで割り込んできたのよ?」
「ふん。我が領土は農作物に海産物まで豊富で、食糧で魔族側に貢献しているのだぞ。メイビー様に料理を献上すると聞いて黙ってられるかよ!」
「はぁ…また、イキガリ始めちゃって…その割には何でモルガーナが調理しているのよ?」
料理だからヤル気が出たからか?再びデメテールはイキリモードになっていた
「すみませんね消去の魔女。我が主フォレスティア様は、農作への政策にチカラを入れていますが…料理は下手っぴなのです。包丁で自分の指を切り落とした事があるくらいにね…」
「ちょっと~、ソレは内緒にしといてよ~」
モルガーナに恥ずかしい過去の失敗を暴露されたデメテールは、そのショックから普段のチキンな口調に戻っていた
「やれやれ、そんな腕でよく私と勝負するなんて言えたわねw」
「最初から私をアテにしていたのでしょ?…しかしですね、魔法に関してもそうですが…料理であっても我は貴女に負ける気などサラサラありませんからね?」
「そうね。魔法での勝負はひとまず保留にするとして、まずは料理で貴女を打ち負かしてアドバンテージを取ってやろうかしらね(笑)」
フュールとは魔女同士で仲の良い有栖だが、どうやら彼女とモルガーナは犬猿の仲のようだ
【大広間】
「ひぃー!有栖、早めに料理終わらせてくれよぉ!!」
「飯が出来るまでの退屈しのぎじゃ!それまでワラワの馬として相手をせんかぁ!」
気合いの入った料理をするからには、それなりの時間は必要になる。それまでの間、優輝はメイビー様の機嫌を取るために馬役に徹する気のようだ
「す、すまんな優輝。貴様にメイビー様の相手をさせてしまって…」
「だったらアレクス様が変わってくださいよぉ!」
「い、いやソレは…昼間の訓練でちょいと腰を痛めてしまってな…本当に申し訳ないな…」
これまでに何度もメイビーの遊び相手をして、散々ツライ思いをしたアレクスは、優輝の申し出を断るのだった
続く
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