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夢忘れ編
生誕祭に集う者たち
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【アレクス城 仮眠室】
この部屋は主に、訓練中に倒れた者や具合が悪くなった者たちを休ませる部屋である。そこに、先程ミクイとの戦いで気絶させられたメイビー・クルスが運ばれてきた
「よいしょ…」
倒れたメイビーをお姫様だっこしてココまで来たアレクスは、ベッドの上にメイビーをそっと寝かせた
「なぁ有栖…」
「何、優輝?」
「メイビー様は、ミクイの一撃で気絶させられただけなんだから、お前の回復魔法を使えばスグにでも目を覚まされるんじゃないか?」
ポンコツ勇者と呼ばれる優輝は【消去の魔女】の通り名で、最強の魔女でもある奥さんの有栖の魔法の凄さを今まで何度も見ているので、彼女の魔法を使えば目覚めるのを待つまでもないのでは?と考えたのだが…
「あのねぇ優輝。怪我をしたからって、ホイホイ魔法で直せば良い!って訳じゃないのよ?」
「そ、そうなのか?」
大怪我や致命傷レベルの負傷をした者たちを、何度も彼女の魔法で一瞬で回復したのを見ていたし、数時間前にフュールの火炎魔法で焼かれた自分も、彼女の回復魔法でスグに治してもらっていたので、余計に疑問に感じているようだ
「ソレはね。優輝や他の者たちの身体が一定以上に成長しているからよ。まだまだ成長途中の者や、メイビー様のような幼い人には、軽々しく回復魔法は使わない方が良いのよ。運が悪けりゃ、発育不良を起こす引き金になり兼ねないからね…」
「ましてやメイビー様は、私と有栖から禁呪級の肉体促進魔法で、身体に強い影響を与えられている。だからこそ、魔法を使う必要の無い程度の怪我などには、自然回復されるのを待つ方が良いのさ」
「そうなんだ…有栖にフュールさん。教えてくれて、ありがとうございます」
有栖の説明に加えて、彼女と同じくらい高く評価されている魔女であるフュールが、補足説明をしてくれて魔法に疎い優輝にも理解させてくれた
「…さて、ミクイよ。俺についてこい。メイビー様の為だったとは言え、次期魔王様に一撃を入れたキサマの行動の真意を、部下たちに伝えねばならんからな」
「そーよね…彼女を慕っている者たちから、ミクイ恨まれちゃうかも知れないよね?ありがとうございます、アレクス様♪」
「チラッ…」
「ん、ん…【拡張音声(ワードヴォイス)】。先程のメイビー様と、暗殺者ミクイの稽古を観戦した者たちに告げます。今からアレクス様から直々に大切なお話があるので、スグに大訓練場に集まりなさい!」
「流石フュール。俺がいちいち口にしなくとも理解しているな(笑)……という訳だ。有栖に優輝よ、ミクイを借りていくぞ」
そう言うとアレクスは、ミクイを連れて仮眠室を出て行った。室内にはメイビーと、有栖、優輝、フュールが残された
「…ん?そういや、エーデちゃんが見当たらないけど、何処に行っているんだ?いつもフュールさんの後を付いているのに…」
今日この城に来てからも、フュールを「お師匠様︎︎︎❤︎」と言って、常に彼女の傍に居るエーデが居ないことに気が付いた優輝
「エーデは、ああ見えて料理上手いのよ。付き人のリッチーちゃんには、まだまだ及ばないけれど…彼女は昔、エーデの居た御屋敷のメイドさんをしていたから、家事全般が得意なの」
「へぇ…魔女見習いって言っても、女の子らしく可愛らしい一面もあるんだな…」
「……!ダメよ優輝くん。エーデが可愛いらしい女の子だからって、唾つけようとか考えたら…有栖に消されちゃうわよ(笑)」
「(;゜∀゜)イヤイヤイヤ...そんな事はしませんよ!」
優輝は最初にエーデと会った時、敵と味方に別れて対峙して彼女の強さを思い知っていたし、クラウン城で行われた武闘会で、カルーアと超絶な魔法戦闘を繰り広げていたのを間近で見ていたので、普通に感心しただけなのだが…先ほど裸を見られた仕返しなのか?フュールにからかわれてしまった
「ふーん…本当でしょうね?…日本の男は年下趣味が、やたら多いからね~。私みたいなオバサンよりも、小さくて可愛いエーデちゃんに興味を持っちゃわない?」
この世界の人族よりも長寿な生き物であれば、たかだか有栖の生きた40年程度の時間で歳を取った。とか気にしないのだが…地球生まれの有栖は、41歳の自分が16歳の優輝と結婚した事を未だに気にしているようだ
「だーからっ違うって!少なくとも俺は…年上で、その…優しくて綺麗な女性が好みなんだよ。そう、有栖のようなさ…(照)」
「まぁまぁまぁ♬裸を見られた腹いせにからかってみたら…思わぬ展開になっちゃったわね。アハハハハハ♪」
「ご、ごめんね優輝。私がいつまでも気にし過ぎだったみたいね…」
まるで学生恋愛のような初心な展開になってしまい、恥ずかしさで顔を赤くする有栖と優輝
「…あ!そうだよ、どうしてエーデちゃん達は料理をしに行ったんだい?」
話題を変えて誤魔化そうと、別の話題を振った優輝
「明日のメイビー様の生誕祭の為に、魔族の城から実力者たちが間もなく集結するのよ。そのおもてなしに、見習い魔女のエーデが精一杯の食事を提供するのよ」
「そうよね…優輝が言ったように、エーデはまだまだ見習いなの。他の魔女たちと同じような態度で、次期魔王様の生誕祭に参加してたら、他の魔女から嫌われかねないわよね」
「ふーん…魔女の世界にも厳しい上下関係があるんだな…そんなに沢山の人が集まるんですか?」
優輝は日本では比較的、引き籠もりな生活をしていた事もあり、社交の場所での礼節など知るハズもない
「いや、おそらく生誕祭は毎年開かれるだろうから…節目の年齢の時以外は少人数で済ませるハズよ?毎年、大人数を迎えていてはアレクス城の懐事情(ふところじじょう)もエライ事になっちゃうからね」
「そうなんですね…アレクス城で開催して、ベイ城からは俺たちが来て……後は何ヶ所から来られるのですか?」
魔族の支配分布も、あまり詳しくない優輝は素直にフュール達に質問した
「ねぇ優輝。私たち魔女は七人居るのよ。魔王様専属の魔女フュールは例外だけど、魔族の将専属が6人居るわけ」
「つまりは…後4国から来るわけか…」
7-1-2は4なので、単純に考えた優輝だが…
「不正解よ優輝。いつぞやの武闘会で私の生命を狙って死んだ【アンナローザ】の事は覚えてる?」
「あぁ…魔界の花を使う魔法使いで【最悪の魔女】って呼ばれてたんだよな?」
「そうよ。彼女が仕えていた国は、臥龍族の国ドルイドから南方に離れた位置にあったのだけどね…だいぶ前に、そのドルイド王国と戦争して既に滅んでいるわ」
「じゃあ、後3国から来るわけか…ん?」
更に単純に1を引いて考えた優輝だが…有栖とフュールの表情は急に曇った
「どうなのフュール。マナティート国からはファスク家の誰かが参加出来そうなの?」
「それが…距離の遠さもあるし、マナティートだけは20年以上、あの時から戦争が絶えていないから…連絡を取り合うのも難しいのよ。戦争が終わるまでは、参加するのは厳しいかも知れないわね…」
三姉妹たちが惑星神エリスアに頼まれて、今現在訪問中の地域であるマナティートの、魔族側の王であるファスク家の者たちと長らく音信不通なのである
「…とは言え、メイビー様の初めての生誕祭よね。知らせない訳にもイカないわよね…」
「まさか、有栖がマナティートに行くのか?」
有栖との付き合いも1年近くになり、彼女の言い方から考えを察した優輝が質問したのだが…
「ん~、そうしたいのは山々だけどね…私たちはベイの代役で来ている訳だから、戦争中の国に向かって何かに巻き込まれたりして、メイビー様の生誕祭に欠席する訳にはイカないからね…」
「そうよね…お互いに大切な立場に居るわけだから軽率には動けないわね…オマケに戦争中の国への訪問。強くて身分的に縛られなくて、高速移動が可能な者しか無理よね…」
「あはは。そんな都合の良い人って、なかなか居ませんよね…」
明日はメイビー様の生誕祭が開かれる。それまでに戦争中のマナティートに赴き、答えを聞いて帰ってこれる程の強さを持つ自由な猛者でないと遂行するのは難しい。優輝の言うように、そんな都合の良い者など簡単には…
「あっ!居たわ。都合の良いヤツが1人…」
「本当なの?有栖の知り合い?」
そんな都合の良い者など居るハズが無い!と諦めるしかない。と思われた時、有栖が心当たりを思い出したようだ
「そうね…知り合いよ。ちょっと屋上に行くわね。ソイツ、かなりの遠方に居るハズだから…遮蔽物の無い屋上じゃないと連絡取るのは難しいと思うのよ」
「分かったわ。お願いするわね有栖」
「俺も付いて行くよ?」
「いや、優輝はココに残って。アンタにしか出来ない事があるんだからさ」
奥さんである有栖が屋上に行く。と言うので付いて行こうとした優輝だが、自分にしか出来ない事があるから残るべきだと言われた
「それじゃね、少ししたら戻ってくるわ…そうだフュール。エーデに甘い物を用意してもらって良いかしら?」
「あ、うん。分かったわ……エーデに伝えたわよ」
「ありがと。それじゃ、また後でね…」
そう言うと有栖は部屋を出て行った
フュール程の魔女になれば、同じ城内に居るエーデに通信魔法での言伝(ことづて)くらいは、今の一瞬で終わったようだ
「でもフュールさん。有栖が言った俺にしか出来ない役目って何だと思います?」
「そう言えば言ってたわね…何かしら?」
どうやらフュールにも心当たりは無いらしい
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「くっ…いつつっ…あんの暗殺者(アサシン)め~。よくもワラワに恥をかかせてくれおったなぁ!」
ミクイの1激で気絶していたメイビーが目を覚ました。彼女は、格下だと思っていたミクイに良い様にやられた事を思い出し、かなりご機嫌斜めのようだ
「お待ちくださいメイビー様!あの暗殺者にも深い考えがあったのです」
「何だ!?…申してみろ!」
「実はですね…………………ですから、まだ幼いメイビー様には難しいかと思われますが、次期魔王の貫禄を見せ付ける意味でも、ここは逆に彼女の行いを褒めてあげるべきなのです」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ…はぁはぁ…そうだな。ワラワは次期魔王メイビーなのだからな…くっ…」
メイビーは魔王の素質を受け継いでいる事もあり、僅か2歳ながらも少女と近い思考能力を持っているのだが…如何せん人生経験値が圧倒的に足りていないので、ミクイの行動を許容するのに拒否反応が出ていた
しかし、フュールは大人のレディであろうとするメイビーの感情を利用し「幼いメイビー様には難しいと思われますが…」という言い方を敢えてしたのだ
「確かにワラワは、あの女の行動を許して器の大きさを示さねばならんのだが、ならんのだが……うがーっ!このイライラが収まらんのだぁっ!!!」
分かってはいるのだが、実際まだ2歳の彼女には、怒りを飲み込むのは苦痛で仕方ないようだ
「あっ!優輝、有栖が言っていた貴方の役目が来たわよ?」
「えっ!?どういう事でしょうか?」
有栖と付き合いの長いフュールは、この状況になって有栖が言わんとした言葉の意味を理解したようだ。しかし、優輝は理解していなかったが…
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ メイビー様!勘弁してください!俺じゃ本当に死んじゃいますよっ!!」
「ならん!命令じゃ、ワラワのストレス発散の相手をせんかぁ!!」
怒りの収まらないメイビーに追われ、城中を逃げ惑う優輝。有栖が言った優輝の役目とは、メイビーの怒りを受け止めろ。という事だったw
【アレクス城の屋上】
「あ、あ~…お久しぶりだけど聞こえているかしら?まさか、アンタに限って夜に睡眠中なんて事はないわよねぇ?…おーい…」
1人で屋上に来た有栖は、なるべく高い位置に移動した場所で膝を降り、右手の人差し指と中指を揃えてコメカミの横にあて、遠方の誰かと魔法で会話を試みようとしている
「…んっ、ふ~ん。え~と……そうですそうです!消去の魔女様じゃあーりませんかっ!お久しぶりですねぇ、吾輩に何か用事がおありなのですかぁ?」
続く
この部屋は主に、訓練中に倒れた者や具合が悪くなった者たちを休ませる部屋である。そこに、先程ミクイとの戦いで気絶させられたメイビー・クルスが運ばれてきた
「よいしょ…」
倒れたメイビーをお姫様だっこしてココまで来たアレクスは、ベッドの上にメイビーをそっと寝かせた
「なぁ有栖…」
「何、優輝?」
「メイビー様は、ミクイの一撃で気絶させられただけなんだから、お前の回復魔法を使えばスグにでも目を覚まされるんじゃないか?」
ポンコツ勇者と呼ばれる優輝は【消去の魔女】の通り名で、最強の魔女でもある奥さんの有栖の魔法の凄さを今まで何度も見ているので、彼女の魔法を使えば目覚めるのを待つまでもないのでは?と考えたのだが…
「あのねぇ優輝。怪我をしたからって、ホイホイ魔法で直せば良い!って訳じゃないのよ?」
「そ、そうなのか?」
大怪我や致命傷レベルの負傷をした者たちを、何度も彼女の魔法で一瞬で回復したのを見ていたし、数時間前にフュールの火炎魔法で焼かれた自分も、彼女の回復魔法でスグに治してもらっていたので、余計に疑問に感じているようだ
「ソレはね。優輝や他の者たちの身体が一定以上に成長しているからよ。まだまだ成長途中の者や、メイビー様のような幼い人には、軽々しく回復魔法は使わない方が良いのよ。運が悪けりゃ、発育不良を起こす引き金になり兼ねないからね…」
「ましてやメイビー様は、私と有栖から禁呪級の肉体促進魔法で、身体に強い影響を与えられている。だからこそ、魔法を使う必要の無い程度の怪我などには、自然回復されるのを待つ方が良いのさ」
「そうなんだ…有栖にフュールさん。教えてくれて、ありがとうございます」
有栖の説明に加えて、彼女と同じくらい高く評価されている魔女であるフュールが、補足説明をしてくれて魔法に疎い優輝にも理解させてくれた
「…さて、ミクイよ。俺についてこい。メイビー様の為だったとは言え、次期魔王様に一撃を入れたキサマの行動の真意を、部下たちに伝えねばならんからな」
「そーよね…彼女を慕っている者たちから、ミクイ恨まれちゃうかも知れないよね?ありがとうございます、アレクス様♪」
「チラッ…」
「ん、ん…【拡張音声(ワードヴォイス)】。先程のメイビー様と、暗殺者ミクイの稽古を観戦した者たちに告げます。今からアレクス様から直々に大切なお話があるので、スグに大訓練場に集まりなさい!」
「流石フュール。俺がいちいち口にしなくとも理解しているな(笑)……という訳だ。有栖に優輝よ、ミクイを借りていくぞ」
そう言うとアレクスは、ミクイを連れて仮眠室を出て行った。室内にはメイビーと、有栖、優輝、フュールが残された
「…ん?そういや、エーデちゃんが見当たらないけど、何処に行っているんだ?いつもフュールさんの後を付いているのに…」
今日この城に来てからも、フュールを「お師匠様︎︎︎❤︎」と言って、常に彼女の傍に居るエーデが居ないことに気が付いた優輝
「エーデは、ああ見えて料理上手いのよ。付き人のリッチーちゃんには、まだまだ及ばないけれど…彼女は昔、エーデの居た御屋敷のメイドさんをしていたから、家事全般が得意なの」
「へぇ…魔女見習いって言っても、女の子らしく可愛らしい一面もあるんだな…」
「……!ダメよ優輝くん。エーデが可愛いらしい女の子だからって、唾つけようとか考えたら…有栖に消されちゃうわよ(笑)」
「(;゜∀゜)イヤイヤイヤ...そんな事はしませんよ!」
優輝は最初にエーデと会った時、敵と味方に別れて対峙して彼女の強さを思い知っていたし、クラウン城で行われた武闘会で、カルーアと超絶な魔法戦闘を繰り広げていたのを間近で見ていたので、普通に感心しただけなのだが…先ほど裸を見られた仕返しなのか?フュールにからかわれてしまった
「ふーん…本当でしょうね?…日本の男は年下趣味が、やたら多いからね~。私みたいなオバサンよりも、小さくて可愛いエーデちゃんに興味を持っちゃわない?」
この世界の人族よりも長寿な生き物であれば、たかだか有栖の生きた40年程度の時間で歳を取った。とか気にしないのだが…地球生まれの有栖は、41歳の自分が16歳の優輝と結婚した事を未だに気にしているようだ
「だーからっ違うって!少なくとも俺は…年上で、その…優しくて綺麗な女性が好みなんだよ。そう、有栖のようなさ…(照)」
「まぁまぁまぁ♬裸を見られた腹いせにからかってみたら…思わぬ展開になっちゃったわね。アハハハハハ♪」
「ご、ごめんね優輝。私がいつまでも気にし過ぎだったみたいね…」
まるで学生恋愛のような初心な展開になってしまい、恥ずかしさで顔を赤くする有栖と優輝
「…あ!そうだよ、どうしてエーデちゃん達は料理をしに行ったんだい?」
話題を変えて誤魔化そうと、別の話題を振った優輝
「明日のメイビー様の生誕祭の為に、魔族の城から実力者たちが間もなく集結するのよ。そのおもてなしに、見習い魔女のエーデが精一杯の食事を提供するのよ」
「そうよね…優輝が言ったように、エーデはまだまだ見習いなの。他の魔女たちと同じような態度で、次期魔王様の生誕祭に参加してたら、他の魔女から嫌われかねないわよね」
「ふーん…魔女の世界にも厳しい上下関係があるんだな…そんなに沢山の人が集まるんですか?」
優輝は日本では比較的、引き籠もりな生活をしていた事もあり、社交の場所での礼節など知るハズもない
「いや、おそらく生誕祭は毎年開かれるだろうから…節目の年齢の時以外は少人数で済ませるハズよ?毎年、大人数を迎えていてはアレクス城の懐事情(ふところじじょう)もエライ事になっちゃうからね」
「そうなんですね…アレクス城で開催して、ベイ城からは俺たちが来て……後は何ヶ所から来られるのですか?」
魔族の支配分布も、あまり詳しくない優輝は素直にフュール達に質問した
「ねぇ優輝。私たち魔女は七人居るのよ。魔王様専属の魔女フュールは例外だけど、魔族の将専属が6人居るわけ」
「つまりは…後4国から来るわけか…」
7-1-2は4なので、単純に考えた優輝だが…
「不正解よ優輝。いつぞやの武闘会で私の生命を狙って死んだ【アンナローザ】の事は覚えてる?」
「あぁ…魔界の花を使う魔法使いで【最悪の魔女】って呼ばれてたんだよな?」
「そうよ。彼女が仕えていた国は、臥龍族の国ドルイドから南方に離れた位置にあったのだけどね…だいぶ前に、そのドルイド王国と戦争して既に滅んでいるわ」
「じゃあ、後3国から来るわけか…ん?」
更に単純に1を引いて考えた優輝だが…有栖とフュールの表情は急に曇った
「どうなのフュール。マナティート国からはファスク家の誰かが参加出来そうなの?」
「それが…距離の遠さもあるし、マナティートだけは20年以上、あの時から戦争が絶えていないから…連絡を取り合うのも難しいのよ。戦争が終わるまでは、参加するのは厳しいかも知れないわね…」
三姉妹たちが惑星神エリスアに頼まれて、今現在訪問中の地域であるマナティートの、魔族側の王であるファスク家の者たちと長らく音信不通なのである
「…とは言え、メイビー様の初めての生誕祭よね。知らせない訳にもイカないわよね…」
「まさか、有栖がマナティートに行くのか?」
有栖との付き合いも1年近くになり、彼女の言い方から考えを察した優輝が質問したのだが…
「ん~、そうしたいのは山々だけどね…私たちはベイの代役で来ている訳だから、戦争中の国に向かって何かに巻き込まれたりして、メイビー様の生誕祭に欠席する訳にはイカないからね…」
「そうよね…お互いに大切な立場に居るわけだから軽率には動けないわね…オマケに戦争中の国への訪問。強くて身分的に縛られなくて、高速移動が可能な者しか無理よね…」
「あはは。そんな都合の良い人って、なかなか居ませんよね…」
明日はメイビー様の生誕祭が開かれる。それまでに戦争中のマナティートに赴き、答えを聞いて帰ってこれる程の強さを持つ自由な猛者でないと遂行するのは難しい。優輝の言うように、そんな都合の良い者など簡単には…
「あっ!居たわ。都合の良いヤツが1人…」
「本当なの?有栖の知り合い?」
そんな都合の良い者など居るハズが無い!と諦めるしかない。と思われた時、有栖が心当たりを思い出したようだ
「そうね…知り合いよ。ちょっと屋上に行くわね。ソイツ、かなりの遠方に居るハズだから…遮蔽物の無い屋上じゃないと連絡取るのは難しいと思うのよ」
「分かったわ。お願いするわね有栖」
「俺も付いて行くよ?」
「いや、優輝はココに残って。アンタにしか出来ない事があるんだからさ」
奥さんである有栖が屋上に行く。と言うので付いて行こうとした優輝だが、自分にしか出来ない事があるから残るべきだと言われた
「それじゃね、少ししたら戻ってくるわ…そうだフュール。エーデに甘い物を用意してもらって良いかしら?」
「あ、うん。分かったわ……エーデに伝えたわよ」
「ありがと。それじゃ、また後でね…」
そう言うと有栖は部屋を出て行った
フュール程の魔女になれば、同じ城内に居るエーデに通信魔法での言伝(ことづて)くらいは、今の一瞬で終わったようだ
「でもフュールさん。有栖が言った俺にしか出来ない役目って何だと思います?」
「そう言えば言ってたわね…何かしら?」
どうやらフュールにも心当たりは無いらしい
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「くっ…いつつっ…あんの暗殺者(アサシン)め~。よくもワラワに恥をかかせてくれおったなぁ!」
ミクイの1激で気絶していたメイビーが目を覚ました。彼女は、格下だと思っていたミクイに良い様にやられた事を思い出し、かなりご機嫌斜めのようだ
「お待ちくださいメイビー様!あの暗殺者にも深い考えがあったのです」
「何だ!?…申してみろ!」
「実はですね…………………ですから、まだ幼いメイビー様には難しいかと思われますが、次期魔王の貫禄を見せ付ける意味でも、ここは逆に彼女の行いを褒めてあげるべきなのです」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ…はぁはぁ…そうだな。ワラワは次期魔王メイビーなのだからな…くっ…」
メイビーは魔王の素質を受け継いでいる事もあり、僅か2歳ながらも少女と近い思考能力を持っているのだが…如何せん人生経験値が圧倒的に足りていないので、ミクイの行動を許容するのに拒否反応が出ていた
しかし、フュールは大人のレディであろうとするメイビーの感情を利用し「幼いメイビー様には難しいと思われますが…」という言い方を敢えてしたのだ
「確かにワラワは、あの女の行動を許して器の大きさを示さねばならんのだが、ならんのだが……うがーっ!このイライラが収まらんのだぁっ!!!」
分かってはいるのだが、実際まだ2歳の彼女には、怒りを飲み込むのは苦痛で仕方ないようだ
「あっ!優輝、有栖が言っていた貴方の役目が来たわよ?」
「えっ!?どういう事でしょうか?」
有栖と付き合いの長いフュールは、この状況になって有栖が言わんとした言葉の意味を理解したようだ。しかし、優輝は理解していなかったが…
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「ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ メイビー様!勘弁してください!俺じゃ本当に死んじゃいますよっ!!」
「ならん!命令じゃ、ワラワのストレス発散の相手をせんかぁ!!」
怒りの収まらないメイビーに追われ、城中を逃げ惑う優輝。有栖が言った優輝の役目とは、メイビーの怒りを受け止めろ。という事だったw
【アレクス城の屋上】
「あ、あ~…お久しぶりだけど聞こえているかしら?まさか、アンタに限って夜に睡眠中なんて事はないわよねぇ?…おーい…」
1人で屋上に来た有栖は、なるべく高い位置に移動した場所で膝を降り、右手の人差し指と中指を揃えてコメカミの横にあて、遠方の誰かと魔法で会話を試みようとしている
「…んっ、ふ~ん。え~と……そうですそうです!消去の魔女様じゃあーりませんかっ!お久しぶりですねぇ、吾輩に何か用事がおありなのですかぁ?」
続く
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