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夢忘れ編

不穏なる影

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【ホルン私室】
「ホルン様と…今回のパーティリーダーはカルーアお姉さまでしたわね?3人でお話がありますの…」

「大事な話なのかい?」

「はい。カルーアお姉さま…」

「ふむ。だったら私の部屋に行こう」

サーシャから内緒の話を持ち掛けられたカルーアとホルン。誰にも聞かれないのであれば、自分の私室が良いだろうと提案したホルン



【ホルンの部屋】
仲間を信用していない訳では無いが、マーマル遊撃隊など敵側にも侮れない者も居る為、カルーアがホルンの部屋に認識阻害を張ることにした

「大気の精霊たちよ…静かる空間の共有を。人の立ち入れを退けたまへ【認識阻害(ハードゥーン)】」

気密性の高いホルンの部屋ではあるが…最善を期すため認識阻害の魔法を展開したカルーア

「これで誰かに聞かれる心配はありませんね。さてサーシャちゃん。わざわざ3人だけでしたい話とは何でしょうか?」

「お母さま…つまりエリスア様が帰り際にテレパシーでサーシャにだけ伝えてきた話がありますの」

「何やら大切な話みたいだね…何と言ってたのさ?」

普段はニコニコしていることが多いサーシャが、珍しく真剣な顔をして話している姿を見て身構えるカルーア


「実は…お母さまとこの砦に来た時に、お母さまが認識阻害を展開したのですが…その時に、この砦。もしくは、周辺から不穏なチカラを感じた。と言ってましたの…原因までは分からなかったらしいのですが、十分に注意して欲しい!と言われてましたの」

「なるほどね。サーシャのお母さんであるエリスア様から、そんな気になる話をしたら、みんな気になっていつものチカラが出せなくなっちゃうよね」

「ですから私(ホルン)とリーダーのカルーアにだけ話してくれたのですね…なるほどです。ですが、惑星神様が不穏に感じるほどの何かが、この砦の周辺から感じられたのですか…」

「はい。お母さまは、そう仰られてましたの…」

サーシャの事はちゃん付けしたホルン。だが、カルーアの事は呼び捨てで呼ぶようになっていた。先ほど見せられた【隠れ里最後の日】の映像でカルーアへの考え方が、ホルンの中で変化が起きた現れだった…ホルンの頭の中では様々な考えが駆け巡っていた

(死亡寸前だった姫様の奇跡的な復活。それに関与していたこの星の惑星神と地球の惑星神の存在【ヘルメスの街】からその為の助っ人として現れたパーティの中にカシスの娘をコピーして固体化したと言うカルーアが居たこと…これらの出来事が引き金となって、20年以上も終わりを迎えられなかったこの地の戦争に、終止符が打たれるのか?それとも…城を占拠された我々が拠点にしているこの砦周辺から感じられたと言う不穏な兆しは…まさか?我々人族側に破滅の時が来ると言うのか!?)

カシスの姉であるホルンも高い魔力を有しているが、クラウン城からSランク認定されたカルーアでさえも感じ取れなかった気配

惑星神エリスアだけが感じ取った不穏な兆し。それらが何をもたらすのか?何に対策を取れば良いのか?流石の天才軍師ホルンも頭がショートしそうだった



【会議室】
「皆さん、お待たせしてしまいました。気になる事が有るには有るのですが…確証に至るほどの事ではないので私とカルーアとサーシャの中だけに留めておきます。それで今後の話ですが…ヘルメスの街から来ていただいた皆さんはエリスア様からの提言もあるので、積極的に戦力視するのはしない事にしました…」

「なるほどのぅ…ならばエリエスや、ワシらはこの砦の護衛に全力を尽くすとしようかの?」

「分かりましたわ、お祖母様!」

世界に数人しか居ない。というSS(ダブルエス)クラスのアテナ達が居るという状況を、本当なら利用したくて仕方ないホルンの考えを汲み取ったアテナもまた、彼女に気を利かせたのだった

「有難うございます、アテナ様。ですが!せっかくですので我が軍の稽古指南をして頂きたいと思います。なにしろSS(ダブルエス)ランクの【武闘女神】アテナ様や、超人類の剣士と魔法使いもいらっしゃいますので、我が軍の兵士を鍛えて欲しいのです」

「ほっほっほ、そういう事なら任せておけ。エリエスや、お前さんも来るのじゃ!」

「はい。お祖母様!」

アテナとエリエスが兵士を鍛える事になった

「せっかくですから私も鍛えてください!」

リーリア姉妹の姉【シェリー】は剣と槍の使い手だ。アテナやエリエスからの指導は喉から手が出るほど受けたいようだ


「サーシャはロミー様に付き添いますの」
「コハラコはサーシャママを守るノ!」

「それじゃあ俺は、兵士たちの傷(いた)んでいる装備を修理させてもらおうかな?これでも鍛冶師なんでね……カルーア。お前は魔法を教えてあげないのか?」

兵士たちのほとんどが傷だらけの装備を使用している姿が目に付いたヒイロは、この軍に優秀な鍛冶師が居ないのだろう。と予想し武具の修理を買って出たのだが…俯(うつむ)いて元気の無い表情をしているカルーアが気になった


「そうですカルーア。Sランクの貴女から魔法の教えを受ければ我が軍の魔法使いにも、かなりプラスになるハズです。教えてあげてくれませんか?」

「あのホルンさん…今いる兵士の中では貴女がナンバーワンの魔法使いと言われてましたよね。それに続く魔法使いの実力はどの程度でしょうか?」

「Aランクの入り口程度か、ソコに届かない程度の者がほとんどだが?…やはり先ほど有りもしない疑いを掛けた、私の頼みを聞くのは気が進まないか?…そうだよな…」

ホルンは疑ってしまった姪にあたるカルーアに、活躍する場を与えて親交を深めようとしただけなのだが…予想外なことにカルーアの表情は険しくなっていた

「いえ、そういう事ではないのです。わたしは…モスコー姉さんの魔法の素質をコピーして固体化しました。つまり、生まれた時にはもう高いレベルにいましたので、努力を重ねた末にAランク辺りの人にどうやって教えて良いのか?分からないのです…」

つまり、生まれた時から既に高位であった者が努力と実戦を重ねてやっと、カルーアが固体化した直後のレベルに並ぶか?並ばないか?レベルの者に教えるのは難しいのである

俗に言う天才レベルの指導は凡人には理解し難い内容のモノだと言う…野球で言うところのいわゆる【長嶋方式】である


「あーはっは!天才にも弱点はあるみたいだね。それなら、このシャルル様に任せておきなさいよ!Cランクから努力を重ねてAランクまで登り詰めた私が、この国の魔法使いを指導してあげるわ!」

「シャルルさん…ありがとう。助かるよ」

カルーアは、困った自分を見兼ねてシャルルが助け舟を出してくれた。そう思ったのだが…

「ヒイロ。私が良い結果を残せたら…街に帰ってからデートしてね!期待してるわよ♪」

「(; ꒪ㅿ꒪)えっ!?あ、うん…構わんよ」

「ヽ(`Д´#)ノ ふざけんな!わたしの感動を返してよね!!」

なんて事はない。シャルルはカルーアの為ではなく、自分の為に指導役を買って出たのだと、口ではそう言ったシャルルだが、本心は…

兎にも角にも、サーシャがロミータの専属になりパーティ仲間たちも、控え目に協力することを約束した

エリスア様の感じた不穏の兆しが気になるが…果たしてこの地の長きに渡る戦争の結末はどのような形を迎えるのか?



続く
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