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夢忘れ編
1人で眠る日々
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【ヘパイトス工房】
クーパー1家がヘルメスの街に住み着いてから6年くらいが経過した頃、今夜も祖父母とエリエスの3人は川の字で就寝につこうとしていたのだが…
「エリエス。話が有る…大切な話じゃ」
「どうしたのですか?お爺様もお祖母様も真剣な顔をなさって…」
エリエスがクーパー家で目覚めた日を彼女の誕生日として計算すれば…彼女は7歳である。普通その歳の子ならば、生まれた立場が違えども親兄弟か友達と遊びたい盛りなのだろうが…【自分は選ばれた存在】とたまに口にする様になっていた彼女は、自分は既に1人前の大人だと考えていたので、街の子供たちの様に振る舞う事にさえ…嫌悪感を示すほどの天狗になっていた
もちろん彼女の保護者であるヘパイトスとアテナが、その事を考えていないハズはなかった。ここ数日、夫婦2人で話し合いを続けた結果…1つの結論に達した
「エリエスや、お前はまだ人間で言うところの7歳じゃが…強さで言えば大人顔負けの猛者の域にまで達しておるのぅ」
「(៸៸>⩊<៸៸)えへへ。そうですよねぇ♪」
アテナの褒め言葉に浮かれるエリエス
「そこでじゃ!空き部屋が1つ有るのは知っていよう?今からその部屋はお前の部屋じゃ。よって、今夜からは1人で寝るのじゃ。良いな?」
「Σ(゜д゜;)えっ!?どうして急に……まさか!私が最近、生意気になってきたからですか?それなら反省しますから、一緒に寝てください!」
強さ的には1人前の冒険者たちを優に凌ぐ強さを手に入れているエリエス。そんな彼女を子供のようには扱わないと言う祖父母
「お前はもう1人前なのだろう?都合良く大人だ、子供だ、などと引き出しを変えるでない!」
「!?…はい…分かりました…」
他人との関わりを拒絶していたエリエスは、祖父母との関わりさえあれば、それで良いと考えていたので…1人で寝るように言われたのは流石にツライようだ
【エリエスの部屋】
「ε٩(๑>ω<)۶зもう!お爺様もお祖母様も私が生意気な事を言うようになったものだから、お折檻のつもりでこんな意地悪をして来たんだわ!」
エリエスに宛てがわれた部屋は、綺麗に掃除され整理整頓までキチンと成されていた。いつか、こうしなくてはならない日が来るだろうと予想していたヘパイトスが、お店の手伝いをしている鍛冶師見習いの若い男女スタッフにお願いして、この空き部屋をいつでもエリエスが使えるように掃除してくれていたのだ
「反省してしばらく大人しい良い子にしてれば、キットまた一緒に寝てくれるハズですわ。その数日間くらい、私は我慢出来ますから…」
いかに成人冒険者をも圧倒する猛者にまで登り詰めたエリエスと言えど、人生経験はたかが7歳分しかない。しかも同年代の子達を見下している彼女は、社交的な考えなど一切持ち合わせていなかった
なのでエリエスの将来を案じるクーパー夫婦の気持ちなど、彼女は全く予想も出来ないでいた
【半年後】
あの日からエリエスは1人で眠る日々が続いていた。エリエスがアテナとヘパイトスの気持ちを理解出来ていないからである
「せい!…やぁ…はぁぁ!」
いつもの様に1人でエクスカリバーを振るエリエス。誰にも関わろうとは思ってもいないようだ
このままズルズル月日を消耗する事も良くない!と考えたヘパイトスは敷地内に道場を建てた
【ヘパイトス流剣術道場】
と書かれたプレートが、その入り口に立てかけられている。王宮鍛冶師でありながらSランク騎士の強さを持つ【ヘパイトス】から剣術指南を受けられる!
その噂は瞬く間に大陸各地に伝わり、至る所から生徒が集まった。集団稽古が基本ではあったが…【ヘパイトス流剣術奥義伝授資格試験】が毎日5人限定で行われていた
腕に自信のある者たちがヘパイトスの剣術の奥義を学ぼうと、何百人もの志願者が現れた
「よろしくお願いしますっ!」
その試験内容は…竹の棒を装備したエリエスと武器を持って戦い勝利する事!ただし、どちらの相手も大怪我以上はさせない事が大前提であった
それは無益な殺生を良しとしないヘパイトスの考えが組み込まれての事。しかし本当のところは…いかなる強者と戦っても、その相手をエリエスに殺させない為である
その道場を開いた目的。それは自分からクーパー夫婦以外と全くコミニュケーションを撮ろうとしない孫娘エリエスに、家族以外と触れ合う場を作る為と…もしかしたら同世代でエリエスに勝てる者。ないしは互角に戦えてエリエスの伸びきった鼻っ柱をへし折ってくれる存在を探す為であったのだが…
「ま、参りましたっ!!」
「ふん!貴方も達者だったのは口先だけでしたわね…世の中には私(わたくし)を楽しませてくれる者は居ませんのね…」
「何て強さなんだ…」
「孫娘さん、ヘパイトス様よりも強いのか?」
「こんな猛者相手に勝てる訳がない…」
腕に自信のある者たちが何百人もエリエスと対峙したのだが…勝敗はもちろんなのだが、彼女を本気にさせられる事も出来なかった
しかも挑戦者は工房にある好きな武器を借りて戦ったのだが、エリエスは試合中も道着などは着ずに私服で竹の棒1本で戦っていたにも関わらず、誰も彼女に実力の片鱗すらも引き出すことが出来なかったのだ
【8年後】
ヘパイトスが始めた道場は去年、突然終わりの日を迎えた。一向にエリエスを脅かす者が現れないまま月日だけが過ぎていた。ヘパイトスは練習生の前でお手本として、孫娘であるエリエスと勝負したのだ
(お爺様に私が変わった!と証明して今日こそ仲直りして一緒に眠る日々を取り戻しますわ!)
古代人によって生み出された超人類であるエリエスは、今のところは誰も知らない話なのだが…実に1000年前後の寿命を擁している
そんな彼女からすれば、8年の月日くらいでは考えが変わる程の時間ではなかったようだ。エリエスは未だに小さな子供のように、祖父母と一緒に寝て頭を撫でられる日々が訪れるのを期待しているのだ
「行きますよ、お爺様!」
「来い、エリエスよ!」
本気で戦ったヘパイトスとエリエス
だが、その戦いの途中で…歳のせいなのか?突然ヘパイトスは、ギックリ腰を発生させ試合は中断された。この日を境にヘパイトス道場は終わった
エリエスの天狗の鼻をへし折りたくて始めた8年の月日も、7年の月日でアテナの格闘技の基礎とヘパイトスの剣術と鍛冶スキルをコピーし、エクスカリバーを完成させた彼女を変える事は出来なかった
【来客者】
「すみませーん。冒険者のアドル・クリスニッジと申します。宮廷鍛冶師のヘパイトス様がコチラで工房を開いていると聞いたのですが…」
そんなある日【イシス王国】を救った英雄と称されるアドルが、ヘパイトスに武器防具の修理を頼めないか?と訪れた
「せっかく訪ねて来てくれたのに申し訳ないが…数日前に腰をいわせてしまってのぅ…貴重なクレリア製の武器防具を直すのは今は無理なのじゃ…すまんのぅ…」
「そうでしたか…残念です…」
ギックリ腰になった身体では、そんな貴重な装備は直せないと断るヘパイトス。そのやり取りを見ていたエリエスが…
「アドルさんでしたか?この私に任せて貰えないかしら?」
「えっ!?キミが…かい?」
エリエスは見下している他者と交流するのを極度に避けていたので、彼女の凄すぎる才能はほとんど人に知られていなかった
「私は、お爺さまから剣術だけでなく鍛冶スキルも教えられています。ですので、お爺さまに近い修理を出来ますわ♪」
確かに、エリエスという孫娘がヘパイトスから教えを受けていて、1人前の冒険者でも彼女に勝てる者は居ない。とは聞いていたが…15歳の少女がそこまでの強さを有し、更にヘパイトス並の鍛冶スキルまで習得しているなど、とても信じられる話ではなかった
「申し出は有り難いんだけど…このクレリアソードはイシスの家宝で、それを譲り受けているから流石に…」
なので、アドルは貴重なクレリア製の武器防具を彼女に預ける事に、当然ながら不安を覚えた。その時ヘパイトスは、ある事を思い出した
「アドル君と言ったか?最近この街で名を馳せている別の若い鍛冶師が居るのじゃが、ワシにはまだ及ばぬじゃろうが1度訪れてみないかの?」
ヘパイトスは月イチのボランティアで、孤児院に行き鍛冶師の先生として望む者に職業訓練していた。その中に才能ある若い男【ヒイロ】が、この街の冒険者の養子となり工房を持って働きだしている事を聞いていた
「待ってお爺様。私も付き添わせてください。お爺さま以外で私より鍛冶スキルが上の者が居るとは思えません!」
エリエスはその若い鍛冶師の男の腕前に難癖を付けて、自分が代わりにアドルの武器防具を修理し、ヘパイトスに認められるチャンスにしようと企んだようだ。そこで彼女は、アリスと出会う事になるのだ
続く
クーパー1家がヘルメスの街に住み着いてから6年くらいが経過した頃、今夜も祖父母とエリエスの3人は川の字で就寝につこうとしていたのだが…
「エリエス。話が有る…大切な話じゃ」
「どうしたのですか?お爺様もお祖母様も真剣な顔をなさって…」
エリエスがクーパー家で目覚めた日を彼女の誕生日として計算すれば…彼女は7歳である。普通その歳の子ならば、生まれた立場が違えども親兄弟か友達と遊びたい盛りなのだろうが…【自分は選ばれた存在】とたまに口にする様になっていた彼女は、自分は既に1人前の大人だと考えていたので、街の子供たちの様に振る舞う事にさえ…嫌悪感を示すほどの天狗になっていた
もちろん彼女の保護者であるヘパイトスとアテナが、その事を考えていないハズはなかった。ここ数日、夫婦2人で話し合いを続けた結果…1つの結論に達した
「エリエスや、お前はまだ人間で言うところの7歳じゃが…強さで言えば大人顔負けの猛者の域にまで達しておるのぅ」
「(៸៸>⩊<៸៸)えへへ。そうですよねぇ♪」
アテナの褒め言葉に浮かれるエリエス
「そこでじゃ!空き部屋が1つ有るのは知っていよう?今からその部屋はお前の部屋じゃ。よって、今夜からは1人で寝るのじゃ。良いな?」
「Σ(゜д゜;)えっ!?どうして急に……まさか!私が最近、生意気になってきたからですか?それなら反省しますから、一緒に寝てください!」
強さ的には1人前の冒険者たちを優に凌ぐ強さを手に入れているエリエス。そんな彼女を子供のようには扱わないと言う祖父母
「お前はもう1人前なのだろう?都合良く大人だ、子供だ、などと引き出しを変えるでない!」
「!?…はい…分かりました…」
他人との関わりを拒絶していたエリエスは、祖父母との関わりさえあれば、それで良いと考えていたので…1人で寝るように言われたのは流石にツライようだ
【エリエスの部屋】
「ε٩(๑>ω<)۶зもう!お爺様もお祖母様も私が生意気な事を言うようになったものだから、お折檻のつもりでこんな意地悪をして来たんだわ!」
エリエスに宛てがわれた部屋は、綺麗に掃除され整理整頓までキチンと成されていた。いつか、こうしなくてはならない日が来るだろうと予想していたヘパイトスが、お店の手伝いをしている鍛冶師見習いの若い男女スタッフにお願いして、この空き部屋をいつでもエリエスが使えるように掃除してくれていたのだ
「反省してしばらく大人しい良い子にしてれば、キットまた一緒に寝てくれるハズですわ。その数日間くらい、私は我慢出来ますから…」
いかに成人冒険者をも圧倒する猛者にまで登り詰めたエリエスと言えど、人生経験はたかが7歳分しかない。しかも同年代の子達を見下している彼女は、社交的な考えなど一切持ち合わせていなかった
なのでエリエスの将来を案じるクーパー夫婦の気持ちなど、彼女は全く予想も出来ないでいた
【半年後】
あの日からエリエスは1人で眠る日々が続いていた。エリエスがアテナとヘパイトスの気持ちを理解出来ていないからである
「せい!…やぁ…はぁぁ!」
いつもの様に1人でエクスカリバーを振るエリエス。誰にも関わろうとは思ってもいないようだ
このままズルズル月日を消耗する事も良くない!と考えたヘパイトスは敷地内に道場を建てた
【ヘパイトス流剣術道場】
と書かれたプレートが、その入り口に立てかけられている。王宮鍛冶師でありながらSランク騎士の強さを持つ【ヘパイトス】から剣術指南を受けられる!
その噂は瞬く間に大陸各地に伝わり、至る所から生徒が集まった。集団稽古が基本ではあったが…【ヘパイトス流剣術奥義伝授資格試験】が毎日5人限定で行われていた
腕に自信のある者たちがヘパイトスの剣術の奥義を学ぼうと、何百人もの志願者が現れた
「よろしくお願いしますっ!」
その試験内容は…竹の棒を装備したエリエスと武器を持って戦い勝利する事!ただし、どちらの相手も大怪我以上はさせない事が大前提であった
それは無益な殺生を良しとしないヘパイトスの考えが組み込まれての事。しかし本当のところは…いかなる強者と戦っても、その相手をエリエスに殺させない為である
その道場を開いた目的。それは自分からクーパー夫婦以外と全くコミニュケーションを撮ろうとしない孫娘エリエスに、家族以外と触れ合う場を作る為と…もしかしたら同世代でエリエスに勝てる者。ないしは互角に戦えてエリエスの伸びきった鼻っ柱をへし折ってくれる存在を探す為であったのだが…
「ま、参りましたっ!!」
「ふん!貴方も達者だったのは口先だけでしたわね…世の中には私(わたくし)を楽しませてくれる者は居ませんのね…」
「何て強さなんだ…」
「孫娘さん、ヘパイトス様よりも強いのか?」
「こんな猛者相手に勝てる訳がない…」
腕に自信のある者たちが何百人もエリエスと対峙したのだが…勝敗はもちろんなのだが、彼女を本気にさせられる事も出来なかった
しかも挑戦者は工房にある好きな武器を借りて戦ったのだが、エリエスは試合中も道着などは着ずに私服で竹の棒1本で戦っていたにも関わらず、誰も彼女に実力の片鱗すらも引き出すことが出来なかったのだ
【8年後】
ヘパイトスが始めた道場は去年、突然終わりの日を迎えた。一向にエリエスを脅かす者が現れないまま月日だけが過ぎていた。ヘパイトスは練習生の前でお手本として、孫娘であるエリエスと勝負したのだ
(お爺様に私が変わった!と証明して今日こそ仲直りして一緒に眠る日々を取り戻しますわ!)
古代人によって生み出された超人類であるエリエスは、今のところは誰も知らない話なのだが…実に1000年前後の寿命を擁している
そんな彼女からすれば、8年の月日くらいでは考えが変わる程の時間ではなかったようだ。エリエスは未だに小さな子供のように、祖父母と一緒に寝て頭を撫でられる日々が訪れるのを期待しているのだ
「行きますよ、お爺様!」
「来い、エリエスよ!」
本気で戦ったヘパイトスとエリエス
だが、その戦いの途中で…歳のせいなのか?突然ヘパイトスは、ギックリ腰を発生させ試合は中断された。この日を境にヘパイトス道場は終わった
エリエスの天狗の鼻をへし折りたくて始めた8年の月日も、7年の月日でアテナの格闘技の基礎とヘパイトスの剣術と鍛冶スキルをコピーし、エクスカリバーを完成させた彼女を変える事は出来なかった
【来客者】
「すみませーん。冒険者のアドル・クリスニッジと申します。宮廷鍛冶師のヘパイトス様がコチラで工房を開いていると聞いたのですが…」
そんなある日【イシス王国】を救った英雄と称されるアドルが、ヘパイトスに武器防具の修理を頼めないか?と訪れた
「せっかく訪ねて来てくれたのに申し訳ないが…数日前に腰をいわせてしまってのぅ…貴重なクレリア製の武器防具を直すのは今は無理なのじゃ…すまんのぅ…」
「そうでしたか…残念です…」
ギックリ腰になった身体では、そんな貴重な装備は直せないと断るヘパイトス。そのやり取りを見ていたエリエスが…
「アドルさんでしたか?この私に任せて貰えないかしら?」
「えっ!?キミが…かい?」
エリエスは見下している他者と交流するのを極度に避けていたので、彼女の凄すぎる才能はほとんど人に知られていなかった
「私は、お爺さまから剣術だけでなく鍛冶スキルも教えられています。ですので、お爺さまに近い修理を出来ますわ♪」
確かに、エリエスという孫娘がヘパイトスから教えを受けていて、1人前の冒険者でも彼女に勝てる者は居ない。とは聞いていたが…15歳の少女がそこまでの強さを有し、更にヘパイトス並の鍛冶スキルまで習得しているなど、とても信じられる話ではなかった
「申し出は有り難いんだけど…このクレリアソードはイシスの家宝で、それを譲り受けているから流石に…」
なので、アドルは貴重なクレリア製の武器防具を彼女に預ける事に、当然ながら不安を覚えた。その時ヘパイトスは、ある事を思い出した
「アドル君と言ったか?最近この街で名を馳せている別の若い鍛冶師が居るのじゃが、ワシにはまだ及ばぬじゃろうが1度訪れてみないかの?」
ヘパイトスは月イチのボランティアで、孤児院に行き鍛冶師の先生として望む者に職業訓練していた。その中に才能ある若い男【ヒイロ】が、この街の冒険者の養子となり工房を持って働きだしている事を聞いていた
「待ってお爺様。私も付き添わせてください。お爺さま以外で私より鍛冶スキルが上の者が居るとは思えません!」
エリエスはその若い鍛冶師の男の腕前に難癖を付けて、自分が代わりにアドルの武器防具を修理し、ヘパイトスに認められるチャンスにしようと企んだようだ。そこで彼女は、アリスと出会う事になるのだ
続く
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