ようこそ幼い嫁候補たち④

夢忘れ編

銀翼竜ブルゥブロ

【銀翼竜ブルゥブロ】
魔界に帰り損ねた魔獣キルヒリング。甲殻魔物の為かなり皮膚が厚いので、余程の攻撃を直撃させないと倒せそうになかった

しかもソイツらはせいぜい５－６体の小規模グループで行動し、知能も高くないハズなのだが…三姉妹たちの前に立ちはだかっているソイツらは３０体以上で攻めて来てるうえに、連携も高いレベルで統率されていた

エリエスが不意の攻撃で封じられ、共に居たまだまだ未熟な【ホロミナティ】は窮地に陥っている

アリス、サーシャ達の方も「なんとかしなくちゃ駄目なノ！」と気合いが入ったコハラコはヤル気が空回りし単独行動に走り過ぎている為、その高いスペックを活かせていなかった。なのでアリスが１人でサーシャとエルデスを守っている形になっていた

苦戦している彼等の様子を、離れた位置から観察している３人が居る

「マーマル、ヤツらはどんな調子だよ？」

かなり離れた位置から遠眼鏡(マーマル手製)で三姉妹たちの動きを観察していたマーマルは、遠眼鏡を外し説明をする

「妙ですね、僕の占星術では…「人間側とのパワーバランスを崩しかねない程のパーティが現れる」…と出てたんだけどな、このままだと全滅しちゃうんじゃないかな？」

「パシッ！」
「ちょっと私にも見せてくれよ」

マーマルが言った戦局を覆しかねほどの人間側の増援部隊の強さに興味を持ったリュウキは、マーマルの遠眼鏡を強引に奪った

「ん～、どれどれ…」

カルーアの高い魔法力を感知していたマーマルは、かなり視力が良いリュウキでも豆粒くらいにしか見えない遠い位置から観察していた

「…見習いのグループと手練れのグループの実力差が激しいな…強いヤツは凄まじく強そうな感じだけどな…流石に相手が悪いか？銀翼竜(クレリアワイバーン)ブルゥブロが相手だからな…それに、群れてるのは魔界の魔物のキルヒリングじゃねーか！どうなってんだ？地上の神獣と共闘してんのか？」

「うーん…見た感じキルヒリング達は、信じられないほど連携が取れてるみたいだね。不自然なくらいに統率されているよね…本来のヤツらは個体スペックは高いけど、知能が大した事ないから【罠にハメて勝て】ってタイプの魔物のハズだからね」

「もしかして銀翼竜に統率されているんじゃねーか？」

「銀翼竜ブルゥブロはかなり知能の高い翼竜(ワイバーン)らしいから…キルヒリングを配下に置いて鍛えた様に感じるね。とは言え、僕の占星術が外れるなんて…おかしいなぁ…」

「ここで全滅してくれるのなら、楽ができて良いじゃないですかー。魔法石で阻害陣を張るのも疲れますし、見切りをつけて帰りませんかー？」

腑に落ちないでいるマーマルに意見をしたテウが張っている認識阻害は、魔法石の中で魔力が作動しているので外に魔力が漏れないのが強みだ。その為、結界を張っていても探知魔法にひっかかりにくいようだ

かなり遠い位置から探知されにくい阻害陣を張って、慎重に三姉妹を観察しているマーマル達



【三姉妹達が戦っている森林帯】
「くっそー！すばっしっこ過ぎるだろ！俺の攻撃が器用に回避されてるぜ。おいカルーア、お前はどう思う？」

沈黙していたカルーアは、銀翼竜の方に右手の平を向けて魔力を集中させた

「ちょっと見ててよ……雷よ！空を舞う者を叩き落とせ！雷撃柱(ジャムルエッジ)」

敢えてカルーアはヨシュアの見てる前で、銀翼竜ブルゥブロに向けて雷撃を放とうとした。が、発射せずに魔力を引っ込めた

が、ブルゥブロはカルーアが雷撃を放っていたら直撃コースにいた訳だが、カルーアが雷撃を放とうとした瞬間に回避行動に入っていた

「Σ(゜□゜)なんだ今のは！？魔法が具現化する瞬間に、あのワイバーンは回避行動を始めたぞ！？攻撃される前に回避を始めるって、どういう事なんだよ？」

「んあっ！？攻撃来るよ！」

「バズッ！ドゾン！」

魔力を高めながら打ち出してこなかったカルーアに不穏な気配を感じたのか？銀翼竜は己の翼で真空波を生み出し、それでカルーアとヨシュアを攻撃してきた。キッチリ回避したカルーアとヨシュア

「異世界転移勇者って知ってるかい？」

「ん？…あぁ！何でも【消去の魔女】と同じ故郷の地球って所から召喚させられた勇者見習いだったか？親父に聞いたけど、ソイツ自体の強さは大した事ないんだろ？」

カルーアが言っている異世界転移勇者とは…【消去の魔女】と恐れられている徳川有栖と結婚したが、世間からは【ポンコツ勇者】と呼ばれている一条優輝だ

「確かにね。彼は大した強さじゃないんだけどさ…数秒先が見える【未来視(クリムゾアイ)】とか言う能力(スキル)を持っているらしいんだよね」

「おい！まさか…その能力(スキル)をアイツも持ってるとか言うんじゃねーだろうな？」

「そうなんだよ。あのワイバーンの少し先を見ている様な動き、もしかしたらポンコツ勇者と同じ能力(スキル)を持ってるのかもね…」

「先の展開が見える能力(スキル)だと？おいおい反則級じゃねーか！確かに弱いヤツが持ってても気休めにしかならないだろーけどよ…」

「あのワイバーンが同じ能力(スキル)を持っているとしたら、反則級に便利な能力(スキル)になるだろうね…」

カルーアとヨシュアの２人がかりでも苦戦している理由。それがカルーアの予想通りなら、かなりヤバい相手と戦っている

「はぁはぁ…ヤバいよぉ…頑張り過ぎちゃってるかも…」

「アリスお姉さま、回復しますわ」

新しく覚えた発火の能力をミスリルソードに付与し、左手で氷を生み出し迫り来るキルヒリング達を足止めしているアリスは、能力の使い過ぎでかなり疲弊していた

しかも三姉妹たちにとって目の前の敵にも苦労しているが、カルーア達の侵入を占星術で察知したマーマル遊撃隊にも観察されている状態だった


「にしてもよ。強さや攻撃パターンを知らない相手同士で戦っているのによ、なんで俺たちだけが一方的に苦戦してるんだ？おかしくねーか？」

「うーん…もしかしたら、わたし達がこの森に入った時から既にヤツらに観察、分析されていたのかも知れないね？そうじゃないとツジツマが合わないんだよね…わたし達はそうとうヤバいヤツらを相手にしてるのかもね？」

冷静に分析している様に見えるカルーアだが…彼女は内心そうとう焦っていた。出発前に惑星神【エリスア様】から受けていた忠告
「ファミリーの誰かの未来が見えなくなる予感がして仕方ないのです」の言葉がカルーアの思考を曇らせていた

これだけのパーティで挑めば大丈夫だろ！と軽く考えていたカルーア達だが、エリスア様の予言が的中してしまいそうな状況に追い込まれていた

果たしてカルーア達は、この劣勢を覆せるのだろうか？



続く