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夢忘れ編
記憶の有り処
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【ヒルドルブ砦 中庭】
ロミーの記憶を少し分け与えられたロミータが椅子から立ち上がると…意を決した表情でクリストファーに稽古を申し込んだ
「お待ちください!…ロミー…いえ、姫様は昏睡状態から今朝、奇跡的に回復されたばかりなのですよ?そんな状態で訓練するのは危険過ぎます!!」
ロミーの幼なじみとして、彼女を守る騎士として剣を握ってきたクリストファーは、彼女の申し出を却下させたかった
回復直後だから危険だ!という理由もあるのだが…それ以上に、ロミーが記憶喪失になっている点が問題だと感じていた
本来クリストファーが知っているロミーは誰が何を言っても、自分が言い出した事は簡単に曲げない性格をしていた
「王族が奥でふんぞり返って国民を死地に追い立てるなんて事はあってはならないのです!」
そんな事を言って自ら先陣に立って戦い兵士たちの士気を鼓舞しつつも、クリストファーたちの責任ある者たちにストレスを与えてくる
それがクリストファーのよく知るロミーだ。だが…今朝目覚めた時のロミーは全くの別人のようだった。まるで治安の良い国の貴族から、蝶よ花よと大事に育てられた【箱入り娘】のような印象を彼女から受けたからだ
そんな感じの姫様と訓練をして大怪我をさせる訳にもイカない。しかも、今は魔族側に押され始めているこの時期に王族唯一の生き残りの姫に何かあって、兵士たちを動揺させる訳にはイカないのだ!
「大丈夫よ、クリス。少し手加減してくれたら十分やれると思うの…」
「ほ、本当にお身体は大丈夫なのですか?」
(確かに今クリストファーではなく【クリス】と呼んだ…)
クリストファーもクーニャも目を覚ましてから【クリストファーさん】と呼んでいたロミーが【クリス】と呼んだことに気が付いていた
(まさか…姫様の記憶が?)
「えぇ、身体はすっかり元通りです!」
「本当に…大丈夫なのですね?」
普通なら昏睡状態から目覚めたばかりの姫様と、剣の稽古をするなどあってはならない事だろう…しかし彼女の記憶の回復が気になるクリスは、彼女と訓練をする気になっていた
「先ほど寝ていた間に色々と思い出せました。さぁクリス、剣を取ってください」
少年兵との稽古が終わり彼女が置いた剣と、近くにあった剣を持ちクリスに歩み寄るロミー
(大丈夫できるハズ…ロミーの記憶が頭と身体に流れ込んできたんだから…)
「分かりました…徐々にギアを上げていきますから…姫様がどこまで回復したか?魅せてもらいます!」
人間側が劣勢の今、もしも姫様であるロミーに怪我をさせたら自分がどんな処罰を受けるのか?想像も出来ないクリスだが、ロミーの気迫に賭けることにした
「遠慮は要りませんよ、クリス!」
(( °ᗝ° )!?今朝目覚められた時よりも、かなり口調が前の姫様に戻られている…)
……………………………………………
「バキィン!!」
「きゃう!?」
ロミーがクリスと訓練を始めて約3分後…クリストファーに剣を弾き飛ばされたロミーが、その斬撃の衝撃で後方に押され尻もちをつくように倒れた
「大丈夫ですかロミー様!?」
祈るように2人の訓練を見守っていたクーニャがタオルと、水を入れたコップを持ってロミーの元に駆け寄った
「大丈夫よクーニャ。怪我はしていないわ」
「(๑°ㅁ°๑)えっ!?今…私のことを【クーニャ】と呼ばれましたか?」
「何言ってるのよ…クーニャはクーニャでしょ(笑)」
「うわあああ!ロミー様、良かったぁ!」
以前のように自分の事を【クーニャ】と呼び捨てにしてくれた事に歓喜した彼女は、本当の意味で大好きなロミーが還ってきた!と思い彼女に抱きつきながら歓喜の涙を流していた
(剣さばきが私のよく知るロミーのモノとほぼ同じだった…けど…僅かだけど…どの国の流派でも見たことない様な剣筋が入っていた。アレは何だったの?姫様は本当に私の知るロミーなの?)
クリストファーのよく知るロミーが戻ってきた!と思える手応えはあった…しかし、ほんの少しだけ未知の動きをした彼女に少しの疑問を残していた
「怪我が無くて良かったわロミー…って以前と同じように呼んでも良いのね?」
「もちろんよっ!心配掛けちゃったわねクリス(笑)…お腹がすいちゃったわっ!クーニャが作ってくれた食事、まだ食べて無かったわね。みんなで一緒に食べましょう♪」
「俺たちも良いんですか?」
「当たり前でしょ!みんなで食べた方が美味しいわ♪」
ロミータは夢の中で出会ったもう1人の…おそらくクリストファーやクーニャがよく知っているロミーから与えられたのだろう、彼女の記憶に習って振る舞った
(記憶の中のロミーを意識して動いてみたら…ロミーでも何とか剣を扱えた…こんな風に行動すれば、ここに居るみんなに勇気を与えられるのかな?)
ロミータは不思議な感覚の中にいた。自分の脳内に記憶されている地球で生活していた自分の記憶と、マナティート王国の姫様として育ったロミーの記憶の2つが、ロミータの中で別個に独立して存在していた
「ヽ(`Д´#)ノ コラー!!コレはロミー様の為に作ったんです!みんながそんなに食べたらロミー様の分が無くなっちゃうでしょ!!」
兵士たちの間でクーニャの作るデザートや、お菓子が凄く美味しいらしい。という話は昨日までのロミーとクリストファーから聞かされていたので、ソレを食べたことの無い兵士たちは喜んでソレらを食べていた
「美味しいです!」
「訓練で疲れた身体を嬉しい」
「ほんのり甘くて良いですね」
回復直後の姫様が食べられそうな量より、ほんの少しだけ多く作ったに過ぎないので、みんなに食べられたら姫様の分が無くなりそうなので、クーニャは必死になってお菓子を守っていた
「ふふふ…みんな元気で良いですね♪」
(こうやってロミーじゃないロミーの記憶をこれからも受け入れていったら…ロミーはどうなっちゃうんだろ?ロミーの記憶はいったいドコに行っちゃうの?)
周りのみんなを助けたい。笑顔にしたい!と願っているロミータだが、このまま別人のロミーの記憶を受け入れることに恐怖も感じているのだった
続く
ロミーの記憶を少し分け与えられたロミータが椅子から立ち上がると…意を決した表情でクリストファーに稽古を申し込んだ
「お待ちください!…ロミー…いえ、姫様は昏睡状態から今朝、奇跡的に回復されたばかりなのですよ?そんな状態で訓練するのは危険過ぎます!!」
ロミーの幼なじみとして、彼女を守る騎士として剣を握ってきたクリストファーは、彼女の申し出を却下させたかった
回復直後だから危険だ!という理由もあるのだが…それ以上に、ロミーが記憶喪失になっている点が問題だと感じていた
本来クリストファーが知っているロミーは誰が何を言っても、自分が言い出した事は簡単に曲げない性格をしていた
「王族が奥でふんぞり返って国民を死地に追い立てるなんて事はあってはならないのです!」
そんな事を言って自ら先陣に立って戦い兵士たちの士気を鼓舞しつつも、クリストファーたちの責任ある者たちにストレスを与えてくる
それがクリストファーのよく知るロミーだ。だが…今朝目覚めた時のロミーは全くの別人のようだった。まるで治安の良い国の貴族から、蝶よ花よと大事に育てられた【箱入り娘】のような印象を彼女から受けたからだ
そんな感じの姫様と訓練をして大怪我をさせる訳にもイカない。しかも、今は魔族側に押され始めているこの時期に王族唯一の生き残りの姫に何かあって、兵士たちを動揺させる訳にはイカないのだ!
「大丈夫よ、クリス。少し手加減してくれたら十分やれると思うの…」
「ほ、本当にお身体は大丈夫なのですか?」
(確かに今クリストファーではなく【クリス】と呼んだ…)
クリストファーもクーニャも目を覚ましてから【クリストファーさん】と呼んでいたロミーが【クリス】と呼んだことに気が付いていた
(まさか…姫様の記憶が?)
「えぇ、身体はすっかり元通りです!」
「本当に…大丈夫なのですね?」
普通なら昏睡状態から目覚めたばかりの姫様と、剣の稽古をするなどあってはならない事だろう…しかし彼女の記憶の回復が気になるクリスは、彼女と訓練をする気になっていた
「先ほど寝ていた間に色々と思い出せました。さぁクリス、剣を取ってください」
少年兵との稽古が終わり彼女が置いた剣と、近くにあった剣を持ちクリスに歩み寄るロミー
(大丈夫できるハズ…ロミーの記憶が頭と身体に流れ込んできたんだから…)
「分かりました…徐々にギアを上げていきますから…姫様がどこまで回復したか?魅せてもらいます!」
人間側が劣勢の今、もしも姫様であるロミーに怪我をさせたら自分がどんな処罰を受けるのか?想像も出来ないクリスだが、ロミーの気迫に賭けることにした
「遠慮は要りませんよ、クリス!」
(( °ᗝ° )!?今朝目覚められた時よりも、かなり口調が前の姫様に戻られている…)
……………………………………………
「バキィン!!」
「きゃう!?」
ロミーがクリスと訓練を始めて約3分後…クリストファーに剣を弾き飛ばされたロミーが、その斬撃の衝撃で後方に押され尻もちをつくように倒れた
「大丈夫ですかロミー様!?」
祈るように2人の訓練を見守っていたクーニャがタオルと、水を入れたコップを持ってロミーの元に駆け寄った
「大丈夫よクーニャ。怪我はしていないわ」
「(๑°ㅁ°๑)えっ!?今…私のことを【クーニャ】と呼ばれましたか?」
「何言ってるのよ…クーニャはクーニャでしょ(笑)」
「うわあああ!ロミー様、良かったぁ!」
以前のように自分の事を【クーニャ】と呼び捨てにしてくれた事に歓喜した彼女は、本当の意味で大好きなロミーが還ってきた!と思い彼女に抱きつきながら歓喜の涙を流していた
(剣さばきが私のよく知るロミーのモノとほぼ同じだった…けど…僅かだけど…どの国の流派でも見たことない様な剣筋が入っていた。アレは何だったの?姫様は本当に私の知るロミーなの?)
クリストファーのよく知るロミーが戻ってきた!と思える手応えはあった…しかし、ほんの少しだけ未知の動きをした彼女に少しの疑問を残していた
「怪我が無くて良かったわロミー…って以前と同じように呼んでも良いのね?」
「もちろんよっ!心配掛けちゃったわねクリス(笑)…お腹がすいちゃったわっ!クーニャが作ってくれた食事、まだ食べて無かったわね。みんなで一緒に食べましょう♪」
「俺たちも良いんですか?」
「当たり前でしょ!みんなで食べた方が美味しいわ♪」
ロミータは夢の中で出会ったもう1人の…おそらくクリストファーやクーニャがよく知っているロミーから与えられたのだろう、彼女の記憶に習って振る舞った
(記憶の中のロミーを意識して動いてみたら…ロミーでも何とか剣を扱えた…こんな風に行動すれば、ここに居るみんなに勇気を与えられるのかな?)
ロミータは不思議な感覚の中にいた。自分の脳内に記憶されている地球で生活していた自分の記憶と、マナティート王国の姫様として育ったロミーの記憶の2つが、ロミータの中で別個に独立して存在していた
「ヽ(`Д´#)ノ コラー!!コレはロミー様の為に作ったんです!みんながそんなに食べたらロミー様の分が無くなっちゃうでしょ!!」
兵士たちの間でクーニャの作るデザートや、お菓子が凄く美味しいらしい。という話は昨日までのロミーとクリストファーから聞かされていたので、ソレを食べたことの無い兵士たちは喜んでソレらを食べていた
「美味しいです!」
「訓練で疲れた身体を嬉しい」
「ほんのり甘くて良いですね」
回復直後の姫様が食べられそうな量より、ほんの少しだけ多く作ったに過ぎないので、みんなに食べられたら姫様の分が無くなりそうなので、クーニャは必死になってお菓子を守っていた
「ふふふ…みんな元気で良いですね♪」
(こうやってロミーじゃないロミーの記憶をこれからも受け入れていったら…ロミーはどうなっちゃうんだろ?ロミーの記憶はいったいドコに行っちゃうの?)
周りのみんなを助けたい。笑顔にしたい!と願っているロミータだが、このまま別人のロミーの記憶を受け入れることに恐怖も感じているのだった
続く
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