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夢忘れ編

マーマル遊撃隊

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【荒野地帯】
北に【ルナティック大山脈】南に【カルデア森林帯】の中間地点に広がる荒野地帯を歩く3人の女性が居る

「ふむ、妙だな…さっきまで強い魔法力(チカラ)を感じていたのだが……Σ(゜□゜)あっ!!まさか僕の強者の覇気を感じて【認識阻害(ハードゥーン)】を展開したのかな!?」

「そーなのですかー?」

「ぜってぇ違うだろ!なぁにカッコつけてんだよ!!良いのかよ。アタシらがこんな遠方まで足を運んでてさ!」

気さくに話し合う3人。その中で1番背が低く、長い黒髪でメガネとサンバイザーを装備した研究者の様な出で立ちをした彼女が、この3人のリーダーのようだ


「リュウキ。イライラしていても事態は好転しませんよ。それに…戦いというものは常に2手3手先を読んで行動しておくものですよ」
 

「わっかんねーよ!アタシらはマナティートで戦争してるんだぞ!何をどう先読みしたら、こんな遠方まで南下する事になるんだよ!もうマナティートから出ちまうぞ?訳わかんねーんだよ!」

頭部に立派な角を生やし、いかにも魔族の騎士の様な鎧と槍を装備してイライラしているのが【リュウキ・マイラ】

「そーですよーリュウキさん。ほら向こうを見てくださいよー。あんな近くにヴァルファス様の城と、少し左側に陥落させた人間側の物だった城が見えますよー」

ピンク髪で柔らかい口調でホンワカした雰囲気の彼女が【テウ・メッソス】


「あっ!?…馬鹿野郎!アレは蜃気楼ってヤツだよ!実際にあんな近くにある訳じゃねーんだ!」

「そーなんですかー?あんな近くに見えているのにー、不思議ですねー」

「暑すぎるから、そう見えるんだよ!実際にあんな近距離に敵対する城が建ってたら、エライ事になるだろーが!見ろ、アタシのこの汗を!こんな所に居たら肌が焼けちまうよ」
 

「あらあらー大変ですねー。私たちのような若い女性にとって肌荒れは、放置できない問題ですからねー、気を付けてくださいねー」

暑さでずっとイライラしているリュウキに対して涼し気な顔で話しているテウ

「うっせーよ!…てか、ちょっと待て!アタシがこんな暑い思いをしてんのに、どうしてお前らはそんな涼しい顔をしてんだ?おかしいだろ!…はぁはぁ…」

こんな暑い中ずっと叫び続けたリュウキは、喉もカラカラになってきて息切れし始めていた

「ほら飲みなさい。水や食事は摂れる時に摂っておかないと、イザという時にチカラが出ないからね」

「すまねーな。頂くぜ…ゴキュゴキュ…ふぅ…」

マーマルは小さな手提げ袋から水筒を出したが、明らかに手提げ袋の容量を超える水筒が出てきた。普通の手提げ袋ではなく魔法か何かのチカラで、袋の中は異次元収納できるような魔法道具(マジックアイテム)なのだろう


「で!どうして2人はこんな暑いのに汗かいてねーんだ?何か理由があるんだろ?」

人の倍くらいの高さの岩を見付けたリュウキは、その岩を中心に太陽の反対側にある影に隠れるように座った

「先ほど言いました【認識阻害(ハードゥーン)】は知っていますね?その魔法の亜種なのですが【冷暖阻害(クードゥーン)】という結界の中を一定の温度に保つ魔法を掛けていますので…僕は暑さにも寒さにも屈しないのだよ。ぬはははは♬」

「きったねー!何だよその便利な魔法はよ!アタシにも掛けてくれよ!なぁ!」

「嫌ですよ。2倍の魔法力を消費しちゃうから僕が疲れちゃうじゃないか。自分の努力で何とかするものだよ。ねぇテウ?」

暑さが我慢できないリュウキがベタベタ絡んでくるのが、そんなにも嫌だったのか?マーマルはテウに話を振った


「そういやテウも平気な顔してんな…お前はマーマルみたいに器用で便利な魔法は使えなかったよな?どうやってんだ?」

「私は宝石魔獣(カーバンクル)だからねー。このライトブルーの宝石に冷気の魔力を詰め込んであるからー、コレで結界を作って暑さを凌いでいるんだよー♪」
 

「何ぃ!そんな便利な物を持ってるなら早く言えよな!少しで良いからアタシにも貸してくれよ!」

あまりの暑さに、暑さ対策の超便利アイテムが有るのなら自分も欲しいと主張するリュウキ

「貸すのは良いけど…リュウキは魔法石を起動させられるのー?魔力を注がなかったらタダの石ですよー?」

「うがあぁぁぁ!そうだったぁ!アタシは魔法はサッパリなんだよなぁ!って事は…ちくしょー!どうにもなんねーじゃねぇか!」

結局マーマルもテウも別の種類ではあるが、魔法のチカラを駆使して暑さを凌いでいるので…魔法が使えない肉体派のリュウキに、この暑さをどうにかする術(スベ)は無いようだ



【夕方】
荒野地帯を抜けた3人は【カルデア大森林】までやって来た

「リュウキ。あの森の中に入れば日陰がたくさん有りますから…暑さは凌げるハズですよ?」

「それは有り難いけどさ…もう陽は沈むじゃんか!今から荒野地帯も涼しくなる時間じゃんか。だから、あんま意味ねーんだよ!」

ようやく強い陽射しを遮ってくれる森林帯に着いた頃には…まもなく太陽が沈もうとしている時間だった


「それでー、マーマルさん。マナティートで我が軍が若干有利になってきたこの時にー、ワザワザこんな所まで足を伸ばした理由は何なのですかー?」

先ほどリュウキも言っていたがマナティート地方は、彼女らが属する魔族側と人間たちが20年以上も戦争を続けている唯一の場所だ
ようやく長い拮抗状態が崩れ魔族側が有利になったこの時に、マナティートから大きく離れた場所までやって来た理由が分からないテウとリュウキ


「そうだね…説明せねばなるまい!!昨日の夜、僕の魔術が南方より強大な敵がやってくると報せてくれたのさ!だから、柔らかい横腹を突かれる前に可能ならコチラから仕掛けよう!という訳なのさ!」

「はあ?何だよ、その便利な魔法は?…そんなのが本当にあるのなら、この戦争もとっくに終わらせてるんじゃねーのか?」

「ふっ、甘いよリュウキ。戦争はそんな簡単なモノではないんだよ?それに…人間側にも便利な能力を持っているヤツが居るみたいだね…僕のズバ抜けた戦略も何度か阻止されているんだよ…」

「何事もそう上手くはイカない…という事ですねー(笑)」

漫才トリオのような会話をしている3人だが、リーダー格の【マーマル・フラナガン】はヘルメスの街からやって来る猛者たちが【マナティート】に侵攻して来るのを、何らかのチカラで察知していたようだ



続く
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