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夢忘れ編

エリスア様の娘

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【アルバート家】
久しぶりに森林に入った事でかなり元気を取り出したカルーア。彼らは珍しく最近の事について語り合った。難しい話をする訳ではなく、他愛のない会話を楽しんでいた。のんびりとした時間を過ごした6人は家に帰った

サーシャとミルが気を利かせて紅茶の準備をし、甘いお菓子を添えて全員分を提供してくれた。「あっ!そう言えば…」ここで何かに気が付いたカルーア

「どうしてエリスア様が我が家に居るんだい?…また何か世界的な危機でも訪れるのかい?もしかして…わたしを助ける為にかい?」

カルーアもそうだが、サーシャもトール大森林に着くまで惑星神であるエリスアが家に居る理由を知らなかった

いつも元気に振る舞っているサーシャだが、彼女は生みの親の記憶が無い。物心ついた時から奴隷市場に居たからだ。そんな彼女からすれば、エリスア様こそが母親と呼べる唯一の相手だった(惑星神ではあるが)

「お母さまがカルーアお姉さまを治す方法を、教えに来てくれたんですの♪それと、家族というものを味わいたいらしいですの」
 

「へぇ…そうなんだ。有難うございます!エリスア様…けど…それが本当の理由なんですか?」

「えっ!?カルーア、それは…」
「どういう意味ですの?」

突然カルーアが、エリスア様が降臨された理由に疑問の言葉を吐いたので、ヒイロとサーシャは驚いた…しかし、エリスア様は笑った

「クスクス。面白いですねカルーア…どうしてそう思ったのですか?貴女の疑問に興味があります」

まるでエリスア様はカルーアの考えを試すような、笑いを抑えた感じの表情で聞き返した

「だってさ、前にエリスア様本人が言っていたじゃないか。惑星神である自分は、星に住む者たちに災いが起きたとしても滅多に介入する訳にはイカない!って…」

カルーアからすれば、エリスア様の来訪により生命の危機を救われた形なのだが…彼女は何か腑に落ちないモノを感じているようだ

「わたしが仮に死んだとしても…その運命を変える手立てを知っていたとしても…基本的には力添え出来ないキマリがあるんでしょ?」

「あっ!」X3

「賢いですねカルーアは。その通りです。惑星神である私が、個人的に1生命体に肩入れする事は…神々の協定で強く禁止されています。まぁ、家族の絆(キズナ)を味わってみたい。と言うのは本心ですけどね…」

「でも、それだけじゃあ…惑星神エリスア様が動いて良い理由には到底ならないよね…」

「確かにな。この星の全ての生物の母であるエリスア様が、限定された者たちに肩入れし過ぎるのは公平性を欠くよな…」

カルーアとヒイロの言葉に静まり返るキッチン内…しばらくの静寂の後、エリスア様は手を叩きながら立ち上がった

「カルーアは私から見ても驚くほど強い魔法使いに成長しましたが、頭の良さもソレに引けを取りませんね。良いでしょう。理由は他にあと2つ有ります。ひとつは我が娘サーシャの事です」

「サーシャの事ですの?」

サーシャは、まさか自分が理由だとは思わなかったので驚いた。エリスア様は、サーシャの頭部に軽く手のひらをあてた

「やはり…サーシャ。天使族の能力(チカラ)をかなり酷使しましたね。体内に深刻なマナの乱れが生じています…このままでは長く生きられないかも知れません」

エリスア様の言葉に全員が驚いた
中でもコハラコが1番取り乱した

「やなノ!やなノ!サーシャママが死んじゃやなノ!!」

サーシャを母親の様に慕うコハラコからすれば、サーシャに命の危機が訪れているなど我慢出来るハズがない

「そうか!確かにそうだ。俺たちは…いや、サーシャが天使族だと知るみんなは、やっぱり…心の中で「とんでもなく高い回復魔法を使えるサーシャが居るから、最悪何があっても大丈夫だろう」と考えてしまっているよな…クラウン城での武闘会でも、その後のファルバァス討伐戦でも致命傷の回復を、ほとんどサーシャ1人に丸投げしていたからな…済まないサーシャ…」

「いえ…サーシャは別に…良いんですの」

ヒイロは思い返してみれば、口では何だかんだ言ってても結局はサーシャを頼っている。この前もサーシャを頼った。その見返りとして彼女を抱いたのだが…それでサーシャの負担や疲労が回復する訳ではない。ソレは少し考えれば容易に分かることだ


「ヒイロの言う通りなのですが…まぁ、目の前にズバ抜けた魔法力(チカラ)の持ち主が居れば、ソレに頼りたくなるのは仕方の無いことでしょうね。そこで今回サーシャの身体をいっそ、私に近いモノに変えに来ました、皆さん。私とサーシャを2人きりにしてもらえませんか?それと個室の提供をお願いします」

ヒイロは1番新しく増室した客室へと、エリスア様とサーシャに使って貰うことにした。ソレから約30分後…


「ガチャ」
静かにドアが開いた

「あ、あの…何だかサーシャ…おかしくないですの?ずいぶん見た目が変わった気がしますの…」
  

「マジか!?可愛いぞ!」
「本当にサーシャなのかい?」
「ママ。綺麗なノ…」
「サーシャさん。素敵です…」

かなり雰囲気が変わったサーシャに、ヒイロもカルーアも、コハラコもミルも度肝を抜かれていた

イタズラ好きな少女がまるで、良いところの貴族のお嬢様の様に変身したようなサーシャが、皆の前で顔を赤く染めながらモジモジしている姿はまるで別人の様だった

来訪した1つの理由を果たしたエリスア様。果たして、もう1つの理由とは?



続く
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