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アリス IN 異世界日本
故郷からの刺客
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【帰り道】
本当に仲良くなって、まるで恋人の様に見えるアリスと佐々木。ソレを離れた場所から見ていても、まだアリスへの未練を断ち切れない宗一郎に流石に優香は我慢の限界を迎えた
「もうイイ!私、1人で帰るから!」
宗一郎と反対方向に歩き出した途端、優香は何者かとぶつかり後ろへ転倒した。謝りながら顔を上げた彼女が見た者は…人ならざる者だった
「きゃあああ!?」
「優香っ!?」
ただ事ではない優香の悲鳴に、すぐさま彼女の元に走り寄る宗一郎。彼女の叫び声は少し離れたアリスにも届いていた
「お兄ちゃん、いま優香ちゃんの悲鳴が聞こえたよね?」
「あぁ、向こうだと思うぞ!」
……………………………………………
「何だコイツは!?」
宗一郎と優香が見た者は、2メートル半弱の身長で半分が牛、半分が人型の形をした化け物だった
「グモオォ!!」
ソイツは牛とは違い、後ろ脚の2本の脚で立っている。まるで落ちている餌を拾うかの様に優香の頭に手を伸ばしてきた
「やめろっ!」
宗一郎は近くに落ちていた手頃なサイズの石を拾い、ウシ男の頭部にぶつけた
「グモっ!?」
渾身のチカラで投げた石を頭部に受けたウシ男だが、「何かが当たったかな?」そんな程度のリアクションだった
「パッパッー!!」
石を当てられ手が止まったウシ男が宗一郎の方を見た時、彼らの背後にいる1台の車がけたたましくクラクションを鳴らした
【スポーツカー車内】
「ねえ、まさし~。なんか道の真ん中に人が居ない?」
「ガキどもと……着ぐるみかぁ?路上撮影でもしてんのかよ?」
「トイレ我慢ツラいし~、早く行きたいんよね~」
「待ってろ、退(ど)かしてくっから!」
いかにも若者ウケなスポーツカーから降りた地元らしい体格に自信のありそうな兄さんが、優香達の方に近付いてきた
「公道で何遊んでやがんだ?邪魔だろがボケぇ!…テメェだよ!…何とか言えやコラぁ!」
その兄さんが迂闊にウシ男の腰の上辺りを、背後から蹴り入れた!
「馬鹿っ!危ないから逃げろ!」
「誰が馬鹿だ!?舐めてんのかテメェ!」
ウシ男を着ぐるみと思っている兄さんに、宗一郎の言葉は届かなかった…もう、手遅れだった
「グモオォォ!」
蹴られたウシ男が、振り向きざまに肘打ちを入れる感じで、兄さんの胸辺りを強打した
「ゲブバッ!」
見知らぬ兄さんはその一撃で吹き飛ばされ、自分のスポーツカーのフロントガラスに直撃し、全身痙攣した後…動かなくなった
「お姉さん、逃げるんだっ!」
「Σ(||゚Д゚)ヒィィィィ!?」
宗一郎はスポーツカーの助手席に座っている見知らぬお姉さんにも避難を助言したが…その女は驚愕の光景に声も出せず泣きながら脅えていて動けなかった
「グモオォ…」
ウシ男は餌を見知らぬお姉さんに定め、彼女の方へノシノシ歩きだした
「みんな下がってぇ!コイツはアタシに任せてぇ!!」
走って来たアリスが、袋に入れて持ち歩いていた袋から、師範代からもらっていた護身刀を取り出しウシ男の背中を強打した
「バキィィン!!…グモオォォッ!?」
アリスは師範代を気絶させるくらいのチカラを込めて、本気でウシ男を強打したのだが…
「えっ!?」
確かに痛そうな素振りをしたウシ男だが、その場に倒れる訳でもなくアリスの方に向き直った
「グモオォ!」
ウシ男は右手でアリスを殴ろうとした。「ギイィン!」護身刀で切り払おうとしたが…ウシ男のチカラは凄まじかった
「嘘ぉ!?押し返される!」
チカラ負けしているアリスは、獣族(ヴォィドルフ)化しようとしたが…それをすると、せっかく佐々木が買ってくれた可愛い洋服が、破れてしまうので思いとどまった
「もう!アタシ怒ったんだからねぇ!氷結(アイスクル)!」
「グモオ!?」
アリスは氷結のチカラを護身刀に走らせ、ウシ男の右手を肘まで凍らせた!未知の攻撃に驚いたウシ男はアリスを警戒し、元来た山の中へ逃げて行った
「はぁはぁ…大丈夫か、アリスちゃん?」
「う、うん。アタシは大丈夫だよぉ」
ようやく追い付いた佐々木が、辺りを見渡した。車に叩き付けられたスポーツカーの兄さんが重症だ。佐々木は携帯電話で、救急車を呼んだ
【現場検証】
「だぁかーらぁ、おっきなウシさんが「グモオォォ!」って男の人をねぇ…」
駆け付けた警察が、スポーツカーのドライバーに致命傷を負わせた者の特徴をアリスから聞こうとしている
しかし、ウシの怪人が現れて人間を襲った!…なんて話を警察官が容易く信じてくれるハズもなかった
「ご苦労様です。やぁアリスちゃん、大変だったらしいね」
「あっ!師範代!…ねぇ、この人達アタシの話を信じてくれないんだよォ…」
「そうか、後は私が話をしておくから、佐々木君は彼女達を乗せて先に帰ってくれ」
「分かりました!お先に失礼します」
「ちょっと!勝手に帰られたら…」
警察官が帰ろうとするアリスを捕まえようとしたが、師範代が割って入って阻止した
「落ち着きたまえ!おそらく彼女は君たちに全てを話している。これ以上聞いても、新しい話は出てこないぞ」
「まぁそうだろうよ、君たちはもう帰って良いよ。後は私が引き継ごう」
応援で到着したパトカーから降りた男は、警官達の上司の様だ。アリスに職質していた若い警官たちを帰らせた
「お久しぶりですね沖田さん。今は道場の師範代をしてるそうですね~」
「久しいな。警察官がだいぶ板に付いてるじゃないか!」
警察官の上司らしいその男は、師範代と親しい間柄の様だ
「おそらく今回の犯人だが、最近この辺で家畜を襲う異形の者だと思うんだが…」
「マジでか?あの事件って人間が犯人じゃない!って話は本当だったのか…」
どうやら伊勢市や志摩市で最近、家畜を荒らす異形の者が目撃されているらしい。アリス達を襲ったのは、おそらく同一犯だろう。というのが師範代の予想だった
【佐々木が運転する車内】
「大変だったね…アリスちゃん?」
普通の女の子なら、こんな事件に遭遇したら恐怖で青ざめている頃だろう。後ろの席に居る優香の様に。だが、アリスは怯えてなどはなく…普段は魅せない戦闘モードの鋭い目付きをしていた
「アイツ…故郷に居るヴォィドルフと同じ様な匂いがしたんだぁ…」
アリスはウシ男と戦った時に思い出したヴォイドゥルフから、故郷の事を想い遠い目をしていた
続く
本当に仲良くなって、まるで恋人の様に見えるアリスと佐々木。ソレを離れた場所から見ていても、まだアリスへの未練を断ち切れない宗一郎に流石に優香は我慢の限界を迎えた
「もうイイ!私、1人で帰るから!」
宗一郎と反対方向に歩き出した途端、優香は何者かとぶつかり後ろへ転倒した。謝りながら顔を上げた彼女が見た者は…人ならざる者だった
「きゃあああ!?」
「優香っ!?」
ただ事ではない優香の悲鳴に、すぐさま彼女の元に走り寄る宗一郎。彼女の叫び声は少し離れたアリスにも届いていた
「お兄ちゃん、いま優香ちゃんの悲鳴が聞こえたよね?」
「あぁ、向こうだと思うぞ!」
……………………………………………
「何だコイツは!?」
宗一郎と優香が見た者は、2メートル半弱の身長で半分が牛、半分が人型の形をした化け物だった
「グモオォ!!」
ソイツは牛とは違い、後ろ脚の2本の脚で立っている。まるで落ちている餌を拾うかの様に優香の頭に手を伸ばしてきた
「やめろっ!」
宗一郎は近くに落ちていた手頃なサイズの石を拾い、ウシ男の頭部にぶつけた
「グモっ!?」
渾身のチカラで投げた石を頭部に受けたウシ男だが、「何かが当たったかな?」そんな程度のリアクションだった
「パッパッー!!」
石を当てられ手が止まったウシ男が宗一郎の方を見た時、彼らの背後にいる1台の車がけたたましくクラクションを鳴らした
【スポーツカー車内】
「ねえ、まさし~。なんか道の真ん中に人が居ない?」
「ガキどもと……着ぐるみかぁ?路上撮影でもしてんのかよ?」
「トイレ我慢ツラいし~、早く行きたいんよね~」
「待ってろ、退(ど)かしてくっから!」
いかにも若者ウケなスポーツカーから降りた地元らしい体格に自信のありそうな兄さんが、優香達の方に近付いてきた
「公道で何遊んでやがんだ?邪魔だろがボケぇ!…テメェだよ!…何とか言えやコラぁ!」
その兄さんが迂闊にウシ男の腰の上辺りを、背後から蹴り入れた!
「馬鹿っ!危ないから逃げろ!」
「誰が馬鹿だ!?舐めてんのかテメェ!」
ウシ男を着ぐるみと思っている兄さんに、宗一郎の言葉は届かなかった…もう、手遅れだった
「グモオォォ!」
蹴られたウシ男が、振り向きざまに肘打ちを入れる感じで、兄さんの胸辺りを強打した
「ゲブバッ!」
見知らぬ兄さんはその一撃で吹き飛ばされ、自分のスポーツカーのフロントガラスに直撃し、全身痙攣した後…動かなくなった
「お姉さん、逃げるんだっ!」
「Σ(||゚Д゚)ヒィィィィ!?」
宗一郎はスポーツカーの助手席に座っている見知らぬお姉さんにも避難を助言したが…その女は驚愕の光景に声も出せず泣きながら脅えていて動けなかった
「グモオォ…」
ウシ男は餌を見知らぬお姉さんに定め、彼女の方へノシノシ歩きだした
「みんな下がってぇ!コイツはアタシに任せてぇ!!」
走って来たアリスが、袋に入れて持ち歩いていた袋から、師範代からもらっていた護身刀を取り出しウシ男の背中を強打した
「バキィィン!!…グモオォォッ!?」
アリスは師範代を気絶させるくらいのチカラを込めて、本気でウシ男を強打したのだが…
「えっ!?」
確かに痛そうな素振りをしたウシ男だが、その場に倒れる訳でもなくアリスの方に向き直った
「グモオォ!」
ウシ男は右手でアリスを殴ろうとした。「ギイィン!」護身刀で切り払おうとしたが…ウシ男のチカラは凄まじかった
「嘘ぉ!?押し返される!」
チカラ負けしているアリスは、獣族(ヴォィドルフ)化しようとしたが…それをすると、せっかく佐々木が買ってくれた可愛い洋服が、破れてしまうので思いとどまった
「もう!アタシ怒ったんだからねぇ!氷結(アイスクル)!」
「グモオ!?」
アリスは氷結のチカラを護身刀に走らせ、ウシ男の右手を肘まで凍らせた!未知の攻撃に驚いたウシ男はアリスを警戒し、元来た山の中へ逃げて行った
「はぁはぁ…大丈夫か、アリスちゃん?」
「う、うん。アタシは大丈夫だよぉ」
ようやく追い付いた佐々木が、辺りを見渡した。車に叩き付けられたスポーツカーの兄さんが重症だ。佐々木は携帯電話で、救急車を呼んだ
【現場検証】
「だぁかーらぁ、おっきなウシさんが「グモオォォ!」って男の人をねぇ…」
駆け付けた警察が、スポーツカーのドライバーに致命傷を負わせた者の特徴をアリスから聞こうとしている
しかし、ウシの怪人が現れて人間を襲った!…なんて話を警察官が容易く信じてくれるハズもなかった
「ご苦労様です。やぁアリスちゃん、大変だったらしいね」
「あっ!師範代!…ねぇ、この人達アタシの話を信じてくれないんだよォ…」
「そうか、後は私が話をしておくから、佐々木君は彼女達を乗せて先に帰ってくれ」
「分かりました!お先に失礼します」
「ちょっと!勝手に帰られたら…」
警察官が帰ろうとするアリスを捕まえようとしたが、師範代が割って入って阻止した
「落ち着きたまえ!おそらく彼女は君たちに全てを話している。これ以上聞いても、新しい話は出てこないぞ」
「まぁそうだろうよ、君たちはもう帰って良いよ。後は私が引き継ごう」
応援で到着したパトカーから降りた男は、警官達の上司の様だ。アリスに職質していた若い警官たちを帰らせた
「お久しぶりですね沖田さん。今は道場の師範代をしてるそうですね~」
「久しいな。警察官がだいぶ板に付いてるじゃないか!」
警察官の上司らしいその男は、師範代と親しい間柄の様だ
「おそらく今回の犯人だが、最近この辺で家畜を襲う異形の者だと思うんだが…」
「マジでか?あの事件って人間が犯人じゃない!って話は本当だったのか…」
どうやら伊勢市や志摩市で最近、家畜を荒らす異形の者が目撃されているらしい。アリス達を襲ったのは、おそらく同一犯だろう。というのが師範代の予想だった
【佐々木が運転する車内】
「大変だったね…アリスちゃん?」
普通の女の子なら、こんな事件に遭遇したら恐怖で青ざめている頃だろう。後ろの席に居る優香の様に。だが、アリスは怯えてなどはなく…普段は魅せない戦闘モードの鋭い目付きをしていた
「アイツ…故郷に居るヴォィドルフと同じ様な匂いがしたんだぁ…」
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続く
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