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イシス王国&ドルイド王国編

ロマンチック・チャンス

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【工房の裏庭】
馬小屋の横にベンチのある裏庭がある。ソコに腰掛けたヒイロとシャルル

(……あ、あれ?そう言えば…ヒイロと2人っきりになったのって何時以来?…どうしよう…何を話せば良いか分からない…)

街中で偶然会って会話する程度はあったが、こんなに落ち着いた状況でヒイロと2人きりになったのが久しぶり過ぎて、何を話せば良いのかシャルルは困っていた。ふと彼の顔を見ると、ヒイロは庭の奥を見ている

「どうかしたの?」

「あ!すまない…向こうに2本の木が見えるか?左右の木に2本のロープが掛かっているだろ?アレはバランスの悪いアリスの特訓の為に作ったんだ
向こうの木にぶら下げた木の板は、カルーアの弓の練習用に急ごしらえで用意したんだ
サーシャは……毎日の様に食事を作ってくれるから、彼女の為に女性用の包丁とか買いに行ったなぁ…」

「……もしかして、寂しいの?」

「……まぁな」

ヒイロは半年前の父親とそのパーティ仲間が突然全滅した翌日から、毎日生活を共にした三姉妹が、こんなに長く留守にする日が来る事を予想していなかった様だ

「あのさ、ヒイロ…あの娘達が帰ってくるまで…その…私が相手になってあげようか?」

「…良いのか?」

「うん、もちろんよ…って言うか!最近お姉ちゃんとガルダンさんが仲良すぎてさ、毎日見せつけられて堪らないのよ!」

「そうだ!晩飯も食べていかないか?ミルもサーシャには少し及ばないが、かなり美味しいのを作ってくれる
そうだ!ソコに池があるだろ?日が沈むと今の季節限定だけど、水草蟲が集まって背中を薄ら光らせて幻想的な綺麗さなんだぜ」

「へ~そうなの?…うん!良いわね」
(そうだわ!水草蟲を眺めてロマンチックな話のひとつでもして、良い雰囲気になったら……せめて、Kissくらいは狙ってみせるわ!)

シャルルは鼻息荒く日が沈むのを心待ちにし、その事に関する話題を続けた

「そんなに楽しみなのか?」

「えぇ、もちろん!ヒイロと一緒に見たいわ」



【サメ焼き屋】
「さて、今日はもう少ししたら店閉めるニャ」

「最近あまり売れないニャン…」

「やっぱりアレね。アレクス城攻略戦に参加した冒険者、凄く多かったけど…負けちゃったからね~」

「負けると勝つより厳しいニャン?」

妹のキャルトは戦争には疎(うと)い様だ

「そりゃーニャ、買ったら褒美がたんまり貰えるニャ。けれど負けたら、雇用した側もそんなに払えないニャ」

「けど参加した冒険者の経費は変わらないんだよね。武具の修理代も同じく掛かるからね」

「それで、みんな節約して外食とかを抑えたりするから、ウチの売れ行きも下がるニャ!」

戦に負けた側のサイフが厳しくなる事情を、キャルトに丁寧に説明する姉のグレイスとアルバイトのテルア


「分かったニャン!でも、勝っても負けてもヒイロさんとこは儲かってる筈ニャン。ウチにも…もっと買いに来て欲しいニャン…」

「三姉妹が留守だから、仕方ないニャ」

ようやくキャルトは売り上げが落ちている原因を理解した。が、三姉妹が留守というワードにテルアが反応した

「Σ(°꒫°๑)えっ!?ヒイロのとこ、今は三姉妹たち居ないの?」

「ニャんでも長女がイシスの方で見つかったらしいから、妹たちは迎えに出たらしいニャ。ヒイロはミルと2人で居る筈ニャ」

(3ヶ月前に彼(ヒイロ)に抱かれて、種が着いたばかりの赤ん坊を【渇望の魔女】に取られてから、ヒイロに迫ってなかったわ…彼がおんな日照りしてる今なら…)

「あっ!ちょっと私ヒイロの所に顔出ししてくるから、しばらくお店お願いするわね!」

「(꒪ꇴ꒪;)ええ!?ちょっと、急には困るニャ!」

「もう、行ってしまったニャン…」

普段はサボることなく真面目に働いてくれるテルアだが、たまに何かあった時、強引に行動するテルア



【夕方の工房】
「ふぅ、美味しかったぁ!ミル君て本当に料理上手なのね。男の子なのに凄いわ!」

「あ、ありがとう…ございます…えへ」

ミルは久しぶりの客人がいるので頑張って振る舞った晩御飯を褒められて、嬉しそうにしている

「もう、そろそろ日も落ちる。中庭に水草蟲を見に行こうか?」

「そ、そうね。楽しみだわ♪」



【中庭】
「もうすぐ夏だなぁ…そろそろ夕方になると蚊が出る頃かな?カルーアが居てくれたら、虫除けの結界とか張ってくれるんだが…」

「虫除けの結界?それくらいなら、私だって張れるわよ………ほら!」

思いがけず聞かされた「カルーア」の名前に、無意識に芽生えた対抗意識から結界魔法を使ったシャルル。彼女は首に掛けたネックレスを触る

「おっ、ソレしてくれてるのか?」

「あ、当たり前でしょ!誕生日に…その、ヒイロがプレゼントしてくれたんだから…大事に使わせてもらってるわよ…」

こういう女性の変化に、割と気が付いてくれるのがヒイロの良いところだ。ソレを似合ってると言われて喜ぶシャルル。彼女は「こんなロマンチックなチャンス。次は無いわ!」と覚悟した

「本当…綺麗ね……あのね、ヒイロ…」
 

そう言って目を閉じ、顔をヒイロに向けて唇を近付けた

「シャルル…」

数ヶ月前まで女を知らなかったヒイロでも、流石にシャルルが何を意図しての行動なのか?理解したようだ。中庭の小さな池の周りに、水草蟲が背中を光らせて舞っている中、沈黙しても見つめ合う年頃の男女。なかなかに良いムードだ
ヒイロもシャルルの自分への好意を、それなりには理解している。彼女の肩を優しく掴むと、ビクッと跳ねたシャルルが「ヒイロ」と呟き、更に顔を近付けた。が…

「こんばんは、お2人さん。ナニしてるの?」

予想外の方向から声を掛けられ、思わず離れた2人。声の主はテルアだった

「えーと、偶然街中で出会ってね…夕飯をご馳走になって、池の水草蟲を見てただけよ…」

「そ、そーなんだよ(汗)」

2人はまさか、ここに客人が来るとは思って無かったのでかなり焦っている

「へ~、まるでKissでもするのかと思ったわ」

「んが!?あ、アナタ…ずっと見てたの?」

「えぇ、ペンダント握りしめて、顔を近付けた辺りからね」

「ヽ(`Д´#)ノ ムカー!知っててからかったのね!」

からかわれたシャルルは、顔を真っ赤にして怒っている。ニヤニヤと見下ろすテルア

「もしかして、同居人の三姉妹の居ない隙を狙って、ヒイロにアプローチしに来たのかな?」

「な!…そんな事、貴方には関係ないでしょ!貴方はヒイロの何なのよ!?」

(テルア~あんま余分な事は言わないでくれ~、頼むから~)

テルアはやると決めたら、とことんヤル女だとヒイロは知っていた。ましてや、ヒイロは遺跡跡でテルアと決闘した後に彼女と合体している

「まぁ、私は彼に1度抱かれた程度の女よ。そんなに気にしないで良いわ(笑)」

「∑(๑ºдº๑)!!な、何ですってぇ!」

「言うんかい!!」

合体した事を三姉妹たちに言わないで欲しい
と言う約束を守る。と言ってくれたテルアだったが…それ以外の者にも言わない。とは約束していなかった



続く
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