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夜の刃
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【鈴鹿記念病院】
文化祭も終わりが近かった時に、父親からの電話で母親が車に轢かれたと聞き慌ててタクシーを捕まえて、母親が運ばれたという病院までやって来たロミータ
「はぁはぁ…301号室…ここね。ガチャ…」
受付けで名前を言い母親が居る部屋の番号を聞いたロミータ。「病院内は走らない」というマナーは当然、知っているが小走りせずにはいられなかった
「来たわねロミー。待ってたわよ」
ドアを開け中に入ろうとしたロミータが最初に目にしたのは、親友の立華 梨香だった
「梨香、来てくれてたのね。あ、ママの具合はどうなの?」
「落ち着きなさいロミー。左足を骨折したけど、レントゲン検査では他に異常はないそうよ。叔母様は今、寝ています」
「そうなの?…はぁはぁ…良かったわ…」
ロミータが部屋の奥に目を向けると…ベッドの上で包帯に巻かれた左足を、吊り下げられた格好で寝ている母親の姿があった
「sorryロミー。一緒に歩いていた時に、飛び出した犬を避けた乗用車が突っ込んできてね。ママが轢かれたのを目の前で見て、興奮して電話してしまったよ…」
「ε٩(๑>ω<)۶зもう!パパが切羽詰まったような言い方するから、ママの生命が危険なのかも?って心配しちゃったじゃないのっ!!」
「本当にすまない…」
目の前で奥さんが轢かれた瞬間を目撃したロミータのパパは、かなり焦っていたようで報告の際に、かなり過剰な説明をしてしまったようだ
「ママ…ふぅ、どうやら大した事はなさそうね」
ベッドで静かに寝息をたてている母親の安らかな表情を見たロミータは、本当に大した事故ではなかった事を確認し安堵した
「そう言えばロミー。亜沙美ちゃんはどうしたの?一緒じゃないのですか?」
「亜沙美はボイトレがあるから1人で行ってるわ。亜沙美の家からも、大して遠くないから問題無いと思うわ」
「でも、もう遅い時間ですし連絡はしておいた方が良いんじゃないかしら?」
「…まだトレーニング中かも知れないから、一応メールを打っておくわ」
ボイトレの先生は、亜沙美とロミータがブイチューバーをしていて、約1ヶ月後のカウントダウンライブに2人が参加する事まで知っている。そして、そんな大舞台に出場して歌を唄うには亜沙美の唄声は、まだまだ未熟なのでトレーニングが長引いている可能性を考慮したようだ
「しかし、万が一のことも有り得るし、電話のお詫びもしたいからパパが彼女の家まで送って行こう。梨香さん。それまでママの事をお願いしても良いかな?」
「全然平気ですよ。私も父が迎えに来てくれますので、ロミーを送ってあげてください」
ロミータのパパは、奥さんへの付き添いを梨香に託し娘を竹取家まで送ることにした
【乗用車の中】
「おかしいわ…亜沙美からの返信が来ない。ボイトレが長引いてるのかな?」
間もなく、ボイトレが終了するハズの時間から1時間が経過しようとしている。にも関わらず、亜沙美からメールの返事が来ないことに不安を感じているロミータ
「こんなにトレーニングが長引くのは珍しいのかい?」
「うん…最終のバスの時間があるから、延長は1時間するのが限界なんだけど…」
昔、一発屋と呼ばれはしたが、コンスタントに歌がヒットしている平戸が経営している歌唱教室の近くにあるバス停から、竹取家に向かうバスは22時過ぎのが最終である
19時から2時間がトレーニング時間なので、1時間延長するとバスの時間がギリギリ間に合うくらいだ
ロミータのスマホには、21:58と表記されていた。そんな時間にも関わらず、送ったメールに返事が来ない。亜沙美の事がいよいよ本気で心配になってきた
【夜のバス停】
「あ、貴方は誰ですかぁ?亜沙美に何の用事です?」
亜沙美は歳の近そうな男子に押され、バス停に設置されているイスに座っていた
「隣のクラスの中川ってもんだ。竹取さんは凄く可愛い。今日の文化祭でのコスプレ姿が可愛い過ぎて…もう我慢出来ないんだ!太一から聞いている。付き合ってる男は居ないんだろう?」
運動系の部活に所属しているかのような肉付きの良い体格をしている男に、見下ろされている亜沙美
「太一君のクラスの?…でも、ごめんなさい。私、今は打ち込んでいる事があって誰かと付き合うとか考える暇はないの…」
「くっ…プルプル…」
亜沙美は中川という男の強引な態度に恐怖を感じていたが…今までのロミータとの同居生活や、コンプリに所属してからの配信者生活での経験で、前よりハッキリモノを言えるようになったので、彼の告白に断りを入れる事が出来た
「やっぱりか…」
「何がですか?」
「あのイングランド人のアナメルって女と同棲してて、百合カップルだって噂が本当なんだな。って事だよ!」
中川という男は亜沙美に断られた理由が、今本人から聞かされた通りではなく、彼女がロミータと付き合っているから断られたと考えたようだ
「ち、違うよぉ。一緒にご飯たべたり、お風呂に入ったりはするけど…カップルではないんだよぉ…」
本当のところは…ロミータから告白されてはいるものの、亜沙美自身は同性同士での付き合いをまだ完全には受け入れられていない。だから嘘は言っていないのだが…
「もう…どっちでもいいよ」
そう言うと男はバス停の内門にスマホを設定し、録画ボタンを押した
「な、ナニするのぉ?」
男の静かに覚悟を決めたような顔付きに、恐怖を覚えた亜沙美
「今からキミを抱くよ。その様子を録画させてもらう。キミが俺と付き合うのを拒むんなら、その動画を拡散させてもらうよ」
「えっ!?…そ、そんなの駄目だよぉ!」
「知るもんか!俺は生まれて初めて女の子に告白したんだぞ!ソレをアッサリ断られて大人しく引き下がれるかよっ!」
どうやら男は短絡的にモノを考える性格のようで、亜沙美に対して強行策に出たようだ
「ガシッ!い、嫌だぁ。やめてよォ!」
そんな大音量でもなかったが、亜沙美は勇気を出して声を張り上げた
「残念だけど…周囲に全く人が居ないことはサッキ確かめてある。誰も助けに来てくれないよ」
「嫌だァ!…誰か助けてぇ……服部さーん!」
制服の上着に手を掛けられた亜沙美は、誰かに見付けてもらおうと声を出した時、今まで何回か助けてもらった服部の名前を口にした
「服部?まさか…あの服部先輩か?空手大会で県大会優勝したっていう…」
服部は過去、腕試しを兼ねて空手部に所属した事がある。スグに訪れた県大会に出場し、スムーズに優勝を決めたのだが…自分の強さが確認できた服部は、周囲の期待の声を無視して全国大会への参加を拒否した過去がある
「まさか…付き合っているのは服部先輩か?……けどな、俺に抱かれた動画さえありゃ、どんだけ先輩が怖くても関係ねーぜ!」
服部が桁外れに強い!という事は全校生徒の周知の事実である。本来なら彼に目を付けられるような事をする馬鹿な者は、あの学校には存在しないのだが…
初めての告白を断られヤケになっている中川は、自分に抱かれた動画で脅せば何とかなる!と亜沙美を襲う覚悟を決めた
「ブチブチ…やだァ、やだー!」
上着を肘まで下げられ、シャツのボタンを強引にちぎられ前を開けられた亜沙美。あまりの恐怖に涙を流したその時!
「ガッ!…ドサッ…」
「か弱い少女を力ずくで抱こうとするなんて、男として恥ずかしいとは思わないのですか?」
中川という男は、背後から後頭部に強烈な一撃を入れられた。本人は誰に何をされたのかも分からずに、亜沙美の横に倒れて気絶した
「え?…あ、茜ちゃん?」
中川に襲われる!?と恐怖した亜沙美は、閉じていた目を恐る恐る開けると…目の前にはいつも全然違う服装に身を包んだ、服部の妹である茜が立っていた
「こんな時間に1人で歩いてたら駄目ですよ。誰かに襲って欲しいのですか?」
「え、えぇ!?」
以前、伊賀の服部家が経営する温泉旅館に行く時に、一緒に同行してくれた時の彼女とは全く違う服装と、全く違う物言いをする茜の毅然とした態度に戸惑う亜沙美
「ブロロロ…」
「どうやらバスが来たようですね。あまり、この姿で人目に付くのは遠慮したいので、これにて失礼致します」
「あ、あの…」
礼を言おうとした亜沙美だが、バスが近付いてくる音を聞いた茜は、仕事装束に身を包んでいる姿を人に見られたくないので、足速に夜の闇へと消えて行った
続く
文化祭も終わりが近かった時に、父親からの電話で母親が車に轢かれたと聞き慌ててタクシーを捕まえて、母親が運ばれたという病院までやって来たロミータ
「はぁはぁ…301号室…ここね。ガチャ…」
受付けで名前を言い母親が居る部屋の番号を聞いたロミータ。「病院内は走らない」というマナーは当然、知っているが小走りせずにはいられなかった
「来たわねロミー。待ってたわよ」
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「梨香、来てくれてたのね。あ、ママの具合はどうなの?」
「落ち着きなさいロミー。左足を骨折したけど、レントゲン検査では他に異常はないそうよ。叔母様は今、寝ています」
「そうなの?…はぁはぁ…良かったわ…」
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「sorryロミー。一緒に歩いていた時に、飛び出した犬を避けた乗用車が突っ込んできてね。ママが轢かれたのを目の前で見て、興奮して電話してしまったよ…」
「ε٩(๑>ω<)۶зもう!パパが切羽詰まったような言い方するから、ママの生命が危険なのかも?って心配しちゃったじゃないのっ!!」
「本当にすまない…」
目の前で奥さんが轢かれた瞬間を目撃したロミータのパパは、かなり焦っていたようで報告の際に、かなり過剰な説明をしてしまったようだ
「ママ…ふぅ、どうやら大した事はなさそうね」
ベッドで静かに寝息をたてている母親の安らかな表情を見たロミータは、本当に大した事故ではなかった事を確認し安堵した
「そう言えばロミー。亜沙美ちゃんはどうしたの?一緒じゃないのですか?」
「亜沙美はボイトレがあるから1人で行ってるわ。亜沙美の家からも、大して遠くないから問題無いと思うわ」
「でも、もう遅い時間ですし連絡はしておいた方が良いんじゃないかしら?」
「…まだトレーニング中かも知れないから、一応メールを打っておくわ」
ボイトレの先生は、亜沙美とロミータがブイチューバーをしていて、約1ヶ月後のカウントダウンライブに2人が参加する事まで知っている。そして、そんな大舞台に出場して歌を唄うには亜沙美の唄声は、まだまだ未熟なのでトレーニングが長引いている可能性を考慮したようだ
「しかし、万が一のことも有り得るし、電話のお詫びもしたいからパパが彼女の家まで送って行こう。梨香さん。それまでママの事をお願いしても良いかな?」
「全然平気ですよ。私も父が迎えに来てくれますので、ロミーを送ってあげてください」
ロミータのパパは、奥さんへの付き添いを梨香に託し娘を竹取家まで送ることにした
【乗用車の中】
「おかしいわ…亜沙美からの返信が来ない。ボイトレが長引いてるのかな?」
間もなく、ボイトレが終了するハズの時間から1時間が経過しようとしている。にも関わらず、亜沙美からメールの返事が来ないことに不安を感じているロミータ
「こんなにトレーニングが長引くのは珍しいのかい?」
「うん…最終のバスの時間があるから、延長は1時間するのが限界なんだけど…」
昔、一発屋と呼ばれはしたが、コンスタントに歌がヒットしている平戸が経営している歌唱教室の近くにあるバス停から、竹取家に向かうバスは22時過ぎのが最終である
19時から2時間がトレーニング時間なので、1時間延長するとバスの時間がギリギリ間に合うくらいだ
ロミータのスマホには、21:58と表記されていた。そんな時間にも関わらず、送ったメールに返事が来ない。亜沙美の事がいよいよ本気で心配になってきた
【夜のバス停】
「あ、貴方は誰ですかぁ?亜沙美に何の用事です?」
亜沙美は歳の近そうな男子に押され、バス停に設置されているイスに座っていた
「隣のクラスの中川ってもんだ。竹取さんは凄く可愛い。今日の文化祭でのコスプレ姿が可愛い過ぎて…もう我慢出来ないんだ!太一から聞いている。付き合ってる男は居ないんだろう?」
運動系の部活に所属しているかのような肉付きの良い体格をしている男に、見下ろされている亜沙美
「太一君のクラスの?…でも、ごめんなさい。私、今は打ち込んでいる事があって誰かと付き合うとか考える暇はないの…」
「くっ…プルプル…」
亜沙美は中川という男の強引な態度に恐怖を感じていたが…今までのロミータとの同居生活や、コンプリに所属してからの配信者生活での経験で、前よりハッキリモノを言えるようになったので、彼の告白に断りを入れる事が出来た
「やっぱりか…」
「何がですか?」
「あのイングランド人のアナメルって女と同棲してて、百合カップルだって噂が本当なんだな。って事だよ!」
中川という男は亜沙美に断られた理由が、今本人から聞かされた通りではなく、彼女がロミータと付き合っているから断られたと考えたようだ
「ち、違うよぉ。一緒にご飯たべたり、お風呂に入ったりはするけど…カップルではないんだよぉ…」
本当のところは…ロミータから告白されてはいるものの、亜沙美自身は同性同士での付き合いをまだ完全には受け入れられていない。だから嘘は言っていないのだが…
「もう…どっちでもいいよ」
そう言うと男はバス停の内門にスマホを設定し、録画ボタンを押した
「な、ナニするのぉ?」
男の静かに覚悟を決めたような顔付きに、恐怖を覚えた亜沙美
「今からキミを抱くよ。その様子を録画させてもらう。キミが俺と付き合うのを拒むんなら、その動画を拡散させてもらうよ」
「えっ!?…そ、そんなの駄目だよぉ!」
「知るもんか!俺は生まれて初めて女の子に告白したんだぞ!ソレをアッサリ断られて大人しく引き下がれるかよっ!」
どうやら男は短絡的にモノを考える性格のようで、亜沙美に対して強行策に出たようだ
「ガシッ!い、嫌だぁ。やめてよォ!」
そんな大音量でもなかったが、亜沙美は勇気を出して声を張り上げた
「残念だけど…周囲に全く人が居ないことはサッキ確かめてある。誰も助けに来てくれないよ」
「嫌だァ!…誰か助けてぇ……服部さーん!」
制服の上着に手を掛けられた亜沙美は、誰かに見付けてもらおうと声を出した時、今まで何回か助けてもらった服部の名前を口にした
「服部?まさか…あの服部先輩か?空手大会で県大会優勝したっていう…」
服部は過去、腕試しを兼ねて空手部に所属した事がある。スグに訪れた県大会に出場し、スムーズに優勝を決めたのだが…自分の強さが確認できた服部は、周囲の期待の声を無視して全国大会への参加を拒否した過去がある
「まさか…付き合っているのは服部先輩か?……けどな、俺に抱かれた動画さえありゃ、どんだけ先輩が怖くても関係ねーぜ!」
服部が桁外れに強い!という事は全校生徒の周知の事実である。本来なら彼に目を付けられるような事をする馬鹿な者は、あの学校には存在しないのだが…
初めての告白を断られヤケになっている中川は、自分に抱かれた動画で脅せば何とかなる!と亜沙美を襲う覚悟を決めた
「ブチブチ…やだァ、やだー!」
上着を肘まで下げられ、シャツのボタンを強引にちぎられ前を開けられた亜沙美。あまりの恐怖に涙を流したその時!
「ガッ!…ドサッ…」
「か弱い少女を力ずくで抱こうとするなんて、男として恥ずかしいとは思わないのですか?」
中川という男は、背後から後頭部に強烈な一撃を入れられた。本人は誰に何をされたのかも分からずに、亜沙美の横に倒れて気絶した
「え?…あ、茜ちゃん?」
中川に襲われる!?と恐怖した亜沙美は、閉じていた目を恐る恐る開けると…目の前にはいつも全然違う服装に身を包んだ、服部の妹である茜が立っていた
「こんな時間に1人で歩いてたら駄目ですよ。誰かに襲って欲しいのですか?」
「え、えぇ!?」
以前、伊賀の服部家が経営する温泉旅館に行く時に、一緒に同行してくれた時の彼女とは全く違う服装と、全く違う物言いをする茜の毅然とした態度に戸惑う亜沙美
「ブロロロ…」
「どうやらバスが来たようですね。あまり、この姿で人目に付くのは遠慮したいので、これにて失礼致します」
「あ、あの…」
礼を言おうとした亜沙美だが、バスが近付いてくる音を聞いた茜は、仕事装束に身を包んでいる姿を人に見られたくないので、足速に夜の闇へと消えて行った
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