引き籠もりVTuber 配信者編

龍之介21時

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温泉旅行?

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【伊賀の森】
電車で伊賀市に到着した4人。その小さな駅の外に出ると…1台の黒塗りのセダンカーが、彼女達の到着を待っていた

茜によると旅館からの送迎タクシーらしい
乗り込んだ彼女達は運転手の異様な気配に驚く!すると、今まで物静かで控え目だった茜が威勢の良い声を上げた

「こら忠治!お客様が驚かれているでしょう!もっと気配を抑えなさい!出来ないと言うなら頭領に報告しますよ?」

「も、申し訳ありません!控えますんで…」

「ほえぇ…」
「えっ?」
「…………」

「あ!ごめんなさい。声を荒げてしまって…お気になさらないでくださいね…」

見た目通りのお淑やかな女子中学生ではない一面を見させられた亜沙美たち。そしてセダンカーは10数分ほど走ると、森の入り口で停車した

「皆さん降りてください。ここからは徒歩になりますので…」

茜に言われるまま降車した3人。しかし、彼女達の目の前に見えるのは温泉旅館などではなく、来るものを拒むような気配が漂う森林だった


「あ、あのぅ…私たち温泉旅行に招待されたんだよねぇ?」
 

「そ、そのハズよ?」
「……嘘よね……」

イーグルの出身地である愛知県には及ばなくても、三重県で栄えている鈴鹿市に住んでいる亜沙美とロミータの感覚からすると…目の前に広がる大自然の姿から、自分達が温泉旅行に来ているとは到底思えない景色だった

「この道を20分ほど進めば温泉旅館が見えてきますので、ほんの少しだけ頑張ってください」

「ち、ちなみに茜ちゃんは普段どれくらいの時間で着いているのかなぁ?」

温泉旅館まで徒歩20分という話に驚いた亜沙美は、普段の茜たちはどれくらいで宿に着くのか?疑問に思い聞いてみた

「私ですか?そうですね…全力疾走でしたら…3-4分ほどでしょうか?」

ケロッと答えた彼女の表情から察するに…彼女たちからすれば、この程度の距離は遠いと言うほどのモノではないようだ



【30分後】
「はぁはぁ…ま、まだなのぉ?」
「あ、茜ちゃんは平気そうね…」
「くひゅ~…も、もう歩けないわ…」

VTuberという生き物は基本引き籠もり体質であり、スポーツに強い女の子など非常に稀な存在である。例に漏れず亜沙美たちも体力面は貧弱なので、森林地帯を30分も歩き続けるなど苦行以外の何物でもなかった


「ほら!見えてきましたよ。あの建物が私達が営んでいる温泉旅館です!」

彼女が指差したその先には、大きなログハウスの様な建物があった。どうやら、ソコが今回の目的地らしい

「あ!…それとですね、今日の客人である貴女たちがVTuberをしている方だというのは、旅館で働く全ての者に話してありますので、旅館内でも配信中のようにお話していただいても大丈夫ですよ」

「Σ(°꒫°๑)ええっ!?話しちゃったのぉ?」
「ちょっと!VTuberは身バレは厳禁なのよ!」
「ぜはー…ぜはー…」

VTuberの女子とは視聴者から、凄く美化されガチな存在である。彼女らが演じるキャラがリアルでも相違ないとか、本人もキャラに近い存在だと思い込まれるケースが多い(実際にキャラもリアルも大差ない子も居るらしいが…)

なので、部外者にVTuberだと話されるのは本来は言語道断なのだが…

「その点はご安心ください。私たちの家業は守秘義務は至上の約束事です。ソレは生命を賭してでも守るべきモノ。ですから、一切の心配は無用です」

「そ、そうなの?」
「流石、見た目は可愛くても服部さんの妹さんなのね…」
「ぜはー、くはぁ…」

茜の兄である服部が、現代忍者の頭領をしている事を知っている亜沙美とロミータは即座に理解したが、そんな事は一切知らないイーグルにはなんの事だかサッパリなのだが…山道を歩いてきた疲労で、まだ言葉が話せないようだ



【旅館 隠れ里】
「お客様、遠路はるばるようこそいらっしゃいました。総員一同、誠心誠意をもってオモテナシさせていただきます」

「息子から話は伺っております。明日の昼までは自分の家だと思って、おくつろぎくださいませ」

「ただいま戻りました。お父様、お母様。お客様たちは、かなり疲労していますので御食事は30分後くらいにお願いします」

出迎えてくれた50くらいの体格の良い男性と、モデルの様な40過ぎくらいの女性を両親と説明する茜
その背後には数人の黒装束の男女7人が膝を着き、頭を下げて亜沙美たちを出迎えていた



【鳳凰の間】
この部屋に通された亜沙美たち。10畳ほどの部屋と、4畳ほどの縁側があった。その縁側に手招きされた亜沙美たち
ソコには木でできた丸テーブルに木製のイスが4つ、テーブルを囲うように置かれている。それぞれが、その椅子に座ると茜がテーブルに置かれているメニューを指差した

「喉が渇いてますでしょ?好きな飲み物を仰ってください」

「オレンジジュース」
「りんごジュースで」
「メロンソーダを」

「パチンっ!…聞こえたか?」

「はい、茜様。今すぐに!」

茜が椅子に座りながら指を鳴らすと、外の通路に控えているスタッフが厨房へと消えて行った

「ちょっと…て言うか、かなり疲れちゃったねぇ…」
「そうね。甘い物が欲しいわ…」
「アイスが食べたいな…」

「分かりました。私が用意してきますので、皆さんお喋りでもしてお待ちくださいね」

そう言うと茜は静かに立ち上がり、部屋の外へと消えて行った


「行っちゃったねぇ…」
「えぇ、見た目以上にシッカリしてるわね」
「何だか、それだけじゃない気がしますけど…えっ!?」

立ち上がり廊下へと消えて行く茜を目で追っていた3人が、再び目線をテーブルに移すと…

「オレンジジュースが、有るぅ…」
「い、いつの間に来たのよ?」
「と言うか、置かれた音も聞こえなかったわ…」

3人は心霊現象か?イリュージョンを魅せられているかの様な気持ちだった

「ねぇロミー。この家ってどうなっているの?茜って子も彼女の両親やスタッフさん達も、どこか違う世界の住人と言うか…堅気じゃない人。っていう雰囲気が凄く感じるわよ?」

「えっと、それはねぇ…」
「バカ亜沙美!ソレは誓って言わない。って服部さんと約束したでしょ?」

「あっ!そうだった…ごめんねミネアさん」

「そうなの?…うん、そうね。何だか聞かないほうが自分の為って気がするわ…」

本当はものすごーく知りたい衝動に駆られているミネアだが、彼らの放つ雰囲気や気配から迂闊に知ってしまうのは危険な事なのでは?とも思わされたので諦める事にした




続く
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