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闇に活動する者
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【社長室】
亜沙美たちが到着する約30分前の事…
「コンコン…社長【蒼空メルル】が参りました。如何しますか?」
「2人とも中に入ってくれ」
「ガチャ…失礼致します」
「失礼します…」
オリビアと一緒に居る金髪ギャル風で、ハタチ過ぎくらいに見える女性【蒼空メルル】の2人が、社長室の中に入って来た
社長室の中は露骨な成金趣味と言うほどでもないのだが…やはり社長室の貫禄を匂わせるような、高級家具が各所に配置されている
「すみません社長。お手間を取らせてしまいまして…」
「配信の再生数だけでなく、チャンネル登録数も伸び悩んでいるようだな。間もなく4年目を迎えると言うのに、まだ30万人にも届かない状況か…キミより1年後に入った半契約のロミー君に上を行かれているな…」
どうやら、所属のライバーである彼女はこの会社のメンバー内でも下位の登録者数のようだ。今日は、その事で社長に呼び出された訳だが…
「ですが社長。間もなく、そのロミーが半契約する為のアミという個人勢の女の子を連れて来ます…後30分弱で来るハズですが?」
「そうだな…かと言って我が社で4年頑張ってくれているメルル君を放ったらかしにするのも気が引ける。困って居るのだろう?」
「は、はい!どうか、社長のアドバイスでメルルを導いて欲しいんです!」
この会社に半契約という形で新しく入る亜沙美と、活動に限界を感じて社長に泣きついてきた彼女【蒼空メルル】
「すまないが、オリビア君に新人の面接をお願いしても良いかな?私はメルル君の相談を聞いてアドバイスをしたい。オリビア君には過去にロミー君の面接もしてもらったよね?キミの目を信じている、宜しく頼むよ」
「分かりました。そういう事でしたら、私が新人の面接を実施させていただきます」
「あ、そうだ。少し長くなると思うから、新人の面接が終わったらキミも今日は上がって良いからね?…と言うか、上がりなさい。キミも【秋の大運動会】の司会と準備をしてくれていて、最近は忙しかったろ?たまには、ゆっくりしなさい」
「……分かりました。失礼します」
亜沙美とロミータの対応はオリビアが1人ですることになった。自社で頑張るライバーの悩みに、社長自らが親身になって応えてくれるという話なのだが…
【社長とメルル】
「ここ数ヶ月チャンネル登録者は月平均で+1000人以下のようだね?」
「は、はい。週5で配信してはいるんですけど…半月くらい前からずっと、そんな感じなんです…」
蒼空メルルは約50ヶ月の間、本契約での活動をして登録者30万人以下。かたや彼女の1年後に半契約の形で入社したロミータは、自由に活動して登録者35万人である。その状況を理解しているメルルは、うつむいて話している。かなり悩んでいるように見えるが…
「ガタッ」突然、社長が椅子から立ち上がりそんな彼女に近づいて行く…
「この部屋は社長室だけあってね、防音設備はかなり高いんだ。それに…空調は聞いているが、そんなに着込んでいると暑かろう?上着は脱いでソコに掛けて置きなさい」
「シュル…」
「あっ!?…はい…」
ブイチューバーという仕事柄、身バレしないように外を歩く時は目立たないようにするのが定石(じょうせき)だ。彼女は黒いコートを着て事務所に入って来た
応接室と繋がるドアが有る壁側に申し訳なさそうに立っている彼女に近づいて、その黒いコートに手を掛けて脱がす社長
厚めのコートを脱ぐと、下からは薄めの服装があらわになったメルル
「窓際にある椅子を持ってきて、机の前に座りたまへ。じっくり話を聞いてキミのチカラになりたいんだ。それと、水しか無いのだが構わないかね?」
「あっ、はい。有難うございます」
社長は机の横にある冷蔵庫から、水の入ったペットボトルを2つ取り出した。その1つを机の前に座った彼女に渡す
「今やブイチューバー産業は、大物VTuberがテレビやゲーム大会、果ては大企業とコラボして活躍する大戦国時代と言えるな。業界No.1の【オロライブ】はもちろん、2番手で追走する【2次元3次元】。どちらも我が社では太刀打ちできない巨大事務所だ…どれだけ頑張っても、ウチでは勝負にならないのは分かるだろう?」
「あ、はい。分かります…」
「だからこそだ。ウチは少数精鋭で挑んでいかなければならない!有象無象(うぞうむぞう)の弱小配信者の人数を増やしたところで、ブイのファンには響かないからな」
社長は真っ直ぐメルルの顔を見詰めていた。藁(ワラ)にもすがる想いで社長の言葉を聞いているメルル
「だが!…残念なことに、キミは今日新たに契約をしにくるアミという子の付き添いでやって来る、キミの1年後輩で半契約社員のロミー君に先に30万人を達成されたな」
「は、はい…恥ずかしく思っています…」
「ピンポーン…ガチャ」
「来たわねロミー。貴女が竹取 亜沙美さんね。初めましてオリビア・ショーツよ」
「噂をすれば何とやら…だな。ロミー君が新人を連れてやってきたようだぞ」
「くっ、ロミータ・アナメル…」
社長は部屋の外けら聞こえてきたチャイムで、亜沙美とロミータの来訪に気が付いた。その社長に言われるまでもなく、半契約という自由が多い形で契約していながら、チャンネル登録者数で自分(メルル)を追い抜いて行ったロミータをライバル視しているようだ。彼女の表情が急に険しくなった
「何故、キミは彼女に負けていると思うかね?」
「えっと…彼女の底抜けな明るさと…イングランド人と日本人のハーフという部分じゃないでしょうか?」
メルルなりに普段から、自分とロミータの違いについて考えてはいるようだ。その事を汲み取った社長が再び席を立った
「概ね正解だ…キミは非常に丁寧で優しい性格をしている…それは、人並みの世間様の中で働く者にとっては武器となるだろう。だが!ブイチューバーには、パッと見で理解できる目を引く個性が必要だ。残念だがメルル君には、そういった部分が弱いと思われるね」
そう言うと社長はメルルの肩に手を置いた。彼女と社長の身長差は35cmある。小柄で150cmの彼女は、社長が目の前に来るとかなり見上げねばならない
「た、確かに…そう思いますが…」
「お上品な清楚キャラだけでは、あの底抜けに明るい配信をしながらも英語でのトークもそつ無くこなすロミー君に、1年のハンデだけでは足りなくて当然だ。キミも彼女と戦える個性が必要だとは思わんかね?」
「そ、そうですが…下手なキャラ付けは逆にリスナーから引かれてしまいますし…僕は何を身に付ければ良いのでしょうか?」
そう受け答えしながらも、社長に押し込まれるようにドアの反対側の壁に追い込まれたメルル
「なに、簡単なことだよ。無理に演技して別要素を加えればキミのように純粋な子では、スグにメッキが剥がれてボロが出る…ならばメッキではなく本当にキミを変えれば良いと思わないか?」
「ど、どういう事でしょうか?僕が変われれば良いんですけど…僕は昔からこの性格で、器用に2面性とか持てないんですけど…」
蒼空メルルは、この会社の中で亜沙美に1番近い性格をしている。つまり、裏表を演じるのは苦手で純粋さこそが武器なのだが…
彼女を部屋の壁に追い込んで密着して来る社長の目は、美味しいデザートを楽しもうという眼差しで彼女を見ている
「私は社長だ。今日来たアミ君を含めてもライバー10人しか居ない弱小事務所の社長ではあるが…それでも、それなりにチカラを持っている。ソレをだね、メルル君1人に注ぎ込めば…キミをバズらせるカンフル剤くらいにはなれるハズだが…私と一緒にこの苦境を乗り越えようという覚悟はあるかね?」
「えっ!?あ、社長…ソレはどう言った意味で…んうっ!はぁはぁ…社長?」
社長はメルルの膝に人差し指の平を軽く押し当てると、彼女の太ももに沿わせて数センチなぞりあげ、彼女のスカートの入り口までもってきた
「私の協力を得てまで、今の状況を打破したいと思うのなら…私の協力を受け入れると言うのなら…壁に手を付いてナニをされても最後までジッとしていたまえ…もちろん、私は人にナニかを強要するのは好まない。キミの答えに応えるだけだからな(ニヤ)」
「あ、頭も悪くて控え目な僕では、一般企業でもマトモに働けませんでした。見た目が少し良いだけの僕は…好色な上司に媚びないと居場所がありませんでした。ブイチューバーの世界でも僕1人のチカラでは、とっくに限界を感じていました。だから…だから…」
「了解した。ソレがキミの答えと言うわけだね。よろしい!ならば私も全力でメルル君をサポートしよう…そうだな。まずは…少し、セクシーさをアピールする所から始めようか?」
「は、はい。宜しくお願いします…」
彼女の答えを聞いた社長は、遠慮なく彼女の服の中に手を侵入させて行った。その途端、ビクン!と身体が弾んだメルル。頭では「仕方ない。こうでもしなければ…」と理解しているが、まだ男を受け入れた経験のない彼女は、社長に触られる度に敏感に身体が反応してしまうのだった
「あ、あの社長…」
「なんだねメルル君?」
「この場所だと…窓の外から見られてしまいます…できたらカーテンを…」
「身体を売る」それしか生き残る道が無いことを覚悟したメルル。だが、流石に外から見られるのは我慢できないようだ
「そうだった…メルル君、この部屋には非常に便利なオプションが装備されていてね…ポチっ!」
社長は壁にあるスイッチの1番下の、ひとつだけ黒い色をしているボタンを押した
【向かいのビルの屋上】
「……キミは完璧で究極のゲッター♪……皆に愛されるアイドール様♬…ザザザザ…」
「ふむ。歌い慣れてはござらんが…亜沙美殿の可愛い声による歌声は癒されるでござるな……んっ!?あれは…?」
亜沙美たちがお邪魔している向かいのビルの屋上で、耳に当てているヘッドホンに聞き入っている若い男が居た。彼はたった今、変化があった社長室の方に目を向けた
「先程の話によれば…先輩ライバーの蒼空メルルと社長が部屋に居たのだが…ガラスに蒼い波が走ったように見えた途端、中の様子が見えなくなったでござる」
その男は亜沙美とロミータが通う学校の1年先輩である服部だった
「東京に行くという亜沙美殿が心配で…たまたま休みだったから付いてきてみれば、何やらキナ臭い感じでござるな。亜沙美殿のバッグに仕掛けてある盗聴マイクが、彼らにバレなければ良いでござるが…」
なんと!個人的に亜沙美を心配した服部が彼女のカバンに盗聴器まで仕掛け、彼女が半契約しようとしている会社の実情を調べる為に付いてきていたようだ
「頭領!」
「なんだ茜か?何かあったのか?」
「違いますよ!突然、東京に行くというから何をするのかと思えば…依頼も受けてないのに人様の事務所を覗き見するのは良くないですよ!それと、あの【アミー水】の女の子をストーキングしてますよね?」
「馬鹿を言うな!たまたま知り合った同じ高校の後輩を心配して、すこーし様子を見に来ただけだ!」
どうやら【茜】という少女は彼が仕切っている秘密諜報部の部下のようだ。何やら不機嫌な様子だが…
「適当な嘘を言わないでください。大臣から依頼が来ているというのにすっぽかして何してるんですか?こんなの誰がどう見てもストーカーですよ」
どうやら彼女は、大事なクライアントを放ったらかしにして個人的な趣味で、亜沙美をストーキングしている頭領の服部に腹を立てているようだ
「全く茜は生真面目過ぎるな。分かっている、この件が終われば大臣の元に向かうさ。彼はこの東京に居るんだからな」
どうやら仕事のついでに亜沙美の様子を…いや、亜沙美の様子見のついでに大臣に会いに来ている感じの服部だった
続く
亜沙美たちが到着する約30分前の事…
「コンコン…社長【蒼空メルル】が参りました。如何しますか?」
「2人とも中に入ってくれ」
「ガチャ…失礼致します」
「失礼します…」
オリビアと一緒に居る金髪ギャル風で、ハタチ過ぎくらいに見える女性【蒼空メルル】の2人が、社長室の中に入って来た
社長室の中は露骨な成金趣味と言うほどでもないのだが…やはり社長室の貫禄を匂わせるような、高級家具が各所に配置されている
「すみません社長。お手間を取らせてしまいまして…」
「配信の再生数だけでなく、チャンネル登録数も伸び悩んでいるようだな。間もなく4年目を迎えると言うのに、まだ30万人にも届かない状況か…キミより1年後に入った半契約のロミー君に上を行かれているな…」
どうやら、所属のライバーである彼女はこの会社のメンバー内でも下位の登録者数のようだ。今日は、その事で社長に呼び出された訳だが…
「ですが社長。間もなく、そのロミーが半契約する為のアミという個人勢の女の子を連れて来ます…後30分弱で来るハズですが?」
「そうだな…かと言って我が社で4年頑張ってくれているメルル君を放ったらかしにするのも気が引ける。困って居るのだろう?」
「は、はい!どうか、社長のアドバイスでメルルを導いて欲しいんです!」
この会社に半契約という形で新しく入る亜沙美と、活動に限界を感じて社長に泣きついてきた彼女【蒼空メルル】
「すまないが、オリビア君に新人の面接をお願いしても良いかな?私はメルル君の相談を聞いてアドバイスをしたい。オリビア君には過去にロミー君の面接もしてもらったよね?キミの目を信じている、宜しく頼むよ」
「分かりました。そういう事でしたら、私が新人の面接を実施させていただきます」
「あ、そうだ。少し長くなると思うから、新人の面接が終わったらキミも今日は上がって良いからね?…と言うか、上がりなさい。キミも【秋の大運動会】の司会と準備をしてくれていて、最近は忙しかったろ?たまには、ゆっくりしなさい」
「……分かりました。失礼します」
亜沙美とロミータの対応はオリビアが1人ですることになった。自社で頑張るライバーの悩みに、社長自らが親身になって応えてくれるという話なのだが…
【社長とメルル】
「ここ数ヶ月チャンネル登録者は月平均で+1000人以下のようだね?」
「は、はい。週5で配信してはいるんですけど…半月くらい前からずっと、そんな感じなんです…」
蒼空メルルは約50ヶ月の間、本契約での活動をして登録者30万人以下。かたや彼女の1年後に半契約の形で入社したロミータは、自由に活動して登録者35万人である。その状況を理解しているメルルは、うつむいて話している。かなり悩んでいるように見えるが…
「ガタッ」突然、社長が椅子から立ち上がりそんな彼女に近づいて行く…
「この部屋は社長室だけあってね、防音設備はかなり高いんだ。それに…空調は聞いているが、そんなに着込んでいると暑かろう?上着は脱いでソコに掛けて置きなさい」
「シュル…」
「あっ!?…はい…」
ブイチューバーという仕事柄、身バレしないように外を歩く時は目立たないようにするのが定石(じょうせき)だ。彼女は黒いコートを着て事務所に入って来た
応接室と繋がるドアが有る壁側に申し訳なさそうに立っている彼女に近づいて、その黒いコートに手を掛けて脱がす社長
厚めのコートを脱ぐと、下からは薄めの服装があらわになったメルル
「窓際にある椅子を持ってきて、机の前に座りたまへ。じっくり話を聞いてキミのチカラになりたいんだ。それと、水しか無いのだが構わないかね?」
「あっ、はい。有難うございます」
社長は机の横にある冷蔵庫から、水の入ったペットボトルを2つ取り出した。その1つを机の前に座った彼女に渡す
「今やブイチューバー産業は、大物VTuberがテレビやゲーム大会、果ては大企業とコラボして活躍する大戦国時代と言えるな。業界No.1の【オロライブ】はもちろん、2番手で追走する【2次元3次元】。どちらも我が社では太刀打ちできない巨大事務所だ…どれだけ頑張っても、ウチでは勝負にならないのは分かるだろう?」
「あ、はい。分かります…」
「だからこそだ。ウチは少数精鋭で挑んでいかなければならない!有象無象(うぞうむぞう)の弱小配信者の人数を増やしたところで、ブイのファンには響かないからな」
社長は真っ直ぐメルルの顔を見詰めていた。藁(ワラ)にもすがる想いで社長の言葉を聞いているメルル
「だが!…残念なことに、キミは今日新たに契約をしにくるアミという子の付き添いでやって来る、キミの1年後輩で半契約社員のロミー君に先に30万人を達成されたな」
「は、はい…恥ずかしく思っています…」
「ピンポーン…ガチャ」
「来たわねロミー。貴女が竹取 亜沙美さんね。初めましてオリビア・ショーツよ」
「噂をすれば何とやら…だな。ロミー君が新人を連れてやってきたようだぞ」
「くっ、ロミータ・アナメル…」
社長は部屋の外けら聞こえてきたチャイムで、亜沙美とロミータの来訪に気が付いた。その社長に言われるまでもなく、半契約という自由が多い形で契約していながら、チャンネル登録者数で自分(メルル)を追い抜いて行ったロミータをライバル視しているようだ。彼女の表情が急に険しくなった
「何故、キミは彼女に負けていると思うかね?」
「えっと…彼女の底抜けな明るさと…イングランド人と日本人のハーフという部分じゃないでしょうか?」
メルルなりに普段から、自分とロミータの違いについて考えてはいるようだ。その事を汲み取った社長が再び席を立った
「概ね正解だ…キミは非常に丁寧で優しい性格をしている…それは、人並みの世間様の中で働く者にとっては武器となるだろう。だが!ブイチューバーには、パッと見で理解できる目を引く個性が必要だ。残念だがメルル君には、そういった部分が弱いと思われるね」
そう言うと社長はメルルの肩に手を置いた。彼女と社長の身長差は35cmある。小柄で150cmの彼女は、社長が目の前に来るとかなり見上げねばならない
「た、確かに…そう思いますが…」
「お上品な清楚キャラだけでは、あの底抜けに明るい配信をしながらも英語でのトークもそつ無くこなすロミー君に、1年のハンデだけでは足りなくて当然だ。キミも彼女と戦える個性が必要だとは思わんかね?」
「そ、そうですが…下手なキャラ付けは逆にリスナーから引かれてしまいますし…僕は何を身に付ければ良いのでしょうか?」
そう受け答えしながらも、社長に押し込まれるようにドアの反対側の壁に追い込まれたメルル
「なに、簡単なことだよ。無理に演技して別要素を加えればキミのように純粋な子では、スグにメッキが剥がれてボロが出る…ならばメッキではなく本当にキミを変えれば良いと思わないか?」
「ど、どういう事でしょうか?僕が変われれば良いんですけど…僕は昔からこの性格で、器用に2面性とか持てないんですけど…」
蒼空メルルは、この会社の中で亜沙美に1番近い性格をしている。つまり、裏表を演じるのは苦手で純粋さこそが武器なのだが…
彼女を部屋の壁に追い込んで密着して来る社長の目は、美味しいデザートを楽しもうという眼差しで彼女を見ている
「私は社長だ。今日来たアミ君を含めてもライバー10人しか居ない弱小事務所の社長ではあるが…それでも、それなりにチカラを持っている。ソレをだね、メルル君1人に注ぎ込めば…キミをバズらせるカンフル剤くらいにはなれるハズだが…私と一緒にこの苦境を乗り越えようという覚悟はあるかね?」
「えっ!?あ、社長…ソレはどう言った意味で…んうっ!はぁはぁ…社長?」
社長はメルルの膝に人差し指の平を軽く押し当てると、彼女の太ももに沿わせて数センチなぞりあげ、彼女のスカートの入り口までもってきた
「私の協力を得てまで、今の状況を打破したいと思うのなら…私の協力を受け入れると言うのなら…壁に手を付いてナニをされても最後までジッとしていたまえ…もちろん、私は人にナニかを強要するのは好まない。キミの答えに応えるだけだからな(ニヤ)」
「あ、頭も悪くて控え目な僕では、一般企業でもマトモに働けませんでした。見た目が少し良いだけの僕は…好色な上司に媚びないと居場所がありませんでした。ブイチューバーの世界でも僕1人のチカラでは、とっくに限界を感じていました。だから…だから…」
「了解した。ソレがキミの答えと言うわけだね。よろしい!ならば私も全力でメルル君をサポートしよう…そうだな。まずは…少し、セクシーさをアピールする所から始めようか?」
「は、はい。宜しくお願いします…」
彼女の答えを聞いた社長は、遠慮なく彼女の服の中に手を侵入させて行った。その途端、ビクン!と身体が弾んだメルル。頭では「仕方ない。こうでもしなければ…」と理解しているが、まだ男を受け入れた経験のない彼女は、社長に触られる度に敏感に身体が反応してしまうのだった
「あ、あの社長…」
「なんだねメルル君?」
「この場所だと…窓の外から見られてしまいます…できたらカーテンを…」
「身体を売る」それしか生き残る道が無いことを覚悟したメルル。だが、流石に外から見られるのは我慢できないようだ
「そうだった…メルル君、この部屋には非常に便利なオプションが装備されていてね…ポチっ!」
社長は壁にあるスイッチの1番下の、ひとつだけ黒い色をしているボタンを押した
【向かいのビルの屋上】
「……キミは完璧で究極のゲッター♪……皆に愛されるアイドール様♬…ザザザザ…」
「ふむ。歌い慣れてはござらんが…亜沙美殿の可愛い声による歌声は癒されるでござるな……んっ!?あれは…?」
亜沙美たちがお邪魔している向かいのビルの屋上で、耳に当てているヘッドホンに聞き入っている若い男が居た。彼はたった今、変化があった社長室の方に目を向けた
「先程の話によれば…先輩ライバーの蒼空メルルと社長が部屋に居たのだが…ガラスに蒼い波が走ったように見えた途端、中の様子が見えなくなったでござる」
その男は亜沙美とロミータが通う学校の1年先輩である服部だった
「東京に行くという亜沙美殿が心配で…たまたま休みだったから付いてきてみれば、何やらキナ臭い感じでござるな。亜沙美殿のバッグに仕掛けてある盗聴マイクが、彼らにバレなければ良いでござるが…」
なんと!個人的に亜沙美を心配した服部が彼女のカバンに盗聴器まで仕掛け、彼女が半契約しようとしている会社の実情を調べる為に付いてきていたようだ
「頭領!」
「なんだ茜か?何かあったのか?」
「違いますよ!突然、東京に行くというから何をするのかと思えば…依頼も受けてないのに人様の事務所を覗き見するのは良くないですよ!それと、あの【アミー水】の女の子をストーキングしてますよね?」
「馬鹿を言うな!たまたま知り合った同じ高校の後輩を心配して、すこーし様子を見に来ただけだ!」
どうやら【茜】という少女は彼が仕切っている秘密諜報部の部下のようだ。何やら不機嫌な様子だが…
「適当な嘘を言わないでください。大臣から依頼が来ているというのにすっぽかして何してるんですか?こんなの誰がどう見てもストーカーですよ」
どうやら彼女は、大事なクライアントを放ったらかしにして個人的な趣味で、亜沙美をストーキングしている頭領の服部に腹を立てているようだ
「全く茜は生真面目過ぎるな。分かっている、この件が終われば大臣の元に向かうさ。彼はこの東京に居るんだからな」
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