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憎奪戦争編

正義の味方

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【フィン・フィヨルド】
「すっごーい!こんな綺麗で広大な花畑があるんだ!ねぇ、優輝。綺麗だと思わない?」

新婚旅行(ハネムーン)の次なる目的地として、元魔王(ザッド)の生まれ故郷に来ている徳川有栖と一条優輝

「ふははっ!そうだろう、そうだろう♪この島のフィヨルドの民は東側と西側に別れて、あまり仲は良くない戦闘民族たちだが…この花畑は壮観だろう?」

「本当に凄いですね!平和な日本でも、これほど広大な花畑ってあるのかな?無いんじゃないかな?」

有栖たちは元魔王(ザッド)が生まれたフィン・フィヨルドにハネムーン目的で来ている。しかも元魔王(ザッド)にガイドしてもらうと言う贅沢な観光になっていた

「戦闘民族のフィヨルドの人達に、もちろん元魔王(ザッド)様にもですが。これだけの花畑を大切にする気持ちが有るなんて、ビックリしちゃいました!」

「侮るなよ!……っと言いたいところだが。実はこの花畑を大切に守るのには理由があってな、この花たちは花を咲かせる時に根から大地に、野菜や穀物を育てるのに最適な栄養素を与えてくれるのだ。この花自体は実を付けないが、この花のおかげで農作物が良く育つのだ!…という事が分かっていてな、このフィヨルドだけで自給自足が賄(まかな)えているのは、この花畑があってこそ。と言えるのだ」

「そうだったんですね。それでも、こんな素晴らしい花畑が見れて嬉しいよな。な、有栖?……どうかしたのか?」

とてつもなく美しい花畑の眺めの素晴らしさに、男の優輝でさえも感動したので、その感動をを分かち合おうと有栖に声を掛けたのだが…

「どうやら、始まってしまったようね……つくづく人は争いを忘れられない悲しい生き物なのね…」
 

「えっ?どういう事だい?有栖…」

「有栖の旦那よ。アッチの方角を見てみろ」

元魔王(ザッド)はマリニウム地方を指差した。彼らが居るフィン・フィヨルドからでは、かなりの距離がある為マリニウム地方も緑の塊にしか見えないのだが…

「なんだっ!?あのデカイ人は!この前の【ファルバァス】よりも大きいんじゃないか!」

「たぶんアレは…【でえたらぼっち】だわ」

「【でえたらぼっち】って…あの日本の童話とかに出てくるアレか?…なんでソレが、この世界に居るんだ?一体あそこで何が起きているんだ?」

「2人とも、あの巨大な人が何か知っているのか?」

300kmは離れているフィヨルドからでも見えるマリニウムに立つ巨人に、慌てふためき半パニック状態の優輝
だが元魔王(ザッド)は驚いてはいるものの、穏やかにその巨人を見つめている

「日本の神話や童話に出てくる神様のひとつで、農業をする人々を助けてくれる優しい神様って聞いてるわ」

「なるほど…だが、どう見ても暴れて人々を襲っているようにしか見えんがな…」

「おそらくですが…マリニウムの人間たちが【でえたらぼっち】をブチ切れさせるほど怒らせてしまったのでしょう。【逆鱗に触れる】という言葉もありますからね」

【でえたらぼっち】の事を冷静に話し合う有栖と元魔王(ザッド)。その2人の会話がパニック気味だった優輝を次第に落ち着かせた

「それはともかく!早く助けに行かないと、街の人々が危険なんじゃないのか?」

正義・友情・勝利を掲げる優輝は、暴れる【でえたらぼっち】に襲われている人々を助けに行こうと提案するが…

「有栖の旦那よ。お前は何を言っている?」

「何って、人々が大変な目に!」

落ち着いて話す元魔王(ザッド)に対し、まるで落ち着けるハズがない。といった感じの優輝

「ねぇ優輝。なんでマリニウムの人々を私や元魔王(ザッド)様が助けに行かなくちゃならないの?……地球にファルバァスが逃げた時、エリスア様から私ひとりに討伐依頼が来た時に優輝は何て言ってくれた?」

【でえたらぼっち】のあまりの巨大さに、パニック気味だった優輝だが無理やり呼吸を整えて、その時の事を思い返し始めた

「な、何でだよ!?別に有栖1人の責任じゃないだろ?どうして有栖ひとりにそんな大役を任せるんだ!」

あの時、クラウン城に集まっていた世界各地の猛者が全員で束になって攻撃しても、紙一重で勝利した程の強さの【ファルバァス】が地球に逃げていったのを、惑星神エリスアからその討伐を有栖ひとりに任せようとした事に対して切れた優輝

「そうだった……俺が言ったんだった。何で化け物退治を有栖にばかり押し付けるのか!って……そう言えば、マルバァス戦でも結局倒してくれたのは有栖とフュールさんだった…」

「ソチラの報告も聞いているぞ。つまり有栖は、自分に何の責任も無いのに現出した国家災害級の獣神討伐を2度も行っているな
なぜ今回も有栖が出向かねばならんのだ?有栖はもちろん、この俺も都合の良い【正義の味方】などでは無いのだぞ?マリニウムの奴らが引き起こした災厄はマリニウムの者たちで解決すべきではないのか?」

元魔王(ザッド)の話に言葉を失う優輝
彼の言う通り【消去の魔女】は無償で世界の平和を守る【正義の味方】ではないのだ

「優輝…私は助けに行かないわよ。全ての者に良い顔なんてしてたら、いずれ私でも己のキャパを超えてしまって身を滅ぼしかねないからね」

「一応言っておくが…有栖の教え子のミアナに休暇を与えた。ミアナにとってマリニウムは生まれ故郷だ。きっと今頃はあの地に居るだろう。だが、何をどうするか?はミアナ次第だがな…俺はただ休暇を与えただけだからな」

……………………………………………

「そうですね。相変わらず俺は愚か者でした。有栖の言い分が正しいと思います」

考え無しに【努力・友情・勝利】を信じていた優輝も、ようやくこの地で生きていて現実は少年漫画の様に甘く都合の良いモノでは無い!という事が理解出来始めてきていた



【大社手前】
【でえたらぼっち】を止める手段を探して古代遺跡(タイシャ)にやって来たホロミナティだが

「あぁ!?古代遺跡が壊滅していますぅ!」
 

彼らの眼前に広がる大社は、以前彼女らが見た荘厳な施設ではなく残骸と化した廃墟だった

「どうやら、この地で【でえたらぼっち】が生まれてしまったみたいだにぇ…お姉ちゃん…」

「その【でえたらぼっち】とかいうのが、ここで暴れて大社を破壊しちゃったって事?」

「とんでもね~事になっただなや…」

変わり果てた大社を見たミーコは、すっかり意気消沈してしまっていた。サケマタ、ノエールは見るも無惨に破壊された大社と超巨大化したボッチちゃんを見比べて、無言で立ち尽くしていたが…コヨリィだけは深刻な表情になっていた



続く
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