上 下
27 / 135
憎奪戦争編

イシス王国到着

しおりを挟む
【マリニウム集落跡】
古代遺跡から2kmほど南に離れた集落跡の一軒家で、ボッチちゃんと世話役の爺さんと、北の勇者隊の2人がカードゲームをして遊んでいた

ミーコ達【ホロミナティ】は反対側の古代遺跡の北側に寝床を取っている
遊びを知らないボッチちゃんにも分かりやすい七並べの様な遊びをしていた

「ごめんねーボッチちゃん。お姉さんアガリだわ」

数回こなして、ようやくルールが分かってきた所でビリになり、手足をジタバタさせて悔しがっているボッチちゃん

「で~(汗)」
 

するとボッチは立ち上がりキッチンの方へ駆けて行った

「ありゃ、怒らせちまったか?」

「ほっほっほ。そうではありますまい。ただ喉が渇いたので飲み物を取りに行かれたのでしょう」

「そう、なら。私も行ってみんなの分を持ってくるわね」

そう言ってプディングは立ち上がりキッチンに向かうと、クーラントボックスみたいな木箱に入っているオレンジ色の液体が入った瓶を取り、木のグラス4っつに注いだ

「おぬしら、どんな心変わりじゃな?」

初対面でボッチちゃんから荷物を盗んだ北の勇者隊の2人が、庭の草取りをしてくれたり、ボッチちゃんの遊び相手をしてくれているので、世話役の老人は質問した

「あの娘、どう見ても世間から隔離されて生活させられてるじゃないか。良い子そうだし、どうせ俺たちは目的も無い身だから、助けになりたいと思ったのさ」

「そうか…なら、気が済むまで居るが良い。なんなら、この国の国民になれるように手配してやっても良いぞ?」

「本当か?それは助かるぜ!」

「でー!でー!」

持ってきた飲み物を飲んだボッチちゃんが、ヤル気を出して再勝負を要求している

「また、お姉さんが勝っちゃうわよー」

プディングも馴染んできたようで、その日は4人楽しく遊んで過ごした


翌日のケチュアとリキュール
【イシス王国】
ここは5年前、ベイ達が攻め込んだ際に【アドル・クリスニッジ】の活躍で滅亡の危機を乗り越えていた。後に彼は【イシスの勇者】と呼ばれる様になった

若き王女【ユーカ・レア】16歳がイシスの英雄アイザー・シュバッツを筆頭とするシュバッツ家に支えられ、国民優先の政治により統治されている王国である
2ヶ月前、再び攻め込まれたこの王国を救うため三姉妹も活躍している


「ようやくイシスに到着したわね、ケチュア」

「ええ…イシスの王女は私を覚えてくれているかしら?それに、ゆっくり移動してきたのに…大して成長していなくてごめんなさい」

「いやいや、かなり進歩したよ!それでもEランク冒険者がやっとかな?ってレベルだけどね。あはははは(笑)」

「うう…ごめんなさい(汗)」

ようやく朝日が登り始めた頃、親子のサーベルタイガーを従えた2人は、イシスの正門の前へとやって来た。早朝にも関わらず、シッカリと正門を守る2人の兵士に声を掛けるケチュア

「あの!…おはようございます。私はマリニウム地方の貴族ナイン家のケチュアと申します。王女ユーカ・レア様にお取次ぎをお願いしたいのですが…」
   

そう言うとケチュアは中央に紋章が描かれたクリスタルを手に持ち衛兵に見せた

「それは!見た事があるぞ。確かにスズカの街近くのナイン家の紋章…ケチュアさんですか?お久しぶりです。10年ぶりくらいですかな?……はは、私のことは覚えていませんか?小さかったユーカ様と共にお伺いしたのですが?」

「ごめんなさい(汗)お、覚えていませんわ」

「無理もありません。まだケチュアさんもユーカ様も6歳でしたからな。そうでした、ユーカ様にお知らせしてきます。おい、俺が戻るまで彼女たちを見守っていろ」

「は、はい!了解しました………あの?」

「なんでしょうか?」

「そのサーベルタイガー…襲って来ませんよね?」

先輩の衛兵にケチュア達の相手を任された若い衛兵は、2人が連れているサーベルタイガーにビビっているようだ



【謁見の間】
「お久しぶりねケチュア。遠くまで訪ねて来てくれて嬉しいわ!どう、ソチラの様子は?叔父様も叔母様もお変わりは無い?」
 

若き王女ユーカ・レアは、ケチュア・ナインの事を薄っすら覚えていたので、衛兵に謁見の間まで連れてこさせて謁見を許可した。そして挨拶代わりに近況を訊ねたのだが…

「それが、両親は……オヅベルド公爵に殺されました…」

「なんですって!?」

ナイン家の夫婦が殺害された!その報告を受けたユーカは、驚きのあまり椅子から立ち上がった
 
「そんな…いったい何が?」

同席していたアイザー・シュバッツとその兄妹のオルガスとチェイム、そしてユーカの従者ランスロットルも驚いていた

ナイン家は武器商人の1族であり、ベイ城からの侵攻に備える為に【スズカの街】から呼び寄せた武器商人【ナイン家】から、大量に兵士用の武器防具を買った時からの付き合いだった

「なんですって!?…オヅベルド公爵がマリニウム王国に反乱を企てているの?……それで、その時用の武器防具を用意しろと迫られて断ったご両親は殺害され、貴女は使用人と共に逃げて来た。と…」

「はい。使用人も刺客に殺され私も危うく!という時に、コチラのリキュールに助けられ、その後サーベルタイガーの親子を従えて伺った次第であります」

ケチュアからの説明を受け、何故彼女が今回イシスを訪ねて来たのか?その理由を知ったユーカ

「リキュールさん。でしたか…私の友人を助けていただき感謝を述べます」

「いえ、私も大概世間知らずでしたので…私の方こそケチュアに助けられました」

「ところでリキュールさん。ケチュアはとても魔物を討伐できる人ではないのですが…道中の魔物の脅威それに、そのサーベルタイガーを従えたのは貴女のチカラですか?」

「そうですね。ケチュアは戦闘未経験でしたので、私の魔法で乗り越えて参りました」

見知らぬ魔法使いのリキュールにも気さくに話すユーカ王女だが、おそらく彼女ひとりのチカラで道中の危機を乗り越えたのだろうと予想し、彼女の力量を素直に訊ねてみた

「アイザーと申します。シュバッツ家の頭首をしております。代々レア家にお仕えしております…それにしても道中は過酷だったと思いますが…リキュール殿は素晴らしい魔法使いのようですね?」 

「えっと…自分ではよく分かりませんが…彼女を守りイシスに辿り着ける程度には…」

ケチュアを狙って放たれた暗殺者を撃退し、ベイ城の兵もイシスの兵も1対1では苦戦するほどの魔物たちをも、お荷物でしかないケチュアを護衛しながら辿り着いたリキュールの強さに目を付けたアイザーが、王女であるユーカに目を配る
それに気が付いたユーカが無言で頷(うなず)く

「それはご苦労様でした。お疲れでしょう?我が城で遠慮なく寛(くつろ)いで、疲れを癒してくださいね。その間にオヅベルド家への対処を相談しておきますので…」

「有難うございます!」
「……………………………………………」

オヅベルド家へ対処してくれる。という言葉を聞いたケチュアは安堵していたが…最後の方で自分の力量を測られていた?と感じたリキュールは、素直に喜べずにいた



続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ビッチな姉の性処理な僕(R-18)

量産型774
恋愛
ビッチ姉の性処理をやらされてる僕の日々…のはずだった。 でも…

ヒミツの夏休み ~性に目覚めた少年少女~

一色 清秋
恋愛
――私はあの夏を忘れない。 小学6年生の夏、私は祖母の家に預けられることになった。 山奥の田舎での生活、そこで出会った1人の少女との日々は、私の夏休みをひどく爛れたものにした。 そこにもう1人、顔なじみの少女も加わり……。 これは私たちの性が目覚めた、夏の日々の話。

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

人妻の危険な遊戯

龍牙 襄
恋愛
自分の性欲を持て余していた人妻の御厨 沙緒里は、パート仲間が使っていたマッチングアプリで、ちょっとしたストレス発散に若い男とベッドをともにしてしまうが、実はその男は……。 遊び感覚で始めたことがきっかけでどんどん泥沼にはまり込んでしまう転落譚です。 こちらはノクターンノベルで公開しているものと同一のものとなります。

処理中です...