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憎奪戦争編

愚者への鎮魂歌

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【ヘルメスの街のステージ】
エルデスが1曲目を歌いだす時、アリスがみんなと一生懸命に作った弁当を出し、ヨシュアと一緒に食べ始める姿を遠目に確認していた

「皆さん。1曲目は【副村長の秘めた恋】でした。ありがとうございました~」

「わああああぁぁぁ!!」
「良かったよー!」
「声美し過ぎ!」
「最高っす♪」

アリスとヨシュアの仲が上手く進展しそうな気配だったので、気持ち良く唄うことに専念できたエルデスは1曲目を歌いきり、気持ち良さそうな顔をしていた

ヨシュアとアリスも仲睦まじく弁当を食べ終わっているモノと思い、チラッと2人へ視線を向けたのだが…


「一生懸命に作ったお弁当がぁ…あうぅ…何でこんな事するのぉ!酷いよぉ!えーーーん!」
 

「うるせーな!甘いオニギリなんて作っておいて、ギャアギャア泣くんじゃねーよ!」

【北の勇者隊】の2人は全てが上手く行かなかった事をアリスが作ってきた弁当に八つ当たりした!無惨にぶちまけられた弁当を眺めるアリスは、悲しさで泣きじゃくっている

アリスを普通の街の少女だと認識している北の勇者隊の2人は、自分達が生命の危険を迎えそうなヤバい行動をしているとは…知る由もなかった。ここまでは…

「おい(怒)。てめーら、俺の女が作ってくれた弁当に、ナニしてくれてんだぁ!!!!!」

戻ってきたヨシュアは、ラデュードの肩に手を置いた

「何だ、ガキンチョ!文句あんのかコラ!!」
「バゴッ…ドオォン!!」

振り向いたラデュードは、ヨシュアの姿を視界に入れる間もなく彼にぶん殴られ、とてつもない勢いで、街の繁華街の外まで吹き飛ばされて行った!

「ひっ!?ヒイィ!!な、なんなのよ?魔王みたいなその強さはー!?アンタ!化け物なの?」

Aランクに認定された戦士ラデュードが、子供に殴られただけで遙か後方へと吹き飛ばされた!その恐ろしさから思わず「魔王」と口にしたプディング

「俺のことは、どうでも良いんだよ!!よくもアリスが作ってくれた弁当を……生きて帰れると思うなよー…怒怒怒怒怒怒怒…」

プディングはもともと炎系の魔法使いである。ライフルは本来、火薬を使って発射する物なのだが、この世界では火薬は貴重品なので筒内で小さな爆発を起こしてから発射していた

ライフルを使えるようになるまで、細かく炎系魔法を極めつつあったプディングは、爆発と白煙を巧みに使いヨシュアの追跡からギリギリ逃げ延びた



【ヘルメス街の裏通り】
「はひっ、はひー……なんなのよ、あの男の子…魔王のような気迫を感じたわよ?…はぁはぁ…まぁ、魔王なんて会った事はないけどさ…」

必死に裏路地などを巧みに使いヨシュアを撒いたプディング。彼女は息を整えた後、人混みに紛れて街の外へ逃げようと企んでいた

数分後、息を整えて水を飲んでひと息付けたのでヒッソリと逃げ出そうとしたのだが…
その先のベンチで座っているエルフが立ち上がり、プディングの方に向き直り話しかけてきた

「けっこう時間かかったみたいだけど…ようやく息は整ったのかい?大変だったみたいだね。でもさ、わたしの姉さんの弁当箱を撒き散らしたのは許せないなぁ…料理下手な姉さんが泣き言も言わずに必死に作った弁当だったんだよね。楽には逝かさせないから覚悟してよね…」
 

ヒイロの事はもちろんだが、姉妹の事も大好きなカルーアの前で、料理が苦手なのに一生懸命作ったアリスの弁当を撒き散らすシーンを見せられたカルーアは、既に全身に雷を纏(まと)わせ怒りのエネルギーが具現化している

「う、嘘よね?あの女の子って…ハイエルフのカルーアさんのお姉さん…でしたの?あの私、本当に知らなくて…謝るわ…ごめんなさ…!?あっぎゃー!!」

カルーアはプディング達の保身の為の言い訳など、これっぽっちも聞き入れるつもりなど無かったようだ
プディングはカルーアが放った雷魔法が触れた途端、全身が感電し数メートル後方に吹き飛んだ。衣服は裂け髪も焼けていたが…生命に別状はないようだ



 【優しき元魔王の息子】
「えぐっ…ひぐっ!ごめんねぇヨシュア…お弁当、ひっくり返されちゃったよぉ…えーん…」

弁当の中身を地面にまかれたアリスは、悲し過ぎて泣き止みそうになかった

「………ありがとうなアリス。俺の為に作ってくれてよ…(ヒョイ!)バリバリボリ…」

「ちょっと!?ヨシュア、良いんだよぉ!落ちたモノなんか食べなくってもぉ!!」

ヨシュアは地面に落ちて小石や砂までも付着してしまった甘いオニギリを、無理やり食べている

「ごキュ…ごきゅ…ふぅ!アリス…」

「な、なあにぃヨシュア?」

「砂糖と塩を間違えてんぜ!ソレが直せたら次はもっと美味しいオニギリになるぜ!」

ヨシュアはヤケクソ気味に流し込んだ、そのオニギリの感覚を上書きする為、買ってきたフルーツドリンクを飲んだ

ヨシュアが、かなり無理して落ちたアリスの砂糖オニギリを食べたのは、アリスもエルデスも理解していた

「ヨシュア、ありがとうねぇ。……大好きぃ!」
 

「まーな、オレ様はカッコ良いからなぁ♪」

3姉妹の中でアリスだけが、3人ものお付き合いをしてきたのだが……今アリスは初めて、男のカッコ良さに惚れて自ら「大好き」と告白した

プルージュ村で秘匿され大事に育てられてきたヨシュアも、村以外の者から初めて「大好き」と告白され照れていた
そのアリス達を眺めるカルーアとヒイロ

(姉さん。やっと自分から本気で好きだと想える相手に巡り会えたんだね。おめでとう!)
カルーアはアリスに心から祝福を述べていた



【逃げ出す2人の愚者】
ヘルメスの中心にあるコンサート会場(催し場)では、エルデスの最後になる3曲目の歌が始まろうとしていた

ヨシュアの優しさに笑顔を取り戻したアリスは、ヒイロから貰ったハンバーガーを、半分こして食べながら聞いている
カルーアとヒイロも同じようにハンバーガーを分けて食べながら、エルデスの歌を聴いていた

街中にいて手の空いてる者のほとんどは、美しい声で歌うエルデスの最後(3曲目)の歌を聞こうと沢山の人が集まっていた

しかし、そんな中。街からコソコソ逃げ出す2人。プディングとラデュード。彼らはヘルメスの街に居場所が無くなったと悟り、ヘルメスの街より更に西へと旅立って行った



【古代遺跡を囲む山岳地帯】
ヘルメスの街から西へ300km以上離れた森林の奥。日も沈もうとしている時間に、そんな山の中を歩く若い女性達

「ふHAHAHA!遂におパンツとやらが眠る遺跡の入り口に辿り着いたにぇ!!」

「ミーコ様。オーパーツです。おパンツではありませんよ(照)」

「こんな山奥にバンツ隠して何が楽しいんだか…考えたら分かりますよね?はぁ……」

「ふえっ!?…………でゃ…でゃまれ!」

人が立ち入らない山岳地帯に、いかにも怪しい3人の女が古代遺跡への入り口を見付けていた
ソコに眠るモノは?
彼女達の目的は?



続く
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