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憎奪戦争編
初心者な2人
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【ハチマン砦南方の森】
「あはは!【ケツ穴イン】って恥ずかしい名前なのね…クスクス…あはははは(笑)」
リキュールは助けた少女の名前を聞いて、ケラケラ大笑いしていた。何しろ昨日は、気持ちが早りカルーアと生命のやり取りをして大敗して、この先の目処も立たずにいたのだから…
「ケチュアでナインですって!!それに、あなたの名前もお酒じゃないですか!お互い様でしょ?」
「いやいや…私の名前は別に恥ずかしくないよ。お酒の名前は恥ずかしくないからね」
リキュールはヘルメスの街を出て初めて会った少女なのに、不思議と警戒心も抱かずに接していた
「ところでさ、貴女さっき生命を狙われてたけど……ナニか犯罪でもしたの?」
ようやく笑いが収まってきたリキュールは、彼女に疑問を投げ掛けた
「ワタシが犯罪!?とんでもないです!むしろワタシ達は被害者なんですよ。ワタシはずっと東の方のスズカの街に居たのですが…
オヅベルド家の策略に騙されおたずね者として、街を追われてしまいました。遠い親戚にあたるシュバッツ家を頼ろうと、イシス王国に向かおうとしていたところを刺客に狙われたのです」
「ふーん…そうなんだ…で、イシス王国に行って助けてもらえたとしたらさ…その後どうするのさ?」
「無念の死を遂げさせられた父と母の仇を討ちます!ワタシはその為にイシスに行かなければなりません!」
(ふーん…話の筋は通ってると思うけど…本当かなー?仮に本当だとしても、この人お嬢様みたいだし…同行しても良いのかな?)
「余計なお世話かも知れないけどさ…貴女がイシスの協力を得られて故郷に帰っても、返り討ちに逢うのが関の山じゃないの?そもそも、貴女1人じゃイシスまで辿り着けないんじゃないのかい?」
「それでも!ワタシは行かなければなりません!両親の無念を晴らさなくては!」
年齢は10代後半に入った辺りだろうか?人生経験7日のリキュールから見ても、この年齢までスズカの街で良いとこの、お嬢様だった彼女に仇討ちなど果たせないのは明らかだった
だが、それでも彼女は、是が非でもイシスに行こうとしているようだ
「……お嬢様。魔法使いの護衛は要りませんか?」
「えっ!?一緒に来てくれるの?」
散々人の名前を弄って笑い転げていたリキュールが、初対面の自分に着いてきてくれるとは思いもしなかったケチュアは驚いた
「ちょうど私もイシス王国に行こうとしていた所だし……その、恥ずかしいんだけどさ…考え無しに手ぶらで出発して…何も持ってないのよ。食料とか、お金とか…」
「呆れた……ワタシも人の事は言えないけど…アナタも大概冒険初心者なのね…いいわ。馬車は無事だし、慌てて詰め込んで出発したけど…女2人なら数日暮らせるだけの水とお金があるわ。ワタシはソレを提供してアナタをボディガードで雇うことにするわ。それでどうかしら?」
「決まりだね!改めてリキュールだよ、精霊魔法ならアテにしてくれて良いよ。貴女の腕はどの程度なの?……おっ!?騒いでたからおびき寄せちゃったかな?」
「えっ?ナニが?」
先程の戦闘の騒音を聞きつけたのか?森の中から2匹のサーベルタイガーが現れた。負傷者や死体を漁(あさ)りに来たのだろう
「ちょうど良いわね。ケチュア、貴女の腕前を魅せてよ。危なくなったら助けに入るからさ」
「えっ!?でも……」
出会ったばかりの女だけの2人旅ともなれば、お互いの実力の程を知っておくのは当然必要な事なのだが…
………………………………………………………………
【雷光柱(ジャムルエッヂ)】✕2
「きゅうぅぅぅ…」
「ちょっと…大丈夫かい?」
大怪我こそしていないが、ぼろ雑巾の様にやられてしまったケチュアが倒れている
「だから言ったじゃない!ワタシはど素人だって!!…死ぬかと思ったわよっ!!」
「悪い悪い…まさか、貴女がそこまで弱いとは思わなくてさ…あはは(汗)」
まさにケチュアは、領主のお嬢様が一応カタだけは習っていた程度の超ど素人で、Cランク冒険者辺りの獲物であるサーベルタイガーにさえ、まるで歯が立たなかったので…慌ててリキュールが倒すことになった
【食事休憩】
「ほら焼けたよ!」
「まだ身体が傷んでて、上手く食べれませんわ…」
倒したサーベルタイガーの体毛の皮をむしり、内蔵を取り出してからリキュールの魔法で丸焼きにした物に、塩コショウをかけた肉を晩ご飯にした
「傷は魔法で治してあげたでしょ?グダグダ言ってないでキッチリ食べないと、明日以降ツラくなるよ?」
「Boo…分かってるけどさ…それにしても、リキュールは本当に冒険初心者なの?雷系の低級魔法だったよね?にしては威力も速さも物凄かったんだけど?」
「本当さ。実戦も今ので2回目だよ。ところでさ、そんなんでイシス王国に仇討ちの協力を頼む。って本気なの?」
「当たり前でしょ、本気よ!何か問題でもあるの?」
お嬢様で蝶よ花よ。と育てられたケチュアは、自分の考えの甘さに全く気が付いていない
「大ありさ。まずイシス王国からすれば、ケチュアを保護するとオヅベルド伯爵家だっけ?ソコと事を構える必要がある訳だし…ダイイチやって来たのが、サーベルタイガーにカスリ傷ひとつも付けられないお嬢様。しかも、立場を追われ地位も金も持っていないんだよ。そんな厄介者を迎え入れたら、国内で賛成派と反対派で揉めるんじゃないかい?」
「うっ!確かに…ワタシに協力してもイシス王国に何もメリットが…無いわね…甘い考えだったわ…」
感情論が先行しすぎて、モノの道理が通らない事に気付いてなかったケチュアは、自分の愚かさに気が付き激しく落ち込んだ
「ゆっくり行こうか?」
「えっ!?どういう事ですか?」
「馬車が無事だから…飛ばせば2日でイシス王国に着きそうだけど、ゆっくりケチュアのレベルアップをしながら数日掛けて行こう。って事よ」
「良いの?アナタにそこまで付き合わせてしまっても?」
リキュールがあまりにもケチュアに都合良く付き合ってくれるので、逆にナニかあるのでは?と心配になってきたケチュア
「良いよ。どうせ行く宛ても無い1人旅のつもりだったんだからさ。旅は道連れ世は情け…だっけ?…そうね…ケチュアの事を個人的に気に入ったから。それが理由なんだけど?」
「本当に良いの?……ありがとうリキュールさん。神よ…この出会いに感謝致します。本当に宜しくねリキュールさん」
都合良過ぎる出会いに神に感謝を捧げるケチュアと、初めて気楽に付き合える仲間と知り合ったリキュール
2人はゆっくりとイシス王国を目指した。彼女らが行き着くイシスで待ち受けるモノは…
続く
「あはは!【ケツ穴イン】って恥ずかしい名前なのね…クスクス…あはははは(笑)」
リキュールは助けた少女の名前を聞いて、ケラケラ大笑いしていた。何しろ昨日は、気持ちが早りカルーアと生命のやり取りをして大敗して、この先の目処も立たずにいたのだから…
「ケチュアでナインですって!!それに、あなたの名前もお酒じゃないですか!お互い様でしょ?」
「いやいや…私の名前は別に恥ずかしくないよ。お酒の名前は恥ずかしくないからね」
リキュールはヘルメスの街を出て初めて会った少女なのに、不思議と警戒心も抱かずに接していた
「ところでさ、貴女さっき生命を狙われてたけど……ナニか犯罪でもしたの?」
ようやく笑いが収まってきたリキュールは、彼女に疑問を投げ掛けた
「ワタシが犯罪!?とんでもないです!むしろワタシ達は被害者なんですよ。ワタシはずっと東の方のスズカの街に居たのですが…
オヅベルド家の策略に騙されおたずね者として、街を追われてしまいました。遠い親戚にあたるシュバッツ家を頼ろうと、イシス王国に向かおうとしていたところを刺客に狙われたのです」
「ふーん…そうなんだ…で、イシス王国に行って助けてもらえたとしたらさ…その後どうするのさ?」
「無念の死を遂げさせられた父と母の仇を討ちます!ワタシはその為にイシスに行かなければなりません!」
(ふーん…話の筋は通ってると思うけど…本当かなー?仮に本当だとしても、この人お嬢様みたいだし…同行しても良いのかな?)
「余計なお世話かも知れないけどさ…貴女がイシスの協力を得られて故郷に帰っても、返り討ちに逢うのが関の山じゃないの?そもそも、貴女1人じゃイシスまで辿り着けないんじゃないのかい?」
「それでも!ワタシは行かなければなりません!両親の無念を晴らさなくては!」
年齢は10代後半に入った辺りだろうか?人生経験7日のリキュールから見ても、この年齢までスズカの街で良いとこの、お嬢様だった彼女に仇討ちなど果たせないのは明らかだった
だが、それでも彼女は、是が非でもイシスに行こうとしているようだ
「……お嬢様。魔法使いの護衛は要りませんか?」
「えっ!?一緒に来てくれるの?」
散々人の名前を弄って笑い転げていたリキュールが、初対面の自分に着いてきてくれるとは思いもしなかったケチュアは驚いた
「ちょうど私もイシス王国に行こうとしていた所だし……その、恥ずかしいんだけどさ…考え無しに手ぶらで出発して…何も持ってないのよ。食料とか、お金とか…」
「呆れた……ワタシも人の事は言えないけど…アナタも大概冒険初心者なのね…いいわ。馬車は無事だし、慌てて詰め込んで出発したけど…女2人なら数日暮らせるだけの水とお金があるわ。ワタシはソレを提供してアナタをボディガードで雇うことにするわ。それでどうかしら?」
「決まりだね!改めてリキュールだよ、精霊魔法ならアテにしてくれて良いよ。貴女の腕はどの程度なの?……おっ!?騒いでたからおびき寄せちゃったかな?」
「えっ?ナニが?」
先程の戦闘の騒音を聞きつけたのか?森の中から2匹のサーベルタイガーが現れた。負傷者や死体を漁(あさ)りに来たのだろう
「ちょうど良いわね。ケチュア、貴女の腕前を魅せてよ。危なくなったら助けに入るからさ」
「えっ!?でも……」
出会ったばかりの女だけの2人旅ともなれば、お互いの実力の程を知っておくのは当然必要な事なのだが…
………………………………………………………………
【雷光柱(ジャムルエッヂ)】✕2
「きゅうぅぅぅ…」
「ちょっと…大丈夫かい?」
大怪我こそしていないが、ぼろ雑巾の様にやられてしまったケチュアが倒れている
「だから言ったじゃない!ワタシはど素人だって!!…死ぬかと思ったわよっ!!」
「悪い悪い…まさか、貴女がそこまで弱いとは思わなくてさ…あはは(汗)」
まさにケチュアは、領主のお嬢様が一応カタだけは習っていた程度の超ど素人で、Cランク冒険者辺りの獲物であるサーベルタイガーにさえ、まるで歯が立たなかったので…慌ててリキュールが倒すことになった
【食事休憩】
「ほら焼けたよ!」
「まだ身体が傷んでて、上手く食べれませんわ…」
倒したサーベルタイガーの体毛の皮をむしり、内蔵を取り出してからリキュールの魔法で丸焼きにした物に、塩コショウをかけた肉を晩ご飯にした
「傷は魔法で治してあげたでしょ?グダグダ言ってないでキッチリ食べないと、明日以降ツラくなるよ?」
「Boo…分かってるけどさ…それにしても、リキュールは本当に冒険初心者なの?雷系の低級魔法だったよね?にしては威力も速さも物凄かったんだけど?」
「本当さ。実戦も今ので2回目だよ。ところでさ、そんなんでイシス王国に仇討ちの協力を頼む。って本気なの?」
「当たり前でしょ、本気よ!何か問題でもあるの?」
お嬢様で蝶よ花よ。と育てられたケチュアは、自分の考えの甘さに全く気が付いていない
「大ありさ。まずイシス王国からすれば、ケチュアを保護するとオヅベルド伯爵家だっけ?ソコと事を構える必要がある訳だし…ダイイチやって来たのが、サーベルタイガーにカスリ傷ひとつも付けられないお嬢様。しかも、立場を追われ地位も金も持っていないんだよ。そんな厄介者を迎え入れたら、国内で賛成派と反対派で揉めるんじゃないかい?」
「うっ!確かに…ワタシに協力してもイシス王国に何もメリットが…無いわね…甘い考えだったわ…」
感情論が先行しすぎて、モノの道理が通らない事に気付いてなかったケチュアは、自分の愚かさに気が付き激しく落ち込んだ
「ゆっくり行こうか?」
「えっ!?どういう事ですか?」
「馬車が無事だから…飛ばせば2日でイシス王国に着きそうだけど、ゆっくりケチュアのレベルアップをしながら数日掛けて行こう。って事よ」
「良いの?アナタにそこまで付き合わせてしまっても?」
リキュールがあまりにもケチュアに都合良く付き合ってくれるので、逆にナニかあるのでは?と心配になってきたケチュア
「良いよ。どうせ行く宛ても無い1人旅のつもりだったんだからさ。旅は道連れ世は情け…だっけ?…そうね…ケチュアの事を個人的に気に入ったから。それが理由なんだけど?」
「本当に良いの?……ありがとうリキュールさん。神よ…この出会いに感謝致します。本当に宜しくねリキュールさん」
都合良過ぎる出会いに神に感謝を捧げるケチュアと、初めて気楽に付き合える仲間と知り合ったリキュール
2人はゆっくりとイシス王国を目指した。彼女らが行き着くイシスで待ち受けるモノは…
続く
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