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化け物たちとの遭遇編

目覚めるアリス

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【エルドラ山脈岩石帯】
「はぁ…はぁ…くうぅ…」

アリスはかなり追い込まれていた
多対一の戦いの経験が無いわけでは無いが、スケルトンモンスター12体とメイジゴースト。合計13体をひとりで相手にするなど、全く経験のない事だった

「えやぁっ!……せいっ!」

スケルトンモンスターは必ず複数体が同時に襲いかかって来た。1体を最小限のチカラで捌き、また別の相手をする防御主体の戦い方を要求されていた

「き、きついぃ…カルーアやエリエスさんは…何度も多対一を戦ってたのに…アタシはこんなにも疲労しているぅ…」

何度も攻撃をされて高い精神集中を必要とするので、その疲労から早くも肩で息をしているアリス。彼女が大きく崩れたら、メイジゴーストが襲って来てアリスの血液を固めようとするだろう

「そうなったら負けちゃうぅ…アタシが負けたらぁ、エリエスちゃんも…どうしたら良いのぉ…」

アリスの心に迷いが生じた!
スケルトンモンスターの司令塔であるメイジゴーストは、その隙を逃さなかった

「フシャァァ!」
「シュアァ!」

アリスを囲む敵のうち、彼女の背後の4体が一斉に襲って来た!

「きやうぅっ!?」

防ぎきれなかったアリスは、体当たりを2体から浴びせられ身体が大きくグラついた

「ギッ!…ギギィ…」

その姿を見たメイジゴーストが襲いかかろうとしたが、動きを止めた

「あっ、危なかったぁ…」

今の攻撃でアリスが倒れでもしたら、メイジゴーストが飛んで来ただろう。アリスはギリギリの所で倒れずに踏みとどまった

(でもでもぉ…その内にぃ、やられちゃうよぉ…どうしたらぁ…)

アリスはダメージを受けた左肩を見た
(ここは前に師範代から攻撃を受けた場所だぁ…)

極度の緊張感がアリスに、地球で沖田師範代から多対一の戦闘の指南を受けていた時の、師範代の言葉を思い出させていた

「アリスちゃん。ひとりで居るときに大勢に囲まれた場合どう戦う?」

「ふえぇ!ど、どうしたら良いんだろうぅ?」

「答えは簡単だ。動くのを止めて相手を良く見てればイイ。数で有利な多数側は油断が生まれる。そうなればコチラから仕掛けなくても敵の方から動いてくる。勝利が間近に迫った時ほど、相手に隙が出来るものなんだ。ソコを全力で叩けば良い」


さっきまで「追い込まれてる。ヤバい!このままじゃ負ける!」
と、そう顔に書いてあったアリスの表情が一変した

「黙っていてもぉ、敵は勝手に動いてきてぇ、自分から隙を作るぅ…ふぅぅ…」
 

アリスは小声で師範代から教わった言葉を口に出した。そして呼吸を整え静かに闘気を練り上げ始めた

「フシャアァ!」

痺れを切らしたのか?スケルトンモンスターが5体がかりで一気に襲って来た!その時アリスは細めていた眼を大きく開き、静かに周囲を見渡した

「ここだぁっ!!」

アリスは5体の内、僅かに離れた位置から来るスケルトンモンスターを叩き斬った!

「ヒシャアァっ!」

残り4体がアリス目掛けて方向転換して突っ込んでくる

「ぐいぃぃぃんっ!」

獣人(ヴォィド)化しているアリスは、一気に加速しその4体の背後を取った

「ガキイィン!バキイッ!」
アリスは2本のソードを巧みに操り、僅か2檄で4体を前方に叩き伏せた

「今だっ!はあぁぁ…【天破豪塵斬(テンハゴウジンザン)】!!」

アリスは5体を1箇所に重ねる様に倒すと、ソコに向けて沖田流剣術の奥義を叩き込んだ!

「バッゴォーン!」
折り重なった敵の中心で奥義を炸裂させ、5体のスケルトンモンスターはその衝撃で木っ端微塵に破壊された!

(凄いですね!あんな戦い方をいつの間に覚えていたのでしょう?それとも、追い込まれて種族の本能的な部分が刺激され、覚醒したとかでしょうか?)
「きゃーっ!♫流石はアリスお姉様ですわっ!」

今まで自信が無い為、持てるチカラを活かしきれずに戦っていたアリスが突然、覚醒した様な素晴らしい動きにロマーニャは驚き、エリエスは黄色い声で歓喜した

「はぁ…はぁ…やれたぁ!」

見事に隙を作ることなく、一気に5体を撃破したアリス。その姿にメイジゴーストが驚いている時…

(エリエス!解析完了です。解呪しますっ!)

「良し!行けるっ!」

エリエスは凄まじい速さでメイジゴーストの背後に迫った!

「ギッ!?」

背後の凄い音に気が付いたメイジゴースト。振り返るとエリエスが、もうすぐ背後まで迫りエクスカリバーを振り上げていた

「ギイィィィ!!」

メイジゴーストはエリエスに肩口を斬られた。エリエスとアリスに挟まれる形となり、一気に形勢が変わったと見るや否や、メイジゴーストはあさっての方向に飛んで逃げて行った

「やりましたわ!流石はアリスお姉様、最高ですわ♪カッコ良かったですわ♫」
 

「くぎゅ!?ぷはっ、ちょっとエリエスちゃん、そんなに抱きつかれたら息ができないよォ…」

たかがゴースト。と高を括って大ピンチを迎えたエリエスだが、その状況が敬愛するアリスを覚醒させた。その凛々しくも可愛い姿に歓喜したエリエスは、アリスと抱き合い喜んでいた



【一軒家室内】
「たっだいまぁ…」
「戻りましたですわ」

「アリスお姉様!?その怪我はどうなされたのですか?大丈夫ですの?」
 

アリスがエリエスに肩を借りて戻って来た。肩の傷口から血が流れているのを見付けたサーシャが慌てて走り寄り、天使族の回復魔法でアリスの治療を始めた

……………………………………………

「もぅもぅもぅ!!」

「エリエスさん…牛さんの真似かい?」

「違いますっ!あの時のアリスお姉様の凛々しい戦い方!おふたりにも是非、見てもらいたかったですわ!」

大ピンチを乗り切ったアリスの素晴らしい戦いに心を奪われたエリエスは、カルーア達が聞いてもいないのにその時の様子を多少盛りながら、熱く熱くカルーアとサーシャに語ったのだった


「ふにゃぁぁ!お腹減ったぁ!サーシャのご飯が食べたいよぉ!」

素晴らしい戦いを繰り広げたアリスは、天使族のサーシャの回復魔法のおかげで、僅か数十分ですっかり回復し、ご飯を要求していた

「アリスお姉様の大好きなハンバーグ定食にしましたの!お腹いっぱい召し上げって欲しいですの!」

「わーい、やったぁ!いっただきまぁすっ!!」

「やれやれ……エリエスさんの話だと、かなり成長したように聞こえたけど…やっぱり姉さんは姉さんだね。あははは(笑)」

「だーってぇ…すっごく張り切ったら、めちゃくちゃお腹空いたんだもぉん!」

末っ子のサーシャが用意してくれた料理を、口いっぱいに頬張り食べるアリスを眺めるエリエスと、長女の成長を聞かされ喜ぶ妹達
食欲が満たされた彼女達を、窓の外から眺める先程のゴーストと、それとは別の存在が彼女達を静かに見詰めていた



続く
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