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化け物たちとの遭遇編

愛を語る者たち

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【山頂の一軒家】
2人で一軒家の周りを警戒しながら、認識阻害(ハードゥーン)の為の魔法陣を描くカルーア。そして彼女の護衛をするアリス

「あのねぇカルーア…」

「…ん?何だい姉さん?」

「本当にカルーアは凄いねぇ。攻撃魔法も魔女達とおんなじくらいすんごいしぃ、こうやって魔物避けの結界まで張れちゃうんだもん…アタシ…姉として誇らしいんだけどぉ…」

「ストップだよ姉さん。あのね…姉さんは真面目過ぎるんだよ。ヨシュア君にキツく言われた事を気にしてるんだよね?」

「う、うん…アタシお姉さんなのに、大事な場面とかでさぁ…いつもアタフタして全然頼り甲斐無くてさぁ…駄目だよねぇ…」

普段、普通に話している内容はあまり記憶に残らないアリスだが、重い空気とかキツく言われた言葉は逆に頭にこびり付いて拭い去れないアリス

「わたしはね、姉さんは今のままでも十分良いと思ってるんだよ」

「で、でも!こんなアタシじゃイザ!っていう時に役に立たないしぃ…」

「そういう場面は、わたしやサーシャ、もしくはヒイロに頼れば良いんだよ。姉さんは別の場面で輝けるんだからさ!」

「そうかなぁ?アタシにそんな所有るぅ?」

義理の妹であるカルーアの言葉を聞いても、納得のイカない。自信が持てないアリス

「姉さんは難しい場面は深く考えない方が良いと思うよ。姉さんの最大の魅力は笑顔なんだからさ。逆にどんな時でもその笑顔で、みんなを明るく照らして元気付けてくれたら良いんだよ」
 

「そうなのぉ?」

「まだヨシュア君は姉さんと付き合いが浅いから、その辺が理解出来てないんだよ。姉さんの魅力は、明るく元気に一生懸命に頑張る!なんだからさ…ところで姉さん。ヨシュア君の事どれくらい好きなんだい?」

「どれくらいってぇ…うーん…まだよく分からないよぉ…ヨシュア君もアタシの事をね、本当に好きになってくれてるのかも自信が持てないんだぁ…」

自分自身はヒイロとの恋に人生を捧げる!と、腹を括(くく)っているカルーアからしたら、ヨシュアが4人目の男性でありながら、未だに乙女のように悩む姉のアリスの事が、逆に可愛く見えるようだ

「もうひとつ。姉さんの良い部分に気が付いたよ」

「まだ有ったのぉ?本当にぃ?」

「乙女のような可愛さだよ(笑)」

「へっ!?えぇ!…あっ!カルーアってばぁ、アタシの事からかってるんでしょ?もぉ!プンスカ!」
 

Sランク級の魔法攻撃に加えて、生活に便利な魔法まで使える次女のカルーア。末っ子でありながら、賢者たちを軽く凌駕する回復魔法が使えるサーシャ。そんな妹たちの長女である事にプレッシャーを感じていたアリスだが…カルーアの言葉で緊張から解放されたようだ


「そうそう!姉さんは元気な方が良いんだよ。わたしはそう思うな」

「うん、分かったぁ。ありがとうねぇカルーア!…ところでさぁ…」

「( „❛ ֊ ❛„)んっ、何だい姉さん?…きゃあ!?」
 
突然アリスはカルーアを押し倒した

「アタシなりにカルーアにお礼してあげるねぇ♪」

「な、何をして…ちょっと!どうして服を脱がすのさ?」

「アタシの獣人族流マッサージは、みんなに好評なのよ。カルーアにもしてあげるね♪」 

「だ、駄目だって姉さん!サーシャ達が来ちゃったらどうするのさ!?…んあっ!!あ、はぁはぁ…そんなとこ触ったら声が出ちゃうよ…」
 

「うん♪カルーアの可愛い声、いっぱい聞かせて欲しいなぁ♫」

「そんな~…」

サーシャのようなエッチ心から来るイタズラとは違い、正式にアリスの部族に伝わるというマッサージを、山頂にて施されるカルーア
だが、アドルや佐々木たちとの交流を経て、そのマッサージは少しずつ内容が変化していた。半裸に剥かれて全身をくまなく触られると、不覚にもカルーアは気持ち良くなってしまっていた

……………………………………………

「ふぅ…はい、終わり!どうだった?」

「き、気持ち良かったよ姉さん…でも、今度するなら屋内で…誰も居ない時にお願いするよ」

「うん。分かったぁ!カルーアには毎日助けられてるからぁ、何時でも遠慮なく言ってねぇ。本当にありがとうね♪」

「…どういたしまして。さて結界を張るよ……【認識阻害(ハードゥーン)】!」

予想外の姉から熱くて気持ち良い恩返しを受けさせられてしまったカルーア

今夜はあの一軒家に泊まり早めに寝て、明日の朝から【ハイミスリル】を探す予定なので夜の間、魔物に襲われない為の結界を貼り2人は一軒家の中に戻って行った



【ベイ城】
「まさかあの有栖が結婚しよるとはなぁ…分からんものだ……結婚か…そんなに良いものなのか?」

ベイ・ガウザーは戦士と魔法使いの畑は違えど、自分もアリスも強さの極みを目指している者同士だと思っていたので、自分同様にアリスも結婚など考えていないものだと思っていた
それだけに、唐突な彼女の結婚報告に考えさせられていた。考えながら城の廊下を歩いているベイの視界に、外庭で魔法の稽古を付けている有栖達を見付けた


「さてあんた達。今から私が魔法を板状に出すから魔力を純粋なエネルギーとして放出して、私の魔法板を押し込んでみなさい!」

そう言うと有栖は、右手の人差し指からロクに魔力集中もせずに、「ポワっ」と魔法エネルギーを板状に展開した

「アリス殿。参ります…うおー!」
「とりゃーっ!」
「ふんぬぅぅ!」
「えーーいっ!!」

参加したのはイシス攻略戦の際に、ベイに直接連なり戦ったベイ軍の主力魔導師達だったのだが…

「……あんた達、それで全力なの?なっさけないわねぇ…」

ベイ軍の主力魔導師達が渾身のエネルギーで、巨大な魔法を出して必死に押そうとするも……有栖が軽く出した小さく薄っぺらいエネルギーの板は、ピクリとも動かなかった

「ぜはぁ…もう…無理です…」
「魔力がカラッポですぅ…」
「スっからカンタロウよぉ…」

「だらしないわね。次ぃ!誰でも良いよ、かかって来なさい!」

(ほお?本当に真面目に働いてくれるのか?まだ半信半疑だったが…有栖の奴、真面目にやってくれている様子だな。…んっ?)

有栖達の邪魔をしないようにと、少し離れた場所からその様子を眺めていたベイ。次に有栖に挑むのはアナンナのようだ

「有栖様、お願いします」

「アナンナか…若くても魔導師達の長を拝命しているんでしょ?ガッカリさせちゃ嫌だからね!」

「参ります…うぅん…」

アナンナが出した魔力エネルギーは、今までの魔導師達の物より遥かに密度が高く輝いていた

「はぁはぁ…そんな…」

「ふむ。アナンナの魔力は飛び抜けて高かったわね。まぁ…私に脅威を感じさせることは無理みたいだけどね(笑)」

いたのだが…最初に軽く出した有栖の魔法板は数十人の魔法エネルギーを浴びていたにも関わらず、魔導師長のアナンナの全力の魔力を持ってしても微動だにしない



【休憩室】
有栖は20年もの間、認識阻害で行方不明だった為、初めて彼女と相対したアナンナ

「はぁ…あそこまで勝負にもならないなんて…」

5歳の時ロックに拾われベイの城に来てから、遊びもせず怠ける事もせず一心不乱に魔力を磨いてきた彼女は、【消去の魔女】が相手でもカスリ傷くらいは付けられるくらいには、強くなったと思っていたのだが…まるで歯が立たない現実を突きつけられ沈んでいた

「どうした?有栖の強さに自信を無くしているのか?」

「あっ!?ベイ様…あの…私に何か御用でしょうか?」

悔しさで眼に涙を溜めていたアナンナは、思わずベイから顔を背けた

(いつも諦めること無く真面目に努力していたコイツも、今回ばかりは流石に傷付いたのか?)

「稽古で相手にもならなかったから落ち込んでいるのか?」

「いえ……あの、その通りです…私は…戦争孤児になってからずっと、この城に仕えながら魔法一筋に磨いていましたので…相手が有栖様とは言え、流石に悲しいです…」
 

「気にするな。有栖が規格外に強過ぎるだけだ。お前は十分に強い。自信を持て!」

「私を心配してくださるのですか?…ありがとう、ございます。身に余る光栄です…」

間もなく日が沈もうとしていた
彼女の背後の奥で、沈もうとしている陽がアナンナを照らしていた

(ん?そう言えば不思議だ。何故俺はコイツの心配をしている?強き者とは自分自身で昇れる者の筈…強者になれる者を慰める必要など…)

「ベイ様、どうかしましたか?」

急に黙り込み何か悩んでいる感じのベイを、下から覗き込み質問したアナンナ。その瞳がベイに特別な感情を芽生えさせた

(そうか!俺はアナンナの事を…)

「アナンナよ、ひとつお前に頼みがある。嫌なら断ってくれてよいのだが…」

「はい。何でしょうか?私に出来ることなら何でも仰(おっしゃ)ってください」

ベイは1回深呼吸した。そして真剣な顔になりアナンナを見詰めて告げた

「アナンナよ。俺の子供を産んでくれ!」

「……えっ!?わたしが…ですか?」


有栖の結婚報告がベイに影響を与えたのか?単に気付くキッカケになったのか?エルドラ山脈とベイの城、かけ離れた2つの場所で愛について語らう者達が居た



続く
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