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化け物たちとの遭遇編

魔女が眺める先

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【アレクス城】
消去の魔女【徳川 有栖】と【一条優輝】の結婚祝いは、朝まで大盛り上がりの大宴会となった

「んうぅ…ふあぁ…朝かぁ…すっかり明るくなっちゃってるわね。ほぅら優輝、起きなさいよ……ねえってば!」

陽は高く登りあと小一時間程で昼になろうか。という時間に、ようやく有栖は目を覚ましたが…

「すんましぇん…おれ…もう飲めないっす…」

「良い根性してんじゃねーか!」
「消去の魔女を嫁にするとか大胆だな!」
「おめでとうございます」
「良かったですね」

などとアレクスや城の師団長クラスから散々祝い酒を飲まされた優輝は、床にうつ伏せになったまま眠っていた

「良い加減に起きなさいって!!」
 

「ドゲシッ!」起き上がった有栖は、優輝のケツの穴を狙うように鋭い蹴りを入れた!

「はぐあっ!?」

ケツ穴への鋭い痛みで叩き起された優輝は悶絶した。彼の周りには優輝と一緒に飲んでいた兵も寝転がっている
「ガチャ」ドアを開け有栖達が居る大客間に何人か入ってきた

「ハァイ!有栖っ目が覚めた様ね」
「ヒヒィン!」
「うあーぅ、キャッキャッ!」

有栖の親友のフュールと、その弟子のエーデが馬の格好で次期魔王のMaybeを乗せて入ってきた

「おはようフュール、エーデ。おはようございますMaybe様」

有栖はエーデに馬乗りしてご機嫌なMaybeの頭を柔らかく撫でた

「皆さん起きられましたか?昼食の用意が出来ましたよ。有栖様まだお見えですね?良かった!気合い入れてご用意させていただきましたので出発前に食べていってくださいね!」

ローナは本来Maybeの教育係だったのだが、彼女がエーデに懐いたのでローナは最近、主にMaybeの食事や洗濯など家庭的な業務をこなしていた



【出発】
「ご馳走様ローナ、美味しかったわ。フュールじゃあ、そろそろ行くね」

「ん。またいつでも遊びに来なさいよ。Maybe様と待ってるわ」

消去の魔女はかつて【最強の魔女の座】をかけて競い合った親友フュールに、いっときの別れを告げた

「フュールさん、アレクスさん、今回はお世話になりました」

「消去の魔女の旦那なんて立場、どこまで修行したら世間から認められるか?検討も付かないが…ま、頑張れよ!」

優輝は最初、この城の主(あるじ)であるアレクスの威圧に怯んでいたが、ひと晩語り合い飲み明かしたことで、その緊張は和らいでいた

「ベイ・ガウザーの所に行くんだよね?嫌だな…イシス防衛戦の時、あいつミクイの事、視えてた感じなんだよな。怖いわぁ」

アサシンのミクイもミントスも、かつて自分達に恐怖を与えた者が統べる城へ向かう事に緊張している

「ベイ・ガウザーだって、アレクスさんの様に接すれば分かり合えるさ!さぁ、行こうか有栖!」

優輝はアレクスと打ち解けれた事で、不安が少し軽くなっていたので出発を促したのだが…有栖は無言で南西の方角を凝視していた

「有栖、どうかした?」

「ヘルメスの街…いや、もっと西かな?魔物達の長とも言えるほどの存在の波動を感じるわ」

有栖は本気の戦いの時だけ見せる、鋭い目付きで南西の方角を眺めている

「本当…霊長類の長、ドラゴン族みたいね。しかも、かなり上位種の存在を感じるわね」

この位置から古代遺跡から発せられるブラックドラゴンの波動を感知出来たのは、有栖とフュールだけだった

「ヘルメスの街の西?あの三姉妹達が討伐に出ているのかな?……有栖、今から助けに行く?」

何度もアルバート家の三姉妹と絡んだ優輝は、有栖達と助けに行く事を考えたのだが…

「はぁ!?何で?」

有栖の返事は、そんな事を何故しに行くの?という感じだ

「いや、だって、彼女達が危ない目にあってるんじゃ?」

「だとしてもよ!ドラゴンともなれば、この世界の頂点に立つ者よ。言わば霊長類の長な訳よ。彼らの意思は崇高なモノだわ
仮にあの三姉妹達が戦っていたとしても、私たちが加勢しに行く理由にはならないわ。彼女らは彼女らの理由でドラゴンと対峙してるハズよ
さっ!私たちはベイの城に向かうわよ!…ん?…ミクイだっけ?どうかした?」

ミクイは三姉妹の末っ子サーシャの事が大好きで堪らない。個人的にはこのアレクス城からでも、無我夢中で助けに行きたいところだ

「サーシャちゃんの事が心配…けど…行かない!ミクイは優輝の護衛が第1だから…天使族のサーシャちゃんなら大丈夫なハズだし…」

誰から見てもミクイが、かなり無理をしているのは明らかだった

「と、彼女は言ってるけど、優輝はどう思っているの?」

ミクイは優輝の護衛なので、最終的な判断を彼に委ねた有栖

「ミクイ良いのか?………そうか、なら俺たちはベイさんの城に向かおうか」

「うん、それでイイ!」

サーシャの事を大好きだからこそ、彼女を信じて助けに行かない判断をしたミクイ

「そう言えばさフュール。アンタの妹さん、長いこと見てないわね?」

「あぁ、あの子は1箇所でジッとしてるのが我慢出来ないみたいだから、人間の街でフラフラ遊んでるんじゃないかしら?誰かさんみたいにね(笑)」
 

次期魔王であるMaybeをその腕に抱き抱え笑いながらそう言うと、フュールは悪戯っぽく有栖を見詰めた(彼女のフルネームはフュール・アシェスタ)

「あはは(汗)余分なことは聞くもんじゃないわねw……んじゃ、ベイの城への転移GATEを開くわ。フュール…元気でね。エーデちゃん、早く1人前になりなさいよ。Maybe様、また近いうちに遊びに来ます。アレクス、また何か土産を持ってお邪魔するわね」

有栖は皆にしばしの別れを告げ、GATEを開いた

「エーデは!カルーアには勝てなくても、その男よりかは早く1人前になるんだからっ!」

7人の魔女のうち、年齢も実績も浅いまま魔女の仲間入りをしたエーデは、尊敬する有栖、敬愛するフュールの様に早く1人前になる事を誓った

「優輝くん、いつまでも有栖の尻に敷かれてんじゃないわよ!」

親友の有栖と結婚した優輝にハッパをかけるフュール

「頑張りますっ!」

力強く応えた優輝だが…

(本当に死ぬ気で頑張りなさいよ。ベイのスパルタ教育は魔族1過酷なんですからね)

フュールはベイのスパルタ方針を知っているが、敢えて口には出さず彼らの出発を見送った



続く
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