上 下
82 / 170
化け物たちとの遭遇編

ヘルメスの街にご挨拶

しおりを挟む
【工房の翌朝】
ヒイロは昨夜あれから自分の部屋でカルーアと共に寝た
(カルーア達と出会って半年過ぎだが、この家族に馴染んでいたんだな。出会った頃のカルーアなら昨夜あんな感じじゃなかっただろうな…)


……昨夜、ヨシュアに覗かれた直後……

「うぐっ、ひぐ…わ、分かったよ。ワザとじゃないんだね。もう、良いからさ…」

「ほ、本当に悪かった…」

カルーアは姉妹にハグされ、頭を撫でられヨシュアに裸を見られた悲しさを慰められていた

「ヒイロ、今夜はずっとこうしてて…お願いだよ…ありがとう♪…大好き…だよ……」
 

そう言うとカルーアはヒイロにしがみついた。そのまま彼の横で朝まで添い寝した


「おはようございますですの!」
「おはようなノ!」

サーシャにべったりなコハラコが寄り添い、サーシャの真似をした挨拶をしていた

「おはよ~ございます~改めて~よろしくお願いしますね~」
「お、おはよう……宜しくな…」

昨夜のハプニングを敢えて感じさない様な振る舞いのエルデスとは対照的に、よそよそしいヨシュア。キッチンに向かうとミルが既に料理を始めていた

「皆さん…おはよう…ございます…」

「ミルったら、誘ってくれたらお手伝いしましたのに」

頑張るミルを気遣うサーシャの優しい言葉に少し頬が緩むミル。ソコへカルーアとヒイロもやって来た

挨拶は交わしたのだが…ヨシュアにはぎこちないカルーア。口では許したと言いはしたものの、頭で理解しても身体は防衛体制を取ってしまうようだ。なまじ歳の近い異性なのが余計気にさせてしまうのかも知れない

「カルーア…昨日は悪かった…」

「うん…もう大丈夫だよ…」

朝食を食べ終えた全員だが…やはりカルーアがヨシュアと距離を取るのが、皆に気を使わせていた


「それでは私はおじい様とおばあ様の元に帰りますわ。ヨシュア君、アリスお姉様の入浴も覗かいでくださいね!」

「解ってるよ。しねーから!」

言っていた通りアルバート工房のヘルプが必要なくなったエリエスは、祖父母の待つ自分の家へと帰って行った
その後もカルーアは、ヨシュアと目を合わせようとはしなかった。頭では理解していても心を許していない異性に裸を見られた事が影響してあるようだ

(これは早めに何とかしないと…)

そう感じたヒイロは、皆で出掛けることを提案する

「みんなでお出掛け楽しみぃ~」

「それで、何処に行くんだい?」

喜ぶアリスと目的地を尋ねるカルーア

「まずは商業ギルドに付き合ってくれ。その後は冒険者ギルドだな。ヨシュア君の強さならアリス達のクエストに同行してくれた時に、必ず役に立ってくれるだろう。せっかくなら彼の分も手当てをもらった方が良いからな!」

「そうですの!お姉様達に加えて元魔王の息子さんまで居るのですから、大概の依頼も余裕ですの!」

優しいサーシャは瞬時にヒイロの意図を読み取り、彼の言葉を後押ししてくれた

「戦闘なら任せてくれ!俺の活躍で、昨夜の事故を挽回するんだぁー!」

この好機に昨日の失態を挽回しようと意気込むヨシュア。そんな彼を見て「クスっ」と笑うエルデス



【商業ギルド】
「はいぃ!?修理依頼が100件以上も溜まっているんですか?」

1週間留守にしていたのだから、それなりに溜まっているとは思っていたヒイロだが、エリエスが3日間代わりに修理してくれていたし、それ程は残っていないと思っていたのだが…

「1ヶ月前に南のドルイド王国南部、それと先週クラウン城での獣神の出現が影響しているんだろうな
各地でモンスターや魔獣の遭遇戦が相次いでいる様だ。この街の冒険者もフル稼働だったからな、だから!今あるこの仕事を全部片付けたとしてもだ!」

「当面、俺の仕事は忙しい!って事ですよね…はぁw」

「すまんな。そうだな…依頼品が多すぎるから…コチラの馬車でお前の工房まで依頼の武具防具を運ばせる。それくらいは手伝うぜ!」

商業ギルドのマスター「ジュリアン」の手配で荷物の持ち運びは必要なくなった

「だったらサーシャ達も家に残って、ミルと一緒に家の掃除とかしておけば良かったですの」
「コハラコはサーシャと居られたら何でも良いの!」

ひとり留守番させてきたミルを気遣うサーシャと、彼女と居るだけで楽しいコハラコ。この3人の関係は極めて良好な感じだ



【冒険者ギルド】
「ふわ~大きくて立派なギルドですね~人も沢山居ますね~凄いですね~」

「ヘルメスの街は俺らの村と違って栄えてるからな…それにしても冒険者が多過ぎる気はするがな」

村人の総人口が約1000人の【ブルージュ村】に対して、この【ヘルメス】の街には8000人以上が住んでいる。ましてや、元魔王が居るブルージュ村には【ギルド】など通信をする為のモノでしかない。ヨシュア達にとって、この街の活気の強さは想像以上のようだ

「おぉ!アリスちゃん久しぶりだなぁ!」
「カルーアちゃん!クラウンでも活躍したんだってな!」
「サーシャちゃん、無事だったか!また料理を教えてくれよ」

三姉妹は既にこの街の人気者になっていた。のだが…

「や、やあコハラコ。今日もサーシャちゃんと仲良いねー」

吸血姫のコハラコは、まだ街の人からは恐れられているのか?よそよそしい感じだ

「よおヒイロ。コッチにも顔を出してくれたんだな…ところで、そちらの魔族の少年とエルフの女性はどちら様だい?」

コハラコはまだしも、ヨシュアとエルデス。特に魔王の息子のヨシュアには誰も声を掛けられなかった。50過ぎのギルドマスターが勇気を出して声を掛けてくれた感じだ

「クラウンで行われた武闘会での準優勝チームのキウさんの息子さんのヨシュア君と、その村の副村長のエルデスちゃんだ」

ヒイロは冒険者ギルドの全員の緊張を和らげようと、なるべく柔らかく2人を紹介した

「しばらく~この街でお世話になると思いますので~皆さん宜しく~お願いしますね~」
 

「ヨシュアだ。宜しくな」

「エルデスちゃん、可愛いなぁ」
「うお~凄いデカいぞ」
「声も綺麗だね」
「露出高くね?俺は好きだけどな」
「ヨシュア君、可愛い♪」
「オットリとツンデレかな?」

エルデスの砕けた柔らかい喋り方に和む冒険者達だが、まだまだ初対面の人には冷たい目付きを浮かべるヨシュアには全員少し警戒している様だ

「もぉ!ヨシュア君ったらぁ!そんな怖い顔してちゃ駄目だよぉ!」

この街のみんなにヨシュアと仲良くしてもらいたいアリスは、ヨシュアの態度にダメ出しをした

「彼はアリスちゃんのお友達なのかな?」

アリスのヨシュアを気遣う意図を汲み取ったギルドの受付嬢が笑顔で質問すると、アリスは顔を赤くして俯いた

「う、うん。そうなのぉ…」

何となくアリスの言わんとする事を理解したヨシュアは、アリスに変な気を使わせないようにハッキリと宣言することにした

「俺はアリスの彼氏になったヨシュアだ!彼女ともども宜しく頼むぜ!」

「えぇー!?」
「マジかよ!?」
「アリスちゃん、おめでとう!」
「あと5年したら告白しようと思ってたのに…」
「アリスちゃん、可愛いもんな」

緊張感が漂っていたギルド内は、その報告に一気に賑やかになった。魔族の少年ということで少し距離を取られていたヨシュアだが、天然純粋無垢少女のアリスの彼氏ということで、ギルドのみんなも警戒心を解いてくれたようだ

早速、依頼を閲覧する三姉妹達だが…獣神出現が影響している様で、普段は少ない高難易度の依頼が多数張り出されていた

「これは…今すぐにでもクエストを受けた方が良いくらい、アチコチで被害が出ているね…」

「はん!俺様がビシッとバシッと魔物どもを蹴散らしてやるぜぇ!」

アリスの彼氏だ!とみんなの前で宣言した手前もあるし、昨夜の勘違いとは言えカルーアの裸を見てしまった汚名も返上したいヨシュアは、やる気をみなぎらせていた



続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...