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聖夜
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「クリスマス空いてるか?」
親友のBがそう尋ねてきたことに違和感があったのは、こいつに彼女がいたことだけじゃない。
「お前が?霊感ある彼女がいるだって?」
そう、Bには霊感があるのだ。Bは、大学で知り合った初めての友達だった。男友達さえ作れなかった自分に、彼は親しく話しかけてくれた。
Bの家《アパート》につくと、俺は驚いた。玄関で出迎えたのがバイト先の友人のCだったからだ。そう、俺たち三人はバイト仲間である。
「まさか、Bに彼女ができるなんてな、しかもこんな大事な日を、一緒にすごすだなんて」
「あはは、でも、いっただろ、俺たちは“同じ場所にいない”って」
ふと、クリスマスケーキをみると、ろうそくがきえて、同時に停電になった。アパート全体が暗くなったようで、周囲から何の明かりも感じない。
「なあ、よく聞いてくれ」
「なんだ、B、ふざけてるのか、俺は今ライトを探して」
「そうじゃない、もしあれなら、ここに残ってくれないか?」
「何を、いまはライトを」
「なあ!」
手を伸ばす。その瞬間、何か人の形のものをするりとすり抜けた気がした。それは正面。Cの肉体をすり抜けたようだった。
ぼんやりとした俺の頭に記憶がよみがえってくる。
「クリスマスに一緒にいてくれないか?彼女はもう僕の傍を離れたんだ」
「幽霊に出会えるか検証しないか?」
「今年だけ、一緒に見送りたいんだ」
ふと、Bの手を握る。
「何を隠してるんだ?B」
「ああ、だからいったじゃないか、彼女はもういないんだ……去年事故でなくなったじゃないか」
ああ、そうか、そんな気がしてきた。しかし、目の前のCは自分何かひどくよびかけてきている。
「君!!―君!!○○君!!」
あれ?と思った。玄関の外で明かりが差し込んでいる。しかし、なぜだ?さっきまで傍にいたCの声が玄関の外からする。
「戻ってきて!!C君!!」
「おい、いくな、いくな」
なんとなしに玄関がきになって、よろよろする恰好でそちらに近づいていく。Bはとめたが、明かりが恋しかった。
「どうしてもいくなら、とめはしない、お前たちはお似合いだ、だが俺は、お前のこともとても愛してたんだ」
と背後でBが妙な事をいった。しかし玄関の声がどうしてもきになる。玄関の声はこういった。
「思い出して!!“彼”はあなたの幻想よ、念じるのよ、“B”かえって!!」
ふと目を閉じて念じた。その瞬間、瞼の上からでもわかるほどの明るさがリビングを包み込んだ。そしてめをあける。Bも、Cの姿もいない。自分は、人恋しさで可笑しくなったのかと思って回りをみまわした、キッチン、風呂場、トイレ、そして、最後にリビングの机のした、そしてふと顔を上げたときだった。
「わあああ!!」
「わああああ!!」
ケーキに顔を突っ込んだテーブルの皿から顔を起こし、ケーキのクリームを顔にぬりたくったBが、机のうえから自分に向けていった。
「メリー・クリスマス!!まだ見ぬともよ」
しかし、青年はみたことのない青年だった。そもそもBの顔を思い出せなかった。
それからどれほどたっただろう。体を揺り起こされて目を覚ました。部屋着のかわいいCが自分の傍にいて、心配そうに自分をゆすっている。机にはいくつかのろうそく、彼女はあわてて部屋の電気をつけた。
「よかった、目を覚まして」
ぎゅっとハグをされた。
「どういうことだ?Bはどこだ?」
「Bは“帰った”わ、私たちより先に、あの世へいったのよ」
「でも、あいつは、彼女は自分の傍にいないって、君が死んだのだっていっていて、それで僕はクリスマスをこの家で……」
「“私たちがそばにいない?”それはそうでしょうね、あなたが私と出会ったのは今年……Bをなくして一年後だったもの、あなたとBはあったことがない、死んでいたのはBなのよ、あなた、かわいそうにまだ混濁して……でも助かった“クリスマス”に“幽霊とお別れをしたい”だなんて、あなただけよ、こんな妙なお願いを聞いてくれたのを、バイト先でも、あなたは、私の妙な言動を受け入れて友人になってくれたわ」
僕は思い出していた。そうだ、Bなんて友人はいない。Cは、バイト先でできた人生初めての友人で、去年クリスマスでなくした恋人の“幻覚”をみたといって僕をたよった。僕は、Bを成仏させるためにここによばれた、Cは僕を抱きしめながらいった。
「思い出して、私たちはケーキをたべて、そしてヴィジャボードをして、交霊術をしたのよ、そして、彼は私にいったの“あなたの事をよろしくね”」
「本当に?」
僕は頭を混乱させた、Bはこうもいっていた。“俺と一緒にこないか”と、もしかしたら、Bが寂しかったからもしれない、僕のことをきにいっていたのかも、それとも、この現実があまりに悲惨なものだったからかも。
だって僕もCもバイト先ではきらわれものだし、客にも同僚にも卵を投げつけられたりする、でも、僕は思った。もう少し、この世界が退屈になるまで、初めての友人と楽しい日々を過ごそうと。
親友のBがそう尋ねてきたことに違和感があったのは、こいつに彼女がいたことだけじゃない。
「お前が?霊感ある彼女がいるだって?」
そう、Bには霊感があるのだ。Bは、大学で知り合った初めての友達だった。男友達さえ作れなかった自分に、彼は親しく話しかけてくれた。
Bの家《アパート》につくと、俺は驚いた。玄関で出迎えたのがバイト先の友人のCだったからだ。そう、俺たち三人はバイト仲間である。
「まさか、Bに彼女ができるなんてな、しかもこんな大事な日を、一緒にすごすだなんて」
「あはは、でも、いっただろ、俺たちは“同じ場所にいない”って」
ふと、クリスマスケーキをみると、ろうそくがきえて、同時に停電になった。アパート全体が暗くなったようで、周囲から何の明かりも感じない。
「なあ、よく聞いてくれ」
「なんだ、B、ふざけてるのか、俺は今ライトを探して」
「そうじゃない、もしあれなら、ここに残ってくれないか?」
「何を、いまはライトを」
「なあ!」
手を伸ばす。その瞬間、何か人の形のものをするりとすり抜けた気がした。それは正面。Cの肉体をすり抜けたようだった。
ぼんやりとした俺の頭に記憶がよみがえってくる。
「クリスマスに一緒にいてくれないか?彼女はもう僕の傍を離れたんだ」
「幽霊に出会えるか検証しないか?」
「今年だけ、一緒に見送りたいんだ」
ふと、Bの手を握る。
「何を隠してるんだ?B」
「ああ、だからいったじゃないか、彼女はもういないんだ……去年事故でなくなったじゃないか」
ああ、そうか、そんな気がしてきた。しかし、目の前のCは自分何かひどくよびかけてきている。
「君!!―君!!○○君!!」
あれ?と思った。玄関の外で明かりが差し込んでいる。しかし、なぜだ?さっきまで傍にいたCの声が玄関の外からする。
「戻ってきて!!C君!!」
「おい、いくな、いくな」
なんとなしに玄関がきになって、よろよろする恰好でそちらに近づいていく。Bはとめたが、明かりが恋しかった。
「どうしてもいくなら、とめはしない、お前たちはお似合いだ、だが俺は、お前のこともとても愛してたんだ」
と背後でBが妙な事をいった。しかし玄関の声がどうしてもきになる。玄関の声はこういった。
「思い出して!!“彼”はあなたの幻想よ、念じるのよ、“B”かえって!!」
ふと目を閉じて念じた。その瞬間、瞼の上からでもわかるほどの明るさがリビングを包み込んだ。そしてめをあける。Bも、Cの姿もいない。自分は、人恋しさで可笑しくなったのかと思って回りをみまわした、キッチン、風呂場、トイレ、そして、最後にリビングの机のした、そしてふと顔を上げたときだった。
「わあああ!!」
「わああああ!!」
ケーキに顔を突っ込んだテーブルの皿から顔を起こし、ケーキのクリームを顔にぬりたくったBが、机のうえから自分に向けていった。
「メリー・クリスマス!!まだ見ぬともよ」
しかし、青年はみたことのない青年だった。そもそもBの顔を思い出せなかった。
それからどれほどたっただろう。体を揺り起こされて目を覚ました。部屋着のかわいいCが自分の傍にいて、心配そうに自分をゆすっている。机にはいくつかのろうそく、彼女はあわてて部屋の電気をつけた。
「よかった、目を覚まして」
ぎゅっとハグをされた。
「どういうことだ?Bはどこだ?」
「Bは“帰った”わ、私たちより先に、あの世へいったのよ」
「でも、あいつは、彼女は自分の傍にいないって、君が死んだのだっていっていて、それで僕はクリスマスをこの家で……」
「“私たちがそばにいない?”それはそうでしょうね、あなたが私と出会ったのは今年……Bをなくして一年後だったもの、あなたとBはあったことがない、死んでいたのはBなのよ、あなた、かわいそうにまだ混濁して……でも助かった“クリスマス”に“幽霊とお別れをしたい”だなんて、あなただけよ、こんな妙なお願いを聞いてくれたのを、バイト先でも、あなたは、私の妙な言動を受け入れて友人になってくれたわ」
僕は思い出していた。そうだ、Bなんて友人はいない。Cは、バイト先でできた人生初めての友人で、去年クリスマスでなくした恋人の“幻覚”をみたといって僕をたよった。僕は、Bを成仏させるためにここによばれた、Cは僕を抱きしめながらいった。
「思い出して、私たちはケーキをたべて、そしてヴィジャボードをして、交霊術をしたのよ、そして、彼は私にいったの“あなたの事をよろしくね”」
「本当に?」
僕は頭を混乱させた、Bはこうもいっていた。“俺と一緒にこないか”と、もしかしたら、Bが寂しかったからもしれない、僕のことをきにいっていたのかも、それとも、この現実があまりに悲惨なものだったからかも。
だって僕もCもバイト先ではきらわれものだし、客にも同僚にも卵を投げつけられたりする、でも、僕は思った。もう少し、この世界が退屈になるまで、初めての友人と楽しい日々を過ごそうと。
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