呪い人形と母

ショー・ケン

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呪い人形と母

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そのフランス人形は、A男が子供の頃、物心つく前から彼の部屋にあったらしい。母は、霊媒師で相当設けていたらしいが、そのお金でこの家を買った。新しく建てたのではなく売り家で相当なお金持ちが持っていたらしい。特段変な事は起こらなかったが、昔から霊感のあったA男には、その人形だけが、特別な力を持っているように思われた。それも、悪いものに思えなかった。

というのも、何かいい事があったりする日や、決断を迫られるときには、その人形に尋ねて眠ると、人形が正面を向いている時がある。そういう時は、必ずその選択が正しく、いい事がおこるのだ。

そうして彼は人生のあらゆる困難を選択してきた。友人と出かけるべきか、習い事、クラスのかかり、受験、物心つくまえ、若くして母を失った彼にはその人形こそが母替わりのようなところもあった。

だがある日、その選択をした事をひどく後悔した。その日はある人と出かける約束をして家をでたのだが、そこまでは覚えているのだが、次の瞬間、病院のベッドにいたらしい、看病していた父の話すところによると、すさまじいスピードで走ってくるトラックにひかれたらしい。幸い大事にはいたらなかったが右足を骨折し、入院。そこでAは父に打ち明けた。
「今朝、あの人形に尋ねたら、正面をむいていたから、いい事がおこるはずだったんだ」
 父は彼が霊感があることとそのジンクスをしっていたから、彼に尋ねた。
「何の用事で家をでたんだ?」
「デートの約束で」
 父は、顔をしかめながら、ぽつりといった。
「もうあの人形はお祓いしよう、きっと、彼女の……お前の母の魂……嫉妬が入っているかもしれない」
 そこでAは彼の母が死の直後に自分の名前だけを詩きりに叫んでいたことをきいたのだった。

 その後、退院して人形をお焚き上げしたあと、父から聞いた話だが、物心つく前に死んだ母はAを溺愛していて、どこにも婿にやりたくないといっていたそうだ。霊媒師だった母のいたずらなのか、それとも本気の執着なのか、今はどうでもいい。ただ成仏を祈るばかりだとAは語った。
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