ホラー短編集

ショー・ケン

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病バイト

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「お前にバイト紹介してやるよ」
「え?」
 バイト先で知り合った友人に、そんな事をいわれたAさんは一瞬ためらった。もともとニートの時期が長かった彼は、甘い話に簡単に飛びついてしまう。けれど、そんな簡単な話ではないと思いつつ、彼につきあった。

 しかし、数日後、バイト現場で彼と待ち合わせのはずだったが、いくら待っても来やしない。がっかりして家に帰ると、母親がどなっていた。
「あんた!ようやく稼ぐようになったと思ったら!お高いいい学校かよわせてやったんだから、ちゃんと親孝行しなさいよ!大学退学しやがって!」
 母親は、世間からはおしとやかな人だといわれるが、学生時代の彼はがんじがらめだった。母親からのストレスを吐き出す場所もなく、中学まではなんとか静かに陰キャをやっていたが、高校ではいじめられるようになり、大学では容姿をからかわれることにうんざりして、どこか“別の場所”をもとめた。

 部屋にもどりテレビをつけると昨今流行りの闇バイトのニュースがやっていた。
「ああ、これが復讐の構図だ、無敵の人か」
 どこか、同情で涙がこぼれた。
「もしもし?」
 親友のBである。バイト先で合った友人だ。
「お前にだまってたことあるんだよ、俺もともと毒親育ちでさ、そんなときにネットでお前とであって、かわったんだよ、それでさ、お前の近くの家にひっこしていいバイトを紹介したんだ」
「え?お前“C”なのか?」
「そうだよ、メタバースチャットでであっただろう?」
 驚いた。Cという友人は彼がバイトを始めるきっかけとなった人物である。メタバース空間でアバターを用いて、様々なコミュニケーションを行う場だ。

「なんだよ、早くいってくれよ」
「だけどさ、俺のうつがひどくてさ」
「何いってんだよ、俺たちならなんとでもなるだろ?」
「いや、そうじゃないんだよ、俺ガンがみつかってさ」
「え?」
「俺はできるだけ長く生きる、だがお前にしてやれることはもうない、でもさ、俺考えたんだよ、もっと高額なバイトがないかって」
「いいよ!お前は残る時間を大事な人といてくれるだけで!俺だっておまえのためなら、しんだっていい」
「そういうと思ったよ、俺、闇バイトにひっかかっちまってさ」
「はあ!?いつ!?」
「この前さそったろ、あえて別の場所を指示して、お前を遠ざけた」
「それってお前……」
「ここからが肝心なんだ、俺たちみたいなクソ野郎を、社会は救ってはくれない、言い訳した瞬間に、弱者になった瞬間に終わりだ、学生時代から、そうやってカーストができてきて、それはもう、コロッセオみたいになってる、何も知らない連中は、俺たちに向けて“死ね”と叫ぶ、俺たちがいじめを受けてきたような相手だ、それでも俺はお前に希望を感じたんだ、お前は俺だった、だからよ……“指名手配”“懸賞金”……」
 その2週間後、懸賞金を目当てに、AはBを警察に通報した。Bは警察署で自殺したとおう。Aは、どうして彼をうったのかと警察に問われたが、素直に答えた。
「夢の中で、彼に懇願されたんです、僕はそうしたくなかったけれど、彼は死ぬことをきめていた、僕に霊感があるなんて信じます?それともメンタルがやられた人間の妄言でしょうか?」
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