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親友の彼氏
しおりを挟む「相手の気持ちになればうまくいくよ」
学生時代に仲の良かった親友Bさん。学生時代に卒業間際、A子さんのそんな言葉を機に、気になっていた同級生に告白した。彼女はそのことをひどく感謝していた。彼女と久々に時間をとれた、スマホやネットでちょくちょく連絡をとれてはいたが、卒業以来遊んだのは2,3回、顔を見て話すのは久々の事だった。
「そう、あなたがいてくれたから、あなたのおかげだよ」
暗い、けれど間接照明が雰囲気をもつレストランで、贅沢な食事をした。彼女はとてもいい会社に勤めているらしく、会計も彼女持ち。フランス料理を堪能する。そして、Bさんから思いがけない言葉をきいた。
「彼とまだうまくいってるの」
「え?まだ続いてたの?」
驚きである。卒業以来10年もずっと一緒にいたらしい。
「本当、あなたのおかげ、私の人生が前を向いたのは」
「でも、私は何も」
「いいえ、でもね……励ましてほしいの、私、最近彼が家にいないと不安で不安で……彼が事故にあってしんだらどうしようとか、大病を患ったらどうしようって」
AさんはBさんの目を見て、にっこりと笑った。
それからしばらく、一か月ほどまた疎遠になった。また会おうという約束はしたものの、彼女の仕事、動画編集業が忙しくなって、とても連絡をつくることができなかった。動画配信者や芸人の動画を編集する仕事、影で人を支えることがすきなAさんには性に合っていた。
そのAさんのもとにBさんから電話がかかってきた。急ぎの仕事もあったが、そればかりはほっておけなかった。
「わかった、すぐいくから泣かないで、葬式であいましょう」
電話口で泣いていた彼女が心配だったが、毎日通話はしていた。その翌々日にようやく彼女のために葬式場に向かうことになった。なんでも彼氏が亡くなったときいて、葬式場にいくが彼女はいなかった。
それから一通り葬儀の礼にしたがって彼氏の死を悼むと、親御さんの顔がみえた。直接話したことはなかったが彼女が事情を話すと、泣き出してしまった。
「Bちゃんにあっても、このことはいわないで」
しかし、Bさんの連絡先を教えてほしいともいっていたし、やけに動揺していた。
その日の帰り、ちょうどいいのでBさんの家を訪ねた。新しい家をおしえてもらっていたし、ちょっと気になったので、玄関の呼び鈴をならす、しかし不在なのかいっこうにでてこない、玄関のドアをあけると、鍵はかかっていなかった。
「Bちゃん、いるの」
「ああ、ごめん、ちょっと今部屋をかたずけていて、玄関でまってて」
Bさんの声が奥から響いた。
「なんだ、いるんだ」
妙に薄暗いへや。気のせいか、廊下の奥のリビングに続くドアに何かがかかっているが、その形がよくみえない。
気のせいかガスのようなにおいがする。
「何をしてたの?」
「何も?それよりなんできたの?」
奇妙だ。彼女は昔から気が弱いはず、どうして感情に起伏がないような声なんだろう。今頃泣いてると思って心配してきたのに。そうだ。リビングの奥から声がする。こっそり奥に行ってもばれないだろう。だが、彼女はリビングの途中で自分の目を疑った。部屋を整理しているはずの彼女が、ドアを半分あけてこちらをみていた。
「ちょっと、びっくりさせないでよ」
「大丈夫よ……ふふふ、大丈夫、この部屋を閉じれば、すべて終わるから」
「!??」
嫌な予感がした、勢いよく彼女のそばに駆け付けようとしたが、彼女はライターをてにしていた。そして彼女はするすると頭の位置をしたにずらしていく。すでにドアのすぐそばにきていたが、彼女はドアを閉めようとゆっくりとうごかしていく。
「やめて!!」
「こないで、来たら火をつけるよ?」
緊張からか、五感がするどくなる。彼女はきっと冷静な状態ではないのだろう。無表情でずっと、こちらをみている。部屋でニュース“刺殺事件”の音声が聞こえてくる、しかしはっきり聞こえない、街頭インタビューの段だろうか、動画編集の仕事が忙しくて、ニュースをおっていなかった。なぜ今、そんな事を気にするのだろう。不思議だが、耳はニュースを追った。
ニュースから、Bの彼が彼がストーカーされていたという情報と、彼が刺殺されたこと、ドア越しに見るテレビに、親友Bの顔が映る。
『警察はストーカーをしていたという元恋人B子さんの行方をおっています』
A子さんは頭がパニックになった。恋人が殺されていた?葬儀ではそんな話をきいていなかった。スマホで仕事のタスクをつくっていたし。
「ありがとう、心配してきてくれたんだ」
「ちょ……今のニュース、どうして?あなたなの?」
「どうしてわかるの?」
「わかるよ、だって、あなた、彼のことひどく好きだったもの」
「ああ、そう、親御さんに聞いたのね、私たちは3年前に分かれたって」
Aさんは彼女のことを思い、こわかったがはっきりといった。
「お願い、自首して、こんなにあなたに会えなかったけど久々に会えてうれしかった、だからやり直そう」
「いいえ、もう無理よ、私はかつてのあなたの言葉を頼りに生きてきた、再会の言葉もうれしかったわ“愛しているなら、相手が死んだって、愛し抜ける”って、私それで決意したの、でもあなたのせいじゃない、それでもあなたがいてくれたから、あなたのおかげだよ、楽しい人生がすごせたのは」
「やめて!!」
彼女がドアをバタンとしめようとした。その勢いをとめるために指を差し込んだ。恐怖よりも体が早くうごく、Aさんは昔からそういうタイプだった。しかしドアを閉める勢いは感じられず、肩透かしをうけて、前のめりに転びそうになった。
「いたた……」
Aさんは壁に手を付け、顔を上げる。ふと、ドアからのぞいていたBさんの奇妙な格好が目に入る、前のめりに、まるで幽霊のような格好。
〈だらん……〉
彼女の体がまるで空中で垂れ下がっているようにうごいた。そこで、彼女は叫んだ。彼女は首をつって意識をうしなっていた。悪臭はガスもまじっていたが、それは腐敗集だった。
警察に電話すると、放心状態で警察がくるのをまった。警察には優しい言葉をかけられた。警察官がおかしなことをいったので、彼女はゆっくりと抵抗した。
「死後三日たってますね」
「でも、私彼女と話して……」
「あー……そういう事って、あるんですよね、ここだけの話、でも早くわすれたほうがいいですよ、学生時代からの仲のいい友人でしたっけ?それならなおさら“自分のせいだ”って思わない方がいいです」
警察官の言葉が耳に残った。
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