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悲しい暗殺
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「親の仇!!」
「師匠の仇!!」
二人の暗殺者AとBがにらみ合っている。お互いに一歩も引かず、お互いの印象をののしりあう。
「尻軽女!!」
「嘘つき!!」
だがお互いをののしるたびに、二人は顔をまじまじと見つめあい、苦しい顔つきになっていく。ここはバーの店内、従業員一人がマスターの後ろに隠れ、奇妙なウサギの格好をした女性が、こっちには目もくれず酔いつぶれている。ほかの客は、この拳銃をつけつけあった女性二人のにらみ合いをみてそそくさとにげだした。
「なんでよ、なんであんたが」
「あんたこそ!!」
ヒートアップして立ち上がり、お互いの襟首をつかむ。二人とも暗い感じのする女性だった。だがお互い昨夜このバーであって、酔っ払い、そのうちにあれやこれやで仲良くなってしまった。お互いが、お互いの仇であることに気付かずに。そこにマスターが、カクテルを二つさしだす。恐れ知らずの行動に、別の従業員は、静かに生唾をのんだ。
マスターは女性、思えばマスターこそ、昨日二人をつなげた立役者でもある。
「落ち着いてください、あなた方は二人とも、暗殺の秘密組織に所属されていますね?」
「そうだけど、別に組織同士のからみはないわ」
「こいつ、怪しくない?先にやっとこうよ」
「いいわね、武器の音がする」
マスターは、まるで焦る様子もみせない。姿勢をたもち、グラスをふいている。
「ほう」
「ねえ、おちついてみない?」
比較的小柄なほうのBがAを誘うと、Aもうなずいた。
「そうです」
とマスターはにっこりと笑う。
「あなた方は、復讐をしたいのですよね、Aさんは親の復讐、Bさんは、師匠の復讐、それがお互いの組織同士に犯人がいるときかされた」
「それが何よ」
「……?」
「復讐とは、恐れからくる行動という面もある、もう一度自分が危険な目にあうのではないか、もう一度何かを奪われるのではないか、ですがあなた方はすでに多くの人間の命を奪った、もう、奪う側なのですよ」
二人はお互いに顔を見つめあった。
「あなた方の昨日のお話は、そう……とても平凡な少女的でした、もちろんプロとしては、いい行動ではなかったけれど、窮屈な闇社会で掟に縛り付けられている少女たちとは思えなかった、私はこう仮説づけたのです“あなた方は普通に戻りたいのだ、お互いを傷つけたくはないのだ”と」
AとBはお互いをみて、うつむいた。まだ幼いころに両親を失った少女たちだったが、実は、彼女たちはお互いの両親、もしくは育ての親たるボスを殺されたのだった。
「あなた方にはまだチャンスがあります、あなた方が“一般人”に戻る方法、復讐を終えることです」
「けど、いまさらそんな……」
「多くの罪を背負った」
「ええ、むつかしいでしょう、人間にならね、でもあなた方の当初の目的は……そんなものでしたか?私が察するに、“復讐のため”だったのではないですか?ですが、お互いに殺すことを迷っている、そう、それなら、選べばいいのです、新しい選択を、そうすることが、平凡に生きるということです」
マスターは、後ろの席を指さした。
「あなた方をここへ案内したのは誰です?本来あなた方は別の場所の情報をあたえられ狙いに定めていたのではないですか?」
「それは」
「あっ……」
そうだ、とAとBは思い出した。バニーガールの格好をした女性にこっちへ来いと呼ばれたのだ。普段会話をしないような陽気なタイプの女性で、思わずひかれてしまった。その人は、自分の事をひどく褒めてくれていた。
「あの人を殺せば、すべてうまくいきますよ、協会の真の狙いはあの子です、協会に所属せず、協会の人間を狩る暗殺者」
「え?」
AとBはすべてを悟った。その話は聞いたことがある。もしそいつをしとめれば、この案件をしてくれた組織にも面目が立つ。暗殺者は、普通依頼をひとつうけとったなら、それを最後まで実行しなければいけない。それが起きての一つ、“より大きな案件を解決”した場合にしか、その問題は免除されない。
すかさず、AとBは彼女をうった。“復讐は何も解決しない”と、欲ある善人の言葉を信じて、その時その瞬間だけは、宗教さえ信じたかもしれない。だが銃弾は、奥の座席の彼女にはじかれた。彼女は防弾ヘルメットをつけ、防護服をぬいだ。
気づくと、すでにAとBは頭を撃たれ横たわっていた。
「やったね、お姉ちゃん」
マスターとそっくりの女性がたって、後ろをふりかえり笑う。彼女は妹ににっこりとほほ笑み返すと、転がる死体によっていく。
「人は見かけによらない、といいますよね、私もそうです、二人の暗殺を頼まれた暗殺者ですから、ウソなどついていません、私は暗殺する対象に、慈悲をかけるのです」
そして、しゃがみ込んでゆがんだ笑みを浮かべた。
「私は君たちの組織ふたつともを掌握しているマフィアの専属殺し屋よ、頼まれたのよ、蛇の道は蛇、あなた達が痕跡を残すようなら、両方処分しろって、なぜかって?組織のボスは美学をもっている、“お客さん”の眼からは誰も逃れられない」
マスターは立ち上がり振り返る。先ほどまでガタガタ震えていた、男性従業員は恍惚とした表情でカメラをてにとり、一部始終を撮影をしていた。
「師匠の仇!!」
二人の暗殺者AとBがにらみ合っている。お互いに一歩も引かず、お互いの印象をののしりあう。
「尻軽女!!」
「嘘つき!!」
だがお互いをののしるたびに、二人は顔をまじまじと見つめあい、苦しい顔つきになっていく。ここはバーの店内、従業員一人がマスターの後ろに隠れ、奇妙なウサギの格好をした女性が、こっちには目もくれず酔いつぶれている。ほかの客は、この拳銃をつけつけあった女性二人のにらみ合いをみてそそくさとにげだした。
「なんでよ、なんであんたが」
「あんたこそ!!」
ヒートアップして立ち上がり、お互いの襟首をつかむ。二人とも暗い感じのする女性だった。だがお互い昨夜このバーであって、酔っ払い、そのうちにあれやこれやで仲良くなってしまった。お互いが、お互いの仇であることに気付かずに。そこにマスターが、カクテルを二つさしだす。恐れ知らずの行動に、別の従業員は、静かに生唾をのんだ。
マスターは女性、思えばマスターこそ、昨日二人をつなげた立役者でもある。
「落ち着いてください、あなた方は二人とも、暗殺の秘密組織に所属されていますね?」
「そうだけど、別に組織同士のからみはないわ」
「こいつ、怪しくない?先にやっとこうよ」
「いいわね、武器の音がする」
マスターは、まるで焦る様子もみせない。姿勢をたもち、グラスをふいている。
「ほう」
「ねえ、おちついてみない?」
比較的小柄なほうのBがAを誘うと、Aもうなずいた。
「そうです」
とマスターはにっこりと笑う。
「あなた方は、復讐をしたいのですよね、Aさんは親の復讐、Bさんは、師匠の復讐、それがお互いの組織同士に犯人がいるときかされた」
「それが何よ」
「……?」
「復讐とは、恐れからくる行動という面もある、もう一度自分が危険な目にあうのではないか、もう一度何かを奪われるのではないか、ですがあなた方はすでに多くの人間の命を奪った、もう、奪う側なのですよ」
二人はお互いに顔を見つめあった。
「あなた方の昨日のお話は、そう……とても平凡な少女的でした、もちろんプロとしては、いい行動ではなかったけれど、窮屈な闇社会で掟に縛り付けられている少女たちとは思えなかった、私はこう仮説づけたのです“あなた方は普通に戻りたいのだ、お互いを傷つけたくはないのだ”と」
AとBはお互いをみて、うつむいた。まだ幼いころに両親を失った少女たちだったが、実は、彼女たちはお互いの両親、もしくは育ての親たるボスを殺されたのだった。
「あなた方にはまだチャンスがあります、あなた方が“一般人”に戻る方法、復讐を終えることです」
「けど、いまさらそんな……」
「多くの罪を背負った」
「ええ、むつかしいでしょう、人間にならね、でもあなた方の当初の目的は……そんなものでしたか?私が察するに、“復讐のため”だったのではないですか?ですが、お互いに殺すことを迷っている、そう、それなら、選べばいいのです、新しい選択を、そうすることが、平凡に生きるということです」
マスターは、後ろの席を指さした。
「あなた方をここへ案内したのは誰です?本来あなた方は別の場所の情報をあたえられ狙いに定めていたのではないですか?」
「それは」
「あっ……」
そうだ、とAとBは思い出した。バニーガールの格好をした女性にこっちへ来いと呼ばれたのだ。普段会話をしないような陽気なタイプの女性で、思わずひかれてしまった。その人は、自分の事をひどく褒めてくれていた。
「あの人を殺せば、すべてうまくいきますよ、協会の真の狙いはあの子です、協会に所属せず、協会の人間を狩る暗殺者」
「え?」
AとBはすべてを悟った。その話は聞いたことがある。もしそいつをしとめれば、この案件をしてくれた組織にも面目が立つ。暗殺者は、普通依頼をひとつうけとったなら、それを最後まで実行しなければいけない。それが起きての一つ、“より大きな案件を解決”した場合にしか、その問題は免除されない。
すかさず、AとBは彼女をうった。“復讐は何も解決しない”と、欲ある善人の言葉を信じて、その時その瞬間だけは、宗教さえ信じたかもしれない。だが銃弾は、奥の座席の彼女にはじかれた。彼女は防弾ヘルメットをつけ、防護服をぬいだ。
気づくと、すでにAとBは頭を撃たれ横たわっていた。
「やったね、お姉ちゃん」
マスターとそっくりの女性がたって、後ろをふりかえり笑う。彼女は妹ににっこりとほほ笑み返すと、転がる死体によっていく。
「人は見かけによらない、といいますよね、私もそうです、二人の暗殺を頼まれた暗殺者ですから、ウソなどついていません、私は暗殺する対象に、慈悲をかけるのです」
そして、しゃがみ込んでゆがんだ笑みを浮かべた。
「私は君たちの組織ふたつともを掌握しているマフィアの専属殺し屋よ、頼まれたのよ、蛇の道は蛇、あなた達が痕跡を残すようなら、両方処分しろって、なぜかって?組織のボスは美学をもっている、“お客さん”の眼からは誰も逃れられない」
マスターは立ち上がり振り返る。先ほどまでガタガタ震えていた、男性従業員は恍惚とした表情でカメラをてにとり、一部始終を撮影をしていた。
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