ホラー短編集

ショー・ケン

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呪いと愛

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 ある刑事が不可解な事件を操作していた。ある占い師に関係する人物が続々と命を奪われていく。占い師をひいきにし、むしろ占い師からわいろをもらった疑いもあった。わいろの見返りが不明だ。

 占い師は呪術を使うことでも有名だ。もし呪術で彼らがあやめられたのなら、問題はないだろう。だが、占い師がいつもありばいのない時間を見計らって、事件はおこる。そしてわざわざ占い師の名刺が事件現場におちている。そして凶器はいつもナイフだった。

 被害者に恨みを持つ人物を手当たり次第にしらべたが、特に共通する人物もおらず、捜査は難航していた。

 あるとき、刑事の電話に占い師から電話がはいる。
「犯人に心当たりがある、ここまで来てしまっては、もう隠しておくこともできないだろう……犯人は、私の娘だ」
 占い師の娘というのは、また彼女の力を受け継ぎ、人を呪い殺す能力がある。ならなぜ?
「呪いでなぜ殺さないのですか?」
「私が呪い返しの術をしっているから……」
 刑事はすぐに占い師の元へ向かうが、既に占い師の邸宅は炎上し、火事がおきていた。消防が到着して火がよわまったころには、占い師の遺体が発見された。

 翌日、娘が母を殺したといって、刑事に連絡をよこした。刑事は取り調べ担当になった。親子とは親しかったのだ。

「なぜ、お母さんを殺したんです?」
「母が私を殺そうとしたから」
「どうやって?」
「そうね、証明なんてできないものね……母は、人々から愛されていたけれど、裏では人を恐れていた、だから呪いなんて仕事もやっていた、でも近頃私のほうが力がつよくなって、私さえ怖れるようになった」
「ふむ」
 刑事は実は、その可能性は考えていた。というのも被害者の共通点というのが、
あるときこっそり盗み見た占い師の顧客リストに名前があったためだ。そのことを娘に尋ねると娘はいった。
「母はメモ魔ですから、私を殺す依頼をしてくれと、ワイロをわたし、そしてその以来をわざわざ受ける形で、私を殺そうとした、自分ではなく、他人をつかって人をのろった」
「なぜ、わざわざそんな事を?」
「呪い返しを恐れていたから、たとえ私を殺すことができたとしても、私が死ぬまでに少しでも私が感づいて呪い返しの術をかけていたら、母ではなく、依頼者に呪い返しがいくように」
「でも……仮にもし、あなたが呪い返しをできるなら、彼らを呪い返しで殺せばよかったじゃないですか」
「死ぬリスクを考慮してまですることじゃない、母の手先を殺すなんて」
「あなたが他人に呪いを依頼しなかったのは?」
「私は、他人の呪いをかなえる力はない、呪いで彼らを殺してもあちらは呪い返しができる、私にその術はないけど」

 刑事は深くため息をついた。
「君たちの事はよくしっているよ、評判の親子だったじゃないか、君は将来を期待され、大事に育てられた、母が、占いをよくしてくれたおすじゃないか」
「いいえ、あれは占いじゃない、母が私にしていたのは他の人と違って呪いだったわ、母の忠告にしたがわせるための呪いを、占いと称していたの、人への占いじゃない、母は私を管理しようとした」

 泣きながら続けた。
「母は、私を愛していたんじゃない。本当にあいしていたなら、他人に呪わせ、本当に力をもっていた私からの呪い返しを恐れますか。母は、私を恐れていた。私に不幸があると警告し、その通りに力を使う事で私を脅してきた、やがて母の言いなりの占い師になることを望んで、だから母は私の意思などいらなかったのですよ」
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